インドネシアの製造業DXは、製造日報の電子化によるペーパレス化から始めることで高い効果が得られます。現場のミスや転記漏れを減らし、情報のリアルタイム共有が可能になるほか、i-Reporterのような直感的なツール導入により、現場文化の変革と継続的な改善が促進されます。 インドネシアの生産管理システム インドネシアの市場環境は製品寿命の短命化による多品種少量生産、需要変動、人件費上昇、非日系企業との競争など益々厳しくなっており、生産管理システムの導入やIoTによる設備の稼働管理など、生産性向上によるコスト削減を目標としたDX化が推進されています。 続きを見る
インドネシアでの製造業DXはペーパレス化から始めるとコスパが高い
近年、グローバルで進む製造業のデジタルトランスフォーメーション(DX)ですが、ASEAN各国の中でも、タイやベトナムでは国家主導のスマートファクトリー政策(IoTなどのIT技術を使い、生産性向上や品質向上を実現し、第四次産業革命を起こそうというインダストリー4.0を具現化したもの)が後押しとなり、現場DXが着実に進展しています。
インドネシアでもメーキングインドネシア4.0(製造業の高付加価値化と国際競争力強化を目的としたインドネシアとしての優先取り組み事項)を掲げ、製造業全体の生産効率をDXによって向上させようとしていますが、800社以上と言われる多くの日系製造業が進出しているにもかかわらず、現場レベルでのデジタル化はまだ発展途上であり、特に中小規模の工場では、いまだに紙の製造日報やExcelの管理帳票が主流であり、『情報の見える化』すらできていない現場も少なくありません。
そんな中、多くのインドネシアの製造業で導入が進められているのが製造日報の電子化を起点とした現場改革であり、これはDXの本質が『現場と経営をつなぐデータ活用による継続的な改善』と言われることから極めて効果的であり、ポストコロナ禍の製造現場で物理的接触とモノの共有の機会を最小限に抑えるためのペーパレス化とIoT化が推進力となりました。
私がインドネシアの製造業DXならペーパレス化から始めるのが導入効果が最も高いと考える理由は以下のとおりです。
- インドネシアの製造現場で頻繁に起こる記入ミス・Excelへの転記漏れ・タイムロスを削減できる
- 毎日使われるため、現場全体への影響が大きい
- 製造実績・異常・不良などの重要な情報が集約されている
- クラウド化により、リアルタイムでの情報共有・分析が可能になる
ペーパレス化が叫ばれて何十年も経つのに、現場での紙フォーマットへの手入力と、Excelへの書き写し作業がなくならなかった理由は、シンプルにタブレットなどの端末への入力が、紙フォーマットにボールペンで手入力する作業に比べて、使い勝手が悪いからだと考えています。
インドネシアで実践するi-Reporterを使った製造現場改革
使い勝手がイマイチな上、開発導入コストばかりがかかっていた製造日報電子化を、現場のインドネシア人オペレーターにも直感的に操作しやすい画面(UI)で簡単に開発できるツールとしてi-Reporterがありますが、インドネシアではi-Reporterをベースに製造業向けにカスタマイズした製品を展開しているSI企業もあります。
インドネシア語にKEPO(Knowing Every Particular Object)というスラングがあるように、元来『新しもの好き』気質の高いインドネシア人にとって、現場へのタブレット端末の導入は支障になるものではなかったはずであり、どうしても紙ベースの運用と比べて煩わしさを感じてしまうことが、ペーパレス化をの障害となっていましたが、i-Reporterによってタブレット上での操作性が、紙と同じ感覚で現場で直感的にできるようになりました。
現場に設置されたタブレット端末を通じて、紙で記録していた作業実績や日報・点検記録などをデジタルで即時入力・送信・蓄積できる仕組みが簡単に実現でき、現場のインドネシア人スタッフは、各工程の稼働実績や不良情報をその場で入力し、データはリアルタイムで管理者に共有されます。
現場スタッフのデジタル活用意識の向上は大きな成果ではありますが、i-Reporterによるタブレット上での製造日報電子化は、単なる『道具の入れ替え』ではなく、現場文化そのものの変革へとつながっていき、蓄積されたデータを元にした工程ごとの見える化と改善活動の加速が進んでいきます。
日報の電子化はDXのスモールスタートとして非常に効果的で、設備のIoT化やAIによる分析など、大きな投資が必要なDXの前に、まずは小さな日常業務を変えることが、組織全体を巻き込む第一歩となり、特にインドネシアでは、ITリテラシーの格差や紙文化の根強さといった課題がありますが、i-Reporterのよういに現場に寄り添ったツールの導入は、そのハードルを着実に下げてくれます。
インドネシアの日系製造業にとって、日報電子化は単なる業務効率化ではなく、現場と経営をリアルタイムにつなぐ『見える化』基盤となり、その先のトレーサビリティ強化、品質改善、設備保全などの製造業DXへとつながり、成功させるために何よりも大事なことはインドネシア人スタッフの理解と参加にあることは間違いないと思います。