私はインドネシアで製造業システムの仕事をしていますが、受注オーダーの数量や納期の変更が頻繁に発生するため、生産計画の修正が間に合わず、原材料の発注に影響が出ることがあります。サプライチェーンでは在庫が少なすぎると受注残リスクが高まり、多すぎると在庫金利がかかるというトレードオフの問題があります。この問題を解消するために、社内の生産設備の供給能力を考慮した需要予測を立てるシステムの構築について事例を元にご説明します。
サプライチェーンにおける在庫管理は、供給能力を考慮した需要予測システムの構築が重要です。
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インドネシアの生産スケジューラ
生産計画と負荷計画は密接に関連しており、数量ベースでの確認が求められる。PSI表を用いて生産数量、消費数量、在庫数量を対比することが重要。計画は実績と比較して進捗を確認し、在庫数量に基づく予測でリセットされる。
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この記事でわかること
- インドネシアでは製品寿命が短くなり、需要予測が難しくなっています。
- AsprovaとHanaFirstを活用し、業務の効率化を図っています。
- サプライチェーンの小ロット化が進み、在庫コストが増加しています。
- 需要予測の精度向上が在庫コスト削減に寄与します。
- APSを用いて生産計画を最適化し、キャッシュフローを改善します。
会社案内
弊社の業務内容についてですが、生産スケジューラーAsprovaに加えて、独自に開発した業務開発テンプレートHanaFirstがあります。業務の標準化が可能なのは会計など総務系の一部業務に限られ、生産管理、在庫管理、受発注管理などは、顧客と仕入先というサプライチェーン全体の関係で決まるため、システムの標準化は難しいと考えています。
そのため、地道に業務要件をまとめてシステムに実装していく必要がありますが、HanaFirstはその過程をテンプレートを使って効率化することを目的としています。
インドネシア製造業にとっての課題(問題意識)
- 経済成長に伴い国民の所得水準が上がり、SNSを中心とした情報ツールの発展もあって、最終消費者の嗜好が多様化しています。一方で、モノと情報の洪水の中で飽きが来るのも早く、製品寿命が短くなっています。
- その結果、サプライチェーン上での需要予測が難しくなり、他国のライバル社の品質向上による競争の激化もあって、どうしても受発注数量は小ロット化し、頻繁にオーダ変更が発生するようになります。
- 小ロット化、オーダ変更による負担はサプライチェーンを流れるなかで乗数的に波及効果を及ぼし、適正在庫コントロールを難しくし、機会損失を防ぐあまり保守的になり、どうしても在庫コストがかさみがちになるという問題があります。

まず最初にインドネシアの日系製造業が直面している課題を確認し、問題意識を明確にします。一般的な製品ライフサイクルは導入期、成長期、成熟期、衰退期という運命をたどりますが、国が経済成長するにつれて所得水準が上がり、消費者の好みはより多様化し細分化していきます。それに合わせて製品寿命は短くなっていきます。
日本の状況を見てもわかりますが、モノと情報が溢れる環境で人間は飽きっぽくなります。特にInstagramやFacebookなどのSNSの普及で新しい情報が次から次へと出てきて、伝わるのはあっという間で飽きられて次のプロダクトに目移りするのもあっという間です。
インドネシアは2億6千万人の人口があり、そのうちインターネット利用人口は1.4億人で、ほとんどがスマホからの利用です。利用目的はSNSというケースが多いため、情報の拡散スピードは速く、その分流行廃りのサイクルも短くなっています。
ライフサイクルの長い少品種大量生産から、短い多品種少量生産へのシフトが進んでいます。必然的にサプライチェーン全体で購買・生産・出荷の小ロット化の傾向が強くなります。製品のライフサイクルが短くなり、顧客側からの受注単位が小ロット化するのに応じて、自社側でも仕入先への発注単位が小ロット化し、サプライチェーン全体の中でモノの寿命の短命化、小ロット化が発生します。
将来の需要予測の確度が下がっていくため、内示でもらっていた情報に対して納期変更や数量変更などオーダ変更が頻発し、計画の見直しが必要になります。オーダ変更はサプライチェーン全体に乗数的に波及し、仕入先からの原材料の納期遅れによるライン停止リスクが高まります。それを防ぐためにあらかじめ在庫をキープする必要があり、在庫コストがかさんでいくという悪循環に陥ります。

インドネシアの内需拡大に伴い、受注オーダ数は増加していますが、顧客層は日系以外のローカル企業にも広がり、1オーダ単位の数量は減少する傾向があります。以前はメインの顧客に対して納期遅れせずきっちりと納品することが至上命題でしたが、サプライチェーンの中を流れるロットサイズが小さくなっている状況で、顧客の数が増え納品先が分散される傾向があります。
中国、韓国、香港のメーカーがインドネシアにも進出し、インドネシアメーカーの品質も向上しています。小ロット短納期のオーダだからといって断れない事情があります。インドネシアの中小企業支援を担当する役人が、道路を走る車の90%が日本車なのに、日本の部品メーカーの現地調達率は極端に低いと指摘しています。
韓国の場合、完全失業率が日本の2.5%に比べて倍くらいあるため、背水の陣で来ている人も多く、日系企業にとってのビジネス環境は益々厳しくなっています。
このようなビジネス環境の変化に加えて、最終消費者による需要の変化はサプライチェーンを通って乗数的な波及効果として、生産側に多品種・小ロット・短納期の負荷をかけるようになりました。

製品寿命が短命化することで未来の生産予測が付きにくくなると、適正在庫をキープするのが難しくなります。社内サプライチェーン上にある部門の担当者は出荷遅れ、生産遅れ、供給遅れを心配して保守的になります。出荷担当者は需要が不確実なほど多くの在庫を持ちたがり、生産担当者は需要が不確実なほど多くの生産をしたがり、購買担当者は需要が不確実なほど多くの発注をしたがる傾向があります。
仕入先からの原材料の納品遅れは生産ラインが止まるので絶対に避けたいところですが、どうしても仕入先の都合、もしくは自社からの無理な発注条件等で原材料の入荷遅れが発生します。仕入先での調達遅れや設備不良で自社への納品が遅れる場合はどうしようもありませんが、サプライチェーン上でのモノの流れの小ロット化に伴う購買業務の複雑化により、仕入先に無理なスケジュールや納期変更を依頼するなど、自社に起因する問題もあります。
原材料の納品遅れによって生産計画の組み直しが必要になり、ライン停止による生産性の低下が発生し、救出挽回のための残業、土日出勤で固定費が増加し、最終的な会社の損益が悪化します。

限られた設備で多品種少量に対応するためには、工程ラインを細分化し共用ラインを増やし稼働率を上げる必要があります。ただしオーダ毎の製造リードタイムが短くなり、多品種小ロットのオーダで、金型交換や洗浄などの段取り替えが増加します。その結果、品目、数量、ラインの混み具合により、初工程投入から完成までの製造リードタイムにばらつきが発生し、納期回答の精度悪化の原因になります。
現場ではオーダとの紐付きが見えず、優先順位を意識して作業順序を決定するのが困難になり、納期遵守率が悪化します。そして資材不足回避のために、余裕を加味しすぎた資材計画を作ってしまうことにより、資材・仕掛品の在庫が増えます。

こちらはサプライチェーンのモノの流れや自社工場の生産に直接関係する問題ではありませんが、日系企業がインドネシアで直面する深刻な問題の一つが年々上昇する最低賃金の問題です。ジャカルタ・ブカシ・カラワンという西ジャワ工業ベルト地帯の賃金水準が、中部ジャワの2倍ほどにもなっており、これを見るとみんな出稼ぎに来たくなるのも理解できます。
インドネシアの場合、労働者の権利が手厚く守られているとよく言われますが、労働法(UU No 13 Tahun 2003)の中で一番やっかいなのは、雇用関係の終了時の退職手当、勤続功労金、受け取るべき権利の損失補償金など、クビにするときに支払うべきお金が多く乗っかっているところです。

インドネシアに進出している外国企業のうち、業種別では製造業が一番多く、ブカシ・カラワンの工業団地が集中するJawa Baratが一番多く、国別ではシンガポール、日本、中国、香港、韓国の順になっています。中国や韓国の場合はお国を捨てて一か八かで来ている人が多く、5年の任期満了後に国に帰ることを保障されている日本とは、元から気合が違うと思います。それくらいインドネシアのビジネス環境も厳しくなってきているということです。

日本だとJSOX(2006年に成立した金融商品取引法の中の内部統制に関するルール)の中のIT統制で、内部統制による社内コンプライアンスの遵守を評価する業務監査が重要視されていますが、インドネシアではザルの状態です。
サプライチェーンの中での需要予測と在庫コスト(分析視角)
- サプライチェーンマネージメントとは、自社を下流の原材料メーカーと上流の最終消費者の間の中心と考え、モノが付加価値を加えられながら流れる過程を管理することです。需要と供給の変化は拡大しながら連鎖します。
- 部署間で計画業務を同期させ一元化することで、需要予測の精度を高め、在庫期間を短縮し、機会損失を防ぎ在庫コストを抑える適正在庫を実現する必要があります。
- 在庫を構成する製品のコストは製造原価と販管費から成りますが、財務会計上目に見えない在庫金利コストが発生し、将来の会社損益を圧迫するオフバランスの負債と言えます。
- 在庫コストを負担してでも自社工場内に在庫が必要な理由は、製造リードタイムと受注リードタイムの差を埋めるため、ボトルネック工程を止めないためのバッファーのためです。
- 適正在庫をキープするには、社内サプライチェーンの中で意思決定が働くPO発行と製造指図発行を精度の高い需要予測を元に行う必要があります。
- 需要予測が100%または供給能力が100%なら在庫ゼロで済みますが、現実には供給能力には限りがあるため、最低限の安全在庫を持ちながら需要に応え、経営計画から販売計画、生産計画、購買計画を最短で繋がるよう調整します。これが供給能力を考慮して需要予測を行わないと不可能な課題です。
- その結果、サプライチェーンの能力は応答性・柔軟性・信頼性の3点で測定されます。

次に、前章で挙げた多品種少量化生産による負荷増大、オーダ変更頻発による計画修正負荷増大、適正在庫コントロールの難しさというインドネシアの課題に対応するための分析視点を提示します。これは「サプライチェーン全体の中の自社工場」の位置を表したもので、自社工場から見て通常は上流または下流に行くにつれてプレイヤーの数は多くなる傾向があります。
サプライチェーンとは、資材あるいは製品を調達し、それらに付加価値を加えて完成させ、顧客に納入するという原材料から最終ユーザーまでの一連のプロセスの繋がりです。自社工場を原材料まで繋がる上流のサプライチェーンと、最終ユーザーまで繋がる下流のサプライチェーンの中心と捉え、これらの管理体制を論理的に整えることをサプライチェーンマネージメントといいます。

サプライチェーンの川上から川下へ向かう供給の変動と、川下から川上へ向かう需要の変動は、拡大しながらサプライチェーン上を連鎖していく、むちのしなりのような動きはブルウィップ効果と呼ばれています。具体的には原材料メーカーの入荷の遅れは生産側、物流(出荷)側、最終消費者側に及ぼす影響は拡大しながら及んでいき、最終消費者側の需要の変化は物流側、生産者側、原材料メーカーへ、拡大しながら影響していきます。

サプライチェーンの中心に位置する自社工場内のモノと情報の流れをコントロールするのが、各部署ごとの担当者によって需給調整された計画です。このようにレベルごとに需給調整に基づく計画がありますが、一般的にはこれらの計画は独立して作成され、お互いにすり合わせをすることはありません。その結果、部署としては最適な計画であっても会社全体としては最適なものになっていない可能性があります。これを部分最適化といいます。

ここまでモノの流れに注目してきましたが、ここではサプライチェーン上で流れるモノに発生するコストについて考えてみます。製品を製造するにあたって直接材料費、直接労務費、製造間接費などの製造原価が発生し、製品になった後の保管費や広告費などの販管費が発生します。
これらの費用は財務会計上費用計上されますが、在庫を保有することによるお金の発生しない資金負担を、保有期間に応じて、金利という仮想の資金コストに変換した、管理会計上の在庫金利コストと呼びます。

在庫金利コストは、在庫金額分のキャッシュによる資金繰りへの悪影響、在庫額分のキャッシュを銀行に預けた場合に得られた金利の機会損失、在庫を製造するために購入する原材料を調達するための借入れ金利、自社倉庫スペース占有による機会損失コスト、減損・減耗・デッドストック化のリスクなど、会計仕訳の発生しない目に見えないコストですが、これらは将来目に見えるコストに変わり、会社の収益を悪化させる要因となるオフバランスの負債と言えます。

ここまで書くと在庫がたいそうな悪者扱いですが、在庫コストを負担してでも自社工場内に在庫が必要な正当な理由があります。社内に在庫を持つ理由の一つは製造リードタイムと受注リードタイムの差を埋めるためで、通常はお客さんから受注をいただいてから出荷までの受注リードタイムは、製造開始から製造終了までの製造リードタイムより短いため、リードタイムの差を埋めるための保険として在庫を持つ必要があります。

製造業のオペレーションの中でサプライチェーン上の数量を調整する意思決定をする場面が2箇所あります。一つがPO発行時、もう一つが製造指図発行時です。「機会損失 (受注残) と在庫コスト(在庫過多)はトレードオフの関係」にあるというのは、PO発行時には在庫切れでライン停止は怖いが、買い過ぎて余っても困るというもの。製造指図発行時には出荷に間に合わないとマズイが、作り過ぎて余っても困るというものです。

極端な話、需要予測が100%正確なら納期からさかのぼってリードタイム分早く準備をはじめればよいので供給能力(リードタイム)はどんなに長くてもよい。また供給能力が100%(瞬時に納品)なら需要予測は不要。すなわちどちらの場合も在庫ゼロが実現します。
とは言っても現実には制約上、供給能力100%も不可能なので、最低限の安全在庫を保ちながら需要に応えられるような需給調整が必要であり、経営計画から販売計画、生産計画、購買計画を最短で繋がるよう調整します。その結果、サプライチェーンの能力を測る指標は応答性(リードタイム)、柔軟性(変更への対応)、信頼性(納期厳守)の3つになります。

経営、販売、生産、購買という部署ごとの需給調整によって作成された部門最適な計画は、必ずしも前後の部署にとっても最適であるとは限らず、その結果前後の部署との間に待ち時間が発生します。全体最適とは部署ごとに作成した計画をシームレスに繋げるということです。
供給能力を考慮した計画業務のシステム化(本論)
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- 部門ごとの供給能力を考慮し生産計画を立てることは、経営計画から販売計画、生産計画、購買計画が無理なく繋がる全体最適化された計画を作ることです。
- 計画業務をシステム化する際、工程間の供給能力が異なるとタクトタイムも異なり、一番遅いボトルネック工程のタクトが工場の生産能力になります。
- リードタイムずらしの結果、特定の日に負荷オーバーとして山積みされた作業は、別の日にずらすか別の設備にずらすかのどちらかになり、これを自動的に行うのがAPSの機能です。
- 固定リードタイムの場合、工程の能力を考慮しないためアバウトな計画になりますが、サイクルタイムベースの計画は工程の能力を考慮しながら工程間が無理なく繋がる全体最適化された計画を作ります。
- 固定リードタイムずらしに基づく無限能力山積みをMRPによるキャパシティプラン、サイクルタイムベースの有限能力山崩しをMRPIIによるサイクルタイムプランといいます。
インドネシアの日系製造業が抱える多品種少量化生産の負荷やオーダ変更頻発による計画修正負荷、適正在庫コントロールの難しさに起因して、サプライチェーンの中で仕入先と顧客との関係において、機会損失リスクと在庫金利コストというトレードオフの問題があります。これを解消するために生産設備の供給能力を考慮した需要予測が必要です。ここではそのようなシステムをどのように設計するかを考えます。
供給能力にはムラがあり、前工程(成形やプレス)と後工程(ASSYや溶接)ではタクトもロットサイズも異なります。前工程で完成した中間在庫を後工程で消化する形態になりがちで、段取り時間を減らすにはロットサイズを大きく、在庫を減らすにはロットサイズを小さくする必要があります。前後工程のキャパと段取り時間の発生を考慮した生産計画が全体最適になります。

生産計画を立てる際には工程でのリードタイムを考慮して日ずらししていくと思いますが、単純にリードタイムずらしした結果、特定の日に本来の設備能力を超えた作業が山積みされる可能性があります。一般的にこれがMRP(資材所要量計画)によるリードタイムずらしと言われます。
負荷オーバーした作業は別の日にずらすか、別の設備にずらすかの2通りしかありませんが、設備の負荷を考慮しながら日程計画を行う全体最適化志向の先進的スケジューリング手法をAPS(Advanced Planning and Scheduling)といいます。日本語では「先進的計画&スケジューリング」と呼ばれ、紹介する生産スケジューラーAsprovaはAPSをシステムで実現するツールです。

「機械キャパと段取りを考慮してリードタイム短縮」するためには、固定リードタイムではなく、この設備を使った場合には1個あたり何秒かかるかというサイクルタイムを設定する必要があります。
固定リードタイムの場合、工程の能力を考慮しないためアバウトな計画になりますが、サイクルタイムベースの計画は工程の能力を考慮しながら工程間が無理なく繋がる全体最適化された計画を作ります。

供給能力にはムラがあるとありましたが、工場全体の生産能力はボトルネック工程の生産能力になるため、生産計画もボトルネック工程の稼働率を最大化した上で前後工程の計画を立てることで全体最適化された計画が作成されます。

ボトルネック工程を中心に計画を立てることにより、ボトルネックの前に滞留する仕掛品在庫がなくなり、ボトルネック工程のタクトに合わせた生産に必要な仕掛品がジャストインタイムに流れていきます。

供給能力を考慮することで工程間が無理なく繋がり、製造リードタイムが短縮されることにより工程内在庫が削減され、自動的に在庫金利コストが下がるため、キャッシュで持てる期間が増え、会社の損益に貢献します。

これまでの内容をシステム的に表現するには、固定リードタイムずらしに基づく無限能力山積みをMRPによるキャパシティプラン、サイクルタイムベースの有限能力山崩しをMRPIIによるサイクルタイムプランといい、APSがそれに該当します。

受注から購買まで一気通貫システムの事例(総括:事例)
- ここまでで、供給能力を考慮しボトルネック工程の稼働率を最大にするために、1個あたり何秒というサイクルタイムベースで生産計画を作ることで、リードタイム短縮、在庫削減、会社のキャッシュフロー改善に繋がるという話をしてきましたが、ここからはこの流れをどのようにシステム化するかという話になります。
- 最新の生産計画作成業務の流れは、受注情報から出荷計画を作成し、製品の完成日ベースの月次生産計画を作成します。これを部品構成表に基づいて所要量計算を行い、在庫を引いた後の正味所要量をリードタイム分ずらした製造予定表を作成します。最後に負荷オーバーした作業を日ずらし、または別の設備に割付直して平準化します。
- このマニュアルによる計画作成業務の中で、営業と生産管理部のコミュニケーション不足により生産側本位の生産計画になりがちなこと、平準化作業をしても待ち時間が多い部分最適化された計画になります。
- 全体最適化された計画を作成するには、受注から製造・購買まで一気通貫で管理し生産に流れを作る必要があります。

前章までの総括として示したサイクルタイムベースの有限能力で負荷平準化した計画によってリードタイム短縮、在庫削減、キャッシュフロー改善を実現するシステムの実装例を提示します。
まず営業から受注・内示情報をもらいExcelにまとめ、出荷を見据えた生産計画を作成し、部品構成表を元に工程で製造すべき部品と原料の必要数を計算し、在庫を引いた正味の必要量を計算し、工程ごとにロットを製造リードタイム日数分だけずらした製造予定表を作成し、負荷オーバーした日の製造数量を平準化するという流れかと思います。

まず1つ目は営業側で顧客のニーズを満たすための出荷計画に対して、PPIC担当者が製造現場だけを見て自分の裁量で計画を作ってしまい、部分最適化になりがちです。その結果、営業から顧客への状況報告と納期回答に時間がかかったり、オーダの数量と納期の変更、特急オーダへの対応に時間がかかるという問題が発生します。
2つ目はExcelを使った生産計画作成において仕方のないところですが、前後工程の生産能力や負荷状況を考慮せずに、自工程にとって最適なロットまとめを行い、単純に製造リードタイムずらしした結果を元に負荷平準化を行うと部分最適化になりがちで、その結果後工程の対応が間に合わず待ち時間と在庫を増やす可能性があります。

工程管理システムは工程ごとに管理を分けているので、リードタイムを短縮するのに限界があり、各工程に工場内で仕切りがあると、工程間の在庫は山積みとなり生産リードタイムが長くなるので、工程間を隔てる壁がモノの流れと情報の流れを滞留させ、リードタイムが緩くなり仕掛在庫が増える要因となります。
これが生産工程を串刺し状につなげ、生産に流れを作ることの重要性です。



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- 月次生産計画作成負荷:3日⇒3時間へ短縮。需給調整会議直前に夜遅くまで残業していたのがなくなった。
- 計画変更への対応:以前はオーダ変更による計画の再調整は出来なかったが、生産スケジューラー導入後には納期変更と数量変更に伴いリスケジュールを実行し精度の高い計画を維持。
- 工程作業の見える化:何日出荷分の生産をしているかが現場で判る。ルートチケット(現品票)をパレットに貼付することで、システム上の繋がりと物理的な工程間の流動が一致するようになった。
- 制約条件を加えたスケジュール:同一週内納期のオーダについてはまとめて生産する計画をシステムから自動生成。
同一週内納期のオーダについてはまとめて生産する計画をシステムから自動生成。自社生産設備能力を考慮した精度の高い需要予測ができる。
生産スケジューラーAsprovaの機能
Asprovaは生産スケジューリングにおいて重要な役割を果たします。基本機能については2018年12月のセミナーで詳しく説明されています。

Asprovaの品目テーブルには、材料の標準単価、仕掛品と製品の賃率、能率、稼働率、配賦率を設定します。これにより、標準単価を計算し、販売予測に基づいた原価予算を算出し、売り渡し価格の決定に役立てます。
- 直接材料費:標準単価x投入予定数量
- 直接労務費:賃率x能率x生産予定数量
- 減価償却費:稼働率x能率x生産予定数量
- その他経費:配賦率x生産予定数量
Asprovaで所要量展開を行うと、製品と仕掛品の生産予定数量、予定直接作業時間、原材料の投入予定数量が計算されます。ただし、Asprovaには予算から賃率や配賦率を自動計算する機能はないため、Excelを用いて計算した結果を品目テーブルに設定します。これにより、来期の販売予測に基づく原価予算と1個あたりの標準単価が計算され、売渡価格のシミュレーションが可能です。

事例:インドネシアのTMMIN(PT Toyota Motor Manufacturing Indonesia)やADM(PT Astra Daihatsu Motor)では、Asprovaを用いて生産ラインでのかんばん流動を管理しています。翌月内示をインポートし、所要量展開計算で品目別に正味所要量を算出します。これを稼動日数で割り、日当たり必要数を求めます。さらに、マスタに設定されたかんばんL/T、加工L/T、安全在庫日数、収容数を基にかんばん枚数を計算し、毎月の流動中かんばん枚数を調整します。
要点:生産ラインでのかんばん流動管理には、需要予測に基づいた正確な所要量計算と、適切なかんばん枚数の調整が重要です。
よくある質問|インドネシア製造業の課題と解決策
本稿の内容に沿って、繰り返し出る問いを短く整理します。
インドネシア製造業が直面する主な課題は何ですか?
インドネシア製造業は、経済成長に伴う消費者の嗜好の多様化と製品寿命の短命化により、需要予測が難しくなっています。また、小ロット化と頻繁なオーダー変更がサプライチェーン全体に波及し、適正在庫のコントロールが難しくなっています。これにより、在庫コストが増加し、競争が激化しています。
サプライチェーンの最適化にはどのようなシステムが必要ですか?
サプライチェーンの最適化には、供給能力を考慮した需要予測システムが必要です。これにより、経営計画から販売計画、生産計画、購買計画をシームレスに繋げることが可能になります。具体的には、Asprovaのような生産スケジューラーを用いて、工程間の供給能力を考慮した計画を立てることが求められます。
Asprovaの導入による効果は何ですか?
Asprovaの導入により、月次生産計画作成の負荷が大幅に軽減され、計画変更への迅速な対応が可能になります。また、工程作業の見える化が進み、納期遵守率が向上します。さらに、制約条件を加えたスケジュールの自動生成により、生産効率が向上し、在庫削減やキャッシュフローの改善が期待できます。

