インドネシア語は接頭辞と接尾辞が単語のバリエーションを増やす

2019/03/25

インドネシアの子供

インドネシア語は表記どおりにローマ字読みする言語であり、単語の独立性が高く前後の単語が繋がって発音が変わることはありません。単語の順番を入れ替えても通じやすいことから、インドネシア語能力は語彙量に比例すると言われる傾向があります。

インドネシアの子供

インドネシア語

インドネシア語は英語のように単語が繋がることで表記と発音が異なる難しさがなく、書いてあるとおりにローマ字読みすれば一定レベルまでは理解し合えるという点で、他民族他宗教国家を一つにまとめるための公用語にインドネシアを選定したことは先人の英断だったと思います。

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インドネシア語は柔軟性があると言われる理由

インドネシア語は表記のとおりに読むローマ字読みで、単語同士がくっついて発音が変わることがないということは、単語の独立性が高いということです。

単語の独立性が高いということは、アルファベットという表音文字で構成されるインドネシア語の単語が、漢字のように表意文字的に機能するため、多少の発音間違いがあっても、順番を入れ替えてもなんとか意味は通じるようになります。

そういう特性の言語であることが判ってしまえば、おのずとインドネシア語上達方法は、どれだけたくさんの単語を正確に暗記するかで決まるということが理解できます。

最近はibu2のことをemak2と言うのがkata kekinian(流行語)なんだな。何かと思ったよ。

ここにあるkini(最近)を抽象名詞化した「kekinian」という単語は、僕の知る限り最近生まれた抽象名詞だと思いますが、インドネシア語は接頭辞と接尾辞で語幹をはさむことにより、形容詞を動詞化したり名詞化したりと、単語のバリエーションを増やしていくという特徴があります。

動詞の接頭辞・接尾辞と基本5文型の関係

インドネシア語は英語の基本5文型に近い構造から成り立ち、動詞がmeから派生する接頭辞で始まる場合は、第3文型・第4文型・第5文型になり、その場合の接尾辞はkanだったりiだったり何も付かなかったりしますので、例外を考えながら理屈で変化のパターンを覚えるよりも単語として暗記するほうが上達の近道だと思います。

自動詞 第1文型S+V

接頭辞\接尾辞 an なし
なし buruan(急いで)  
ber berkenalan(知り合いである), bercintaan(愛し合っている), berhubungan(関係している) berjalan(歩く), bermain(遊ぶ), bertahan(耐える), belajar(勉強する)
ter   tertawa(笑う)
ke ketahuan(判明する),  ketawa(笑う), 

他動詞 第3文型S+V+O /  第4文型S+V+O+O

接頭辞がmenの場合は語幹のTが消え(menaruhkan)、memの場合はPが消え(memastikan)、menyの場合はSが消える(menyediakan)という変化は、恣意的にルールで決められたものではなく、発音していく中で勝手に消えていったものであり、たまたまpunya(持っている)という動詞の語幹Pは、mempunyaiのように残したほうが自然だったという話です。

接頭辞\接尾辞 kan i なし
me memainkan(~を演奏する/~を演じる), memakankan(~を食べさせる) memakani(~を食べる)
men (Tは消える) mendapatkan(~を得る), menaruhkan(~を置く), menjalankan(~を走らせる), menahankan(~を留める), mendinginkan(~を冷やす), mendatangkan(~を来させる), mendudukkan(~を座らせる), menepatkan(~を固定する),  mendapati(~を得る), menahani(~に耐える), mendatangi(~に来る), menduduki(~に座る), menepati(~に位置する) menaruh(~を置く), menolong(~にお願いする)
mem (Pは消える) mempunyakan(~を持たせる), memastikan(~を決める), memanaskan(~を温める), membereskan(~を片付ける), memuaskan(~を満足させる), membosankan(~を飽きさせる), memasukkan(~に入れる) mempunyai(~を持つ), memahami(~を理解する), memanasi(~を温める), memberesi(~を片付ける), memasuki(~に入る) memburu(~を追い詰める)
meny (Sは消える) menyediakan(~を用意する), menyelesaikan(~を終わらせる), menyaksikan(~を目撃する), menyedihkan(~を悲しませる), menyenangkan(~を喜ばせる), menyayangkan(~を残念に思う) menyenangi(~を好む), menyayangi(~をかわいがる) menyetir(~を運転する),
meng mengambilkan(~を取ってやる), menghindarkan(~を回避させる), mengperhatikan(~を注意する) mengetahui(~を知る), menghindari(~を避ける) mengambil(~を取る)
memper mempermainkan(~をもてあそぶ), mempertahankan(~を留める), memperhatikan(~を注意する), memperkenalkan(~を紹介する)

他動詞 第5文型S+V+O+C

接頭辞\接尾辞 kan i なし
me menamai(~を名づける)

接頭辞で行為者を表し接尾辞とセットで抽象名詞化する

ke~anで抽象名詞、クムンキンガンとかクドゥラパンガン、クスンビランガンは明らかに聞こえがおかしい、なるほどです。こんな感じで勉強すると楽しいですね。

pe~anまたはke~anで形容詞や動詞を抽象名詞化し、peから派生する接頭辞だけで行為を行う者を意味します。

インドネシア語は英語と同じく子音で終わる単語が多く、N(ヌと発音)とNG(ンと発音)の区別がつきにくい場合がありますが、pemandanganやkemungkinanなどのように抽象名詞化して自然に聞こえるほうが正解という判断ができます。

接頭辞\接尾辞 an なし
pe pekerjaan(仕事), pelaksanaan(実施) pemain(選手), petani(農民), pelajar(生徒), pelaku(犯人)
pen (Tは消える) penelitian(研究), pendaftaran(登録), pendidikan(教育) pendengar(聴衆), pendatang(訪問者), peneliti(研究者)
pem (Pは消える) pemandangan(景色), pemakaian(使用) pemegang(所有者), pembantu(メイド)
peny (Sは消える) penyaksian(目撃) penyebab(原因)
peng penggunaan(利用)
per permainan(遊び), pertokoan(ルコ)
ke kemampuan(能力), kesehatan(健康), keadaan(状態), keperluan(必要), keterangan(説明), kedutaan(公使館), kerajaan(王国), kedatangan(到着), kekinian(流行)

インドネシア語の動詞の接頭辞のつけ方が何故難しいか

日本語からインドネシア語への翻訳した文章がかっこよく見えるコツの一つは、文法の教科書どおりに「動詞の接頭辞(meとかmenとかmeng)をキチンとつける」だと思います。

ただし接頭辞がmeとかmemとかmengに変わるのは無理なく発音しやすいように自然に変化した結果であって、文法書に書いてある分類の理屈はあくまで後付けでしかなく、必然的に分類に収まりきれない例外が発生します。

昔インドネシアに来た当初、文法書を読みながら接頭辞と接尾辞を理屈で理解しようとしましたが、変化のバリエーションが多く例外事項も多いので途中で投げ出してしまいました。

そのまま年月を重ねるうちに、日常会話の中で語彙が自然と増えていき、ある程度しゃべれるようになった今、昔投げ出した文法の理屈を再度読み直して見るのですが、やはりこれを理屈で例外事項まで考慮しながら覚えるのはキツイと感じます。

こういう理屈を勉強するモチベーションを高めるという意味で、インドネシア語検定試験を受ける意義があるのでしょうが、僕の場合はインドネシア語が上手くなりたいという願望よりも、試験会場に座ってペーパー試験を受ける恐怖心のほうが上回るため無理です。

もっと肩の力を抜いて考えて、インドネシア人の時間間隔の適当さをJam karet(ゴムのように伸び縮みする時間)というように、インドネシア語が接尾語や接頭語がくっついたり消えたりして伸び縮みするのも(言葉がその場の状況に応じて意味合いを変化させようとしている努力の成果)くらいに考えればいいと思います。

例外は無視して大枠のルールで記憶する

例外は無視しておおよそのルールを意識した上で、後は実践の中で正しい変化の仕方を覚えていく。

例えば「分類する」という意味を持つkelompokという言葉の場合、kelompokkanには変化するがkelompokiだと間違いになるなどです。

  1. 接尾辞「kan」があるとおおよそ他動詞になる。
  2. 語幹に接頭辞の「me」が付くと接尾辞の「kan」だけ付いた場合よりもおおよそフォーマルになる。
  3. 「me」付きで能動的(aktif)表現になり、meが取れてdiが付くことで受動的(pasif)表現に変化。
  4. 接尾辞「i」はおおよそ前置詞(preposition=kata depan)を含むような意味あいになる。
  5. berはおおよそ自動詞っぽくなり目的語が続かない場合がほとんど。

自分が10数年間に実践の中で学び、意識している接頭辞と接尾辞の知識はたったこれだけです。

「me」が語幹の頭文字に合わせて変化したり語幹の頭文字が取れたりするルールは、インドネシア人が発音しやすいように自然と変化していったルールくらいに捉えておけばよいかと思います。

  1. me(頭r/m/n/l)
    nangis⇒menangis
  2. men(頭c/d/j/)(頭tが消える)
    cinta⇒mencintai
    tinggal⇒meninggal
  3. mem(頭b)(頭pが消える)
    balas⇒membalas
    paham⇒memahami
  4. meng(頭a/h/g/i)(頭kが消える)
    hilang⇒menghilangkan
    kembalikan⇒mengenbalikan
  5. meny(頭sが消える)
    suruh⇒menyuruh

接頭辞と接尾辞の変化のルールがややこしいのは以上の動詞の変化だけで、それ以外はパターンを大枠で押さえた上で、語彙数を増やしていくのが早いと思います。

  1. 接頭辞と接尾辞のセットber-an, ke-anが動詞、pe(r)-anが名詞になる。
    berhubungan
    berkeluarga
    ketiduran
    kehujanan
    persatuan
    pendapatan
  2. 接頭辞のみter-, se-, ke-が動詞、接尾辞のみ-anが名詞になる。
    tertidur
    seimbang
    keburu
    jawaban

インドネシアで働く日本人にとっては、インドネシア語を勉強するよりも次の自分のキャリアにつながりやすい英語をしっかり勉強したほうが有益だと思います。

よってインドネシア語の文法書を真面目に読みすぎて嫌気が差すよりも(おおよそ)の感覚でポイントだけ掴んで、とりあえず駐在任期中に必要な最低限のルールを覚えるほうが効率的だと思います。

接尾辞nya(ニャー)が付いて副詞的意味をもつもの

多くの日本人がインドネシア語の発音を聞いて「可愛いらしい言語だな」と感じる瞬間が、名詞や形容詞、動詞の語尾にnya(ニャー)が付いた時だと思うのですが、特にインドネシア人の女の子がpokonya(ぽこにゃ~)とかakhirnya(あひるにゃ~)とか発音するのを聞くと、男性諸氏なら萌えすぎて悶絶する人もいるのではないでしょうか。

教科書的には名詞の後にnyaが付く場合には「彼の/彼女の」とか「その」とかを意味するとなるのでしょうが、日常生活でnyaが使われるときには、特に「誰が」とか「何を」とか特定するわけでもなく、単に対象をはっきりと明示するために使われているだけのように思います。

  • ACnya mati ya!「クーラーが止まったよ!」
  • HPnya mahal ya!「携帯電話が高いよ!」

単なる強調だからこそ、インドネシアに来たばかりの日本人がnyaを乱用してニャーニャーと猫が鳴くようなインドネシア語を話しても、インドネシア人に対して十分意味は伝わるのであり、そうだとすれば文法的にnyaの使い方を意識する必要はなく、日常会話の中で自然に慣れていくものだと思います。

そしてnyaには先頭の単語の語尾に付けて、話を切り出すときの決まり文句的な用法があり、僕が日常生活や仕事で使うものはだいたい以下のようなものです。

  1. pokoknya:「要は」
  2. akhirnya / akibatnya:「終わりには」/ awalnya「始めは」
  3. umpamannya / misalnya / contohnya /seandainya:
    若干ニュアンスは違いますが「例えば」「もしも」
  4. seharusnya / mestinya:「本当なら」
  5. soalnya:「なぜなら」
    karenaと同じですが会話で頻繁に使われます。
  6. kayanya / sepertinya / rupanya / kelihatannya:
    若干ニュアンスは違いますが「~みたい」
  7. katanya:「だそうです」
  8. maksudnya:「意味するところは」
  9. biasanya:「普通は」
  10. sebenarnya / sebetulnya:「本当は」
  11. pada dasarnya:「基本的には」
  12. alasannya / sebabnya / penyebabnya:「原因は」
    penyebabnyaは病気の原因で使われることが多いように感じます。
  13. makanya:「だから」

話の流れを変えたり対比する接続詞

アンタッチャブルのザキヤマ氏の「逆に~」というギャグがまさにjustru ituであり、個人的にはインドネシアで日本人からこのフレーズを聞くときには「ああ、この人はインドネシア結構長いな」という判断材料になっており、使えるようになればなかなか便利な言葉です。

  1. justru(justru itu):「逆に」
  2. meskipun / walaupun:「~だとしても」
  3. namun:「しかし」
    tetapiと同じですが、たまに使われると戸惑います。
  4. sedangkan:「一方で」
  5. walaupun / meskipun:「例え~だとしても」
  6. terlepas dari「~に関係なく」

後ろから前の言葉を修飾する前置詞

個人的な意見として、インドネシア語を格好良く話す秘訣の一つが、文尾をカッチリまとめることだと思っておりまして、インドネシアに長く住んでいると文法的な文章のパターンは聞き尽くすので、相手が何を言っているかだいたい推測する勘は良くなるため「だいたい意味わかるからもういいいやー」となりがちですが、こういう言葉は使い方をちゃんと勉強しないと覚えません。

  1. dengan baik dan benar:「正しく」⇔secara sembarangan:「適当に」
  2. secara bertahap:「段階的に」⇔secara langsung:「直接的に」
  3. secara tertulis:「書面で」⇔secara verbal(lisan):「口頭で」
  4. secara garis besar:「おおまかに」⇔secara terperinci:「詳細に」
  5. dalam jangka waktu panjang:「長期間で」⇔dalam jangka waktu pendek:「短期間で」
  6. demikian:「このように」
    公文書の最後にDemikian, agar maklum.「以上ご了承ください」と書いてあるのを見ます。
  7. tersebut:「前述の」
  8. baik A maupun B:「AだけでなくBも」