インドネシア語が日本人にとって習得し易いと言われる理由の一つとして、英語のように単語が繋がることで表記と発音が異なる難しさがないことが考えられ、書いてあるとおりにローマ字読みすればお互いに理解し合えるという点で、独立時に多民族多宗教国家を一つにまとめるための公用語として、多数派のジャワ語ではなくスマトラ島からマレー半島で使用されていた少数派のマレー語(Bahasa Melayu)を選定したことは先人の英断だったと思います。
スマトラ島とマレー半島の間のマラッカ海峡が、太平洋とインド洋を結ぶ海上交通上の要衝であるのは今にはじまったことではなく、世界中の人種と民族が集まり交易を行ってきた地域であり、上下関係による敬語等の表現がないマレー語は、意思疎通に便利な言葉でした。
インドネシア最大人口のジャワ人が話すジャワ語は、相手の社会的地位を推測できなければ円満なコミュニケーションが成立しないというくらい敬語の使い方難しいと言われており、国是となる「多様性の中の統一」支える言語としては、多民族を横断し宗教や経済力で階級格差を作らない民主的なマレー語のほうが適していたということになります。
英語と同じく基本5文型に近い構造でありながら、単語同士がくっついて発音が変わることがないという決定的な違いにより単語の独立性が高くなり、アルファベットという表音文字で構成されていながらも、漢字のように単語が特定の意味をもった表意文字的に機能するため、順番を入れ替えても意味は推測できる可能性が高くなります。
日常会話やWhatsAppでのメッセージを通した実践中心でインドネシア語を習得すると、動詞に接頭辞や接尾辞を付けることが疎かになり、またRとLやNとNGなどスペルが曖昧なままになってしまい、「喋れるけど書けない」という状態に陥りますが、これは実際には「正しく喋れていない」ということであり、これに気付いてからはじめて、今まで簡単だと思っていたインドネシア語を難しいと感じるようになります。
インドネシア語は外国人からすると「間口は広く入りやすいが、奥に進むと闇が深くてどこに居るのかわからなくなる」ような伏魔殿のようなもので、ある程度喋れるようになったと自信がついても、達成感がなく上達した気分になれない不思議な言語だと感じます。
当ブログでは僕と同じようにインドネシアに関わり合いを持って仕事をする人が、日常生活やビジネスの現場で出会うさまざまな事象のコンテキスト(背景)の理解の一助となるようなインドネシア語についての記事を書いています。
インドネシア語は世界で一番習得しやすい言語と言われる理由
「インドネシア語は単語の順番を入れ替えても通じる」と言われる一方で、インドネシア語と同じく基本5文型からなる英語の場合は、単語の順番を入れ替えると通じないのは、英語は「ゲラウト」みたいに単語の繋がりも含めた音が繋がって一つのカタマリとして意味をなすからです。
- 読みと発音が同じ(ローマ字読み)
ローマ字読みで単語同士がくっついて発音が変わることがないということは単語の独立性が高く、多少順番を入れ替えても意味が通じる。言語はリーディング(ライティング)が出来てもヒアリング(スピーキング)が難しいのは、順番で難易度が上がる。日本語は「子音+母音」でひらがなとカタカナを覚えれば絵本が読め、単語を覚えれば意味が理解できる。インドネシア語はアルファベットを覚えれば絵本が読め、単語を覚えれば意味が理解できる。英語はアルファベットを覚えても絵本が読めないし、単語を覚えても意味が理解できない。 - 時と条件を表す副詞節で未来は現在時制、仮定は過去時制というややこしいルールがない。
If・When・After・Beforeは接続詞であり、英語は副詞節内の時制は条件付で時制が変化するが、インドネシア語には時制がないので変化しない。
⇒理屈では接続詞を使った時と条件を表す副詞節内の時制は無視、主語も省略してしまえば、インドネシア語を話すのと同じ感覚で文法的には怪しい英語を話せる。 - 単語を後ろに繋げていく関係詞のルールがゆるい。
英語もインドネシア語も似た言語構造だが、yangを使った繋げ方のルールが圧倒的にあいまいで楽。英語で「前置詞+関係代名詞 」とかややこしいルールをyangでつなげるだけで「関係詞何使おうか」とか悩まずすむし「先行詞が関係詞の中でダブった」とかあせらなくて済む。 - 冠詞と定冠詞がない。
英語の前置詞句を構成するのは前置詞・定冠詞・不定冠詞・名詞・接続詞・形容詞の6種類の単語だが、インドネシア語には定冠詞(the)と不定冠詞(a/an)がないので、前置詞句を構成する単語の種類は4つに絞られることで、順列組み合わせから考えても3語以上から成る前置詞句のバリエーションが圧倒的に少ない。
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インドネシア語は世界で一番習得しやすい言語と言われる理由
インドネシア人が英語を習得し易いのは表音文字であるアルファベットで表現され同じ基本5文型で構成されているからです。日本人がインドネシア語を習得し易いのは、単語の独立性が高く前後に繋がって発音が変わることがなく、前後入れ替えても意味が通じるからです。
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インドネシア語は接頭辞と接尾辞が単語のバリエーションを増やす
インドネシア語は接頭辞と接尾辞がついて意味や用途のバリエーションを増やしていく言語であり、英語の基本5文型に近い構造から成り立ち、動詞がmeから派生する接頭辞で始まる場合は、第3文型・第4文型・第5文型になり、その場合の接尾辞はkanだったりiだったり何も付かなかったりしますので、例外を考えながら理屈で変化のパターンを覚えるよりも単語として暗記するほうが上達の近道だと思います。
日本語からインドネシア語への翻訳した文章がかっこよく見えるコツの一つは、文法の教科書どおりに「動詞の接頭辞(meとかmenとかmeng)をキチンとつける」だと思うのですが、接頭辞がmeとかmemとかmengに変わるのは無理なく発音しやすいように自然に変化した結果であって、文法書に書いてある分類の理屈はあくまで後付けでしかなく、必然的に分類に収まりきれない例外が発生します。
日常生活で単語の後ろに接尾語「nya」が使われるときには、特に「誰が」とか「何を」とか特定するわけでもなく、単に対象をはっきりと明示するために使われているだけのように思います。
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インドネシア語は接頭辞と接尾辞が単語のバリエーションを増やす
インドネシア語は表記どおりにローマ字読みする言語であり、単語の独立性が高く前後の単語が繋がって発音が変わることはありません。単語の順番を入れ替えても通じやすいことから、インドネシア語能力は語彙量に比例すると言われる傾向があります。
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日本人を悩ませるインドネシア語の3つの発音
「喋れるが書けない」とは「正しく喋れていない」ということであり、インドネシア語の勉強にスランプがあるとすれば、それは「喋れるけど正しく書けない」と感じたとき、もっと言うと上達したと得意になっていた矢先に「実際には正しく喋れていなかった」ことに気づいて落ち込むときかもしれません。
英語の難しさは表記と読み(ヒアリング)が異なること、つまり発音(Pengucapan)の難しさであって、発音が簡単なインドネシア語を母国語とするインドネシア人にとっては、50音という「母音+子音」から構成される日本語は、インドネシア語以上に発音が簡単と感じるわけです。
逆に言うと日本人にとっての発音の難しさは、英語よりもインドネシア語のほうがはるかに少ないので、赴任してくる日本人は日々の実践の中で語彙数を増やし、帰任する頃には一定のレベルのインドネシア語使いとなります。
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日本人を悩ませるインドネシア語の3つの発音
インドネシア語の日常会話に不自由しないが正しいスペルで書けないと気付いたら、実際には正しく喋れていなかったことになります。英語は表記と読みが異なる発音に難しさにあり、インドネシア語は表記通りのローマ字読みである点が日本人には学習しやすいと言えます。
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インドネシア語で目的語に重点を置いて受動態で書くこと
インドネシア語を書いたり話したりする際に重要な事柄の一つが能動態(aktif)と受動態(pasif)をキチンと使えるようにすることであり、特に受動態で書くことで、敢えて話のポイントを明確できる点がインドネシア語の優れた点だと思います。
会話をする際に何が起こったかは明確でも、それがどういう主体によってなされたかの説明が若干必要な場合がありますが、インドネシア語の受動態では、まずは動詞で起こった内容を説明した上で、olehを続けてゆっくりと主体について落ち着いて説明できるというメリットがあります。 インドネシア語で目的語に重点を置いて受動態で書くこと 受動態は英文法の基本5文型のうち、目的語のある第三文型(S+V+O)、第四文型(S+V+O+O)、第五文型(S+V+O+O)でのみ使用されますが、インドネシア語で目的語に重点を置いて受動態で書くことで相手にポイントが伝わりやすくなります。 続きを見る
関係詞から欧米とアジアの言語文化の違いが垣間見える
中学の英語の授業でおそらく誰もが苦労したと思われる関係詞(関係代名詞と関係副詞)の複雑な解説を、まるっと簡単にインドネシア的適当さでおおらかに包み込んでくれるのが「yang」という言葉であり、おおげさに言うと英語とインドネシア語の違いを超えた、欧米とアジアの文化の違いが感じられる文法ルールだと思います。
日本語であれば大して意識せずとも日本語で考えられますが、現代文の問題に出てくるような難解な日本語を読む場合には、自分の母国語である日本語に対してですら、最大限に意識を集中して読まないと頭に意味が入ってきません。
これが英語やインドネシア語などの外国語であるなら、なおさらある一定のレベルまで意識して努力しないと、その言語で考えることは難しいのは当然であり、紙に書いた文章(リーディング)ですらこうなのですから、さらに話言葉(ヒアリング)は何をかいわんやです。
情報を後ろに繋げていくという意味で英語もインドネシア語も似た言語構造を持っていますが、繋げ方のルールが圧倒的にあいまいで楽なのがインドネシア語であり、これがインドネシア語は世界で一番学習し易い言語と言われる理由の一つではないかと考えます。
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関係詞から欧米とアジアの言語文化の違いが垣間見える
疑問詞の塊が名詞を修飾するのが関係詞であり、たまたま先行詞が場所、時間、理由、方法だったら関係副詞でそれ以外なら関係代名詞と呼ばれ、前置詞+関係代名詞は関係副詞に置き換えられます。この複雑なルールをインドネシア語の「yang」という言葉で表現することが可能です。
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インドネシア語で旧字体表現が使用される際の意図
日常生活の中でもインドネシア語の旧字体表現は「Dj」以外にもときどき目にすることがあり、懐古的な雰囲気を醸し出したり愛着を持っていることを表現したりするために、敢えて現代風の書き方に変えないことがあります。
言葉は『言霊』というくらいですから、現代においても旧字体表現が残るということは、現代表記では意図を伝えきれないほどにその言葉に宿る力が強いわけで、旧字体が使われていた歴史的背景に思いをはせると、インドネシア語の勉強がより楽しくなるのは間違いないです。 インドネシア語で旧字体表現が使用される際の意図 インドネシア語の旧字体の変化例としてSoeharto(oeがuに変化)、Jogjakarta(jがyに変化、Tjinta(tjがcに変化)Moesjawarah(sjがsyに変化)、Djakarta(Djがjに変化)、Njonja(NjがNyに変化)があります。 続きを見る
インドネシア語のプレゼンで間を持たせる接続詞と前置詞
動詞の語幹に接頭辞や接尾辞がついて伸び縮みしたり、発音しやすいように語幹の頭文字を消したりするのがインドネシア語の大きな特徴の一つであり、このルールに慣れさえすれば、後は日常会話の中で単語を増やしていくだけで自然に上達していくのですが、プレゼンやMCをやる際に重要になるのが接続詞(kata sambung)だと思います。
私が最初にインドネシア語の演説に感動したのが、スハルト政権を引き継いだハビビ大統領の演説であり、どこか落語にも似た豊かな表情と抑揚のある言葉が、当時インドネシア語を勉強したての自分にとって、この人みたいにインドネシア語を喋れるようになりたいものだと思わせました。 インドネシア語のプレゼンで間を持たせる接続詞と前置詞 インドネシア語のプレゼンテーションで、敢えてゆっくり発音することで間を持たせて、次の台詞を考えるのに有効なのは、dan kemudian、maupunなどの接続詞と、secaraとdenganを使った前置詞句です。 続きを見る
インドネシアのメディアで使用される国のニックネーム
日本のメディアがバリ島のことを「神々の棲む島」と、商業的に付加価値を付ける意図で仰々しいニックネーム付きで紹介することがあっても、国名をニックネーム付きで呼ぶことはあまりないように思いますが、インドネシアのメディアの文章中では、抒情的な雰囲気を醸し出させるためか、国名の後ろにニックネーム付きで表記するケースが多々あります。
インドネシアは自国に対して「エメラルドの赤道」という豪華絢爛な表現をしているのに対して、永遠のライバルであるマレーシアに対しては「お隣の国」という何ともそっけない呼び方をしているのが、周辺国との友好度具合を如実に表しています。
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インドネシアのメディアで使用される国のニックネーム
インドネシアのメディアでは、抒情的な雰囲気を出すために国名の後ろにニックネームを付けることがあり、海外で一般的な呼び方をインドネシア語訳にしたものや、インドネシア独自の視点で付けた呼び方もありインドネシアがどのように海外の国々を見ているかが分かります。
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新型コロナウィルス関連のインドネシア語
単語は覚えても使わないとすぐ忘れるので、時事問題に関するインドネシア語はテーマごとに点である単語を線で繋いで覚えると連想記憶が働きやすいと言えます。
ニュースに出てくる単語を見て「どこかで聞いたことがあるけど微妙に違う」という既視感を感じることが多いのは、インドネシア語が基語を元に名詞や動詞に変化し、状況によって動詞の接頭辞が省略されたりするため、前に見聞きした単語と実際に微妙に違うケースが多いからです。