インドネシアのバティックとその文化的背景

2020/05/16

インドネシアのバティックとその文化的背景を示す構造化した図解

インドネシアの伝統的なろうけつ染めであるバティックは、ユネスコの世界無形文化遺産に認定されています。それ以来、毎週金曜日はバティックデーとして、バティックの着用が奨励されています。バティックの制作には、銅板製のチャップやチャンティンを用いた手描きによる蝋付けの2通りの防染技術があります。

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この記事でわかること

  • バティックは2009年10月2日にユネスコの世界無形文化遺産に認定されました。
  • 毎週金曜日はインドネシアでバティックデーとしてバティックの着用が奨励されています。
  • バティックの制作には、チャップやチャンティンを用いた防染技術が使われます。
  • 中部ジャワのジョクジャカルタやソロでは、Soganという古典的モチーフが特徴です。
  • バティック絵画の制作工程には、蝋による防染や染色、蝋落としが含まれます。

インドネシアの蝋結染(ろうけつ染)バティックが世界無形文化遺産に認定された背景と地域ごとの伝統モチーフ

インドネシアのバティックが世界無形文化遺産に認定されたのは2009年10月2日です。この認定は、マレーシア政府が製作した観光プロモーション動画にインドネシアの代表的文化であるバティックやバリ舞踊が自国文化であるかのように映され、インドネシア人の間でマレーシアを文化泥棒と呼ぶ声が上がったことが背景にあります。この出来事により、国家間でも緊張が高まりました。

ユネスコによる「バティック宗主国」認定はインドネシア全土にとって大きな喜びとなり、毎週金曜日がバティックデーに指定されました。これにより、インドネシア人のバティックに対する誇りと愛着が一気に高まりました。

バティックの魅力は、インドネシアの地域の特色を表したモチーフにあります。中部ジャワの王室の古典的モチーフであるSoganが特徴的なジョクジャカルタやソロのバティック、プラナカン文化の影響を受けて色鮮やかな鳥や草木が描かれるチレボンのバティック、ムカデなどの多足類や昆虫が描かれるインドラマユのバティックなどがあります。

インドネシア各地のバティック工房を巡る旅と伝統技法

1997年10月に初めてインドネシアに来て以来、私はジャカルタでIT関連の仕事をしながら、週末の夜行トラフェルでジョクジャカルタのブリンハルジョ市場やソロのクレウェール市場、チレボンのトゥルスミ地区などのバティック工房に1泊2日の仕入旅行を繰り返していました。

2000年7月、ジョクジャカルタの工房で、銅板製のチャップまたはチャンティンを使って手描きで蝋付けする2通りの防染技術でバティック製作をしている現場を見学しました。下地に表現されるモチーフがモダンになったり、染料の品質が改良されたりしていますが、基本的な製作工程は変わっていません。

事例:当時6jutaほどしたニコンのデジタルカメラで撮影した画像ですが、スマホカメラには遠く及ばない画質です。

要点:技術の進化により、かつて高価だったデジタルカメラの画質が、スマートフォンカメラに劣ることがあります。

1.1. 手描きバティックのモチーフ決定と蝋による防染

モチーフを鉛筆で描きます。手描きバティックは作者の芸術性が強く問われますので、手間暇かかる分値段は高くなります。
チャンティン(canting)を使ってモチーフに沿って蝋を付けていく。染色工程で、色がついて欲しくない部分を蝋でガードします。全体的に黄色のSogan模様はソロのススフナン王室(Susuhunan)でよく見られます。
この写真のバティックは既に数回の染色で大部分に色がついており、最後の仕上げに細かい部分に蝋を塗っているところです。

1.2. チャップ(CAP)バティックのモチーフ決定と蝋による防染

たくさんのモチーフの銅板チャップが棚に並べられています。
モチーフをかたどったチャップで蝋を仕込みます。茶色いのは塗料ではなくて蝋です。チャップも最近(2000年7月当時)は機械で行われることが多くなりましたが、まだまだ職人さんの熟練の技は健在です。
釜の中にはどろどろの蝋が入っています。これはチャップに蝋をつける瞬間です。白地のSogan模様はジョクジャカルタのスルタン王室(Sultan)でよく見られます。

2. 染色工程

蝋で防染し終わったバティックは蝋が固まるまで乾かします。
色を残したい部分だけ蝋でガードしたバティックを色桶に入れて染色します。ベースの色から細かいモチーフ部分の色の順に蝋塗りによる防染と染色を繰り返します。
染色したバティックは日光の当たらない場所で陰干しします。

3. 蝋落し工程

色が布に完全になじんだ後でぬるま湯で擦らないように蝋を落とします。
蝋塗りによる防染、染色、蝋落としの繰り返しがバティックの鮮やかを生み出します。
この工房では全部で12人の職人さんが工程ごとに分かれて共同作業によりバティック布を製作しています。

ジョクジャカルタで見たバティック絵画の制作工程

2000年7月、ジョクジャカルタの工房を訪れ、バティック絵画の制作工程を見学しました。日本でバティックサロン布が流行しており、新たな商材としてバティック絵画を売り出そうとしていました。製作現場では、色を付けたくない部分を蝋で覆い、筆で色を付ける作業が行われており、その手間に感心しました。

事例:工房では、職人たちが蝋を使って細かい模様を描き、その後に染色を行う様子を間近で見ることができました。特に、蝋で覆った部分を丁寧に染める技術には驚かされました。

要点:バティック絵画の制作は、モチーフの決定、蝋による防染、染色、乾燥、そして蝋落としの工程を経て完成します。これらの工程は、職人の技術と手間が重要です。

1. バティック絵画のモチーフ決定と蝋による防染と染色

バティック布の工房からベチャに乗って5分くらいの近所にある工房です。
デザイナーが描いたモチーフにあわせて蝋を付けていきます。
筆で色をつけていく作業はすべて人手によって行われます。

2. 乾燥工程

色をつけた絵を木枠にはめて乾かしているところです。
各工程にかなりの時間がかかるのです。
ワヤン(影絵)もあります。

3. 蝋落とし

モチーフに沿って塗られていた蝋をお湯で落とすと、布地の白がモチーフの線となって現れます。
蝋落とし作業で使われるバケツやたらいが積んでありました。
膨大な数の作品が飾ってあります。これらはジャカルタ向けが2割、8割はヨーロッパを中心とした海外向けとのことです。