ジャカルタの洗車屋が儲かるのかどうか勝手に試算してみた。

2017/03/19

ジャカルタの洗車屋

2020年現在のジャカルタの洗車屋の相場はRp.40,000~Rp.50,000ですが、オフィスや洗車場の賃貸料、作業者の給料、水道光熱費等を考慮すると、1日あたり何台洗車すると利益に乗るのかという損益分岐点を計算しました。

日曜午前中の洗車屋の状況

ジャカルタの気候は4月から9月までが乾季、10月から3月までが雨季、ちょうど決算の上半期下半期に合致していますので、ようやく長かった雨季が明けつつあるのか、毎週洗わないと通行人の視線がはばかられるほど汚れた車も、雨の頻度が減ったために週2ペースでも大丈夫になりました。

この時期いつも思い出すのは3.11東日本大震災の日、6年前のあの日のCikarang EJIP工業団地は結構雨が降っており、ラーメン38にに昼飯を食べに入ったら、お客の視線がNHKのニュースに釘付けになっており、そこには田んぼを濁流が縦断する衝撃的な映像が流れていました。

当時の車はAvanzaの黒で比較的汚れが目立ちませんでしたが、白に買い換えてからは白いキャンバスに泥水をぶちまけたような汚れが圧倒的に目立ち、ディーラーのお兄さんに頻繁に洗わないと汚れが蓄積し黄ばんでいくと忠告されたこともあり、毎回Cidengの洗車屋で一番高いアメリカMeguiar's社のシャンプーを使ったRp.50,000コースで洗っています。

  1. 普通のシャンプーで車内の掃除機かけなし Rp.30,000
  2. 普通のシャンプー+車内の掃除機かけ Rp.40,000
  3. Meguiar's社シャンプー+車内の掃除機かけ Rp.50,000

この洗車屋には向かって左側の汚れ落としの作業スペース6台(その内スペース2台分バッファ)、右側の拭き取り&掃除機用のスペース6台(その内スペース1台分バッファ)があり、作業担当の兄ちゃん達8人、ADMINの女の子2人、車の移動担当1人の計11人でまわしています。

ただし作業担当の兄ちゃんが8人いてもホースが2本、掃除機1台という制約があるため、朝8時過ぎから夕方5時まで、0~2台汚れ落とし(1人ホース1本で1台担当)しながら0~3台拭き取り&掃除機作業(2人で1台 掃除機は共用)していることになります。

洗車サービスの工程の作業能力

洗車屋

左の汚れ落とし側にはホース2本、右の拭き取り側には掃除機1台

洗車は大きく分けて汚れ落とし工程と拭き取り工程に分けられ、前工程である汚れ落とし工程には①水かけて②泡で磨いて③水ですすぐという作業手順がありますが、主資源である作業スペースは4台分あっても副資源であるホースが2本、作業員が2人であるため、同時並行で可能な作業は最大2台分になります。

後工程である拭き取り工程には①ボディ拭き取り②車内掃除機かけ③車内拭き取り④タイヤワックスという作業手順がありますが、作業スペースは5台分あっても掃除機が1台、作業員が6名(1台あたり2名で作業)しかいないという制約があるため、掃除機をうまくやりくりしたとしても同時並行で可能な作業は最大3台分になります。

日曜日の快晴の午前中、自分の車が洗車されるのをぼーっと眺めながら、なんとはなしに作業時間を計ってみました(暇やな~)。

  • 汚れ落とし工程(作業員2名で必要資源量1名/台・ホース2本、移動は移動担当者1名/台)
    1. 作業時間10時43分~10時50分⇒7分間
    2. 待ち時間10時50分~10時54分⇒4分間
    3. 拭き取り工程への移動⇒1分間
  • 拭き取り工程(作業員6名で必要資源量2名/台・掃除機1つ)
    1. 作業開始10時55分~11時6分⇒11分間
    2. 後始末11時6分~11時7分⇒1分間
    3. 呼び出し・支払い・退店11時10分⇒3分間

汚れ落とし工程では7分間に最大2台仕上げる能力があるので1台あたり作業時間は3.5分、拭き取り工程では11分間で最大3台仕上げる能力があるので1台あたり作業時間は3.6分、汚れ落とし工程の待ち時間と拭き取り工程の呼び出し・支払い・退店にかかる時間中には、バッファスペースで次の車の作業を開始していますので、これは外段取と考えた場合、各工程のサイクルタイムは以下のようになります。

  1. 汚れ落とし工程サイクルタイム:作業3.5分+移動1分=4.5分/台
  2. 拭き取り工程サイクルタイム:作業3.6分+後始末1分=4.6分/台

その結果両工程のサイクルタイムがおおよそ一致しており、洗車屋の資源(作業員・ホース・掃除機)がうまく配置され工程間のバランスが取られているのが判ります。

仮に1ヶ月稼働日30日間、1台あたりの洗車ライン全体のタクトタイムとして、大きい数字である拭き取り工程の4.6分/台を採用した場合、今の人員体制でフル稼働してさばくことが出来る1日あたりの最大台数は以下のとおりです。

  • 1日の最大稼働時間:9時~17時半まで8時間=480分
  • 稼動時間480分÷タクトタイム4.6分=104台

変動費と固定費から損益分岐点を計算

ここまででこの洗車屋が1日にさばける車の台数が104台というところまで算出できましたが、その洗車にかかる変動費はおおよそ以下の2つであり、実質洗剤やその他WAX等の費用のみだと推測されます。

  1. 洗剤代=Johnson Rp.28,000/800MLの場合、1台あたり80MLとして10台分
    Rp.28,000÷10台=Rp.2,400
  2. 製造変動費(掃除機の電気代)は固定費に含める

洗車ビジネスの原価のほとんどが以下の固定費になるはずですが、給料は2017年3月現在のジャカルタのUMK(Upah Minimum Kabupaten 最低賃金)であるRp.3,355,750から想像するしかありませんし、店舗が賃貸なのか所有なのかによって計算結果が大きく変わってきます。

  1. 水道代・電気代(井戸水ならポンプにかかる電気代)
    おおよそ2.5juta
  2. 人件費
    • 作業員:4juta x 8人=32juta
    • ADMIN:4juta x 2人=8juta
    • 移動担当:4.5juta x 1人=4.5juta
  3. 店舗賃貸料(所有の場合はなし)
    おおよそ月15juta

洗車サービスはRp.30,000、Rp.40,000、Rp.50,000の3コースありますが、今回は間を取ってRp.40,000コースのみ売上に計上した場合の限界利益は以下のとおりです。

  • Rp.40,000-変動費Rp.2,400=Rp.37,600

よって月の固定費合計62jutaを回収するための損益分岐点は以下のとおりです。

  • 62juta÷Rp.37,000=1,675台/月

月の30日稼働日とした場合、1日平均56台洗車してようやく利益が出ることになります。

今日のような繁忙期の日曜日にさばける洗車台数が104台ですから、平日の閑散期や雨天時に客足が減るリスクを考慮して60%に平準化した場合でも1日あたりの洗車台数は62台ですから、そんなにボロ儲けできる商売ではないことが想像できます。

逆に言うと原価の大半を占める人件費や店舗賃貸料などの固定費を大幅に抑えられさえすれば(例えば所有地で商売するとか)、損益分岐点が一気に下がりますので、結構な利益を計上できるかもしれません。

税金の話

インドネシアでは、年間売上がRp.4.8Milyarに満たない法人/個人は、利益に関係なく外形基準としての売上に対して1%の外形標準課税(Pro forma perpajakan standar)がかかりますので、この洗車屋のように大通りに面した目立った場所で商売していれば間違いなく税務署の目にかかります。

  • 1,675台xRp.40,000x1%=Rp.670,000

この外形標準課税が売上(Pendapatan Kotor)に対してかかる理由ですが、小規模ビジネスの場合、会計処理のシステム化が遅れており、迅速に正しく利益(Pendapatan Bersih)を算出することが困難であると推測されるため、より簡素化した売上に対する1%という方法がとられているようです。

ちなみにインドネシアの法人税は一律課税所得に対して25%ですから、仮に利益率が10%の会社が25%の法人税を納税する場合

  • 売上x10%x25%=2.5%

売上に対する比率に換算すると2.5%を支払うということになります。

ただし所得税以外に本来計上すべきPPN 付加価値税(Pajak Pertambahan Nilai VATのこと)10%については、年間売上がRp.4.8Milyarに満たない法人/個人の場合は、売買時に計上する必要はありません。