イスラム教と仏教の法要の仕方は似て非なるもので、仏教で故人が出会う三途の川や閻魔大王はイスラム教にはなく、一回限りの命を全うしアッラ-の神の審判の日に復活し天国か地獄に行くそうです。
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インドネシアの宗教
インドネシア人の87%を占めるのがイスラム教ですが、日常生活やビジネスの現場ではカトリックやクリスチャン、ヒンドゥーなどさまざまな宗教に接する機会があります。インドネシアに関わり合いを持って仕事をする人が、さまざまな事象のコンテキスト(背景)の理解の一助となるような宗教に関する記事を書いています。
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ユドヨノ前大統領夫人の初七日
インドネシア第6代大統領であるユドヨノ(SBY=Susilo Bambang Yudhoyono)氏の故アニ夫人(本名Kristiani Herrawati)の7日目の法要(tahlilan tujuh hari)が、昨日7日にボゴールのCikeasの自宅で行われました。
白血病の治療のため今年の2月にシンガポール国立大学病院(National University Singapura)に入院したアニ夫人を、ユドヨノ氏が献身的に介護する姿が見られましたが、1日の死去のニュースの際にはローカルTV各局でアニ夫人の功績を偲ぶ追悼番組が放映され、夫人がどれだけ多くのインドネシア国民に愛されていたかがよく判りました。
インドネシアではファーストレディは国母(Ibu negara)と呼ばれ、大統領の補佐役や社会活動に携わり国民から大きな尊敬を受けますが、写真愛好家としても知られていたアニ夫人は、ユドヨノ氏の大統領在任中にも、SonyとCanonの一眼レフカメラと望遠レンズを持って随行し、撮影した写真は6百万人以上のフォロワーを持つInstgramにアップロードするなど、国民目線の親しみやすいキャラクターでした。
2011年のユドヨノ大統領訪日時には、東日本大震災の被災地である気仙沼市を夫妻で訪問し、2004年に死者行方不明者合わせて22万人の被害が出たスマトラ島沖地震で、最も被害が大きかったアチェの子供たちのメッセージを読み上げ、お見舞いと同情、激励を伝えたことはよく知られています。
大統領在任中の10年間にはテロの撲滅などインドネシアの治安維持に大きな功績を残した強面の印象が強いユドヨノ氏ですが、シンガポールから運ばれてきたアニ夫人の棺の横で悲嘆にくれる姿は多くの人々の涙を誘いました。
イスラム教と仏教の法要の違い
仏教では故人は初七日から7日ごとに35日目まで閻魔大王の裁きを受け、成仏して極楽浄土に行けるかどうかが四十九日に決まり遺族の忌明けとされ、百日目に卒哭忌(そつこくき)として悲しみから卒業します。
イスラム教徒は死後24時間以内に土葬され、法要は三日目、七日目、四十日目、百日目に行われますが、仏教みたいに初七日に三途の川のほとりに到着するとか、四十九日で忌明けするとかいう意味はありません。
イスラム教は仏教と違って輪廻転生はなく、一回限りの命を全うし、死んだ後はアッラ-の神の審判の日に復活し、来世である天国か地獄に行くそうです。
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多宗教国家インドネシアで死んだ後の天国への帰り方と地獄への逝き方
インドネシア人が無宗教の日本人に「死ぬとき不安じゃないの?」と聞くのは「現世で何をすれば地獄じゃなく天国に帰れるのかを知らないで過ごすなんてあり得ない」と言っているわけで、イスラム教もキリスト教も天国に帰るか地獄に逝くかの審査は似たようなものだが天国に行っても格差はあるとのことです。
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イスラム教の法要は親族以外の一般人にもオープンに行われる(acara doa bersama yang terbuka untuk umum)のが一般的で、故アニ夫人の初七日も本来Open Houseとして行われる予定でしたが、ユドヨノ氏の悲しみようがあまりにも大きく(sangat berduka)関係者のみでのお祈りとなったようです。