生産スケジューラ

MRPで内示情報を確定受注情報で置き換えるプロセス 【計画系システムの運用が難しい理由】

2017/04/13

MRPの所要として取り込む内示情報と確定受注情報は、客先から最新情報をもらうタイミングで入れ替える必要がありますが、抜け落ちることなく重複することなくうまく入れ替えるには、確定受注は受注NOの有無をキーとして重複しないように新規分のみ追加し、内示は洗替えします。

インドネシアの生産スケジューラーまとめ
生産スケジューラ

インドネシアの製造業界においてMESやIoT導入により生産情報が自動的に取得できるようになれば、それを生かすための未来の生産シミュレーションというニーズが発生するのが自然であり、日本発生産スケジューラAsprovaの活躍の場は多いと考えます。

続きを見る

システムでの生産計画の運用が難しい理由

業務システムの運用で最も難しい分野は生産計画であると言われる理由は、所要(基準生産計画MPS)を元に所要量展開を行う上で「製造ロットサイズ」と「リードタイムずらし」の影響で、生成された製造オーダがどの所要に紐付いているかが見えにくくなる点がまず第一に挙げられます。

これらの管理は共通材料を使う製品が多品種に渡る場合により複雑化し、製造オーダと受注の紐付きを見えにくくしますが、加えて生産スケジューラでは1日の生産能力を越えないように、負荷オーバーしている作業を自動的に前倒ししたり、空いている生産資源に振り替えたりします。

人間がマニュアルでやっていた日次で負荷平準化する作業を自動化するところが、生産スケジューラの最大の特徴とも言えるわけですが、逆に今まで自分の頭で恣意的にやっていた割付結果とは必ず差異が出ますので「何故この作業がこの日時にこの機械に割り付いているのか?」の根拠が理解できないと「自分の思い通りに作業が割り付いてくれない」というマイナスの評価がなされがちです。

そして第二にMRPの計算元データである所要として内示と確定受注の2種類がある場合、客先から最新データが送られてくるタイミングで、抜け落ちることなく重複することなくうまく置き換えることが難しいという点が挙げられます。

  1. 前回内示としてもらった情報が今回は確定受注に変わっている。
  2. 今回の確定受注に前回の確定受注がダブって含まれている。

というように客先からのオーバーラップした確定受注と内示を、システム上では二重登録にならないよう考慮する必要があります。

システムでの生産計画の運用が難しい理由上の受注予定テーブルは、確定受注4日分(2行目)と内示6日分(1行目)の合計10日分の最新データをもらう場合、製造指図を3日分(3行目)とすると、月初時点で受注残は4日-3日=1日分となり、これに内示6日分を足した7日分がMRPの対象となります(青枠)。

そして3日後にまた確定受注4日分(5行目)と内示6日分(4行目)の合計10日分の最新データをもらう場合、製造指図3日分(6行目)があるため、受注残は4日-3日=1日分となり、これに内示6日分を足した7日分がMRPの対象となります(緑枠)。

さらに3日後にまた確定受注4日分(8行目)と内示6日分(7行目)の合計10日分の最新データをもらう場合、製造指図3日分(9行目)があるため、受注残は4日-3日=1日分となり、これに内示6日分を足した7日分がMRPの対象となります(赤枠)。

確定受注は追加で内示は洗替が基本

基準生産計画の作成内示を確定で置き換えるための具体的な方法は、新規の確定受注のみを追加して内示は洗替することであり、理屈ではこれにより確定受注の二重登録と内示の二重登録が同時に防止されます。

そして所要から展開された直近の製造オーダを元に製造指図を発行した結果として確定している製造残を、受注残(受注登録済みで在庫のないもの)から差し引くことで、余分な生産を行わないようにする必要があります。

  1. 1回目の最新データ確定受注(1日~4日)と内示(5日~10日)を取り込む。
  2. 確定受注(1日~4日)は受注登録するが製造指図(1日~3日)が既にあるので、受注残(4日)+内示(5日~10日)がMRPの対象となる。
  3. 2回目の最新データ確定受注(4日~7日)と内示(8日~13日)を取り込む。
  4. 確定受注(4日~7日)のうち1回目で受注登録済みの受注NOと重ならない確定受注(5日~7日)を受注登録するが、製造指図(4日~6日)が既にあるので、受注残(7日)+内示(8日~13日)がMRPの対象となる。
  5. 3回目の最新データ確定受注(7日~10日)と内示(11日~16日)を取り込む。
  6. 確定受注(7日~10日)のうち1回目と2回目で受注登録済みの受注NOと重ならない確定受注(8日~10日)を受注登録するが、製造指図(7日~9日)が既にあるので、受注残(10日)+内示(11日~16日)がMRPの対象となる。

MRPの所要の中に確定受注と内示が混在する場合、確定受注は新規のみ追加し内示はすべて洗替えすることで所要のダブりを防ぎます。

MRPで受入確定量が時間制約違反を無視して前倒しでオーダに紐付く理由

資材所要量計画(MRP)はMPS(基準生産計画 所要)を元に所要量展開を行い、仕掛品や材料の現在庫を差し引いた正味所要量を計算すると同時に、L/T(リードタイム)分だけ「前倒し」することで購買オーダや製造オーダの発行タイミングを計算します。

このように納期を基準に後工程から順番に「前倒し」するという大前提があるため、予定の遅れによりオーダが「後倒し」で確定されると、時間制約違反を起こさないという条件の中では、次工程にとってその不足分のオーダを補充生成する必要がでてきます。

ただしMRPの基本は正確な正味所要量の計算にあるため、オーダの「後倒し」に確定され受入確定量化すると、所要量の不足は時間制約違反を無視して、「後倒し」されたオーダも「前倒し」して引き当てることで、余分なオーダを生成しません。つまりMRPはリードタイムずらしよりも正味所要量の計算を優先しているのです。

オーダの前倒しと予定の遅れによる後倒しこの受入確定量で余分なオーダを出さないようにする機能がシステムを運用する人間から見たとき、オーダ間の紐付けを見づらくしてしまうとも言えます。

MRPでは後倒しで確定したオーダが必要日の早いオーダに強引に紐付きますが、生産スケジューラーではオーダが後倒しで確定すると、前後作業がひきつけられて移動し、割付開始日を越える過去日のオーダは「無視」され突き抜け無限能力で割付けられるか、「強制割付」され計画基準日内に無限能力で山積みされることになります。