インドネシアの会社設立とビザ取得

2024/04/06

インドネシアの入国ビザ

「インドネシアの会社設立とビザ取得」と聞いてまず思い浮かぶのは行政手続きの複雑さであり、外国人である自分のスポンサーとなる法人を設立するために、2人のインドネシア人役員(取締役direkturと監査役komisaris)を立てて、会社設立証明書(AKTA pendirian perusahaan)、会社登録証(TDP)、営業許可書(SIUP)などを取得し、ビザ取得にあたってはインドネシア国内の入国管理局でビザ発給許可証(VTT)を取得し、在外インドネシア大使館にて30日間有効の就労ビザIndex C312を取得し、再入国後に入国管理局にて12か月有効の一時居住許可証ITAS(Izin Tinggal Terbatas)に切り替えるという、ロールプレイングゲームのように数多くの行政手続きをクリアしていく必要がありました。

しかし2018年から、会社設立のためには投資調整庁(BKPM)が運営する事業許認可システム(OSS)で事業基本番号(NIB)を取得するという手続きに一元化されたことで、手続きが大幅に簡素化されました。

また2024年からeVISAシステムが導入され、必要書類をオンライン申請することで事前に就労ビザC312が取得できるようになったため、VTTを持って在外公館でのIndex C312を取得する必要がなくなり、再入国後に一時居住許可証ITAS(Izin Tinggal Terbatas)に切り替えるための入国管理局での写真撮影や指紋押捺も不要になりました。

当ブログでは私と同じようにインドネシアに関わり合いを持って仕事をする人が、日常生活やビジネスの現場で出会うさまざまな事象のコンテキスト(背景)の理解の一助となるようなビザ取得や会社設立手続きについての記事を書いています。

就労ビザ

ITAS取得手続きの流れ

2024年に導入されたeVISAのおかげで、インドネシアでビザを取得して就労できるまでの手続きは大幅に簡素化されましたが、かつては複雑でややこしいと言われていた理由は、必要書類を担当していたお役所が労働移住省(IMTA申請)⇒入国管理局(VTT申請)⇒在外インドネシア大使館(C312申請)⇒入国管理局(ITAS申請)と分かれていたからではないでしょうか。

2023年以前の就労ビザ取得のための複雑な流れと必要書類

  1. EPO(Exit Permit Only)で出国
    • Passport 原本
    • Imta(Ijin Mempekerjakan Tenaga Asing) 原本
    • 技能開発基金DPKK(Dana Pengembangan Keahilan Keterampilan)原本
    • Kitas(Kartu Izin Tinggal Terbatas) 原本
  2. RPTK : 外国人雇用計画書
    • スポンサーである会社(PT)は、外国人雇用計画書であるRPTKAを労働移住省(Kementerian Tenaga Kerja dan Transmigrasi)に提出し承認をもらっていることが前提
  3. Rekomendasi TA-01 : 労働移住省からの推薦状
    • 推薦状が承認されたら外国人労働者利用補償金基金(DKPTKA=Dana Kompensasi Penggunaan TKA)への1200ドル払い込み後IMTAが取得できる。
  4. IMTAを労働局(Kementerian Ketenagakerjaan RI)から取得。VTTと無関係に先に手続を進められる。
  5. VTT(Telex) : Index C312就労ビザ(VITAS=Visa Ijin Tinggal Sementara )の在外インドネシア大使館向けビザ発給依頼書
    • 入国管理局が発行し「どこの在外インドネシア公館に対して(シンガポール)どんなビザの種類を(Index C312)発給してください」という情報が記載されている。
  6. 再入国の種類(VOA以外はC312ビザ同様在外大使館へのTelexが必要)
    • ビザなし(30日間の延長不可の観光ビザ)
    • B213(Visa On Arrival)30日ビザでBusiness MeetingだけならOKで、1回限定30日間の延長が国内で可能。
    • B211B(ソシアルブダヤ)(最大60日で延長不可)
      会社のスポンサーは必要なく、インドネシア人の身元保証人のレターでOK
    • B211A(ビジネスシングルビザ)最大60日で出国で無効になる。
    • B212(ビジネスマルチビザ)1年間何回でも入国できるが一回の滞在期間が最長60日 )⇒183日ルール(年間183日を超える場合はNPWPを取得し納税義務)対象だが、実際は指摘されない。⇒ノートとペンのミーティングのみOKでPCを開くとNG、現場に入るとNG。
    • C317(配偶者ビザ)
    • C312(就労ビザ VITAS=Visa Ijin Tinggal Sementara)(6ヶ月または12ヶ月)
  7. インドネシア国内処理
    • 最寄のイミグレオフィスで写真撮影と指紋押捺を行い、KITAS(Kartu Izin Tinggal Terbatas)一時滞在許可証に切り替え。Multiple Exit and Re-Entry Permit(MERP)取得。
    • KITASが廃止されカードの代わりにITASオンラインのスタンプがパスポートに押され、イミグレでの写真撮影と指紋押捺の翌日にエージェント宛にE-Kitasが後日メールで発送される。
Singapore

インドネシアで就労ビザを取得するまでの流れ

2023年以前のインドネシアの就労ビザ取得までの流れは、前職の就労ビザを終了させるためのEPO(Exit Permit Only)の手続き後に、新しい会社で働くためのビザ発給依頼書(VTT)を入国管理局で発行してもらい、在外公館で30日間一時滞在可能な就労ビザC312取得し、再度入国後に国内の入国管理局にて12か月有効な一時滞在許可書ITASに切り替えましたが、2024年にeVISAシステムが導入されてからこの手続きが不要になりました。

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インドネシア国内でのパスポート更新

パスポートの更新を日本大使館で行った後にイミグレでの切替届けが必要になりますが、手続きは1週間かかり新パスポートにSURAT KETERANGAN PELAPORAN PERGANTIAN PASPOR(旅券切替の報告に関する説明書)という紙がホッチキスで留められ旧パスポートを引き継いだ旨のスタンプが押されます。

旧パスポートから新パスポートへ引き継ぐ必要があるのはC312ビザとKITASとMERP (Multiple Exit/Re-entry Permit)の3つです。

インドネシアの永住許可証に該当するITAP

ITAP(Izin Tinggal Tetap 恒久滞在許可証)は外国人がインドネシアにTinggal Tetap(恒久的に滞在)するためのものなので、永住権と言っても間違いではありませんが、実際の有効期間は5年間で、期間中に複数回の出国と入国をする場合には、2年間有効のMultiple Re-Entry Permitを延長する必要があります。

  1. インドネシア国籍者を配偶者に持つ外国人(C317 新名称はE31A)⇒私はこれに該当
  2. PMA(外国資本投資会社)にて1milyarルピア相当の株式を保有する役員(DirectorまたはKomisaris)である株主
  3. PMAで10milyarルピア相当の株式を保有する株主(役員でなくともよい)。
  4. PMAで3回KITASを更新した役員(DirectorまたはKomisaris)

以上に該当する人がITASからITAPに切り替える資格を有します。

インドネシアのビザ

インドネシアの永住許可証に該当するITAPの新規則

恒久滞在許可ITAPは外国人がインドネシアに恒久的に滞在するためのものなので永住権と言っても間違いではないと思いますが、実際の有効期間は5年間で、期間中に複数回の出国と入国をする場合には、2年間有効のマルチの再入国許可証を延長する必要があります。

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会社設立

ローカルPT設立方法

「小さく起業する」というのは、個人が脱サラして自己資金を元手に国内資本投資会社(Penanaman Modal Dalam Negeri=PMDN)を設立し、労務費やオフィス賃料などの固定費をなるべく抑えながら、仕入から売上までの一連の業務を回し、適切に毎月法人所得税や付加価値税などを納税するという意味です。

会社設立にあたって会社名や事業内容、資本金額、会社の住所、株主と持ち株比率、役員等を決める必要があり、そのためには役員の住民登録証(KTP)や納税者番号(NPWP)のコピー、会社のオフィスを借りたときの賃貸契約書やオフィスの写真、土地・建物税の最終支払い伝票などを準備する必要があります。

インドネシアにローカルPT(株式会社)を設立して、会社をスポンサーとして外国人の就労ビザを取る場合に必要な会社の最低資本金1milyar(約800万円)と言われています。

インドネシアで最安値で国内投資会社(ローカルPT)を設立しようとする場合、会社の資本金を最低額の50jutaとして、Notaris(公証人)手続き費用10juta、資本金の25%である12.5juta+バーチャルオフィス年間5jutaとすれば、合計27.5jutaでインドネシアの会社法に則ったPTが設立可能です。

ジャカルタ

インドネシア人配偶者を株主として自己資金だけでローカル会社を設立

「小さく起業する」というのは、個人が脱サラして自己資金を元手に国内資本会社を設立し、従業員の給料やオフィス賃料などの固定費をなるべく抑えながら、仕入から売上までの一連の流れを回し、適切に毎月法人所得税や付加価値税などを納税するという意味です

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事業許認可システム(OSS)で取得すべき事業基本番号(NIB)

インドネシア国内投資会社(PMDN)を設立するには、まずはオフィスの賃貸契約を済ませたら、管轄の地方政府から会社所在地証明書を発行してもらい、法務管理局で会社名の承認を貰い、Notaris(公証人)で会社設立証明書(AKTA Pendirian)を作成し、中央政府機関から法務人権省(Kemenkumham)の決定書(SK)や会社登録証(TDP)を取得し、会社所在地証明書(Domisili Perusahaan)に記載されるオフィスの所在地を管轄する地方政府から営業許可書(SIUP)を取得し、税務署から納税者登録番を取得する、というややこしい手続きが必要でした。

また外国投資会社の場合は、投資調整庁から、外資による投資規制分野であるネガティブリストに抵触しないか等を審査された上での事業認可を受ける必要がありました。

それが2018年7月からは国内投資会社(PMDN)、外国投資会社(PMA)問わず、会社設立の手続きはすべてBKPMが運営する事業許認可システム(OSS)を通すことで一元化され、AKTA作成と同時にまずは事業基本番号(NIB)を取得すべしという流れに大きく変更になりました。

ジャカルタの高層ビル群

インドネシア投資を活性化するOSSとオムニバス法

インドネシアでの起業では、地方政府や法務管理局、中央政府機関から各種証明書を取得する手続きが複雑でしたが、2018年7月からは投資調整庁BKPMの事業許認可システムOSSを通すことで一元化され、事業基本番号NIBの取得が義務付けられました。

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