インドネシアのIT人材活用とオフショア開発の現状

2021/10/24

ホテルインドネシア前広場

日本では慢性的なIT技術者不足が続いており、エンジニアの単価が上昇しています。この増え続ける需要に対応するためには、海外人材の活用が不可欠であり、インドネシアもオフショア開発拠点として注目されています。

また、高度技術人材の地方都市への分散化により、インドネシアで開発管理を行う上位者には、リモートを前提としたマネージメントスキルがますます求められています。

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この記事でわかること

  • 日本ではIT技術者不足が深刻で、エンジニアの単価が上昇しています。
  • インドネシアはオフショア開発拠点として注目されていますが、人件費の高騰が課題です。
  • リモートマネジメントスキルが、インドネシアでの開発管理において重要です。
  • インドネシアの多民族社会では、宗教や文化に配慮したマネジメントが求められます。
  • ジャカルタの賃金高騰により、国内ニアショア開発の拡大が進む可能性があります。

オフショア開発の現状と中国からインドネシアへのシフト

オフショアとは「国または本土の沿岸から遠く離れた地域」という意味です。オフショア開発の主な拠点は中国で、日本語を話すIT人材が豊富です。しかし、人件費の高騰によりコスト削減のメリットが小さくなっています。

インドネシアも同様の状況にありますが、新興国が発展する過程では必ずこのような現象が起こります。中国以外では、ベトナムやインドもオフショア基地として知られています。インドは「ゼロを発明した民族」としてITの素養が高いとされていますが、実際には仕事の質にばらつきがあり、再作業が必要になることもあるようです。

数パーセントの優秀なインド人が国外に居たり、海外向けの仕事をしているため、インド人全体がITに優れていると評価するのはナンセンスだという意見もあります。

インドネシアのジャカルタもオフショア開発の拠点として注目されています。特にアンドロイドやiPhoneアプリなどのモバイル系やWEB開発が中心です。インドネシアはスマートフォーン王国であり、この分野の技術者が多いのは理解できます。スマホアプリ開発技術者はインドネシア人にとって憧れの職業かもしれません。

一方で、旧来型のクライアントサーバー型の業務系システムのオフショア開発はあまり聞かれません。これは、日本側とのコミュニケーションの頻度が高く、テスト環境やステージング環境の共有が難しいためです。

日本とインドネシア間のインターネット回線速度は遅く、WebEXやSkypeが主なツールでした。高速回線でZoomやMicrosoft Teams、Google Meetを使った快適なリモートワーク環境はまだありませんでした。

インドネシアでのオフショア開発の成功は、日本語ベースの仕様をインドネシア語でブレイクダウンできるブリッジSEの能力に大きく依存します。これは、日本人に比べて時間にルーズなインドネシア人技術者を管理し、スケジュール通りにプロジェクトを進める能力です。

日本語が堪能でシステム開発に知見のあるインドネシア人がいれば理想的ですが、そのような人材は希少で、優秀な人は既に独立してビジネスをしています。安定志向で日本語かIT技術のどちらかを持つインドネシア人材をブリッジSEとして育成し、日本とインドネシアの架け橋にするビジネスができれば最高です。

事例:ある日本企業がインドネシアでのオフショア開発を試みた際、現地のブリッジSEがプロジェクトの進行を円滑にし、予定通りに納品することができました。

要点:オフショア開発の成功には、現地の文化や言語を理解し、プロジェクトを適切に管理できるブリッジSEの存在が重要です。

インドネシア人技術者の人件費高騰とオフショア拠点としての現状

インドネシアでは好景気によるインフレの影響で、優秀な技術者の人件費が高騰しています。このため、インドネシアがオフショア開発拠点としての魅力が薄れているのが現実です。しかし、国内向けのWEB・モバイル開発需要に対してリソースが不足しているため、技術移転を含めたインドネシア人IT技術者の育成が日印尼双方にとって理想的なビジネスとなる可能性があります。

贔屓なしで日本のIT技術者は超レベル高いし、品質や納期に対するマインドセットは比較にすらならない。日本国内が人材不足で技術者のガラパゴス市場みたいに見えて本当にもったいないと思う。

名目GDPでは日本が上位、インドネシアがそれを追う構図ですが、長期では逆転の可能性も指摘されます。そうなれば、インドネシア企業が日本でオフショア開発を検討する可能性も十分にあります。

オフショア開発の基本は「人件費の安い国で開発コストを下げる」ことです。しかし、ジャカルタの技術者の給料が日本の会社の給料よりも高額になるケースもあり、オフショアのメリットが薄れています。

長期デフレの日本に対して、インドネシアの技術者単価が上がり続ける状況下では、オフショアのメリットがないと思っていたが、ここ日本の単価上昇傾向を見ると、コスト面だけで言えば当地での開発拠点化も十分成立するんじゃなかろうか。

一人当たり名目GDPで見ても、日本はアジアの上位グループに位置します。ジリ貧論や危機感をあおる記事は多く見られますが、GDPの順位そのものを気にする必要はありません。

むしろ、日本の蓄積された資産や技術力をインドネシアの若年労働人口のレベルアップに繋げるビジネスの育成が、日印の理想的な共存共栄の姿です。しかし、インドネシアが日本を最良のパートナーと見なすかどうかは未知数です。

事例:ある日本企業がインドネシアの技術者を育成し、現地での開発プロジェクトを成功させたことで、両国の技術交流が進んだ事例があります。

要点:人件費の変動に関わらず、技術力の共有と育成を通じた国際協力は、長期的なビジネスの成功に繋がります。

インドネシア人エンジニアのマネジメントで直面した課題とエピソード

インドネシアは多民族社会であり、ジャワ人、スンダ人、ミナン人、中華系インドネシア人などが共存しています。宗教や風俗も多様で、特にイスラム教徒が人口の9割近くを占めています。彼らは一日に5回のお祈りを行い、金曜日のお昼には特別な礼拝があります。そのため、ミーティング中でも宗教ルーティーンに合わせて休憩時間を設けるなど、日常的に配慮が必要です。

断食月には早朝から水も飲まず食事もしていないため、エンジニアのパフォーマンスが低下します。このため、緩めのスケジュールを組むことが求められます。また、夕方には家族と一緒に断食明けの食事(Buka Puasa)をするために早く帰宅したいという意向を尊重し、引き止めないように心掛けます。

日本人のマインドに近いのは中華系エンジニアですが、彼らは非常に優秀で向上心が強いため、年次や仕事量に応じて賃上げ要求を受けることがあります。優秀な中華系インドネシア人を優遇しすぎると、ジャワ人など他の民族のエンジニアとの軋轢が生じることもあるため、配慮が必要です。

エンジニア職に就くインドネシア人の英語力は、日本人が英語でコミュニケーションを取る上で十分ですが、彼らの宗教や民族特有の風俗を理解し、懐に入って本音を引き出すためには、インドネシア語ができると良いでしょう。インドネシア人は基本的に幸福と調和を重視し、家族を大切にします。感情的になったり無理強いをするのはNGであり、自由な性格の人が多いため、オフィス勤務のほうがコントロールしやすいです。

日本とインドネシアの1人当たり名目GDP格差はかつては非常に大きかったものの大幅に縮小し、生活コストはジャカルタのほうが日本より高く感じることもあります。インドネシアはオフショア開発拠点としての優位性が少ないと言われますが、中部ジャワや東ジャワのエンジニアをアサインすることでコストの優位性を出せます。その際、インドネシア語が堪能なブリッジSEがいるとコミュニケーションがスムーズになります。

インドネシアの民族

インドネシアの多民族社会と文化的背景の理解

インドネシアには300以上の民族が存在し、地域の言葉や風習が同族意識を形成しています。ジャワ人は幸福と調和を重視し、合議制や相互扶助の村社会の不文律が存在します。スンダ人は色白で働き者とされ、離婚率が高い背景には親元を離れたくない男性…

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事例:過去に経験したエピソードとして、優秀な中華系エンジニア同士が足を引っ張り合い、社内に派閥ができ、日本人が板挟みになることがありました。また、優秀なスンダ人エンジニアが突然音信不通になり、後に一家全員が黒魔術にかけられたと連絡がありましたが、実際は病気の家庭内感染ではないかと推察されます。さらに、親族の不幸や雨、渋滞、空気が体内に入って苦しい(Masuk Angin)などの理由で仕事を休まれることが多く、調整に苦労しました。

フルリモート管理の課題とインドネシア特有のリスク要因

ほぼフルリモートでの業務の中で、AWS上でのLaravelを使ったPHPによるWEBアプリケーション開発プロジェクトに参加し、インドネシア側のエンジニアのマネージメントを行う機会がありました。この経験を通じて、インドネシア人エンジニアだけでなく日本人のエンジニアとも多くの交流を持つことができました。

経験豊富な日本人エンジニアと、20代前半の若手インドネシア人エンジニアの間に立つ立場として、技術力の問題以前に、インドネシア特有の民族と宗教によって育まれた気質がプロジェクトの進捗に与える影響の大きさを痛感しました。

事例:贔屓なしで日本のIT技術者は非常に高いレベルにあり、品質や納期に対する意識は他国と比較にならないほどです。日本国内が人材不足で技術者のガラパゴス市場のように見えるのは本当にもったいないと思います。

インドネシア人技術者と長年仕事をしてきたため慣れているつもりでしたが、ほぼフルリモートでのマネージメントは初めての経験でした。病気による長期離脱、肉親の病気、大雨による回線不良など、さまざまな理由で音信不通になるという、リモートならではの見えない敵との闘いに神経を擦り減らしました。

3日ほど音信不通だった技術者から、一家全員黒魔術にかけられた、という連絡が来ました。

インドネシアの人件費の上昇と技術力が比例せず、インドネシアでのオフショア開発は中国やベトナムに比べてメリットが少ないと考えていました。しかし、日本のIT業界は慢性的な人手不足で、エンジニア単価が上昇しており、今後も需要が増え続ける中で日本国内でのエンジニア不足は解消される見込みがないため、海外でのオフショアによるフルリモートプロジェクトが増えていくと予想されます。

事例:長期デフレの日本に対して、インドネシアの技術者単価が上がり続ける状況下では、オフショアのメリットがないと思っていましたが、日本の単価上昇傾向を見ると、コスト面だけで言えば当地での開発拠点化も十分成立するのではないでしょうか。

経済発展が著しい東南アジアはインフレ率も上昇しており、オフショア拠点としてのコスト上昇は避けられません。しかし、ベトナムのように国策としてオフショア開発に力を入れている国や、ラオス・カンボジアといったコストが割安な国々に対して、インドネシアが競争優位性を発揮するためには、エンジニアを束ねる上位者のマネージメントスキル向上による差別化と、国内での単価の低い地域へのニアショアリングによるコストダウンが必要です。

事例:国策でオフショア支援しているベトナムや、コストがさらに安いラオスやカンボジアより優位性を保つには、上位者のマネージメントスキルを上げて、地方の技術者をフルリモートで雇用するしかないのではないでしょうか。ただし、大雨、親族の病気(たくさんいる)、泥棒など様々な理由で音信不通のリスクが高まります。

事例:あるプロジェクトでは、インドネシアのエンジニアが突然音信不通になり、後に家族全員が黒魔術にかけられたと報告されました。このような予期せぬ事態に対処するための柔軟な対応が求められます。

要点:フルリモート環境では、文化的背景や予期せぬ事態に対する柔軟な対応がプロジェクトの成功に不可欠です。

ジャカルタの高騰する賃金と物価が促す国内ニアショア開発の拡大

外出制限下で、ジャカルタでは活動制限が発動されました。必須分野と重要分野に属さない一般企業では、社員のオフィス出社が50%以下に制限され、多くの社員が1年半以上在宅勤務を続けたため、業務のリモート化が進み、人材の地方分散が進みました。

インドネシアは多民族社会であり、親元を離れることが好ましくないとされる民族もいます。例えば、西ジャワのスンダ人エンジニアは、頻繁に田舎に帰省するため、ジャカルタに戻る日が遅れることが多く、マネージメントにとっては課題となることがあります。

IT技術によって製造業の生産性と品質を向上させ、経済成長率を5%から6~7%に押し上げることを目指すメーキングインドネシア4.0の柱の一つに、高度技能人材育成があります。約18,000の島々が広がるインドネシアでは、地域の持続可能な発展が重要な課題であり、カリマンタン島への首都機能移転は、地域経済間の格差是正に向けて大きな意味を持ちます。

ジャカルタの賃金と物価が高騰しているため、中部ジャワや東ジャワへの国内ニアショア業務受託ビジネスが増える可能性があります。

ジャカルタ特別州やブカシ県、カラワン県の最低賃金は、中部ジャワや西ジャワ州の一部よりも2倍近く高いです。このため、インドネシア国内でのニアショア化が進むことが予想され、リモートを前提としたエンジニアのマネージメントスキルがますます求められるでしょう。

事例:ジャカルタの企業が中部ジャワに開発拠点を設けることで、コスト削減と人材確保を実現した事例があります。

要点:賃金や物価の高騰は、企業にとって新たな拠点設置や業務の分散化を促す要因となります。