インドネシアのご当地コーヒーの代表格北スマトラのアチェ・ガヨ

2017/05/17

Acehの伝統衣装

シャリア法(イスラム法)に基づくイスラム色の強いアチェ州のアチェ・ガヨ(Aceh Gayo)のコーヒーは、フローラルなフレーバーと濃厚なボディかつ爽やかなアフターカップと評されることが多く、インドネシアを代表するスペシャルティコーヒーの産地として知られるようになりました。

インドネシアで最もイスラム色が強いアチェ州

アチェと言えば2004年のスマトラ島沖地震に伴う津波により、西海岸の州都バンダ・アチェ(Banda Aceh)の市街地を海水の濁流が流れる衝撃的な映像が鮮明に記憶に残っていますが、まさかその7年後に東日本大震災でデジャヴ(既視感)のように同じ光景が日本で起こるとは予想だにしませんでした。

アチェ州では国内法では認められていないシャリア法(イスラム法)の影響が依然として強く残っており、婚前の不順異性交遊などの「不道徳行為」に対しては、2017年現在でも公開鞭打ち刑が課され、2009年には凶悪犯罪や同性愛に対しては石打の刑が課されるという法案が州議会を通過するような時代錯誤な面があり、インドネシアの中でもアラブ諸国並みにもっともイスラム色の強い地域です。

以前インドネシア中を旅行した経験を持つ友人にどこが一番良かったか聞いた時、彼は迷わずアチェだと答えたので、個人的には是非訪問してみたい土地ではありますが、男女が公の場で手を繋いだり女性が肌を大きく露出させた服を着るだけで、下手すると連行されそうな雰囲気があるので、うちの嫁さん(中部ジャワ出身クリスチャン)が行きたがりません。

私がインドネシアに来たばかりの1997年頃、インドネシア人から英語を習っていたことがあるのですが、彼はアチェ出身の敬虔なムスリム(イスラム教徒)であり、毎回彼はイスラム教とアラーの神がいかにすばらしいか、アチェは石油・天然ガス・金・大麻など天然資源が豊富でインドネシアから独立しても十分やっていけるなど、一方的に熱く語る様子を見ながら、アチェ人というのは随分と自尊心が強い民族なんだと感じました。

2020年から2021年のコロナ禍によるPSBB(大規模社会的制限)施行前に備蓄用のコーヒー豆を購入するためにブカシから南ジャカルタのブロックM内の市場まで通いました。Batu Timbanganという小さな商店(キオスク)のコーヒー豆はチョコレート風味が特徴で、私はkopi luwakとAceh gayoを愛飲しています。

ただし当時は自由アチェ運動(GAM=Gerakan Aceh Merdeka)の民兵が、インドネシアからの分離独立を目指して、権力側のインドネシア国軍と頻繁に衝突していた時期でもあり、アチェのアイデンティティに対する配慮に欠ける中央政府に対する不満がくすぶっていたことから、故郷を愛するアチェ人の言動として仕方のないことかもしれません。

フルーティな風味が特徴的なアチェ・ガヨ(Aceh Gayo)コーヒー

インドネシアのご当地コーヒーの代表格アチェ・ガヨ(Aceh Gayo)

タケンゴンを含むガヨ高原やガヨ・ルウェス県(Gayo Lues)などの中部アチェではアラビカ種のコーヒー栽培が盛んで、北アチェのピディエ県(Pidie)や西アチェではロブスタ種の栽培が盛んであり、インドネシアのプレミアムレベルのアラビカ種コーヒー輸出量の40%がアチェ産を占めています。

ガヨ・マウンテン(Gayo Mountain)とも呼ばれるガヨ高原で栽培されるコーヒーは、カップを口元に近づけた瞬間から感じられるフローラルな香味が最大の特徴であり、コーヒー独特のコク(ボディ・濃厚さ)よりもキレ(爽やかさ)が強く感じられる、アフターカップが後引きしない風味を持っています。

風味の傾向

  1. 香り ★★★
  2. 苦み ★
  3. 酸み ★★★
  4. コク ★★
  5. 甘み ★★★

ジャカルタでシングルオリジンコーヒーを飲ませるカフェのメニューには、トラジャと並んで必ずといっていいほど載っているインドネシアが誇るコーヒー産地ブランドです。

私は毎週日曜日の午前中は、西ジャカルタの寂れたモールSeasons City敷地内に併設する、Kedai Kopi AcehというAcehを看板に出した珍しいカフェで、Roti bakar Aceh(Aceh風トースト)を食べながらシングルオリジン(生産地の農園単位)のAceh Gayoをマニュアルブリューイングで飲むのが定例になってまして、薄琥珀色の液体から香り立つフローラルな香りは日曜の朝に飲むコーヒーとしてはベストマッチです。

日頃何も考えずスタバでコーヒーを飲んでいますが、このVanilla Sweet Cream Cold2杯で後ろのAceh Gayoの袋1個(500g)が買えることを考えると、いかに自分が浪費しているかに気づき罪悪感を感じます。

但し個人的意見ですが、アチェ・ガヨのようなフローラル(Floral 花の香り)なコーヒーは、カフェのバリスタによる淹れ方によって味の好みが大きく分かれ、相性が悪いカフェだと舌に酸味ばかりがきつく残ってしまい、残念な結果になってしまいます。

映画「海を駆ける」のロケのためにインドネシアに長期滞在し、在住日本人(特に女性)の間で大きな話題となった俳優のディーンフジオカさんの奥様は中華系インドネシア人とのことですが、2022年1月11日の民放番組でアチェガヨコーヒーを愛用していると語ったことで、インドネシアの代表的ブランド豆の一つとして日本での知名度が一気に高まったようです。