「小さく起業する」というのは、個人が脱サラして自己資金を元手に国内資本会社を設立することを指します。従業員の給料やオフィス賃料などの固定費をなるべく抑えながら、仕入から売上までの一連の流れを回し、適切に毎月法人所得税や付加価値税などを納税することが求められます。
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インドネシアの会社設立と就労ビザ取得|NIB・OSS登録・eVISA制度まで
インドネシアでの会社設立には、インドネシア人役員の設置と各種証明書の取得が必要です。2018年にOSSシステムが導入され、会社設立手続きが簡素化されました。2024年からeVISAシステムにより、オンラインで就労ビザC312が取得可能…
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この記事でわかること
- インドネシアでの起業には、国内資本投資会社(PMDN)を設立することが一般的です。資本金は50jutaから可能ですが、外国人就労ビザには1milyarが必要です。
- インドネシアでの会社設立には、インドネシア人ディレクターとコミサリスが必要で、外国人は株主にはなれません。資本金の25%を現金で用意する必要があります。
- 法人所得税は外形標準課税PP23が適用され、売上の0.5%を納税します。年間売上が4.8Milyar以下の中小企業に適用され、3年間のみ有効です。
- VAT課税事業者(PKP)として登録することで、日系企業との取引が円滑になります。売上に対する11%のVATを計上し、仕入時のVATを控除します。
- 社員を雇う際には、個人所得税PPH21の源泉徴収や社会保障制度BPJSへの加入が必要です。解雇は困難であり、固定費を抑えることが重要です。
インドネシアで小さく起業する動きが益々加速していく
インドネシアで起業を考える方々とメールでやり取りしたり、実際にお会いすることがあります。東南アジアの中でも、日本から近いフィリピンのセブ島や微笑みの国タイランドではなく、遠いインドネシアを選ぶ方々は、インドネシア語学科を卒業していたり、短期留学の経験があったりと、過去にインドネシアと何らかの関わりを持っていることが多いです。
業種としては、WEBシステム開発、WEBメディア運営、WEBマーケティングといったWEBを主戦場とするICT(Information and Communication Technology)ビジネスが多く見られます。そのため、インドネシアでのWEBビジネスのトレンドや、インドネシア人のスマホユーザーの嗜好の変化など、その人のビジネスモデルに関わる質問を受けることがありますが、私の専門外のため、有益なアドバイスは難しいです。
ただし、インドネシアで仕事をするために必要な条件や手続きに関する事務的な話であれば、経験に基づいた参考情報程度のアドバイスは可能です。
「小さく起業する」とは、個人が脱サラして自己資金を元手に国内資本投資会社(Penanaman Modal Dalam Negeri=PMDN)を設立し、労務費やオフィス賃料などの固定費を抑えつつ、仕入から売上までの流れを回し、適切に法人所得税や付加価値税を納税することを指します。
タイやベトナムの動きを見ても明らかですが、インドネシアの経済成長に伴い、内需としてのインドネシア人やインドネシア在住者を対象としたビジネスを展開する主体として、日本の会社のインドネシア現法ではない、全くの個人が小さく起業する動きが益々加速していくと予測されます。
事例:ある日本人起業家は、インドネシアでの短期留学経験を活かし、現地の文化や言語に精通していることを強みとして、小規模なWEBマーケティング会社を設立しました。
要点:過去の経験やスキルを活かして現地の市場に適応することが、小規模起業の成功につながります。
インドネシア国内資本投資会社(ローカルPT)を作る
インドネシアのジャカルタでオフショア開発の拠点作り
資本金は多くないが、アイデアと体力には自信がある起業家予備軍がインドネシアでビジネスを立ち上げるにはどうすればよいでしょうか。ローカルPT(株式会社)なら50jutaで設立できます。日本に居ながらインドネシア人パートナーを動かしてビジネスを行うことは理屈では可能です。ただし、インドネシアで外国人一人の就労ビザを取得するためには、資本金1milyar(約800万円)が必要で、当座預金への最低払い込み資本金250juta(法定資本金の4分の1)の現金を用意する必要があります。
オフショア開発の拠点としてジャカルタにシステム会社を設立し、インドネシア側にシステムの仕様についてコミュニケーションが取れるパートナーがいて、初月から売りが立つようであれば、この資本金規模の会社でも回っていくと思います。中国やベトナムの人件費が高騰し過ぎたことにより、オフショア開発の拠点としてインドネシアのジャカルタやバンドゥンが注目を浴びていますが、成功の可否は日本側とインドネシア側のコミュニケーションを取り持ち、日本側の仕様をインドネシア側のプログラマーにブレイクダウンできるブリッジSEの存在だと思います。
日本とインドネシアのどっちが会社を作りやすいか
インドネシアにローカルPT(株式会社)を設立して、会社をスポンサーとして自分のビザを取る場合に必要な、会社の最低資本金の額を聞かれることが多いのですが、1人あたり1milyar(約800万円)が望ましいとされており、以前に比べてハードルが2倍に上がっています。日本では新会社法により新規に有限会社自体が設立出来なくなり、その代りに株式会社ではあるけれども株式の譲渡は会社の承認が必要(株式譲渡制限会社)という、実質個人商店と同じようなオーナー経営者の法人を作ることができるようになりました。
- 資本金1円
- 取締役1名で設立可能(以前は3名)
- 取締役会の設置も任意
- 決算公告義務なし
一方で日本人がインドネシアでローカル株式会社設立するためには、インドネシア人のディレクター(代表取締役)とコミサリス(監査役)という最低2名のインドネシア人パートナーが必要になります。さらに会社をスポンサーとして自分の就労ビザを取得するためには、法定資本金1milyar(約800万円)のうち払込資本金として必要なキャッシュは25%の200万円くらいが必要になります。かつて「日本とインドネシアどっちが会社を作りやすいか」という議論が日本人同士の飲み会の席でなされることがありましたが、新会社法施行以降であれば圧倒的に日本のほうが簡単であると言えます。
ローカルPTとして外国人を雇うための条件
テレビのニュースでマレーシアや香港から強制退去させられるインドネシア人はTKI(Tenaga Kerja Indonesia)と呼ばれますが、インドネシアで働く我々外国人労働者はTKA(外国人労働者)と呼ばれ、雇用にあたって会社が守るべきいくつかの条件があります。
- 法人(Badan Hukum)として法的な書類を備えていること。
- 特定の分野(人事など)の仕事に外国人を就かせないこと。
- SIUP(Surat Izin Usaha Perdagangan)商業許可証に規定される法定資本金が最低1mlyarが望ましい。
そして会社はTKAとして保証する外国人に対して以下の書類を準備する義務があります。
- Rancangan Penggunaan TKA(外国人労働者)/ RPTKA:RPTKA(外国人雇用計画)書
- Rekomendasi pengguaan tenaga kerja asing/ TA 01:スポンサーレター
- Telex Visa Izin Tinggal Terbatas/ VITAS:ビザ発給許可(テレックスビザ)
- Izin Mempekerjakan Tenaga Asing/ IMTA:就労許可証
- Kartu Izin Tinggal Terbatas/ KITAS:滞在許可証
- Surat Tanda Melapor/ STM:居住区管轄の警察への届け出
- Surat Keterangan Kependudukan Sementara/ SKKPS:住民登録証
- Laporan Keberadaan TKA(外国人労働者)/ Lakeb:外国人雇用報告証
- Exit Re-entry Permit (izin keluar masuk Indonesia bagi tenaga kerja asing/ TKA):再入国許可証
事例:ある日本のIT企業がインドネシアに進出し、現地のパートナーと協力してオフショア開発を成功させた事例があります。彼らは日本側の仕様をインドネシアのプログラマーに的確に伝えるために、ブリッジSEを配置しました。
要点:異文化間でのビジネス成功には、現地のパートナーとの円滑なコミュニケーションと、文化的な違いを理解した橋渡し役が重要です。
インドネシアのPT以外の会社形態
日本では新会社法の制定以前、会社設立時に有限会社か株式会社かを選ぶ必要がありましたが、株式会社のみとなっています。同様に、インドネシアでも以前はCV(有限会社・合資会社)かPT(株式会社)の選択肢がありましたが、PTのみが選択可能です。日本では起業の門戸を広げるために柔軟性を持たせる措置が取られましたが、インドネシアでは国内産業保護のために外資規制を厳格化する措置が取られています。
UD(Usaha Dagang)個人商店
ジャカルタではあまり見かけませんが、バリ島では家具屋や雑貨商、建築資材屋などでUDの看板をよく見かけます。UDは法人格がなく、資本金もないため、損害賠償請求は無限責任で個人の財産に及びます。
CV(Comanditaire Venotschap)有限会社・合資会社
以前、バリ島で家具の輸出を行っていた会社がCV形態でしたが、CVで外国人を雇用することができなくなり、外国人がCVで起業することはなくなりました。
PT Tbk(Terbuka)
PT Tbkは株式が新規公開IPO済みの会社であり、インドネシア証券取引所(BEI)で売買可能です。
事例:インドネシアのある企業が、PT Tbkとして株式を公開し、資金調達を成功させたことで事業拡大を実現しました。
要点:会社形態の選択は、事業の成長戦略や法的制約に大きく影響を与えます。
法人でなく個人事業主(フリーランス)として仕事ができるか?
インドネシアで外国人がフリーランスとして働くためには、インドネシア人配偶者をスポンサーとした家族帯同ビザ(Index C317)でIMTA(外国人雇用許可)を取得する必要があります。しかし、IMTAを申請できるのは資本金がRp.1Milyar以上の法人(Badan Hukum)のみです。法人はRPTKA(外国人雇用計画)を労働移住省に提出し、承認を得る必要があります。その後、労働移住省からの推薦状を申請し、承認されれば技能開発基金(DPKK)に1,200ドルを振り込むことでIMTAが取得できます。この1,200ドルはインドネシアの税外収入となります。
技能開発基金(DPKK)は、外国人労働者利用補償金基金(DKPTKA)に名称変更されました。これは、現地の雇用を奪うことへの補償や外国人が働く環境を提供する手間への補償と解釈されます。
インドネシアで小売店やカフェを開く場合でも、日本のような個人事業主という形は認められず、設立した法人をスポンサーとして就労ビザ(Index C312)を取得する必要があります。
事例:ある日本人がインドネシアでカフェを開業しようとした際、個人事業主としての登録が認められず、法人を設立して就労ビザを取得する必要がありました。
要点:インドネシアでは外国人が個人事業主として働くことは難しく、法人設立が必要です。
最初に決めるべき会社についての基本事項
弊社はジャカルタの東15kmに位置する西ブカシ地区(Bekasi Barat)にローカルPT(株式会社)を設立しました。会社を設立する際には、まず会社名、役員、株主と持ち株比率などの基本事項を決める必要があります。
ローカルPTの場合、外国人は役員の一人になることは可能ですが、Chairman(Komisaris)とDirector(Direktur)の最低2名のインドネシア人役員が必要です。また、外国人は株主(Pemegang Saham)にはなれません。
- 会社名
会社名に英語は使用できません。
- 事業内容
- 資本金
外国人を1人雇用するためには資本金1miliyarが必要です。労働移住省(Departemen Tenaga Kerja dan Transmigrasi)にRPTKA(外国人雇用計画)を提出し、ビザ発給推薦状(TA-01)の発行を申請します。入国管理局(Imigrasi)にビザ発給許可書(VTT)を申請し、シンガポールのインドネシア大使館でIndex C312を取得します。インドネシア入国後にITASオンラインの手続きを行い、労働許可証(Ijin Menggunakan Tenaga kerja Asing=IMTA)を申請し、DKP-TKA(外国人労働者雇用補償金)1200ドル/年を支払います。
- 会社の住所
ビルの管理事務所と締結済みの賃貸契約書(Perjanjian Sewa Menyewa)をもって、会社の住所を管轄する地方政府(Pemerintahan Daerah)から、会社所在地証明(Domisili Perusahaan)を発行してもらう必要があります。
- 株主と持ち株比率
役員と株主は同じである必要はなく、株主は法人でも構いません。全員の納税者番号NPWP(Nomor Pokok Wajib Pajak)と住民登録証e-KTP(Kartu Tanda Penduduk)のコピーが必要で、Notaris(公証人)に発行してもらう会社設立証明書(AKTA Pendirian)にはe-KTPの住民識別番号NIK(Nomor Induk Kependudukan)が記載されます。
- 役員
インドネシア人のChairman(Komisaris)とDirector(the executive officer)が必要であり、Directorは日常業務に携わる人になります。
役員と株主の名前は、司法・人権省(Kementerian Hukum dan Hak Asasi Manusia)から発行される決定書SK(Surat Keputusan)Pendirianや、Notarisが発行する会社設立証明書AKTA Pendirianに記載されます。地方政府から発行される会社登録証TDP (Tanda Daftar Perusahaan)や営業許可書SIUP(Surat Izin Usaha Perdagangan Menengah)には、会社の運営の中心となるDirekturの名前だけが登録されます。
事例:ある日本企業がインドネシアに進出する際、現地の法律に従い、インドネシア人の役員を選任し、適切な資本金を用意することでスムーズに会社設立を行いました。
要点:インドネシアで会社を設立する際は、現地の法律に従い、必要な役員や資本金を準備することが重要です。
行政手続き上で法人として必ず取得すべき書類
法人設立において、まずオフィスの賃貸契約を完了させた後、法務管理局にて会社名を申請し確定させる必要があります。その後、Notaris(公証人)に会社設立証明書(AKTA Pendirian)を作成してもらい、法務管理局から司法・人権省の大臣による決定事項記載書(SK)を取得します。
また、会社所在地を管轄する地方政府(Pemerintahan Daerah)から会社所在地証明書(Domisili)を取得し、さらに地方政府から会社登録証(TDP)と営業許可書(SIUP)を取得します。税務署からは納税者登録番号(NPWP)を取得する必要があります。AKTAやSKには会社の正式な住所が記載されないため、Domisiliの取得はTDPやSIUP取得のタイミングに合わせることが重要です。
- Cek Nama Perusahaan
正式名称はBukti Pesan Nama Perseroan Telah Memperoleh Persetujuan Menteri(大臣による会社名の承認証)であり、会社名が法的に有効かどうかを法務管理局Ditjen AHUで確認し、承認されたことを証明する書類です。 - AKTA Pendirian Perseroan Terbatas
会社設立証明書であり、AKTAとはNotarisが作成する法的拘束力を持たせるための証拠書類です。 - SK(Surat Keputusan Pendirian)
会社設立について、司法・人権省の大臣による決定内容書類です。 - Domisili Perusahaan
会社所在地証明書で、正式名称はSurat Keterangan Domisili Usaha/Perusahaanです。 - TDP(Tanda Daftar Perusahaan)
会社登録証であり、Domisiliの住所を管轄する行政政府にて発行されます。 - SIUP(Surat Izin Usaha Perdagangan Menengah)
営業許可書であり、TDPと同じくDomisiliの住所を管轄する行政政府にて発行されます。 - NPWP (Nomor Pokok Wajib Pajak)
納税者登録番号であり、初期登録時には付加価値税(VAT)課税対象会社の登録がなされていないため、NPWP上の納税義務のある税金は所得税PPHのみがチェックされています。
会社登録証(TDP)と営業許可書(SIUP)は、投資調整庁(BKPM)が運営する事業許認可システム(OSS=Online Single Submission)で事業基本番号(NIB)を取得すれば自動的に取得できます。これらの書類が揃えば、ペーパーカンパニーとしての法人の設立は完了です。
事例:ある企業が新規に法人を設立する際、地方政府からの会社所在地証明書(Domisili)を取得するのに時間がかかり、結果として営業許可書(SIUP)の取得が遅れたため、予定していた営業開始日を延期せざるを得ませんでした。
要点:法人設立においては、各種証明書の取得スケジュールを事前に計画し、遅延を防ぐために必要な手続きを早めに進めることが重要です。
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インドネシアのOSSシステムで起業手続きが簡素化
2018年7月から、インドネシアの起業手続きはOSSシステムで一元化されました。事業基本番号(NIB)の取得が義務化され、TDPやAPIの代わりになります。OSSシステムは、リスクベースアプローチ(RBA)に更新され、事業リスクと規模…
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外国資本投資会社(PMA)とインドネシア国内資本投資会社(PMDN)
まず、インドネシアで外国資本投資会社(Penanaman Modal Asing=PMA)を設立する場合の最低資本金はRp.10 Milyar(1円=Rp.130で計算して7,700万円)です。当座預金に払い込む最低金額(最低払込資本金)が4分の1であったとしても、2,000万円近くのキャッシュが必要になります。新卒入社の会社で経験を積んで独立起業しようとする20代後半のスタートアップが自己資金で用意できる金額ではありません。
インドネシアの銀行が外国人、しかも個人に開業資金として2,000万円を融資してくれる可能性はゼロです。そもそも外国人には不動産所有権がないので、融資を受けるための担保すらない状態です。いっそのこと金利の低い日本で借りて、金利の高いインドネシアの開業資金にすれば、安い金利で資金調達できて一石二鳥ではないかと考える人もいるでしょう。
ところが、インドネシア中央銀行(Bank Indonesia)からすると、外国人に勝手に外貨を持ち込まれることで金利のコントロールが乱されては困ります。そのため、国内の一般事業法人に対する外貨規制として、外貨建てオフショア債務(海外からの外貨借入)へのヘッジ義務という外貨規制がかけられています。
具体的には「外貨建て流動資産-外貨建て流動負債」の20%を、コストのかかるデリバティブ(為替先物・通貨スワップ・オプション取引)でリスクヘッジしろ、ということです。これは「金利政策に支障が出るから民間が勝手に海外から金を借りてくれるな」と言われているのと同意です。
銀行から融資が受けられないとなると、ベンチャーキャピタル(VC)はどうでしょうか。確かにインドネシアはe-Commerceブームですが、ICT関連のスタートアップをインキュベーションするビジネスエコシステムが本格的に形成されていくのはまだ先の話です。そもそも個人レベルでベンチャーキャピタルから資金を引き出せるほどのイノベイティブなプロダクトを持っている人は私のところに相談には来ません。
というわけで、インドネシアで外国人が「小さく起業」するには、役員としてインドネシア人の奥さん(または旦那さん)とその家族1名を取締役(Direktur)と監査役(Komisaris)に据えて、国内資本投資会社、要はローカルPTを設立するのが一番手っ取り早いです。
ローカルPTがRPTKA(外国人雇用計画)書RPTKAを申請するためには、外国人一人当たり最低1Milyar(1円=Rp.130で計算して770万円)の法定資本金が必要です。その4分の1の200万円を最低払込資本金として当座預金に振込めば済むことになり、これなら個人の貯金から十分捻出できる額です。
ただし、PMDNの場合、外国人は役員にはなれるが株主にはなれないため、振込んだ最低払込資本金も、利益処分時の配当(Dividend)も、法的にはインドネシア人株主の所有となります。親族以外のインドネシア人を役員に据える場合は、乗っ取られないように何らかの契約書・念書・覚書を取り交わすことになります。
事例:ある日本人起業家がインドネシアでの起業を目指し、現地のパートナーと協力してローカルPTを設立しました。彼はインドネシア人の妻を取締役に据え、法定資本金を満たすことで、無事に事業を開始することができました。
要点:インドネシアでの起業には、現地の法規制を理解し、現地パートナーとの協力が重要です。
会社のオフィスをどこに借りるか?
法人の納税者番号(Nomor Pokok Wajib Pajak=NPWP)や会社登録証(Tanda Daftar Perusahaan=TDP)などの重要書類を申請するためには、会社の住所を管轄する地方政府(Pemerintahan Daerah)が発行する会社所在地証明書Domisili(Surat Keterangan Domisili Usaha/Perusahaan)が必要です。そのため、テナント物件を借りる際には、建築許可証(Izin Mendirikan Bangunan=IMB)が法人の住所として商業利用(Komersial)可能かを確認する必要があります。
ジャカルタの中心部のオフィスビルに入っているRegusやForticeなどのサービスオフィスやコワーキングスペースを利用するのが確実かつお手軽です。しかし、ローコストで物理的なスペースがなく共用スペースでの作業のみが可能なバーチャルオフィスを選ぶと、RPTKA(外国人雇用計画)書の承認が下りない可能性があります。したがって、サービスオフィスを利用する場合でも、必ず物理的にスペースを借りることをお勧めします。
オフィスの場所は、自宅からの通勤距離や取引先までの交通の便などを考慮して総合的に判断する必要があります。特にITビジネスの場合、会社にとって重要なインドネシア人技術者の採用のしやすさが重要な要素となります。
ジャカルタであれば、スディルマン通りやタムリン通り沿いのジャカルタ中心部、もしくはビナ・ヌサンタラ大学(BINUS)やトリサクティ大学などの学生が多い西ジャカルタが、優秀なIT人材を採用しやすいロケーションと言えます。
事例:あるIT企業は、ジャカルタ中心部のサービスオフィスを選び、優秀な技術者を採用することに成功しました。
要点:オフィスの立地選びは、ビジネスの成功に直結する重要な要素です。
経理業務と税務の問題をどうするか?
会計の知識はどこまで必要か?
小さく起業した当初、プロダクト営業とマーケティングを行いながら、慣れない経理業務と税務をこなすのは負担が大きいです。また、経理担当者を一人雇って固定費を増やすのもリスクが高いため、記帳代行会社に外注するという選択肢が考えられます。しかし、業務の流れや税金の種類や意味を理解しておくことは重要です。
スタートアップ時は法人所得税ではなく分離課税PPh4-2を適用
スタートアップ当初の法人所得税として、経営成績である利益に対してかかる法人所得税制(Normal Corporate Income Tax Scheme)ではなく、事業主に対して一律公平にかかる事業税のような制度、外形標準課税PP23(Final Corporate Income Tax Scheme=Pro forma perpajakan standar)が適用できます。これにより、会計の知識がなくてもP/LやB/Sを作成しなくとも、課税額を計算して納税が可能です。会社の運営は通常通りに行えます。
具体的には、売上の0.5%を分離課税として納税するだけです。この外形標準課税(PP23)が適用できる条件として、年間売上が4.8Miliyar以下である必要があります。適用可能期間は3年間のみで、それ以降は税引前利益に対して法人所得税率が適用されます。
売上に対する0.5%という数字は決して高い税率ではありませんが、税務署が親切心から低い税率で保護しているわけではありません。スタートアップは最初は赤字であることが多いため、全く徴税できないよりも少しでも税収を得ようという考えから0.5%という数字が設定されています。
課税事業者(PKP)か非課税事業者(Non-PKP)かの決定
付加価値税VAT(Pajak Pertambahan Nilai=PPN)は、本業の売上やサービス収入に乗せた11%から、仕入時に乗せて払った11%を控除した差額を納税する消費税のような税金です。日系企業と取引をする場合、VAT課税事業者(Pengusaha Kena Pajak=PKP)としての登録は必須です。未登録だと取引が難しいケースが多いです。
会社を課税事業者にする場合、売りの場合Invoice発行時に11%の付加価値税VATを、VAT-Out Payableとして負債計上しFaktur Pajakを発行します。買いの場合、仕入先から届くFaktur Pajakにある11%分をVAT-In Prepaidとして債権計上し、売った分が多ければ翌月末までに納税し、買った分が多ければ年度末に還付請求または翌事業年度に繰越します。
- 売りの場合
- (借)A/R 111 (貸)Sales 100
- (貸)PPN Out Payable 11
- 買いの場合
- (借)Purchase 100 (貸)A/P 111
- (借)PPN In Prepaid 11
一般的にPKPにするかNon PKPにするかの判断は「年間売上が4.8Milyar以下の中小企業に該当するかどうか」が基準です。会社設立当初に売上が見込めない場合はNon PKPにしておき、売上が増えて会社の規模が大きくなってからPKPに切り替えることも可能です。
年間売上4.8Miliyar以下の会社は中小個人事業主UMKMと呼ばれ、課税所得に対してかかる税金として、経営成績である利益に対してかかる法人所得税(PPh25)ではなく、事業主に対して一律公平にかかる事業税のような外形標準課税PP23が0.5%かかります。
会社設立当初は非課税事業者(Non PKP)でいくと決めた場合、購入時のPPN-In Prepaidがかかり売上時にPPN-Out Payableを計上しないため、経理上PPN-In Prepaidが残り続けます。購入時のPPN-Inは負債ではなく費用計上し、仕入原価に乗せることになります。
逆に取引先の立場からすると、仕入先がNon_PKPの場合、売ったときに発生したPPN-Out Payableを、買ったときのPPN-In Prepaidで相殺できないため「うちはPKPとしか取引をしません」となることがあります。会社設立当初でも営業活動に支障が出ないように、課税事業者(PKP)にする選択もあります。
インボイスに乗せる付加価値税PPNがAPBN国家予算に入る中央税であるのに対して、飲食店を経営する場合のお勘定に対して乗せるPB1(Pajak Pembangunan Satu)10%は地方政府でAPBD自治体予算に入る地方税になります。
国内サービスにかかる所得税PPh23
IT企業がサービスを提供し顧客にインボイスを発行すると、顧客は国内サービスにかかる源泉所得税PPh23の2%分を控除して支払います。源泉徴収証をe-Bupotからメール送信してきます。
国内サービスにかかる所得税PPh23は源泉税ですので、サービスを受けた顧客側に源泉徴収義務が発生します。顧客側の総合課税計算時に繰り入れるため、サービスを提供した自社側での税務処理は発生しませんが、会社の当座預金口座にはインボイス金額から2%差し引かれた金額が入金されます。差額はPPh23として費用計上しないと、実際の銀行口座残高と会計上の当座預金残高が一致しなくなります。
賃貸収入に対してかかる源泉所得税PPh4-2
オフィスの賃料やセミナー開催のための借りた会議室の利用料など、賃貸収入に対して借りる側である自社が、貸す側であるオーナーの賃貸収入に対してかかる分離課税10%を源泉して納税する必要があります。
分離課税Final TaxであるPPh4-2が登場するのは外形標準課税PP23と、賃貸収入、銀行利子に対する源泉所得税の3つくらいです。
事例:あるスタートアップ企業が、初年度に売上が4.8Miliyarを超えないと見込んでNon PKPとして登録しましたが、予想以上に売上が伸び、途中でPKPに切り替えた結果、取引先との関係が円滑になったという事例があります。
要点:企業の成長に応じて税務登録のステータスを柔軟に変更することが、ビジネスの円滑な運営に寄与します。
社員を雇うということ
インドネシアで自己資金を元手に「小さく起業」した際、2人の株主兼役員と日本人である自分の3人がいると思いますが、それ以外の人を社員として雇用する場合、会社と社員との間で雇用契約書を交わします。正社員(Karyawan Tetap)として人を雇うと、毎月末に給料を支払い、レバラン休み前にレバラン手当(Tunjangan Hari Raya=THR)を支払う義務があります。また、以下の義務も発生します。
- 個人所得税PPH21の源泉徴収と納税
- 社会保障制度BPJS(Badan Penyelenggara Jaminan Sosial)Ketenagakerjaan加入手続き
日本と同様にインドネシアでも一旦正社員として雇用すると、解雇するのは非常に大変です。私は以前バリ島で輸出の会社を経営していた時、不景気のため4人の社員のうち2人を辞めさせた際、一族郎党で押しかけられ手切れ金を請求された経験があります。
事例:米中二極体制による世界経済の混乱やイスラエル・パレスチナ情勢など、インドネシア経済にも影響を及ぼす要因が多く、景気低迷時に最初に影響を受けるのが「小さく起業した会社」です。
要点:極力固定費を抑え、売上原価(COGS)を圧縮し、不測の事態に備えるべきです。
移動のための社用車を購入するかどうか?
ジャカルタは世界最悪の渋滞都市とされていますが、開通したMRT(Mass Rapid Transit)や開通したLRT(Light Rail Transit)によって、移動手段の多様化が進んでいます。さらに、Grab CarやGo-Carなどの新しい交通手段が広がり、ジャカルタ市内の移動を主とするビジネスでは社用車が不要になる可能性があります。
社用車の選択肢としては、購入、借用、リースの3つがあります。しかし、「小さく起業」したばかりのローカルPTではリースの審査が通りにくいため、購入して固定資産に計上するか、レンタルして毎月の費用計上をするかの選択になります。
購入した場合、自社の固定資産となり、減価償却費として毎月費用計上することで課税所得を圧縮することができます。償却期間終了後も車を使用でき、中古車市場が活発なインドネシアでは高値で売却可能です。また、仕事以外に土日は家庭用車として利用できるメリットもあります。しかし、定期保守メンテナンス費用、保険料、パンクや故障などの予測できない費用がかかります。
一方、レンタカーを利用する場合、購入に伴う大きなキャッシュの減少を避けられ、常に整備された状態の良い車を利用できます。ただし、長期的にはレンタカーの方が割高です。例えば、Bekasiのレンタカー会社で1日(12時間)ドライバー付きで車をレンタルする場合、ガソリン代別でAvanzaなら45万ルピア、Inovaなら60万ルピアかかり、ドライバーによっては食事代Uang Makanとして5万ルピア請求されます。
法人設立の行政手続き完了後に行うこと
法人設立のための行政手続きが完了し、必要な書類が揃ったら、会社の営業を開始する準備が整います。まず、会社の銀行口座(当座預金GIROまたはビジネス用口座)を開設し、資本金を振り込む必要があります。以前は会社設立証明書(AKTA Pendirian)や法務管理局からの決定事項記載書(SK)に記載された資本金額の最低4分の1を振り込む必要がありましたが、特にチェックされることはありません。必要な運転資金だけを振り込み、会社設立にかかった費用を会社の経費として計上します。
例えば、会社設立時に資本金を当座預金に振り込む際、必ずしもAkta Pendirianに記載された額面どおりに振り込まれるとは限りません。その差額は株主債権(Shareholder Receivable)という資産勘定に計上します。
- (借)当座預金 330 (貸)資本金 1,000
- (借)株主債権 670
株主が会社設立前に会社設立費用や固定資産購入などで100出費していた場合、この株主債権を減額します。
- 費用 100 株主債権 100
営業開始当初の初回のP/L作成時に売上が上がっていない場合、出費した分だけ赤字が出ていると考えられますので、P/Lの損益に100の当期損失を計上します。
- (+) 収益 0
- (-) 費用 100
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- 当期損益 (100)
当期損失をB/Sの純資産の部に反映させることでバランスを取ります。
- 当座預金 330
- 株主債権 570
- 資本金 1,000
- 当期損益 (100)
納税者番号(NPWP)を取得している場合、取得月から税務署への申請が義務付けられます。仮に付加価値税(PPN)や法人税(PPh)は初年度は毎月課税所得ゼロ(Nihil)として申告しても、従業員の個人所得税(PPh21)を会社負担にしている場合は、年度末の年次納税申告書SPT(Surat Pemberitahuan Tahunan)をもって納税する必要があります。
事例:ある企業は、設立後すぐに銀行口座を開設し、資本金を振り込むことでスムーズに営業を開始しました。
要点:法人設立後は、迅速に銀行口座を開設し、資本金を適切に管理することが重要です。