コーヒーを酸っぱく感じる理由は、酸味の強い種類のコーヒーを空腹時に飲んでいる場合が多く、ワインと料理の相性をマリアージュと言うようにコーヒーも一緒に何を食べるかによって味わいは変わり、油っぽい料理を食べた後には油を分解する酸味が強いコーヒーが合います。 インドネシアのコーヒー 「インドネシアのコーヒー」と聞いて思い浮かぶのはオランダ植民地時代に持ち込まれたコーヒーノキを起源とするプランテーション、北回帰線と南回帰線の間に東西に連なるコーヒー栽培に適した地理的風土、多数の高原地帯で栽培され風味も味わいも異なるご当地コーヒーなどです。 続きを見る
コーヒーに酸味が感じられる場面
自分の周りの人間にコーヒーの好みを聞くと、日本人もインドネシア人もほぼ例外なく「酸っぱいのは嫌い」と言います。
なんでコーヒーを酸っぱいと感じるかと言えば、焙煎工程でそもそも浅く焼いてある、本来酸味の強い種類のコーヒーを空腹時に飲んでいる、もしくは酸味自体がコーヒー豆本来の味わい深い酸味ではなく、不快な酸味だったりするからだと考えられます。
- 焙煎工程で焼きが浅すぎ。
- 酸味の強い種類のコーヒーを飲む場面が間違っている。
- 酸味の強い種類の豆が古く酸化している。
一般的にはコーヒー豆は鮮度が落ちると酸化して、不快な酸味が出る傾向があると言われますが、僕が常飲しているAceh Gayo(アチェ・ガヨ)の深煎りコーヒーは、鮮度の落ちると豆自体が発する香ばしさが失われ、酸味も苦味も薄い舌触りが物足りない、炭酸の抜けたソーダのようなコーヒーになります。
これがTanah Toraja(タナ・トラジャ)など、元から酸味の強い種類の豆が浅く焙煎されている場合には、日数が経ちすぎて酸化することで酸っぱくなる可能性があります。
インドネシアの数あるコーヒーの中でもトラジャコーヒーは、芳醇な香りと口に含んだときの柑橘系の豆独自が持つ風味が特徴であり、サイフォン式で淹れることでアロマが室内に充満して幸せな気分になれるほどで、この酸味がなくなったら風味のない味気ないものになるでしょう。
空腹時にコーヒーを飲むと胃が荒れるといいますが、確かに空き腹で酸性度の高いトラジャコーヒーを飲めば胃に負担が大きいかもしれませんが、ダークチョコレートを思わせる濃厚なコクが魅力のマンデリンコーヒーであれば、空腹時に砂糖とミルクなしのブラックで飲んでも意外と平気です。
まあこのへんは人によるとしか言いようがないのですが。
しかし考えてみれば、インドネシアではナシゴレンやミーゴレンにはacar(アチャール)という野菜の細切りの漬物が添えてあり、日本でもカレーには福神漬けがついてくるように、油っぽい食べ物には油を分解する酢の添え物が合うのは万国共通です。
同じ理屈で酸味の強いトラジャコーヒーは、油っぽい中華料理やパダン料理を食べた後に、口や食道をすっきりさせるcuci mulut(お口直し)として最適であり、仮に自分が飲んでいるコーヒーの酸味がキツイと感じるときは、コーヒー自体の品質だけでなく、一緒に何を食べているかにも注目する必要があります。
ワインと料理の相性を『結婚』にたとえて『マリアージュ』と言いますが、渋みの強い深紅の赤ワインは、スパゲティカルボナーラとかグラタンなど、クリームソース系の料理には合わないですよね?
渋い赤ワインはやはりステーキとかハンバーグなどの肉料理、スパゲティボロネーズなどのトマトベースの料理との相性が抜群であることは一般的に知られた事実です。
同じようにトラジャコーヒーを、焼肉や中華料理を食べた後に飲めば、今まで単に酸っぱいと感じていた独特の酸味が、爽やかなフルーティなテイストに感じられるかもしれません。
酸味ゼロのコーヒーは甘いものとの相性が抜群
マクドナルドの朝食セットに付いてくるコーヒーには一切酸味が感じられず、朝一の寝覚めの胃にもやさしいコーヒー、しかもRefill(おかわり)自由なので2~3回くらいおかわりしても、インドネシア人の店員のお姉さんは優しいので、嫌な顔一つせずポットで丁寧に注いでくれます。
コーヒーそのもののアロマをストレートに放ち、サラッとしていながらボディの輪郭がはっきりとした飲みやすいマクドナルドのコーヒーは、ソーセージマフィンにもホットケーキにもPaNasセットのスクランブルエッグにもチキンにも合う、最大公約数的な味を追求した結果だと思われます。
そしてこれがまたアップルパイとかチョコレートパイとの相性が抜群なのです。
同じように北スマトラのトバ湖周辺で栽培されるマンデリンコーヒーは、酸味控えめでダークチョコレートの風味と形容されるほろ苦さが特徴で、甘いケーキやjajanan(インドネシアのお菓子)との相性が抜群で、『食後のお口直しのコーヒー』というよりも『3時のおやつのコーヒー』に適していると思います。
コーヒーの酸味にもいろんな表現がある
ワインの味わいは「甘み」「酸味」「渋み」「アルコール」の4つの要素で表しますが、コーヒーの場合は「香り」「酸味」「苦味」「コクと深み」の4要素だと言われます。
コーヒーの味わいの4要素の表現例
- 香り:フローラル・柑橘系・ダークチョコレート・ナッツ・独特のアロマ
- 酸味:すっきりした・ほろ甘い酸っぱさ・舌を刺すような刺激・心地よい程度の酸味
- 苦味:多少のビターテイスト
- コクと深み:ダークチョコレート・サラッとした・キリッっとした
インドネシア各地で生産されるスペシャルティコーヒーを評価する際に、微妙な表現の違いでマイナスにもプラスにも振れるのが酸味であり、表現方法によってコーヒーの味わいを相手に想像させるために最も明確で判りやすい基準です。
ただし酸味の強いコーヒーに対して苦手意識がある人にとっては、表現は多少異なれど酸っぱいものには変わりなく、飲み会の席でコーヒーの味わいについて熱く語ってもウザイ奴と思われるだけなので「確かに酸味の強いコーヒーもあるけど一緒に何を食べるかによって味わいは全然変わってくるよ」と言い方を変えると理解してもらえるかもしれませんね。