インドネシアにおける業務改善を実現するITシステム内製化の可能性

2021/05/26

ジャカルタの夜景

KintoneやAppSheetが提供する機能が高度化するにつれて、インドネシアでも業務システムの内製化が出来る時代になりつつあります。ITによる本質的な業務改革は外製化よりも内製化のほうが有利であると考えます。

業務のやり方は変化し続ける

インドネシアの会社では社内業務におけるデータ管理や帳票はExcelによるマニュアル作業で行われているケースが多いのですが、Excelの便利な点は計算式が埋め込まれたフォーマットを柔軟に変更できるので、必要に応じて少しずつ修正してアップグレードすることで、現時点の仕事に必要な最適フォーマットで仕事が出来るからです。

言ってみれば個人レベルで日々少しずつ業務改善しているわけですね。

業務は個人の集合体が関連し合って成立しており、顧客や仕入先が増えるにつれて業務のやり方も少しずつ変わっていくため、Excelを修正し適応していくわけですが、計算式が多すぎてファイルを開くのに時間がかかるようになったり、必要なデータが個々人のPCに分散して、まとめるのに時間がかかったり、一定レベルに達すると限界を感じるようになります。

ここで社内業務の見える化、蓄積された情報の共有化、情報を加工して役立てる体系化のためにシステムを導入するという話になります。


長年個人レベルで熟成された業務処理の繋がりを、システム化して運用することで、Excelを使っていた時代に比べて便利になった、楽になったということもあるでしょうが、業務のやり方は環境の変化とともに変化し続けるわけですから、数年後にはまたシステムの改修、つまり業務改善が必要になります。

インドネシアにおけるITシステムの外製化と内製化の問題点

立派な情報システム部がある大企業でもない限り、インドネシアでは日本とは異なり情報システム部の人員が手薄である場合が多いため、この業務のITシステム化は弊社のようなITサービス会社に委託し外製化するのが一般的です。

比較的小さな会社でも、ITスキルの高い職人的インドネシア人技術者が社内に居る場合には、独自に内製化して社内業務に浸透している場合がありますが、そういう会社の日本人駐在員さんが必ず口にするのは「ITに詳しいインドネシア人が一人で作ったシステムなので中身が分からないし、彼が辞めた後が心配だ」ということです。

  1. 外製化の弱点は環境の変化に伴う業務の流れに対応しずらい。
  2. いざ内製化しようとしても社内にITスキルのある人材はいない。
  3. 職人的なIT技術者が開発したシステムは属人化しやすい。

インドネシアの現地法人におけるITシステムの外製化と内製化の問題は上記3点に集約されます。

その結果として現状が見えない・数字が合わない・前後が繋がらないという3つの問題により、業務効率が低下するだけでなく、社員の売上コスト意識の低下に繋がります。

個人的にはインドネシアのITシステムによる業務改善の理想とは「Excelのように環境の変化に合わせて柔軟に修正ができ、高度なIT技術が不要で社内の業務担当者の力で構築できるもの」であり、このような都合の良いITツールは存在しなかったため外製化にならざるを得なかったわけですが、技術の進歩に伴い現実的な提案が出来る時代になりつつあります。

GoogleAppSheetを使ったスマホからの実績収集システム

弊社は在インドネシア企業様の業務システムの外製化に対応する一方で、GoogleスプレッドシートやAppSheetを使った内製化支援も行っており、一例としては生産スケジューラAsprovaで生成した作業スケジュールに対して、AppSheetによるスマホからの実績入力という、予実管理システムの導入支援です。

生産スケジューラの運用構成

インドネシアの工場でよく見られる光景が、出荷時に製品在庫が積み上がっておらず、顧客の出荷スケジュールをリカバリーするような自転車操業で生産が行われていることです。

顧客から来る月当たり確定受注数は日別に分割した出荷スケジュールに従って納品しますが、本来営業部門にて管理すべき受注残管理が、製造や倉庫など現場主体で行われることで、受注と調達、生産、出荷が分離されてしまいます。

この一連のプロセスのひと・モノ・資源をつなぐ流れを整え、在庫削減や資源の稼働効率の改善をサポートするのが生産スケジューラであり、運用方法は既存のERPシステムのマスタや実績情報と連動させたり、必要最低限の情報のみを別システムとして切り離し、生産スケジューラを中心としたシステムを構築したりします。

コロナ禍で求められるDX化とは

業務のシステム化の目的として省力化、効率化、間違い防止などが挙げられますが、今流行りのDX化の目的とは単なる既存システムの置き換えではなく、ITを使用すればこんな便利なことが出来るようになるというITありきの業務改革と言えます。

昨年のコロナ禍下での台湾のデジタル担当大臣オードリー・タンは、マスク在庫がリアルタイムで確認できるアプリ「マスクマップ」を開発しましたが、このために最先端の技術を採用したわけではなく、未曾有の危機でもOSS(オープンソースソフトウェア)を使ってスピーディに臨機応変に運用できるコミュニティと運用体制を構築した事が評価されたわけです。

一般企業でも同じように、業務改革は現場のオペレーション改革が必須であり、インドネシアでの一例として、誰もが必ず身近に携帯しているスマホを業務に取り入れることで、いつでもどこでも手軽に円滑に業務が流れる仕組み作りを提案しています。

システム構成

今回は社内にシステムを構築するのではなく、GoogleスプレッドシートとAppSheetというGoogleの無料クラウドサービスを利用することで「今日からできるDX」を実現します。

地上の生産スケジューラと雲の上のGoogleとのデータのやり取りは、CDATA社のODBCドライバーを使用します。

まずAsprovaで作業指示を作成し、CDATAのODBCドライバによってGoogle Sheetsへ作業指示をアップロードします。次にAppSheetで作ったスマホ用画面から実績入力(QRコードで作業指示を呼び出し)CDATAのODBCドライバによって実績をGoogle SheetsからAsprovaにダウンロードします。

ODBCでAsprovaからGoogle Sheetsへ接続

CDATA社のODBCドライバーをインストールすると、WindonwsのODBCの設定画面にCDATA ODBC driver for Google Sheetsが表示されますので、Folder IdやSpreadSheetなど必要な項目を設定することで、Google Sheetsの列が表示されるようになります。

CDATA社のODBCドライバーは通常のODBC設定と同じように簡単に接続設定ができますので、1か月間という無料期間は実用性の検証をするには十分だと思います。

Google SheetsからAppSheetを起動しスマホ画面を作成

Asprovaで生成した作業指示をGoogle Sheetsにアップロードし、これに実績を入れていくことになりますが、直接Google Sheetsに書き込んでもいいのですが、今回はAppSheetsを使ってスマホから実績入力するアプリを作成したいと思います。

AppSheetはプログラミング不要で誰でもシステム開発ができる、Googleが提供するノーコードアプリ開発ツールであり、Google Sheetsのセルにスマホから書き込むためのインターフェイスを簡単に作成することができます。

今回はスマホ上でカレンダーに表示された作業指示をクリックすることで、特定の作業指示を呼び出し実績を入力していきます。

Googleスプレッドシートへの接続には、標準のODBCを介してETL(Extract・Transform・Load)やBIツールとデータのやりとりを実現するCData Software社のCData Google Sheets ODBC Driverを使用します。