本日は「生産スケジューラとはどういうもので何がができるのか?」 「生産スケジューラの導入はどのような手順で行われるのか」の2点に絞って御説明させていただきます。 インドネシアの製造業界においてMESやIoT導入により生産情報が自動的に取得できるようになれば、それを生かすための未来の生産シミュレーションというニーズが発生するのが自然であり、日本発生産スケジューラAsprovaの活躍の場は多いと考えます。 続きを見る
生産スケジューラ
生産スケジューラとは?
業務フローの中での役割
まず業務フローの中での生産スケジューラの役割ですが、お客様からいただいた内示または受注情報を元に、生産スケジュールと購買スケジュールを作成します。
インドネシアではほとんどの製造業様ではExcelでスケジュールを作成されていると思いますが、機械のキャパを考慮しオーダー変更に臨機応変に対応し納期遅れしないスケジュールを作成するのは大変です。
Asprovaは品目情報や部品構成表、工程情報だけでなく、機械能力もマスタとして持ちますので、オーダー数量に応じて適切なリードタイムを計算し、正確な機械別の生産スケジュールを高速に生成します。
工程別機械別生産スケジュールを自動生成
Asprovaに受注情報を取り込み、製品在庫を差し引いた正味所要量を計算し、製品の完成スケジュールを生成しますが、これが基準生産計画(Master Production Schedule)です。
基準生産計画を元に、部品構成表の親子関係に従い所要量計算を行うことで製造オーダーを生成し、工程別に設定した使用可能な機械能力をもとに、負荷を平準化しながらリードタイムずらしした結果、生産スケジュールが生成されます。
また工程投入材料、資材の必要量に基づき所要量の計算を行い、購買リードタイムを考慮した購買スケジュールを生成します。
リードタイム短縮
Excelを使って生産スケジュールを作成する場合は、工程別に1日区切りの固定リードタイムで製造オーダーを積み上げ、1日のキャパをオーバーするオーダーについては、前倒しするか残業または休日出勤で対応します。
Asprovaでは1個あたり何秒、または1時間当たり何個生産といったサイクルタイムで製造リードタイムを計算しますので、理論的に可能な最短時間の製造リードタイムでスケジュールを作成します。
固定リードタイムで計算するExcelに比べて、サイクルタイムで計算するAsprovaではリードタイムの短縮が見込まれます。
在庫削減
製造リードタイムが短縮されることにより、工程内に滞留する仕掛品在庫と製品倉庫に置かれる製品在庫が削減され、材料入荷のタイミングを遅らせることができるので、材料在庫も削減されます。
インドネシアの場合、塗装工程がボトルネックになりやすいのですが、Asprovaでは前後工程が在庫を作りすぎないようにボトルネック工程のタクトに合わせた生産スケジュールを生成することができます。
キャッシュフロー改善
ボトルネック工程の稼働率を最大化することによりリードタイム短縮、在庫削減が実現できれば、自動的に棚卸資産ではなくキャッシュで持てる期間が長くなりますので、キャッシュフローが改善されます。
受注から製造・購買まで一気通貫で見える化
Asprovaでは受注と生産と購買を一気通貫で見える化します。
ERPなど基幹業務システムは工程別に生産管理を行いますので、工程間に中間在庫が発生しやすくなり、リードタイム短縮にも限界がありますが、工程間を串刺し状に繋ぐことで、生産に流れを作ります。
グラフィカルなチャート
Asprovaで生産スケジュールを生成することによって、生産資源を時間、負荷、在庫など多面的に見える化することができます。
生産スケジューラ導入の事前準備と標準的導入ステップ
標準的導入ステップ
プロトタイプを本番で運用可能なレベルまでブラッシュアップした上で、ご購入後に即運用開始できるようになるのが理想です。
まず基幹システム(ERP)のマスタをエクスポートしていただきます。稼働中のすべてのデータを使って工場を見える化するプロトタイプを作成します。
次にいただいたデータをAsprovaに取り込んで1か月分の生産スケジュールを作成します。
そしてプロトタイプをお客様と一緒にレビューしならが、実用性の高いものにブラッシュアップしていきます。
最終的にライセンスのご購入のご決断をいただいた場合には、操作トレーニングやアドオン開発方法のトレーニングを行います。
プロトタイプ作成に必要なデータ
プロトタイプを作成するためにマスタデータをいただきますが、スケジューリングの対象となる部品点数や機械を絞ることなく、全データをいただくほうが、プロトタイプ作成後にスムーズに運用を開始できます。
プロトタイプは無償で作成させていただきますが、作業負荷はデータ量が多かろうと少なかろうとさほど変わりません。
必要な情報として品目情報、品目の親子関係を知るための部品構成表(BOM)、工程情報、品目ごとのサイクルタイムを知るためのライン(機械)情報、カレンダーとシフトがあります。
そしてプロトタイプの対象となる1か月分の内示・受注・出荷スケジュールと月初の在庫情報が必要です。
Asprova導入後の業務フロー
Asprova導入後の業務フローですが、対象となる範囲は基準生産計画の作成、製造指図にブレイクダウンする前の生産スケジュールの作成、月次生産計画の作成、所要量展開による材料と資材の必要量計算です。
導入スケジュール
データ準備・レビュー&修正期間に応じて応じて2ヶ月~4ヶ月のスケジュールになります。
現在の生産活動を正しく反映したマスタデータを素早くいただけるかが、導入期間を短縮するポイントになります。
業務改革を目的としたDX化の観点が重要
生産スケジューラの導入は、納期遅れや過剰在庫などの問題を引き起こす元凶となる、ボトルネック工程の生産効率を最大化することに重点を置き、導入によって現行業務のやり方がアップデートされる前提で進められることが重要です。
ボトルネック工程に絞った導入が上手く回れば、前後工程への展開は比較的スムーズに行われるはずですが、計画立案業務体制が従来どおり工程別に担当者を置いたままでは、工程単位に計画が分断されたままになります。
導入前によく聞かれる質問として「リスケジュールを複数人で行いたい場合はライセンスは人数分買わないといけないのか?」というのがありますが、生産スケジューラを使った計画立案は、基本的には1人の担当者が全工程を一気通貫で行って最大の効果が出るわけで、生産に流れを作るために生産スケジューラを導入したにも関わらず、従来どおりに計画担当者が複数人でバケツリレー式に計画を立てるというのは本末転倒なのです。
生産スケジューラの導入によって、今まで独立変数として計画立案を行ってきた各工程が従属変数にシフトし、生産スケジューラによる計画立案業務が唯一の独立変数となることで、業務のやり方が根本的に見直されるわけです。
生産スケジューラの導入は、単なるシステム化案件としてではなく、業務改革を目的としたDX化の観点からなされることが、プロジェクトを成功に導く重要なポイントとなります。