インドネシア語

インドネシアのメディアで使用される国のニックネーム【他国を一言で表現するセンスが問われる】


日本のメディアがバリ島のことを「神々の棲む島」と、商業的に付加価値を付ける意図で仰々しいニックネーム付きで紹介することがあっても、国名をニックネーム付きで呼ぶことはあまりないように思いますが、インドネシアのメディアの文章中では、抒情的な雰囲気を醸し出させるためか、国名の後ろにニックネーム付きで表記するケースが多々あります。

ニックネームは海外で一般的に通用している呼び方をインドネシア語訳にしたものだけでなく、完全にインドネシア独自の視点から付けられた呼び方もあり、例えばインドネシア自身にはZamrud Khatulistiwa(エメラルドの赤道)という、この上なく優雅で美しい称号を付けている一方で、インドネシア人労働者TKI(Tenaga Kerja Indonesia)に対する差別的な扱いや、バティックやバリ舞踊の文化剽窃疑惑などで、何かといがみ合いが多い隣国マレーシアはNegeri Jiran「隣の国」というそっけない呼び方をするなど、インドネシアがどのように海外の国々を見ているかが垣間見れて面白いです。

インドネシア語 ニックネーム 解説
アメリカ Amerika Serikat Negara Paman Sam 「サムおじさん」ことアンクル・サムは、アメリカ合衆国政府を擬人化したキャラクターで一般的にアメリカ自体をさすこともあります。 新聞の政治風刺漫画などでは、自由の女神像とともにアメリカの擬人化としてよく登場し、星柄のシルクハット・紺のジャケットに赤い蝶ネクタイ、紅白縦縞のズボンといった星条旗を意匠化した服装の白人として描かれます。現代では別名のNegara Super Powerのほうがしっくりくると思います。
サウジアラビア Arab Saudi Negara Minyak 2019年の原油産出量国別ランキングでは1位アメリカ、2位ロシア、3位がサウジアラビアなんですが、「石油の国」と言われてイメージするのはやはり中東の国であり、5位イラク、7位アラブ首長国連邦を押さえて、中東でもトップの生産量を誇ることからこの名前をゲットしました。
ロシア Rusia Negeri Beruang Putih 原油生産量ではサウジアラビアより上でも、極北の「白熊の国」のイメージが強いようで、別名としてNegeri Tirai Besi(鉄のカーテン)というのもありますが、これは冷戦時代の西欧諸国に対するソ連の閉鎖的態度をさした表現です。
オーストラリア Australia Negeri Kanguru 「カンガルーの国」に関しては誰もが想像できるキャラクターなので異論はないでしょう。オーストラリアのカンガルーに匹敵するレベルで、その国を一発でイメージするだけの強烈なキャラクターを持っているのはオランダの風車、イタリアのスパゲティくらいでしょうか。
オランダ Belanda Negara Kincir Angin ジャカルタの街中でよく目にするパン屋さんHolland Bakeryは目印に風車を設置するくらいオランダの象徴的存在です。別名も予想どおりNegeri Tulip(チューリップの国)です。
中国 China Negeri Tirai Bambu 誰もが「パンダの国」と予想する中、「竹のカーテンの国」とは中国の竹は非常に強く折れにくいことが、社会主義イデオロギーに忠実でありながら、周辺諸国との風通しが良いことを表すという肯定的な評価に基づくものですが、近年の香港国家安全維持法、尖閣諸島や沖ノ鳥島周辺への侵入、インドネシアの北端ナトゥナ諸島周辺EEZ内での違法漁業問題などの動きからするとそうとも言えないと思います。別名のembok Raksasa(Great Wall=万里の長城)のほうがまだイメージしやすいかも。
フィリピン Filipina Negara Lumbung Padi ドゥテルテ大統領による過激な麻薬関連の犯罪者の射殺命令などアングラな印象とは裏腹に「水田の国」という実に穏やかな名前は意外ですが、世界最大の棚田群であるコルディリェーラの棚田群がユネスコの世界遺産に登録されたことが大きいようです。
インド India Anak Benua 間違いなく「ガンジーの国」だと思ったのですが、もっと地学的見地から付けられた名前だったのは意外でした。インドが位置するインドプレートは北上しながら、ユーラシアプレートがぶつかり合うことで、ヒマラヤ山脈が年間数センチ高くなっていますが、もともとインドプレートはユーラシアプレートから分離したことが「大陸の子」と呼ばれる所以のようです。
ブラジル Brazil Negeri Samba 「サッカーの国」「カーニバルの国」「アマゾンの国」とかいろいろ思い浮かびますが、老若男女問わず言い得て妙なのはやはり「サンバの国」です。
アルゼンチン Argentina Negeri Tango 「メッシの国」と言っていいほどの世界最高のサッカー選手を輩出した国ですが、老若男女問わず親しみやすく、ブラジルのサンバに対抗できるのはやはり「タンゴ」なんでしょうね。
イギリス Inggris The Black Country イギリス産業革命の中心地であるバーミンガムとシェフィールドの大気汚染の酷さから「黒い国」らしいのですが、せっかくだから「女王様の国」とか「紳士の国」とか肯定的かつ重厚なネーミングにしてあげればよかったのにと思います。
イラク Irak Negeri 1001 Malam フセイン政権の亡霊のようなイスラム国のイメージが付いてしまいましたが、かつては「千夜一夜物語(アラビアンナイト)の国」という壮大な物語を冠する国でした。
イタリア Italia Negara Spaghetti 「ピザの国」「古代ローマ帝国の国」などいろいろ特徴を表す対象物に困らない魅力的な国ですが、やはり「スパゲッティ」は外せないようです。
日本 Jepang Negeri Matahari Terbit 「日出ずる国」よりも最近はNegeri Sakura(桜の国)のほうがよく目にしますが、インドネシアの若者にとっては「アニメの国」「オタク文化の国」かもしれません。
韓国 Korea Selatan Negeri Ginseng 「朝鮮人参の国」は伝統は感じるもののいまいち古臭いので、今なら「K-POPの国」「K-Dramaの国」のほうがミレニアム世代以降のインドネシア人にはしっくりくると思います。
マレーシア Malaysia Negeri Jiran インドネシア自身が「エメラルドの赤道」であるのに対して「お隣の国」というのは何ともそっけない感じもしますが、隣国同志というのは得てして近親憎悪が起こり、かつてマレーシア政府が製作した観光プロモーション動画の中に、インドネシアの代表的文化であるバティックやバリ舞踊を、自国文化であると誤解されるような映像があったことで、僕のまわりのインドネシア人は公然とマレーシアを文化泥棒呼ばわりし、国家間でも険悪な雰囲気がありました。東南アジアのサッカーの祭典「タイガーカップ」や東南アジア競技大会「シーゲーム」での対マレーシア戦は日韓戦さながらの殺気立った雰囲気があります。
カンボジア Kamboja Hell on Earth 「地球上の地獄」という失礼極まりない名前ですが、1970年代にポル・ポト首相が率いた政治勢力であるクメール・ルージュによる200万人とも言われる虐殺という負の遺産を引きずった名前です。インドネシアでも1966年の「3月11日政変」の前後に、反PKI(インドネシア共産党)と反スカルノ大統領デモのの激化により、スハルト氏に権力移譲され、インドネシア全土で繰り広げられた「共産主義者狩り」でカンボジアに匹敵する大虐殺があったとされています。
シンガポール Singapura Negeri 1001 Larangan 「1001の禁止事項の国」というこれまた失礼な呼び方ですが、Negara Singa(ライオンの国)という格好いい別名もあります。
タイ Thailand Negara Gajah Putih 「白象の国」という東南アジアの近隣諸国の中で唯一肯定的な名前で、別名としてNegeri Seribu Pagoda(1000の仏塔の国)というのもあります。
ドイツ Jerman Negeri Hitler 「ヒットラーの国」という斜め上の呼称ですが、実際にニュース等で使われたらドイツ大使館からクレームが来ることを心配します。
フランス Perancis Kota Mode 近年は過激化した黄色いベスト運動のデモ隊による商店の破壊や移民問題でダーティーなイメージが付きつつあるフランスですが、さすがは「ファッションの国」と呼ばれるだけの伝統の力を持っています。
ニュージーランド Selandia Baru Negeri Kiwi 国鳥である飛べない鳥「キーウィ」を冠する呼び方ですが、ニュージーランドは世界第3位のキウイフルーツの生産国でもあります。
ネパール Nepal Negeri 1000 Kuil 「1000の寺院の国」と呼ばれるように数多くの寺院があるカトマンズのスワヤンブナート寺院はユネスコの世界遺産に登録されています。別名がNegeri 1000 Dewa(1000の神の国)です。
ミャンマー Myanmar Tanah Emas ミャンマーは天然ガス、銅、スズ、銀、タングステン、その他の鉱物などの天然資源に恵まれた「金の大地」です。
スペイン Spanyol Negeri Matador 近年の動物愛護の風潮から闘牛は何かと批判されがちであり、将来的には「闘牛士の国」から「サグラダファミリアの国」と呼ばれる日が来るのかもしれません。
ブルガリア Bulgaria Negeri Kuntum Mawar ブルガリアと聞けば真っ先に思い出すのはヨーグルトなので「薔薇の小花の国」というのは意外ですが、実はバラの香料生産は世界市場の7割を占めており、ブルガリア中部カザンラクを中心に周辺の市町村に広がる地域がバラの谷は世界最大のローズオイルの生産地です。
ギリシア Yunani Negeri Peradaban 現代の模範たる古代ギリシアは多くの哲学者や芸術家を生み出しただけあって「文明の国」と呼ばれますが、ギリシア神話からイメージされるNegeri Para Dewa(神々の国)と呼ばれることもあります。
フィンランド Finlandia Negeri Seribu Danau フィンランドの国旗は青は空と湖、白は雪を表し、そしてキリスト教の十字を象徴しているように「1000の湖の国」と呼ばれるにふさわしい美しい自然環境に恵まれています。
カナダ Kanada Negeri Pecahan Es カナダと聞いてイメージするのは楓(Maple)ですが、ユネスコ世界遺産であるカナディアンロッキーの氷河のイメージから「氷の破片の国」と表現されるようです。





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