製造業の生産ラインのスケジューリングでは、遺伝的アルゴリズムという機械学習により生産効率の最適解を探索することが出来るようになり、インドネシアでもAIのコモディティ化が製造業システムの分野においてパラダイムシフトを起こしています。 インドネシアの生産スケジューラ インドネシアの日系製造業においても生産管理システムが導入される事例が増えましたが、機械や設備の負荷を考慮した実現可能な生産計画作成という生産管理の主要課題については、Excelを使ったマニュアル作業で行われているのが現状で、今後生産スケジューラのニーズは高まるものと思われます。 続きを見る
機械学習による生産ラインのスケジューリング
インドネシア在住の日本人の間でも、ChatGPTやGrokが会社でも日常生活でも必要不可欠なものになりつつあることを、SNSの投稿などを通じて日々実感しますが、ChatGPTはAI(人工知能)の中でも生成AI(Generative AI)に分類されるものであり、ネット上の大量のデータを学習しパターンを分析し、ユーザーが入力するプロンプトに基づいて次に続く文章を生成しています。
今書いているこの記事ですら、将来誰かが「インドネシアで生産スケジュール作成業務にAIを活用する方法を教えてください」というプロンプトを打ったとき、生成AIにより既に学習されてパターン化されたデータの一つとして、回答のコンテンツ生成に寄与する可能性がありますが、製造業における生産スケジュール作成においては、機械学習(Machine Learning)の遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithm)で最適化を探索します。
例えばインドネシアの日系製造業の生産スケジュール作成時の必要条件として代表的なものとして以下が思い浮かびます。
- 平準化生産の中でラインへの投入順序を最適化したい。
- 熱処理や炉の充填率を100%に近づけたい。
- 納期遅れせずに段取り回数を減らしたい。
- 欠品せずに原材料の在庫を最小化したい。
これらの難しさは、相反するトレードオフの関係にある条件を満たす最適値を見つけることにあり、具体的には納期遅れはNGという条件を満たしながらも、負荷平準化・充填率100%・段取り回数削減を実現する、欠品によるライン停止を防止しながらも材料在庫を最小化する、などの逆方向に作用する条件を同時に満たす最適なスケジューリングを実現することです。
これを旧来型の製造業システム開発という枠組みの中で、プログラミング言語により「順次」「繰り返し」「分岐」という基本処理を駆使してロジックを組み立てることの難度の高さは容易に想像できますが、最新の生産ラインのスケジューリングでは遺伝的アルゴリズムにより最適解を探索することが可能となり、製造業システムの分野でのAIの登場によるパラダイムシフトが起きています。
AIによるコモディティ化が生産スケジューラの導入方法を変える
インドネシアでの生産スケジューラの導入では、お客様との要件定義に基づいて、計画コマンドでスケジューリングロジックを組み立てることに多くの工数を消費していましたが、今は遺伝的アルゴリズムによる生産スケジューリング最適解の探索ロジックが、生産スケジューラAsprovaのSolverというオプションのコマンドに実装されており、相反する条件に係数を掛けて重みづけするだけで、精度の高い最適化された生産スケジュールが高速に自動生成されます。
私はインドネシアでの生産スケジューラ導入プロジェクトで、インドネシア人の生産管理担当者から「楽になるためにシステム化しているのに、何で導入がこんなに大変なんだ」と何度も不満を言われたことがあり、そのたびに「将来楽になるために今苦労しているんですよ」と表情を押し殺しながらも内心キレ気味に返事をするしかありませんでした。
それが生産スケジューリングロジックにAIが実装されたことで、彼らのお望み通りの最適化されたスケジュールが最初の一発目から自動生成されるようになり、私のプロジェクトにおける対人ストレスも軽減されることとなりましたが、逆に言えばこれまで難易度が高かった生産スケジューラの導入が、ITを専門としないコンサルティング会社や営業会社でも出来るくらいに難易度が下がったことを意味します。
インドネシアでも最新のAIによる技術革新によって、生産スケジューラがコモディティ化していく未来がはっきり見えており、弊社のような製造業システム開発会社では、差別化するためにサービスの付加価値を上げる努力が益々必要になっています。