インドネシアの幸福度を支える寄付文化と宗教観

2021/12/26

インドネシアの寄付文化と宗教観が幸福度に与える影響を構造化した図解

神の存在を信じることで、与えられた環境に感謝し、幸せを感じることができます。また、寄付によって社会的弱者を救済することは、倫理的に正しい行いであるとされています。このような教育を子供の頃から受ける点で、宗教には大きな意味があります。

インドネシアの民族・宗教観と多様性を示す構造化した図解

インドネシア人の性格・民族・宗教観|多様性に生きる国民性とは?

インドネシアの人口は2億8千万人で、ジャワ島に4割が集中しています。ジャワ人は45%、スンダ人は15%を占め、イスラム教徒が9割です。ジャワ人は幸福と調和を重視し、バタック人やマドゥーラ人は気性が激しいとされます。

続きを見る

この記事でわかること

  • インドネシアでは寄付文化が根付いており、世界寄付指数で1位です。
  • インドネシアの人口の87%がイスラム教徒で、宗教が社会支援に大きく寄与しています。
  • ゴトンロヨンの精神が職場や地域での相互扶助を促進しています。
  • インドネシアは自殺率が低く、今を楽しむ宗教的価値観が影響しています。
  • 日本の幸福度ランキングは低く、無宗教や偏差値至上主義が影響しています。

インドネシアが世界幸福度で評価される理由:寄付文化・相互扶助・宗教の力

インドネシアは、人口2億8千万人を抱える巨大市場であり、生産年齢人口が従属人口の2倍以上ある「人口ボーナス」状態が2030年まで続くとされています。このような経済力の潜在性に注目が集まる一方で、SNS上では「若者が幸せと感じる割合が高い」や「寄付したことがある人の割合が世界一高い」といった国民の心の豊かさが評価されています。

1991年に私が大学に入学した頃、日本はバブル崩壊の始まりを迎え、その後の『失われた30年』で長期デフレが続きました。2020年には日本の世界幸福度ランキングが62位に後退し、2021年の世界寄付指数ではインドネシアが1位、日本が最下位となりました。

ちょっと前に世界寄付指数でインドネシアは一位、日本は最下位で冷たいみたいな話があったが、考えて見れば交差点に居る子供やお婆さんへ渡す小銭も寄付にカウントされるとすれば、日常的に寄付する機会が多いという環境の違いだけで、別に日本人が冷たいというわけでもないような気がする。

インドネシアでは、職場の同僚やその家族に災難があればすぐにカンパの箱が回ってきます。また、ラマダン(断食月)明け直前には給料の低いオフィスボーイに対する寄付(sumbangan)の茶封筒が回ってきます。これらは、インドネシアの村社会に根付く相互扶助のゴトンロヨン(Gotong Royong)の精神や、イスラム教の五行の一つであるザカート(Zakat)の考え方に基づいています。

2020年から2021年にかけての感染症対策では、インドネシア商工会議所(KADIN)が主導し、民間企業の従業員を対象とした無料の予防接種がゴトンロヨンワクチン接種プログラムと呼ばれました。

インドネシアの人口の87%はイスラム教徒であり、宗教的価値観が人権を侵害することもありますが、健康危機時のマスクや消毒液の配賦、貧困層への支援、オンライン授業の教育支援などにおいて、イスラム団体や教会などの宗教ネットワークが大きな役割を果たしました。

事例:インドネシアでは、寄付や相互扶助が日常生活に根付いており、宗教的な背景がその基盤となっています。

要点:インドネシアの幸福度の高さは、寄付文化や相互扶助、宗教の力が大きく寄与しています。

インドネシアの多民族社会と文化的背景を構造化した図解

インドネシアの多民族社会と文化的背景の理解

インドネシアには300以上の民族が存在し、地域の言葉や風習が同族意識を形成しています。ジャワ人は幸福と調和を重視し、合議制や相互扶助の村社会の不文律が存在します。スンダ人は色白で働き者とされ、離婚率が高い背景には親元を離れたくない男性…

続きを見る

自殺率の低い国インドネシアに学ぶ「今を幸せと感じる」生き方の理由

2021年12月18日、日本の有名芸能人が自ら命を絶つという衝撃的なニュースが流れました。彼女は多くの人々に愛され、歌手・女優・声優としてマルチな才能を発揮していましたが、私が真っ先に感じたのは「またインドネシアでは起こりえないような出来事が日本で起こってしまった」ということでした。

インドネシアはもともと自殺が少ない国です。WHO(世界保健機関)による2016年の世界の自殺率ランキングでは、OECD加盟国の中でサウジアラビアに次いで少ないとされています。十分な財産を持ち、仕事も順調に見える人が自ら命を絶つことは、インドネシアでは考えにくいのです。

日本の自殺率がG7の中で最も高いのは、日本人が不幸について思い詰める傾向があるためです。これは無宗教であること、偏差値至上主義の学校教育、一度失敗した人が社会的に救済される仕組みの不足など、さまざまな要因が考えられます。

インドネシアでは、宗教的制約の中で今を最大限に楽しむことが重視されます。将来成功したらもっと幸せになれる、失敗しても誰かが助けてくれると考えるのが一般的です。これに対し、日本では今を犠牲にして頑張ることで将来の成功を目指す傾向があり、一度失敗すると再起が難しいというギャンブル的要素が大きいのかもしれません。

インドネシアでは、今置かれた環境の中でのrejeki(神の思し召し)に感謝するように教えられます。人生の目的がその環境での幸福指数の最大化であるとすれば、これは非常に合理的な考え方です。

宗教的価値観の根本には「Hidup mati di tangan Tuhan(生きるも死ぬも神の手の内)」という言葉があります。この世の幸不幸もやがて訪れる死も、すべてが神の意向によるという考え方です。金銭的な裕福度合いに関わらず、置かれた環境に感謝し幸せを感じることが普通であり、これは無宗教の日本人には理解しにくい人生観かもしれません。

神の存在を信じることで今を幸せと感じることができ、社会通念上許される範囲で更なる幸せを追求し、その過程で出会った社会的弱者を救済することが倫理的に正しいと教育される点で、宗教には大きな意味があります。