生成AIがインドネシアでのB2Bコンテンツマーケティングへ与える影響

ジャカルタ

人間がGoogle検索で上位表示されているリストから、WEBサイトのリンクを辿り、調べて得た情報を比較検討し総合的に判断するというプロセスを、高速で自動的するのが生成AIの動きである以上、今後もインドネシアでのB2Bコンテンツマーケティングは有効であると考えます。

インドネシア日系企業向けのB2Bコンテンツマーケティング

2012年頃、価値ある情報を発信することがSEO的に評価され、検索上位に表示されることで有効な集客効果に繋がるというコンテンツマーケティングの考え方を知り、競合の少ないインドネシアで良質なWEBサイトを立ち上げれば、零細企業でもドメインパワーという指標では、大企業と対等に戦えるはずと喜んだのも束の間、2016年のWELQ問題をきっかけに、一般的に大企業ほど有利な権威性が重視されるようになり、記事製作に対する情熱が薄れたのは私だけではないはずです。

しかもインドネシアの日系製造業向けソリューション営業という世界では、リード獲得のためにネットが果たす貢献度は想像以上に低く、時間と労力を掛けてオンライン上に100記事公開するよりも、日本人村社会の中にあるゴルフ場や飲み屋などオフラインでの一件の紹介のほうが確度が高いという現実を知り、インドネシアでのB2B営業でWEBマーケティング自体にどれだけ意味があるのだろうかという根源的な疑問を持つに至りました。

その一方で、工業団地のお客様を訪問すると「いつもブログ読んでます」「Twitter(X)フォローさせてもらってます」と言われる機会が意外と多く、私の関知しないところで会社の知名度アップに貢献していたと感じ、将来的にソリューションに対する潜在層が顕在層化する際に、弊社の名前が第一想起か第二想起くらいにランクインしていれば、リード獲得にまで繋がるカスタマージャーニーとなることに気づかされました。

生成AIの普及でB2Bコンテンツマーケティングはオワコンになるのか?

私を含む多くの人々の生活がSNS中心となり、コンテンツも文字より動画が好まれる今、他人のブログやWEBサイトの記事を熟読するという行為自体が既にオワコン化しており、ChatGPTやGrokなどの生成AIが普及してコモディティ化すると、Google検索自体がオワコン化し、リード獲得のために頑張って役に立つ記事を書こうという、コンテンツマーケティングに対するモチベーションが下がりがちです。

例えばインドネシアの日系製造業様が、生産管理システムの導入のためネット上で情報収集をする際、Google検索の場合は「インドネシア 生産管理システム」といったキーワードで検索をし、上位表示された複数のIT会社のリンクからホームページを開いて、お問い合わせフォームからコンタクトを取るという行動が想像できますが、その過程でどの会社のリンクを開くかという選択の意思が入りますし、複数のWEBサイトの情報を元に、総合的に判断した結果、頭の中で優先順位を付けているはずです。

一方で生成AIの場合は「インドネシアで生産管理システムを導入する場合、どこの会社に依頼するのが良いでしょうか?」というダイレクトなプロンプトを打った場合、その時点での最新の蓄積された情報を俯瞰的に整理し、私情や偏見を挟まず合理的な判断で候補をリスト化してくれます。

つまり生成AIは単に質問に対して回答してくれるだけのように見えても、実際には自分で複数のWEBサイトを調べて得た情報を比較検討した上で、総合的に判断で候補を選ぶ、というプロセスを自動的に実行してくれているのであり(実際のAIの動きとは異なります)、Googleに上位表示されていなければ、生成AIが比較検討する対象にも上がらない可能性が高いわけです。

コンテンツ製作に対するモチベーションの維持

顕在層の情報収集が、Google検索から生成AIへのプロンプト入力にシフトすると、自社サイトへ誘導されて記事が読まれる回数が減ることが想像される上、生成AIに好意的に参照してもらうという、コンバージョンのKPIを設定しにくい状況では、私の場合はコンテンツ製作へのモチベーションが下がりますので、ものは考えよう、家のモップ掛けや草むしりを運動不足解消の絶好の機会と考えるのと同じく、コンテンツ製作やリライトは自分の頭の中の情報整理と考えるようにしています。

東南アジア最大の人口を抱え、世界有数の親日国、中間層拡大による内需拡大など、魅力機的な要素が満載に見えますが、実際はインドネシアに関するキーワード検索のボリュームは決して大きくなく、さらに約800社と言われる日系製造業というニッチな分野での戦いは、コンバージョンまでのハードルは高く精神的に消耗します。

インドネシアでの日系製造業向けB2Bコンテンツマーケティングは、5~10年後にインドネシアの注目度が上がり、日本からの工場移転や脱中国化の流れから進出企業が増加し、IT需要が爆上りしたときへの投資とも言えるものであり、インドネシアという国の将来にフルベットした私のような人間にとって、信じるしか道はない宗教に近いものかもしれません。