2019年4月のインドネシア大統領選挙は、正副大統領とDPR-RI(国会)、DPD(地方代表議会)、DPRD I(州議会)、DPRD II(県議会)の5つの議員を決める総選挙でした。クリーンな政治のためには世代交代が必須だと言われています。
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インドネシアはなぜ発展するのか?政治・経済・社会を支える構造と成長戦略
スカルノ大統領時代は共産主義政策が推進され、西側諸国からの投資が減少しました。スハルト大統領は西側諸国との関係を強化し、工業化を進めましたが、石油依存から脱却できませんでした。1998年のアジア通貨危機後、インドネシアは民主主義国家と…
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この記事でわかること
- 2019年4月17日に行われたインドネシア大統領選挙では、ジョコウィ大統領が約10ポイントの差をつけて優勢でした。
- インドネシアの選挙では、正副大統領選挙に加え、国会や地方議会の選挙も同時に行われました。
- ジョコウィ氏はイスラム組織NUの元議長を副大統領候補に選び、イスラム主流派の支持を狙いました。
- 2019年の選挙では、フェイクニュースによる情報戦が激化し、SNS上でのデマが多く見られました。
- 選挙期間中、550人以上の開票スタッフが過酷な労働条件で亡くなり、過労死が問題となりました。
2019年インドネシア大統領選挙の結果と戦略分析|ジョコウィ優勢の背景とプラボウォ陣営の課題
2019年4月17日に行われたインドネシア大統領選挙では、調査会社(Libang Kompas, Indo Barometer, LSI Denny JA, Median, Kedai Kopi)のクイックカウントによると、ジョコウィ大統領が約10ポイントの差をつけて優勢でした。与党第一党のPDI-PもDPR-RI(国民評議会)で優勢を保っていました。
選挙直前にはMRTが正式に開通し、選挙戦終盤の公開討論会でもジョコウィ氏が優勢を示しました。プラボウォ氏は2014年の選挙で6ポイント差まで詰め寄った経験がありましたが、今回はそのような追い上げは見られませんでした。
ジョコウィ新大統領パレードを控えたHI広場前、ジョコウィ祭りのため歩道橋渡れず。
2014年の選挙では、ジョコウィ氏の「私利私欲のない普通のおじさん」というイメージと「強力なリーダーシップを発揮する実務家」というギャップが一般大衆に支持され、勝利を収めました。
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ジョコウィ氏のギャップ魅力とインドネシア政治熱狂
2014年7月22日にインドネシア選挙委員会が大統領選挙の結果を発表しました。ジョコウィ氏は私利私欲のない素朴なイメージと強力なリーダーシップで支持を集めました。ジョコウィ氏の支持基盤は政党ではなく民衆にあるとされています。
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2019年の選挙では、前回の結果を踏まえ、双方の副大統領候補が戦略的に選ばれました。ジョコウィ氏側は、インドネシア最大のイスラム組織ナフダトゥル・ウラマー(NU)の元議長マルフ氏を副大統領候補に選びました。これは、イスラム主流派の影響力が強い地域での支持を狙ったものでした。
一方、プラボウォ氏は、元ジャカルタ州副知事であるサンディアガ・ウノ氏を副大統領候補に選びました。彼の爽やかなイメージは、女性や若年層の支持を得るために重要でした。プラボウォ氏の支持層は、若年層に集中しました。
1998年ジャカルタ暴動当時に子供だった20代~30代の有権者にとって、プラボウォ氏の過去のダークサイドの印象よりも、強力な指導者としての面が魅力的だったと考えられます。
選挙期間中に行われた3回の討論では、ジョコウィ氏は5年間の実績を強調し、プラボウォ氏は力強さと情に訴える戦略をとりました。民主的な直接選挙が始まって20年ほど経った2019年、有権者は冷静に投票を行ったように感じます。
インドネシア在住の日本人の多くは、ジョコウィ現大統領の再選を願っていたと推測されます。プラボウォ氏が大統領になった場合、日系企業の投資環境に悪影響を及ぼす可能性が懸念されていたためです。
正式な選挙結果は2019年5月に判明しましたが、ジョコウィ政権にとって懸案事項は、SBY大統領の2期目に見られた汚職による政権のレームダック化や、労働組合への忖度による最低賃金の暴騰、特定宗教組織への過度な配慮による人権問題への対応不足などでした。
インドネシア2019年同日選挙の概要と仕組み|国政から地方議会まで一斉投票の歴史的選挙
2019年、インドネシアでは大統領選挙と同日に国会DPR(Dewan Perwakilan Rakyat)議員選挙、地方代表議会DPD(Dewan Perwakilan Daerah)議員選挙、州議会DPRD kelas I(Dewan Perwakilan Rakyat Daerah Provinsi)議員選挙、県市議会DPRD kelas II(Dewan Perwakilan Rakyat Daerah kabupaten/kota)議員選挙が行われました。これは、日本で言えば首相指名選挙と衆参ダブル選挙、県会議員選挙、市会議員選挙を一度に行うようなもので、インドネシアで民主的な選挙が行われるようになった1999年以降で初めてのことでした。
1999年に政党活動が自由化され、多くの政党が乱立する中で行われた総選挙は、インドネシア全土での一大お祭り騒ぎとなり、オフィスでもタクシーの車内でも夜のブロックMでも、話題はいつも『どの政党押し』かと言っても過言ではありませんでした。

DPR RI(国民代表議会)は議員数560人から成る立法府で、日本の衆議院に近いものです。DPD(地方代表議会)は35州のDPRDから各4名ずつ選出された議員数132名からなる、日本の参議院に似て非なるものです。DPRD(地方国民代表議会)はkelas I(州)とkelas II(県)ごとの地方議会で、日本の地方議会のようなものです。
インドネシアは上から下まで直接選挙であるため、国民の政治に対する関心は非常に強いです。平日の4月17日(水)を選挙のため公休日にしてまで、国民に選挙に行かせようとする努力は日本も見習うべきところがあります。しかし、これだけ多くの人物の中からマニフェストに基づいて選ぶことは難しいため、芸能人やスポーツ選手など知名度の高い人が圧倒的に優位になります。
タバコは体に悪いと判っていても止められないのと同じように、汚職も悪いことだと判っていても止められないという現実があります。だからこそ、政治家は汚職の甘い蜜を知らない若い人に世代交代することでしかインドネシアから汚職はなくならないと考えられています。国民が政治家に最も期待するのはクリーンな政治であるようです。
フェイクニュースとSNSによる情報戦が激化した2019年インドネシア大統領
2019年5月26日、プラボウォ氏陣営の選挙対策委員会(Badan Pemenangan Nasional=BPN)のIT支援コーディネーターであり、ソーシャルメディア活動家でもあるムストファ・ナフラワルダヤ氏が、Twitterでフェイクニュースを流布したとして情報・電子商取引法違反の容疑で逮捕されました。彼は、西ジャカルタのクボン ジュルックのモスク内で15歳の少年が治安部隊による殴打で亡くなったというツイートをしましたが、実際には動画に写っていたのは選挙監視庁前の暴徒の一人であり、事件現場もモスク内横の駐車場でした。この情報は治安部隊を貶め、抗議デモに対する国民の同情を買おうとする情報戦の一環とされています。
ムストファ氏は、2018年10月にスカルノハッタ空港を離陸してジャワ海に墜落したLion Air 610が「ハリム空港に無事着陸した」というフェイクニュースを流したとして、サイバー犯罪捜査庁に取調べを受けたこともあります。2014年の大統領選挙に比べ、2019年の選挙ではフェイクニュースによる情報戦が激化し、足の引っ張り合いが多かった印象があります。
インドネシア選挙で550人超のKPPSスタッフが死亡|過酷な開票作業と陰謀論
2019年のインドネシア選挙では、550人以上の投票運営委員会KPPS(Kelompok Penyelenggara Pemungutan Suara)の開票スタッフが亡くなりました。これに関しては、さまざまな憶測や陰謀説が流れましたが、実際には過酷な労働条件が原因とされています。
亡くなったスタッフの死因は心不全、脳卒中、呼吸不全、髄膜炎、敗血症など多岐にわたります。病歴の有無は不明ですが、選挙スタッフの多くが疲労やストレスを訴えており、24時間以上続けて働いていたケースが多かったとされています。これにより、過労死や病死が多発したのが実情です。
この選挙では、正副大統領選挙に加え、国会DPR(Dewan Perwakilan Rakyat)議員選挙、地方代表議会DPRD(Dewan Perwakilan Rakyat Daerah)議員選挙、州議会DPRD kelas I(Dewan Perwakilan Rakyat Daerah Provinsi)議員選挙、県市議会DPRD kelas II(Dewan Perwakilan Rakyat Daerah kabupaten/kota)議員選挙が同時に行われました。これは、日本で言えば首相指名選挙と衆参ダブル選挙、県会議員選挙、市会議員選挙を同時に行うような規模で、全国約81万カ所の投票所で9人ずつ、計約730万人の投票運営委員会が関与しました。
高い気温の中、時間に追われながらの開票作業は非常に過酷であり、これが殉職の原因となりました。根拠のない陰謀論を唱えることは、亡くなった方々への冒涜であると考えます。
インドネシア大統領選で拡散したフェイクニュースの実例とSNS情報操作の実態
インドネシアのSNS上では、ジョコウィ氏陣営を貶めるフェイクニュースが多く見られましたが、プラボウォ氏が大統領に当選した場合、インドネシアがイスラム急進化しカリフ制国家になるというデマも流れました。2019年の大統領選挙を機に、インドネシアで「Hoaks(英語のHoax)」という言葉が定着しました。
- Metro TVのクリックカウントでプラボウォ-サンディ組が勝利している。
これは技術的なミスで生じた画面上のグラフの間違いがフェイクとして流布したものです。Metro TVが報じたクイックカウント結果ではジョコウィ-マルフ組が優勢であるにもかかわらず、グラフではプラボウォ-サンディ組が優勢のように表示されました。Metro TVのオーナーであるスリャ パロ氏はジョコウィ氏の支持者ですが、この誤ったグラフがSNSで拡散されました。
- ブカシ県にある6,000箇所のTPSでプラボウォ-サンディ組が勝利している。
Twitter(X)上で、プラボウォ-サンディ組がブカシ県の6,000箇所以上の投票所で70%以上の得票を得たというデマが拡散されましたが、ブカシ市選挙管理委員会の公式報告によると、ブカシの投票所の総数は3,030です。
- スラバヤのKalimasの投票用紙は候補者1番に既に穴が空けられている。
1分近くの動画で投票運営委員会KPPSの役人が語った内容ですが、実際スラバヤの投票所に配布された投票用紙の5枚ほどが破損しており、監督官によって適切に対処されました。
- 副大統領候補サンディアガウノ氏は宣言に同意しなかったためプラボウォ氏から追放された。
2019年4月17日の投票後、プラボウォ候補による勝利宣言時にサンディアガ副大統領候補が同席しなかったことに対して様々な憶測が飛びました。実際には体調不良のためだったと発表されています。
- クイックカウントは選挙詐欺の一種です。
民間調査会社によるクイックカウントが特定の候補を意図的にカウントし、選択された場所のみ使用されたという主張があります。実際の開票では総選挙委員会(KPU)がすべての投票所から集めた投票をカウントしますが、クイックカウントの結果は公式結果ではなく、民間調査機関はサンプルの割合を明確に発表する必要があります。
- 海外在住者投票の出口調査結果ではプラボウォ-サンディアガ組が圧倒的勝利。
実際の海外在外投票所の出口調査では、ジョコウィ-マルフ組が勝っているところもあり、圧倒的勝利というのはフェイクでした。