ラブラドール犬の遺伝とバリ島での生活体験

2019/06/14

ラブラドールレトリバー

ラブラドール犬の遺伝子には、色(黒・茶)と濃淡の2種類の対立形質があります。子には優勢の遺伝子の特徴が現れるのが優性の法則で、子に現れなかった劣勢遺伝が孫に分離して現れるのが分離の法則です。異なる対立形質の遺伝子の組み合わせが孫に現れるのが独立の法則です。

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この記事でわかること

  • ラブラドール犬の毛色は遺伝子の組み合わせで決まります。
  • バリ島では2001年にラブラドールレトリバーが話題になりました。
  • 犬の遺伝には優性の法則、分離の法則、独立の法則があります。
  • バリ島での犬の飼育は経済的負担が大きいことがわかりました。
  • ジャカルタへの引っ越しで犬の里親探しが必要になりました。

バリ島に移住して犬との生活が始まったきっかけ

このブログで私は犬派であることをカミングアウトしましたが、最大の理由は犬は喜怒哀楽が人間に近く、何を考えているか判りやすいところです。猫派の人が聞いたら怒られるかもしれませんが、私が1年間西ブカシの家で野良猫と共同生活をおくった結果として、猫は怒りはすれど笑わないという結論に至りました。犬を飼ったことがない人は判らないかもしれませんが犬って笑うんです。

玄関前に住み着いている猫
玄関前に住み着いている猫。決して懐きません。

インドネシアの日系製造業様の業務システム導入の仕事をしておりますが、2007年まではバリ島でサーファー風に肩まで髪を伸ばして、TOYOTAの4Lエンジンのジープに乗って、パサールブルン(鳥市場)にアロワナの餌となるカエルやコオロギなどの生餌を買いに行くのが日課でした。

ジャカルタからバリ島に引っ越した2001年は「盲導犬クイールの一生」が映画化され、ラブラドールレトリバーの賢さや人懐っこさが話題となった年です。犬の唾液を忌避するイスラム教が主流のジャカルタから、犬に対して抵抗のないヒンドゥー教文化のバリ島に来たことを機会に、話題沸騰のクイールと同じ黄ラブの子犬を購入しました。ちなみに犬を飼うのはこれが初めてです。

ラブラドールレトリバー
庭で遊び疲れて後の幸せな表情です。

バリ島にはペットショップがたくさんあり、血統証付きのラブラドールレトリバーの子犬が、2001年当時で4.5juta、ゴールデンレトリバーが5.5jutaくらいで販売されていました。「バリ島で家具ビジネスで一旗あげたる」と息巻いていた私は「これは商売になる、一回で8~10匹子供生むのなら40juta以上の売上が見込めるではないか」と浅はかな皮算用をしてしまいましたが、実際のところ餌代や各種栄養剤、予防注射や病気の治療代などで、とても元が取れるビジネスでないことに気づくのは2006年くらいの話です。

犬全般に言えることかもしれませんが、実際に飼ってみると犬は喜怒哀楽の表現が明確で、優しく呼ぶと目の前まで近づいてきて、正面で舌を出して「エーなになに」といった表情で見つめてきますが、留守中に家具をかじるなどのいたずらが発覚したとき、怒気を含んで「こっち来い」と命令すると、手前2mくらいで口を閉じたままお座りし、うつむいたまま目線を合わせようとしません。

ラブラドールレトリバーは前評判どおり知能の高さは感じられましたが、その知能があらぬ方向に発揮されることで、夜寝ている間に英和辞書とか出荷直前の家具とかをかじりまくって、仕事に甚大な影響を及ぼすまでに至ったため、室内に監視カメラを設置して、寝室から犬がデスクに登って、いざイタズラせんという現行犯のタイミングで扉を開けて「コラッ」とびっくりさせて、パニックに陥った犬達を見てゲラゲラ笑って楽しんでおりました。

ラブラドール犬には黄色、黒、茶色の3色います。
ラブラドール犬には黄色、黒、茶色の3色います。

かかりつけのドクターから「この黄ラブは警察犬になれる素養がある」とおだてられるままに、麻薬捜査犬の訓練を受けさせることになり、週に2日地元警察署のK9担当の訓練士がやってきました。最初はプロの訓練士が来るのを楽しみにしていた黄ラブも、そのうち家から500mくらい離れた広場から訓練中に脱走してきて、家のドアを「開けてー」と言わんばかりにガリガリ引っかいていた姿を見たときは少し心が痛みました。

最終的にうちの黄ラブは「麻薬捜査犬の素養なし」という判断を下され、訓練を中止されましたが、このままつらい訓練を受けさせるのもかわいそうだし、麻薬捜査犬として数年お勤めを果たした犬は、例外なく麻薬中毒を患うことで短命になるということでしたので、うちの黄ラブにとっては失格して良かったと思っています。

デンパサールに3年、バトゥブラン3年半の計6年半のバリ島での犬達との生活の間に、最初は黄ラブ1匹で十分だと思っていたのに、友達がいないのもかわいそうなどと勝手な理由をつけて、あっという間に黒ラブ2匹、茶ラブ1匹を迎え入れてしまい、食欲旺盛なラブラドール犬計4頭飼いの生活では、人間の食費を犬の餌代が上回るという我が家の家計は火の車になりました。

ラブラドールの毛色はどう決まる?遺伝子の組み合わせを解説

その当時、我が家には黄ラブ、黒ラブ、茶ラブがいました。メスの茶ラブは大腿骨に遺伝性の疾患があることが判明し、繁殖をあきらめて避妊手術をしました。その後、オスの黄ラブとメスの黒ラブの間に、黄6匹、黒2匹の計8匹の子犬が生まれました。

メンデルの法則に従うラブラドール犬の色の遺伝
子犬のケアのため睡眠不足の日々が続きました。

ラブラドール犬の遺伝子には、①色調「B(黒)またはc(茶)」と②濃淡「D(濃)またはt(薄)」の2種類の対立形質があります。これにより、オスメスともに「B(黒)D(濃)」「B(黒)t(薄)」「c(茶)D(濃)」「c(茶)t(薄)」の4パターンの組み合わせが可能です。

この遺伝子の中で、①色調の遺伝子B(黒)はc(茶)に対して優勢であり、②濃淡の遺伝子D(濃)はt(薄)に対して優勢です。子犬には優勢の遺伝子が持つ特徴が現れることを優性の法則といいます。

黒ラブの子犬は優性の法則からみんな黒ラブになりそうですが、我が家の場合、B(黒)t(薄)またはb(茶)t(薄)のオスの黄ラブと、B(黒)D(濃)のメスの黒ラブから黄6匹、黒2匹の子供が生まれました。これは、両親から受け継いだ優性の遺伝子の組み合わせ以外にも、色を決める法則が別にあることを示しています。

生まれてくる子犬の遺伝子の組み合わせと外観の色

オス \ メス B(黒)D(濃) B(黒)t(薄) c(茶)D(濃) c(茶)t(薄)
B(黒)D(濃) BBDD(BD) BBDt(BD) BcDD(BD) BcDt(BD)
B(黒)t(薄) BBDt(BD) BBtt(Bt) BcDt(BD) Bctt(Bt)
c(茶)D(濃) BcDD(BD) BcDt(BD) ccDD(cD) ccDt(cD)
c(茶)t(薄) BcDt(BD) Bctt(Bt) ccDt(cD) cctt(ct)

これは、もう一世代前のおじいちゃん犬とおばあちゃん犬の遺伝子が影響していることを示しています。親である黒ラブが色調の優性遺伝Bと濃淡の優性遺伝Dを持っているにもかかわらず、黄色い子犬が6匹も生まれたのは、「おじいちゃん犬とおばあちゃん犬の世代の劣勢t(薄)と劣勢c(茶)が、第一世代の黒ラブと黄ラブに現れなかったにもかかわらず、第二世代の子犬に分離して現れた」ということです。

黒ラブの子犬が全部黒になるとは限らない

メンデルの法則に従うラブラドール犬の色の遺伝
このように第一世代で現れなかった劣勢遺伝が第二世代に分離して現れることを分離の法則といいます。

メンデルの法則にはもう一つ、異なる対立形質がそれぞれの遺伝子の組み合わせで、子の第一世代ではなく孫である第二世代に出てくる独立の法則があります。ラブラドール犬の色調と濃淡という対立形質内の優性遺伝と劣勢遺伝が、どう組み合わさって2匹の黒と6匹の黄の子犬という結果になったのかは、当時の血統証があればトレースできるかもしれませんが、ジャカルタに引っ越す前に里親に渡してしまった今となっては判りません。

黄ラブが家に来てから5年目にして2匹の黒と6匹の黄の子犬を授かりました。早速「1匹4jutaで売ったら32jutaの売上になるわ」と考えましたが、その後の餌代、ミルク代、予防注射や皮膚病の治療代、血統証の登録などで、そんな皮算用は雲消霧散しました。

メンデルの法則に従うラブラドール犬の色の遺伝
8匹もいると必ず飲みっぱぐれる奴が出ます。
メンデルの法則に従うラブラドール犬の色の遺伝
デカイのと小さいのが交じると収集がつかないのでテラスに柵を設置。
メンデルの法則に従うラブラドール犬の色の遺伝
これくらいのサイズの頃が一番かわいい時期でした。
メンデルの法則に従うラブラドール犬の色の遺伝
玄関のテラスで定期的に日光浴させます。
メンデルの法則に従うラブラドール犬の色の遺伝
さすがにこの状態でオス犬が邪魔することはしません。

インドネシア高級家具の需要減とバリ島からの撤退決断

2005年頃、日本ではホームセンターやIKEAで販売される実用的で安価な家具の需要が増加しました。このため、私たちが扱っていた高品質のチーク材やマホガニー材を使用したインドネシア家具の売上が減少し始めていました。そこで、バリ島に居続けることは先細りするだけだと判断し、ジャカルタへの撤退を決断しました。

ジャカルタへの撤退に際して犬との別れ
塩素は使わないソルトウォーターなので犬にも安心です。

事例:その当時、バトゥブランの自宅の大型水槽には、体長50cm前後のアロワナの紅尾金龍(ゴールデンレッド)が11匹も泳いでいました。新聞に「アロワナ売りたし」の広告を出すと、コレクターが毎日のように訪れ、最終的には250cmの水槽ごと一式を大枚を叩いて引き取っていきました。バリ島にはアクアリストが多いのです。

ジャカルタのアパートに大型犬を連れていくことは難しかったため、かかりつけの獣医に「引っ越すので犬の里親を探している」と伝えました。その日のうちに多くの電話がかかってきましたが、一番優しそうで経済的に豊かそうな中華系の若いビジネスオーナーに里親になってもらいました。血統証があったことが信用を得る上で役立ちました。

ジャカルタへの撤退に際して犬との別れ
毒ヘビ食べて死んじゃったんだね。

事例:この方には4匹のうち3匹を引き取ってもらいましたが、最後の別れの時、犬たちは興奮して自らBOXトラックに飛び乗って行きました。引っ越し直前まで残していた黒ラブは、まだら模様の毒ヘビを飲み込んでしまい、あっという間に絶命しました。マンゴーの木の下に埋葬する作業は精神的に堪えました。

ジャカルタに引っ越してからも、里親に引き取られた黄ラブ、黒ラブ、茶ラブのその後が気になります。生きていれば15歳~17歳ですが、さすがにもう生きてはいないかもしれません。西ブカシの自宅前に住みついている笑わない野良猫と戯れていると、彼らの笑顔が懐かしく思い出されます。