収益改善方法を会計的視点やサプライチェーンの視点から検討し、ITインフラを活用して業務改善を行う方法を考えます。業務効率を改善するためには、業務データの流れや構造を変える必要があり、システム化は避けられません。
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インドネシアの会計システム
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この記事でわかること
- 減価償却費はキャッシュ流出がないため、利益を増やす要因となります。
- コロナ禍でのキャッシュ増加策として、損金を増やし課税所得を減らすことが有効です。
- 在庫金利コストを削減するため、ジャストインタイム生産が推奨されます。
- ITインフラの改善には、業務フローと作業内容の把握が重要です。
- 原価計算の見直しでは、標準単価の利用が収益改善の指標となります。
会計的視点からの収益改善
会計の世界では「利益と減価償却でキャッシュを作る」とよく言われます。これは、企業のキャッシュの源泉が利益と減価償却の二種類あるという意味です。減価償却費はキャッシュの流出がない費用であり、P/L上の当期利益額よりも実際には減価償却費分だけ利益は多いということです。物理的にキャッシュが生み出されるというよりも、減価償却費が利益から引かれることで課税所得が減少し、税負担が下がるため現金が増えるという意味です。
コロナ禍の影響で売上が落ちる中で、キャッシュを増やすためにやれることは以下の4つです。
- 損金を増やし課税所得を減らす(節税)。
- 売上からの債権の支払いサイトを短縮し、売上原価からの債務の支払いサイトを遅らせる。
- 売上原価と販管費を減らして本業の利益(営業利益)を増やす。
- 土地建物売却など営業外の現金収入を増やし、社内イベントの中止などで営業外の現金支出を減らす。
利益は「売上-費用」であり、本業の売上が増えない以上、利益を増やすには費用を削ることになります。実際にジャカルタでも従業員解雇、外注契約解除、給与カット、オフィススペースの解約などで固定費を削減する動きが出ています。
インドネシア全体では4月までに解雇PHK(Pemutusan Hubungan Kerja)された従業員の数は700万に達すると言われ、オフィスの移転や拡張にブレーキがかかった結果、ジャカルタの新しいオフィスビルの入居率は70%程度だと言われています。
サプライチェーンから考える収益改善
原材料や仕掛品、製品などは、将来キャッシュとなるものが棚卸資産として倉庫に滞留しており、資金繰りへの悪影響や、銀行に預けた場合に得られる金利の機会損失、原材料調達のための借入れ金利という意味で収益を圧迫します。

この在庫金利コストを支払ってまで社内に在庫を持つ理由は二つあります。一つはお客さんから受注をいただいてから出荷までの「受注リードタイム」が、製造開始から製造終了までの「製造リードタイム」より短いため、リードタイムの差を埋めるための保険としての意味です。もう一つは工場全体の生産性を決定するボトルネック工程を止めないためのバッファー在庫としての必要性です。
事例:米中経済摩擦や新型コロナの影響でサプライチェーンリスクの高い中国からの輸入を見直し、現地調達化することで必要なタイミングで発注を掛けてすぐ入荷できる体制の構築は、生産の繁忙期に取り組むことは難しく、コロナ禍で生産が落ちている今だからこそ可能な業務改善かもしれません。
材料が入荷したタイミングで製造開始し、完成したタイミングで出荷するというジャストインタイムの生産、多能工化や内段取りの外段取化(機械を止めないように事前に段取りを済ませること)などで、人員削減後の限られた作業員で生産効率をアップさせる生産計画を策定することが収益改善に繋がります。
ITインフラの視点から考える業務改善
ITインフラ構築においては、現状の業務の流れと内容を把握し、問題点の改善方法を検討し、システムへの実装を行います。コロナ禍の影響でIT投資が見送られる中でも、業務分析と業務改善については、自社内でお金をかけずに取り組むことが可能です。業務分析で必要なものは以下の2つです。
- 業務フロー:全体の流れを俯瞰するために必要
- 作業内容:業務フローで書ききれない業務を構成する作業ごとの内容を把握するために必要
業務改善を考える際には、ECRS(イクルス)の原則である排除(Eliminate)、統合(Combine)、交換(Rearrange)、簡素化(Simplify)の4つの考え方に基づき、最小の作業負荷で最大の成果が出るように業務の流れを再構築し、標準業務フローSOP(Standard Operation Procedure)を作成します。
作業者の仕事のやり方を変えるには、業務データの流れや構造を変える必要がありますが、当面はExcelで対応するとしても、業務効率改善にはシステム化が避けられません。
ポストコロナ禍の企業の現場では、ウィルス感染の機会を最小化するために物理的接触とモノの共有の機会を最小限に抑えるためのペーパレス化とIoT化が進むと同時に、既存業務の見直しと改善のためのIT導入の流れが出てくると考えています。
コストセンターからプロフィットセンターという発想の転換
毎月の生産でいくらコストがかかったかを計算する原価計算(実際原価)業務は、インドネシアではシステム化されている事例が少ないです。細かく計算すれば時間がかかり、どんぶり勘定だと見たい情報が見られません。コロナ禍の影響で時間に余裕ができた今、収益改善という観点から原価計算のやり方を見直す絶好の機会です。
収益(利益)とは「売上-費用」です。費用という一面からだけ見ると、費用ばかりがかさんでいるように見える事業部門でも、実際にはその費用が多くの売上を上げる原動力になっている場合があります。収益改善の観点から原価計算の切り口を見直す際には、製造原価だけでなく出荷ベースの売上原価に販管費まで集計したものを売上から差し引くことで、営業利益が見られる管理会計的要素が重要です。
- 製造原価=月初仕掛品在庫+当月発生製造費用-月末仕掛品在庫
- 売上原価=月初製品在庫+当月製造原価-月末製品在庫
- 売上総利益(粗利)=売上-売上原価
- 営業利益=売上総利益-販管費
収益改善のための原価計算では、製造原価から売上原価へ、売上総利益(粗利)から営業利益へ、そのためにはコストセンターからプロフィットセンターへという発想のグレードアップが必要です。
事例:インドネシアの場合、収束しないコロナ感染拡大、変動が激しい為替と金利、毎年高騰する最低賃金UMK、サプライチェーンの力関係、輸出入時の通関手続きの不明瞭性、税務リスクなど、費用を押し上げるリスクが多くあります。一方で、生産年齢人口が従属人口の2倍以上ある人口ボーナス状態が2030年まで続くという売上を押し上げるポテンシャルもあります。
ある意味でハイリスクハイリターンとも言えるこの国で、売上も費用もサプライチェーンの中をモノとカネと情報が市場原理で流れる経済活動の中で決定されるため、収益を上げ続ける難しさがあります。ポストコロナ禍での収益改善のための方策とは、コスト削減だけでなく、原価を正しく把握し、高付加価値事業への資本集中を進め、生産性を向上させるという事業構造の転換までを含めて検討されるべきです。
原価計算の見直し
受注単位の原価計算(個別原価計算)とは異なり、マスプロダクションの原価計算(総合原価計算)の場合、収益改善のための切り口として最下位の集計項目がコストセンターであり、部門や工程、機械、製品グループなどであることが一般的です。現状の原価計算業務の流れと内容を知るために、最初に確認したい点は以下の3つです。
- 変動費(直接材料費)の単価として何を使うか?
⇒購入時の価格(個別)
⇒標準単価
⇒総平均単価(総合) - 固定費(労務費・製造間接費)をどう計算するか?
⇒標準単価
⇒実際発生額をコストセンターに集計し按分:工数・稼働時間の集計が必要。 - 原価計算の基準は?
⇒投入数量ベース:何を(子)どこに(親)に投入したかという実績の紐付きが必要。
⇒生産数量ベース:部品構成表(BOM)の標準使用数x標準単価
固定費の計算で標準単価を使用する場合、労務費は賃率(1分あたりいくら)x能率、製造間接費は配賦率(1個あたりいくら)を事前に計算しておく必要があります。業務の流れを再構築する際の基準は「最小の作業負荷で最大の成果が出る」でしたが、変動費と固定費の計算に手間のかかる実際発生額をどこまで採用するかの基準は「それが収益改善の指標となりうるか」の1点のみです。
この目的に合致しないのであれば、実際原価計算の事前に準備できる標準単価を極力利用すべきだと考えます。
よくある質問|収益改善の方法
本稿の内容に沿って、繰り返し出る問いを短く整理します。
会計的視点での収益改善方法は何ですか?
会計的視点での収益改善方法には、損金を増やして課税所得を減らす、売上からの債権の支払いサイトを短縮する、売上原価と販管費を減らして営業利益を増やす、土地建物売却などで営業外の現金収入を増やす方法があります。これらの方法により、キャッシュフローを改善し、企業の財務状況を強化することができます。
サプライチェーン視点での収益改善方法は何ですか?
サプライチェーン視点での収益改善方法には、在庫の適正化やジャストインタイム生産の導入があります。これにより、在庫金利コストを削減し、資金繰りを改善することができます。また、現地調達化を進めることで、サプライチェーンリスクを低減し、効率的な生産体制を構築することが可能です。
ITインフラを活用した業務改善方法は何ですか?
ITインフラを活用した業務改善方法には、業務フローの見直しやECRSの原則に基づく業務の再構築があります。これにより、業務の効率化を図り、ペーパレス化やIoT化を進めることができます。これらの取り組みは、ポストコロナ禍における企業の競争力を高めるために重要です。

