設備投資によるコストメリットは、出来高や歩留などの数量を根拠に定量的に説明することができますが、システム投資の場合は数値データを根拠に評価するのは難しいと言われます。メーキングインドネシア4.0の後押しでインドネシアのSI業界に活気が戻ることを期待しています。 インドネシアのビジネス インドネシア市場でのビジネスで重要な要素は価格とブランド、コネの3つと言われますが、必ずしもこれらを持ち合わせない日本人はどのように戦えばよいのか。これはインドネシアに関わり合いを持って仕事をする人にとっての共通の問題意識かと思います。 続きを見る
数値データで評価しにくい業務システム導入のメリット
会社設立当初に起草された企業理念は既に形骸化されているかもしれませんが、会社に何か大きな危機が発生したときや、企業環境に大きな変化が起こったときなどに原点回帰する基本精神であることには変わりありません。
【企業理念の定義】
- 会社の創業に託した想い、会社の不変の価値観と会社の存在理由・目的
例えば弊社の企業理念は「現場の努力を会社の競争力に変えることで地域経済の付加価値化に貢献する」というもので(2024年に『現場の意見を汲み取り、気持ちに寄り添い、運用に伴走する。』に変更)、お客様ごとに多種多様な業務フローをシステム化し現場で運用することで業務効率の向上と情報の有効活用を実現し、会社の競争力を生み出したいという趣旨です。
2020年1月にJETRO(日本貿易振興機構)さんと、インドネシアの中小企業のIT投資について意見交換させていただく機会をいただいたのですが、そこで「システム投資のコストメリットはどのように説明できるのか」という、システムインテグレーターの存在価値にも関わる重要な問題提起がありました。
「ガラパゴス市場」からの脱却に向けて、現地企業に聞く(インドネシア)
在インドネシア日系製造業向けにERP(在庫管理、生産管理などの統合基幹業務システム)などの製造・販売を行うバテラハイシステムに、事業内容や販路拡大の取り組みなどについてヒアリングを行った(1月14日)。
ここにあるように設備投資によるコストメリットは、出来高や歩留などの数量を根拠に定量的に説明することができますが、システム投資の場合は数値データを根拠に説明するのは難しいのです。
しかし業務効率が向上し作業時間が短縮され、単位時間あたりのコストである賃率が下がれば、定量的にコスト削減を説明できます。
【業務システムの導入のメリット】
- 現場の業務効率の向上によるコスト削減
- 現場の情報の見える化・共有化・体系化による有効活用。
インドネシアのシステムインテグレーターとして弊社の存在価値何なのかという問題意識を持ち、日々悩みながらもとにかく動く、話を聞く、何かを始める、このトライ&エラーの繰り返しですが、企業理念とはこのような企業の存在価値に関わる核心を突いた問いに対する答えになりうるべきものだと考えます。
システムインテグレーターが少ないインドネシア
システムインテグレーター(SIer エスアイアーとも言う)とは読んで字のごとく「システムを統合する人」であり、企業のシステムまわりの仕事を一括して請け負う業者を指します。
1990年代中盤、僕が第一新卒としてIT企業に絞って就職活動をしていた時、IT業界は派遣ビジネス全盛期で、入社したばかりのド素人新人を客先に飛ばして、実務で仕事を学ばせながら人月工数を請求するという無茶苦茶なやり方が横行しており、その当時のホワイトな企業であるかどうかの判断基準が、「経済産業省認定システムインテグレータ」であるか否かでした。
過去20年間、インドネシアにもいくつかの日系Sierが進出しては撤退を繰り返してきましたが、その理由はインドネシア現法のIT投資が消極的でSIマーケットの規模自体が小さかったこと、現地での人材確保の難しさ、人件費など固定費の上昇などにより技術を有する駐在員を維持することが出来なくなったからなどが考えられます。
この日系SIerのインドネシアへの進出と撤退の最初の波が2000年代前半で、2回目の波が2010年過ぎ頃という10年周期であるため、ちょうど今年2020年からおそらく新たな日系SIerの進出または再進出があると思います。
2019年はインドネシアよりも市場規模が小さいベトナムのほうが日系SI企業やAI関連企業の進出が盛んで、日系パッケージソフトの代理店の数も圧倒的に多いと聞きますが、今年からのインドネシアは過去2回とは異なり、インダストリー4.0のインドネシア版であるメーキングインドネシア4.0の需要という後押しがあるため、3度目の正直でインドネシアのSI業界が活気を取り戻す可能性が高いと思っています。