日本とインドネシアの個人所得税の違い【グロスアップ方式で個人所得税PPH21の月額を計算】

日本もインドネシアも超過累進課税

ほとんどの国は超過累進課税(Excessive progressive taxation)を採用しており、例えばインドネシアで課税所得240jutaの場合に「50jutaに対して5%」「50jutaを超える残り190jutaに対して15%」の税率で所得税が計算されます。

  • インドネシア
    • 50juta以下分に対して5%(つまり課税所得が50juta以上なら一律2.5juta)
    • 50jutaを超える250juta以下分に対して15%
    • 250jutaを超える500juta以下分に対して25%
    • 500jutaを超える分に対して30%
  • 日本
    • 195万円以下分に対して5%
    • 195万円を超える330万円以下分に対して10%
    • 330万円を超える695万円以下分に対して20%
    • 695万円を超える900万円以下分に対して23%
    • 900万円を超える1800万円以下分に対して33%
    • 1,800万円を超える4000万円以下分に対して40%
    • 4,000万円を超える分に対して45%

個人所得税だけで見た場合、インドネシアは最高税率が30%と日本の45%に比べて低く、高額所得者ほど有利な税制になっています。

さらに日本では個人所得税に加えて住民税が10%(市区町民税6%+都道府県税4%)かかりますが、インドネシアに住民税はありません。

日本で年間の課税所得4,000万円を超える高額所得者の場合、所得税率最高45%が適用された上で住民税10%がかりますが、超過累進課税において実際に45%がかかるのは4,000万円を超える部分のみです。

プロ野球選手がシーズンオフの年俸交渉後に「どうせ年俸の半分は税金で持っていかれるから」と自虐的に発言するのをニュースで見ますが、本当に半分以上もっていかれる選手は、個人所得税と住民税の課税金額を計算してみると、おおよそ年俸1億5千万円以上のスター選手クラスのみであることが分かります。




自営業者が節税のために会社からの所得を減らす意味

自営業者が「会社からの給料は年収900万円以下に抑えたほうが得」とか言われるのは、個人所得税を減らして、個人の支出は極力会社の経費として落とせば、会社の課税所得が減って法人税を節約できるという意味です。

ただしインドネシアの場合、起業間もない会社の売上が4.8Milyarに満たない場合には、3年間に限って売上に対する0.5%を分離課税(PPH4(2)というFinal Tax)として納税することができるPP23 Tahun2018という税制度があるため、このスキームを選択している会社では節税のために「経費で落とす」ことに意味はありません。

日本では個人事業者の場合は、個人所得税と住民税に比べて個人事業税がかかりますので、法人化したほうが税制上有利になることが多いですが、インドネシアでは残念ながら外国人は個人事業主としてビジネスをすることはできません。

個人所得税PPH21の月額をグロスアップ方式で計算

例えば手取り月給17juta(13万円ほど)の中堅SE(システムエンジニア)の個人所得税PPH21の月額を計算してみます。2019年2月現在、インドネシアで手取り17jutaをもらうSEであればコーディングだけでなく業務コンサルも出来る業界経験最低5年以上のレベルです。

インドネシアの会社の多くは雇用契約時の給料は手取り金額で締結し、個人所得税分は税額控除(Tunjangan Pajak=Tax Allowance)として会社が負担するグロスアップ(Gross Up)方式を採用していますので、所得税の計算に当たっては控除額は収入とみなして総収入で計算します。

  • 課税所得=( 手取り17juta+税額控除 )x12ヶ月ー非課税金額58.5juta

グロスアップ方式での総収入は、PPH21が税額控除されている分を手取りにプラスし、12ヶ月分の総所得を計算します。ここでは話を簡単にするためにBPJS(健康保険BPJS-Kesehatanと労働保険BPJS-Ketenagakerjaanからなる雇用保険制度)は省略していますが、本来はBPJSも収入とみなしてプラスする必要があります。

非課税所得(Penghasilan Tidak Kena Pajak=PTKP)は年間54jutaで、扶養家族があれば4.5juta上乗せされますので総所得からマイナスし、課税所得を計算します。

総所得に対するPPH21の計算は、50juta以下は5%なので50jutax5%=2.5juta、50jutaを超える250juta以下が( 課税所得-50juta )x15%で計算され、PPH21(税額控除)の月額は以下のように計算されます。

  • PPH21(税額控除)={ 2.5juta+( 課税所得-50juta )x15% }÷12

この連立方程式から課税所得 (X)と税額控除 (Y)を計算します。

  • 課税所得=( 手取り17juta+税額控除 )x12ヶ月ー非課税金額58.5juta
  • 税額控除={ 2.5juta+( 課税所得-50juta )x15% }÷12

この場合課税所得がRp.165,294,120、税額控除(PPH21)がRp.1,649,510になります。

Gross Up方式のための簡易的な税額控除計算方法(2019年8月追記)

Gross Up方式のポイントはPPh21と同額の税額控除(PPH21手当)を手取り額に加算し、PPh21の計算結果が税額控除と同額になることです。

これを税額控除を計算するための簡易的な計算式があります。

課税所得 (PPh21手当計算用) 税額控除 (Tunjangan PPh21)
1 Rp 0 – Rp 47,500,000 (年間PKP – 0) x 5/95 + 0
2 Rp 47,500,000 – Rp 217,500,000 (年間PKP – Rp 47,500,000) x 15/85 + Rp. 2,500,000
3 Rp 217,500,000 – Rp 405,000,000 (年間PKP – Rp 217,500,000) x 25/75 + Rp. 32,500,000
4 Rp 405,000,000より大きい (年間PKP – Rp 405,000,000) x 30/70 + Rp. 95,000,000

この場合課税所得(PPh21計算用)が145.5jutaになりますので、上記の2の計算式を適用します。

  • 年間手取: Rp.17,000,000 x 12ヶ月 = Rp. 204,000,000
  • 非課税: Rp. 58,500,000
  • 課税所得:(PPH21手当計算用)Rp. 204,000,000 – Rp. 58,500,000 = Rp. 145,500,000
  • 年間税額控除(計算式2):(Rp. 145,500,000 –  Rp. 47,500,000) x 15/85 + 2.5 = Rp. 19,794,000
  • 月当たり税額控除:Rp. 19,794,000 /12か月=Rp. 1,649,510 (Y)

先の連立方程式を使った税額控除と同じ結果になります。