ジャカルタがPSBB(大規模社会制限)緩和による移行期間を中止し、再び強化することについての評価は分かれています。しかし、物事の評価は見方や考え方によって変わるものであり、異なる評価を認めつつ、全員が共通の目的に向かうよう導くことがリーダーシップの役割です。
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インドネシアのビジネス事情まとめ|進出・継続・IT・市場戦略
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この記事でわかること
- ジャカルタはPSBBを再強化し、特定11分野以外の企業には在宅勤務を義務付けました。
- アニス知事は市内のICUが満床になる恐れからPSBB再強化を決定しました。
- PSBB再強化により、ジャカルタの消費活動や日系製造業に影響が出ると予想されます。
- インドネシアでは地方自治体の首長の権限が強く、アニス知事は高い教養を持つリーダーです。
- リーダーシップは異なる意見を統率し、共通の目標に向かわせる役割が求められます。
群盲評象に見る判断の分断|政策への評価が割れる理由とは
アニスジャカルタ特別州知事は、新型コロナ感染拡大により市内のcovid-19受け入れ病院のICU(集中治療室)が満床になりそうな状況を憂慮し、2020年6月から続いていたPSBB(大規模社会制限)段階的緩和による移行期間を中止し、同年、PSBB再強化を行うことを発表しました。
これにより国民の生活に直結する特定11分野以外の企業には在宅勤務が義務付けられ、再び飲食店でのイートインも禁止となることで、ジャカルタの消費活動は確実に落ち込み、弊社が顧客とする日系製造業の生産活動にも影響を及ぼします。弊社も年末にかけて苦しい状況になることが予想されますが、良いことと言えば市内主要道路への侵入制限する奇数偶数規制が解除されることで移動が楽になることくらいでしょうか。
(追記)
アニス州知事は政財界からの反発を受けて、従業員をやむを得ず出勤させる場合には出社率を25%以下に抑えることを義務付けるという一定の配慮を示しました。
日本政府による緊急事態宣言(4月8日~5月6日)解除後に、東京都が独自に延長していた緊急事態宣言の場合、都知事選に向けた小池知事のスタンドプレーではないかという見方がありましたが、インドネシアで景気後退による企業倒産や失業者の増加のニュースが連日報道される中で、今回の決定を発表すればジャカルタ市民からの反発が多いことは予測できるわけで、それを覚悟の上ということであればアニス知事の決断を尊重せざるを得ません。
一方でジャカルタ在住日本人には駐在員、永住希望者、自営業者など様々な立場の人がおり、所属する会社の業種や規模、役職が違えば物事の考えようが違うため、今回の決定に対する評価が変わるのも当然です。コロナウィルス感染拡大阻止のための決定に対してSNS上で評価が分かれる様子を見て、ふとインド発祥の「群盲評象」という有名な寓話を思い出しました。
6人の盲人に象を触らせてそれが何かを当てさせる試みで、そのうち足を触った盲人は「柱みたい」と答え、尻尾を触った盲人は「綱みたい」と答え、鼻を触った盲人は「木の枝みたい」と答え、耳を触った盲人は「扇みたい」と答え、腹を触った盲人は「壁みたい」と答え、牙を触った盲人は「パイプみたい」と答えたことに対して、王様が「君たちは6人は全員正しい。食い違っているのは君たちが象の異なる部分を触っているからであり、象は全ての特徴を備えている」と答えたそうです。
経済優先か感染拡大阻止優先か、物事は考えようによって評価が変わるものですが、そもそもPSBBを再開して感染者が減ったとしても、緩和すればまた増えるわけだから、ウィルスを封じ込めること自体が無意味という意見がインドネシアでは少ないような気がします。
発表自体が唐突なタイミングで行われた感が強かったことに対して「方針がブレブレ」と否定的に見る意見と「このままではマズイと感じたから迷わず方針撤回するのはブレではなく英断」と肯定的に見る意見があります。学校から見える3本の煙突を裏山から見たら重なって1本に見えるのと同じことであり、物事を一面的に見て判断を下すと本質を見間違う恐れがあります。
事例:アニス州知事がPSBB再強化を発表した際、政財界からの反発を受けて出社率を25%以下に抑える配慮を示したことが、異なる立場の人々に様々な評価をもたらしました。
要点:異なる視点や立場から物事を評価することで、同じ事象に対する多様な見解が生まれます。
インドネシアで求められる現地法人社長のリーダーシップとは?―文化・背景・適性から読み解く現場統率の実情
インドネシアでは、1999年の法律改正による地方分権(Otonomi daerah)によって、地方自治体の首長の権限が大きくなりました。これにより、地方の首長が大胆な決断を下すことが可能になっています。アニス知事は、アメリカのメリーランド大学で公共政策学の修士号、北イリノイ大学で政治学の博士号を取得し、選挙討論会の司会や第一次ジョコウィ政権で教育文化大臣を務めるなど、高い教養を持つ人物です。
リーダーシップとは、異なる意見を持つメンバーを統率し、全員が共通の目標に向かって進むよう導くことです。これは、インドの王様が6人の盲人に象を触らせ、それぞれの評価を認めつつ、全員が象だと理解させるようなものです。ジャカルタ州知事は、大きな会社の社長のような役割を果たしています。
私が日頃お付き合いしているインドネシアの日系製造業の現地法人の社長さん達は、製造現場や管理業務部門の出身の方が多いです。営業出身の社長さんにお会いしたことは5回ほどしかありません。
インドネシア人は、強大な力を持つリーダーに従う傾向があります。製造業やIT業界でも、技術を持つ人間が尊敬され、技術を持たない人間は軽視されることが多いです。
日本社会では「自分が格好悪い姿を見せてでもがむしゃらにやる姿」で人を引っ張るリーダーシップが見られますが、インドネシアでは書面契約を重視するため、抽象的な熱意だけでは人を動かしにくいです。営業出身の社長さんが苦労する理由もここにありますが、日本本社が営業出身の社長を現地法人のトップに据えるのは、事業拡大が目的でしょう。
インドネシア現法では、駐在員コストの削減が重要課題となっています。多くの会社が駐在員を減らす方針を取っており、中小企業では社長自らが現場に出たり外回りをすることが多いです。この場合、出身部門に関係なく、日本的な「背中で見せる」リーダーシップが有効かもしれません。
事例:ある日系企業の現地法人社長が、現地スタッフとの信頼関係を築くために、毎週現場を訪れ、直接コミュニケーションを取ることで、スタッフのモチベーションが向上し、生産性が上がったという事例があります。
要点:現地スタッフとの信頼関係を築くためには、直接的なコミュニケーションと現場でのリーダーシップが重要です。