インドネシアでは食卓から出る生ごみを再利用する資源循環の取り組みが行われており、新商品の開発や新ビジネスの立ち上げ支援により、住民の生活基盤の確立を目指し、次世代の子供達に引き継いでいくというエコシステムを見据えて取り組まれているのが特徴です インドネシアのビジネス インドネシア市場でのビジネスで重要な要素は価格とブランド、コネの3つと言われますが、必ずしもこれらを持ち合わせない日本人はどのように戦えばよいのか。これはインドネシアに関わり合いを持って仕事をする人にとっての共通の問題意識かと思います。 続きを見る
最初にインドネシアでごみの捨て方に驚く
1997年10月、僕がインドネシアに来たばかりの頃、日常生活の中でカルチャーショックを受けたことの一つが、MacDonaldやKFCなどのファーストフード店で、食べた後の包装紙や飲み残しのコーラが乗ったトレイを、テーブルに放置していくのが当たり前だったことであり、一時帰国する際にはこの習慣に体が慣れてしまっているせいで、実家の近所の丸亀製麺で思わずトレイを置きっぱなしで帰ろうとして、顰蹙を買いそうになったことがあります。
それでも日本での習慣から来る後ろめたさに耐えきれず、自分でごみ箱に捨てようものなら、日本人の先輩在住者から「清掃担当者の仕事を奪うから日本の価値観で行動してはいけない」としたり顔で諭されると、ある意味筋が通っているだけに納得せざるを得ないのですが、オフィスや家のごみ箱に生ごみ、プラスティックごみ、ビール瓶、乾電池まですべてまとめてポイッと捨てることも、分別業者の仕事を奪わないために仕方がないとでも言うのか、などと考えてしまいました。
僕が東京で生活していた頃は、ごみ捨てルールは今ほど厳しくなく、せいぜい可燃と不燃に分別し、カラスに漁られないようにごみ袋はきちんとネットの下に配置するくらいのレベルでしたが、今では可燃と不燃のみならずスプレー缶、カセットボンベ、ペットボトル、古紙、びん、缶にまで細分化され、やれペットボトルのラベルを剥がせだの、ごみ袋の空気を抜けだの、ごみの日以外にごみを出そうものなら監視員から玄関口に突き返されるくらい厳しくなりました。
インドネシアで「清掃員や分別業者の仕事を奪わないように」という理屈は分からないでもないのですが、それを言い出したら公園のごみ箱にごみを捨てる行為は、道端を歩きながらリサイクルごみを収集するおじさん(大きな袋を抱えて先がかぎ状になった鉄の棒を持って歩いている人)の仕事を奪うからポイ捨て止めるべからずというのは屁理屈でしょうかね?
ジャカルタの無機廃棄物リサイクル業者は仕分け洗浄、裁断後、工場に販売または輸出され再利用
・PET(ポリエチレンテレフタレート)系アクアボトル⇒ポリエステル糸
・PP(ポリプロピレン)系アクアグラス⇒ビニール紐や米袋
・HDPE系(ハイデン)系シャンプーボトル⇒箒や成形品
※上ツイートの「無機廃棄物」は「プラスティックごみ」が正しいです。炭素中心の物体という意味で生ごみもプラスティックも同じ有機物になります。
プラスティックごみ収集おじさんは、集めた資源ごみをリサイクル業者に持ち込み、アクアグラスがRp.10,000/Kg前後、アクアボトルがRp.5,000/Kg前後で引き取ってもらうことで生計を立てていますので、インドネシア人のごみ捨てマナーが向上するのは困ると思うのですが、実際にはごみ捨てに対して意識の高い人は昔からいたわけで、20数年前の僕の運転手さんですら「子供がゴミをポイ捨てようとしたら厳しく叱るようにしている」と言っていたくらいです。
近年では公共の場や企業等のごみ箱も可燃と不燃、うちの住宅地(クラスター)でもオレンジ色のNON ORGANICと緑のORGANICに分けられ、分別という意識が世間一般に広まりつつあるのは、経済成長に伴い人々のエコに対する意識が高まっているからに他なりません。
インドネシアの資源循環への取り組み
可燃ごみについて食卓から出る生ごみ(有機ごみ)を積極的に再利用する資源循環の取り組みが実施されており、ごみの再利用にとどまらず新商品の開発や新ビジネスの立ち上げ支援により、住民の生活基盤の確立を目指し、次世代の子供達に引き継いでいくというエコシステムを見据えて取り組まれているのが特徴です。
1.有機ゴミ持参でポイントを貯めて種、肥料、園芸用具と交換し、自宅で栽培した野菜を園芸場で買い取り市場で販売。
2.新商品の開発支援。
3.新ビジネスを生み出し成長を支援。
4.生物学を学ぶ子供達が自然を理解するために開放。
またエコ化の波は作物栽培のための肥料にも及んでおり、生産性を高めるために必要不可欠な化学肥料の多用によって、土壌有機物含有量が減少し、土壌構造の損傷や環境汚染の原因となることからも、土壌肥沃度を維持向上させるための有機肥料が注目されており、身近にある有機ごみを原料として微生物や菌の分解作業を利用したのが家庭微生物有機肥料(MOL=Mikroorganisme Lokal)です。
1.バケツに空気と液体排出用パイプ取付け
2.洗米水に砂糖、椰子液、ケチャップ、蜂蜜、果物の皮を混ぜてタペの臭いがするまで1週間ほど待つと菌が出来る。
3.ゴミを刻んで装置に捨て菌を散布。
4.堆肥を取り出す。
家庭微生物有機肥料には、微量ながらも植物の発達や代謝機能を適切に維持するために必要な微量栄養素(ビタミン、ミネラルなど)や、植物の成長のために多くの量が必要な多量栄養素(タンパク質、炭水化物、脂質など)、土壌の品質を改善するバクテリアが含まれており、土壌分解剤、有機肥料、有機殺菌剤として使用できます。
各家庭での微生物有機肥料の作り方が確立され普及すれば、材料は無料で入手できる上に、家庭菜園への適用も簡単であるため、ジャカルタやスラバヤなど大都市から毎日排出される大量の有機廃棄物処理問題解決のために役立ち、有害な化学物質を含まず環境に優しく、土壌と作物の品質を改善する効果が期待されています。
自宅で有機肥料(コンポスト)を作ってみた
実際に微生物有機肥料であるコンポストを自給するための微生物(バクテリア)であるMicroorganism 4(EM4)はTokopediaでRp.23,000で購入できます。
下の写真ではコンポスター本体としてのバケツの白い取っ手に少しこぼれているのが見えますが、微生物EM4は茶色い液体で土壌中の栄養素の吸収、供給に非常に有益な発酵細菌、発酵真菌、放線菌、光合成細菌、リン酸可溶化細菌、酵母などの生きた微生物の混合物が含まれています。
EM4は無毒で土壌汚染を引き起こさないため園芸作物、米、作物などのプランテーション作物への使用に非常に適しているとのことで、説明書きにある具体的な効能は以下のとおりです。
- 土壌の物理的、化学的、生物学的特性の向上。
- 植物の生産量を増やすことで農業やプランテーションの生産の安定性を維持する。
- 土壌有機物を発酵させて分解を加速し、環境に優しい農産物の質と量を確保する。
- 土壌に有益な微生物の多様性を高める。
- 土壌中の栄養と有機化合物を増やす。
- 根を強くし根粒を増やす。