インドネシア通信業界のDX戦略とテレコムの成長要因

2020/07/01

インドネシア通信業界のDX戦略とテレコム成長要因を示す構造化した図解

テレコムのビジネスエコシステムとは、社会の課題に対してグループ企業全体で取り組むことです。テレコムが保有する既存のオンライン接続基盤を活用し、デジタル技術を駆使して新しいビジネスプラットフォームを構築していきます。

インドネシアのビジネス進出と市場戦略の全体像を構造化した図解

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この記事でわかること

  • テレコムはデジタル技術を活用し、社会課題に対応するビジネスエコシステムを構築します。
  • 2020年のテレコムのブランド価値は47.6億ドルで、前年から3%増加しました。
  • Telkomselの収益の70%は通信以外のデジタルサービスによるものです。
  • 2020年7月7日、テレコムはNetflixへのアクセスブロックを解除し、株価が2.3%上昇しました。
  • TelkomはB2B・B2G市場へ戦略転換し、PaDi開発とSIPLah連携を進めています。

インドネシアのデジタル転換と通信業界の急成長|テレコムが牽引するブランド価値向上の背景

外出制限期には、インドネシアのフード業界は大きなダメージを受けましたが、通信事業者やオンラインサービスは売上を伸ばしました。多くの企業でWFH(Work From Home)が採用され、ライフスタイルがオンライン化されたためです。

Brand Finance社のインドネシア企業ブランド順位によると、テレコム(PT Telkom Indonesia Tbk)は47.6億ドルで、前年から3%増加しました。

事例:テレコムの連結収益は18.66兆ルピアで、インドネシアの経済成長率を上回りました。ブランド力指数やブランド使用料率などが総合的に評価された結果です。

要点:テレコムの成長は、ブランド価値の向上と経済成長を超える収益の結果です。

テレコムグループは通信事業以外にデジタルビジネスを強化しており、Telkomselの収益の70%は通信以外のデジタルサービスによるものです。第一四半期には16.3%の売上成長を遂げ、IndiHomeも19.7%成長しています。

インドネシア国営企業が仕掛けるDX戦略|若手起業家を起用したテレコムのビジネスエコシステム改革

インドネシアの国営企業省BUMNの大臣、エリック・トヒル氏は、Eコマースのユニコーン企業Bukalapakの共同創設者であるファズリン・ラシッド氏をテレコムのDigital Business Directorに任命しました。これは、日本でスタートアップを成功させた起業家がNTTやKDDIの取締役になるようなもので、国営企業としては異例の迅速かつ大胆な意思決定です。

ファズリン氏の目標は、テレコム内での「ビジネスエコシステム」の構築です。具体的には以下の4つの変革を挙げています。

  1. 運用プロセスの変革(Transforming Operational Process)
    ⇒既存のプロセスの効率化を図るためのデジタル技術の応用。
  2. 顧客体験の変革(Transforming Customer Experience)
    ⇒様々なチャンネルを通して顧客のニーズを満たすためのデジタル技術の応用。
  3. ビジネスモデルの変革(Transforming Business Model)
    ⇒デジタルでない世界にデジタルプラットフォームを適用(クラウド・IoT・データセンター・決済など)。
  4. デジタルサービスの変革(Transforming Digital Service)
    ⇒消費者の細かいニーズに手が届くようなデジタル技術。

事例:テレコムは、TelkomselやIndiHomeなどのグループ企業全体で社会の課題に取り組み、既存のオンライン接続基盤を活用しながら新しいビジネスプラットフォームを構築しようとしています。

要点:テレコムのビジネスエコシステムは、デジタル技術を駆使して社会の課題に対応し、グループ全体で新しいビジネスプラットフォームを構築することを目指しています。

Netflixがインドネシアで正式解禁|Telkomsel・IndiHomeのブロック解除とコンテンツ規制の変化

テレコムグループがアメリカからのビデオ・オン・デマンドサービスのブロックを解除しました。これにより、子会社である高速通信回線サービスプロバイダーIndiHomeと、携帯電話キャリアーのTelkomselの契約者がNetflixにアクセスできるようになりました。

事例:私のスマホのキャリアーであるProXLでは、以前からNetflixを視聴できました。自宅ではIndihomeに契約しているものの、テレビをほとんどつけないため、Netflixがインドネシアでサービスを開始していたにも関わらず、Telkomselでは観られなかったという事実に驚きました。

要点:主要キャリアーのブロック解除により、Netflixの視聴環境が大きく改善されました。

ブロック解除の理由は、Netflixがインドネシア社会の規範に反するコンテンツの削除ポリシーを改善し、ASEANのオンデマンド業界向け自主規制コードに準拠することに合意したことです。これにより、著作権侵害や児童ポルノ、テロ行為、差別的行為を含むコンテンツを表示しないことが求められています。

さらに、親のアカウントをPINロック機能で保護し、子供に有害なコンテンツをフィルタリングする機能が評価されています。Netflixはローカルコンテンツを増やし、インドネシアの映画産業の発展に貢献することも約束しています。

なお、NetflixやAmazonなどの海外のEC会社もインドネシア国内でPE(恒久的施設)としてPPNの支払が義務化されています。これにより、契約者へのインボイスにPPN10%分が上積みされる可能性があります。

テレコムグループがNetflixブロック解除で株価上昇|Indihome・Telkomsel経由でVOD市場が加速

テレコムグループがNetflixへのアクセスブロックを解除したことで、同日の株価が2.3%上昇しました。この措置により、テレコムグループはビジネス上で大きな利益を得て成長することが見込まれています。Telkomselの1億6,200万人の携帯電話契約者とIndihomeの730万人の固定ブロードバンド回線契約者を活用し、ビデオ・オンデマンド(VOD)市場をプロモーションすることで、Netflixのインドネシア市場への浸透が急速に進むと考えられています。

通常、Indihomeなどの高速通信回線プロバイダーは、インターネット接続とTV、その他サービスをパケットとして販売しています。例えば、契約中のIndihomeのパケットには、インターネット速度20Mbpsに加え、92のテレビチャンネルとiflixというNetflixの東南アジア版VODサービスが含まれています。ここにオプションとしてNetflixが加わる可能性があります。

消費者はNetflixを単独で契約するよりも、パケットで契約する方が経済的です。テレコムグループとNetflixの合意により、IndihomeがNetflixを提供できるようになれば、既存のIndihome契約者にとって魅力的なサービスとなるでしょう。

国営企業TelkomとeBayの合弁ECサイト「blanja.com」閉鎖の背景とインドネシアEコマース市場の競争構造

Tol Jakarta-Cikampekを通ってジャカルタに行く途中で、スマンギ交差点の手前向かって左側にいつもblanja.comの大きな赤字の電光表示が目についていましたが、この国営巨大通信会社Telkomが運営するオンラインマーケットプレイスを一度も利用する機会なく、静かに閉鎖されました。

ebayとの合弁かつTelkomが国営企業という足かせのため大々的なプロモーションが出来ずB2C(対消費者)に強いShopee、Tokopedia、Blibli、Bukalapakには勝てない。B2B(対企業)とB2G(対政府)に特化するpivot(方向転換)戦略の採用が閉鎖の理由。

事例:blanja.comでは家庭用お惣菜などが充実していましたが、Tokopedia、Shopee、Bukalapak、Lazada、Blibliなどのメジャーサイトに比べて知名度が低く、Telkomという国営企業であるが故に民間企業を打ち負かすほどの広告費用をかけることが出来ませんでした。

要点:国営企業の制約と合弁企業の広告戦略の自由度の低さが、競争力の欠如につながりました。

インドネシアのEコマース市場には、日本の楽天もRakuten Belanja Onlineというブランドで進出しましたが、当時はTokopediaとシンガポールに拠点を置くアリババ系のLazadaのシェアが圧倒的で、オンライン上でのカード決済の認可もおりていなかったため、B2Cビジネスから撤退しました。

TelkomがB2B・B2G市場へ戦略転換|PaDi開発とSIPLah連携によるインドネシアのデジタル経済改革

Telkomは、国内企業や零細業者のEコマース参加を推進し、インドネシアのデジタル市場(Pasar Digital=PaDi)の発展に寄与するため、既存のネットワーク基盤を活用して新しいビジネスエコシステムを構築することを発表しました。これにより、業種の垣根を越えて社会の課題を解決することを目指しています。

事例:Telkomは教育文化省(Kemendibud)と協力し、学校調達情報システム(SIPLah)を構築しました。このシステムは、学校の備品やサービスの調達業務をオンライン化し、国からの学校運営補助金(BOS)が正しく使用されているかを監視できるよう設計されています。

要点:TelkomはB2CからB2B・B2Gビジネスへと転換し、ピボット戦略を採用しています。これは市場のニーズに応じた方向転換を意味し、事業の低迷原因を追及し、新たな可能性のある分野を選定する手法です。

TelkomはGojekへの投資計画も進めており、TelkomselユーザーにとってGojekアプリとの連携サービスが期待されます。しかし、Gojekの創業者で教育文化大臣を務めるナディム・マカリム氏との関係が、B2Gビジネスの寡占状態を招く可能性があり、ビジネス機会の公平性に関する批判が出ることも考えられます。