インドネシア労働法と最低賃金の地域差

2017/11/07

インドネシア労働法

インドネシアの労働者は、労働法によって手厚く保護されています。その理由は、勤続年数によって大きく膨らむ退職金や、会社都合での解雇の難しさにあります。

ジャカルタでのパレード

インドネシアの労務・労働法まとめ|最低賃金・退職金・外国人就労・裁判制度

インドネシアの労働法は2003年に制定され、労働者を手厚く保護しています。オムニバス法は外資参入を促進し、雇用条件を柔軟化しました。sweepingはデモ集団が工場に押しかける行動で、拘束されることもあります。

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この記事でわかること

  • インドネシアの州最低賃金(UMP)は景気局面で改定され、地域差が大きいです。
  • ジャカルタ特別州の最低賃金はジョクジャカルタの2.5倍です。
  • インドネシアの労働法はすべての事業体に適用されます。
  • 解雇には正当な理由と手続きが必要とされています。
  • 退職金制度が企業の正社員採用を抑制しています。

インドネシアの最低賃金

インドネシアの州最低賃金(UMP)は景気局面によって改定率が変わります。ジャカルタ特別州のUMPは地方都市より大幅に高く、この差は多くの人がジャカルタに出稼ぎに行きたくなる理由の一つです。

事例:ジャカルタの最低賃金は地方都市より大幅に高いです。ジョクジャカルタも同様に上昇しています。

要点:最低賃金の上昇は地域間で大きな差があり、出稼ぎの動機となっています。

最低賃金の引き上げは、正社員の給与に影響を与えると考えられますが、契約社員や日雇い社員、カフェの店員、ブティックのSPG、按摩屋の従業員などにはどの程度恩恵があるのでしょうか。これは労働法(UU No 13 Tahun 2003)91条に基づく賃金規定の適用範囲と強制力に関する疑問です。

インドネシアの労働法の適用範囲

インドネシアの労働法は、法人の形態を問わず、個人や法人が所有する事業体に適用されます。これには私企業や公営企業が含まれ、賃金または他の報酬を支給して労働者を雇用するすべての雇用主が対象です。事業体が会社法に基づく法人であれば、会社として労働者を雇用します。

事例:労働者とは、賃金または他の報酬を受け取って働くすべての者を指します。例えば、会社は社員に、ショップオーナーは販売員に、按摩屋は従業員に最低賃金を支払う義務があります。

要点:労働法は、賃金を支払うすべての事業体に適用され、最低賃金の支払いが義務付けられています。

労働法の適用範囲

ただし、労働法の90条には、最低賃金を支払うことができない経営者には猶予が与えられるとあります。実際には、ジャカルタのすべての事業体が最低賃金を支払えるわけではなく、労働者も最低賃金以下でも働きたいという事情があります。

日本でも同様に、ブラック企業やブラックバイトで最低賃金以下の労働が問題となっています。労働者は労働組合を作り、労使紛争を通じて対抗することがあります。

就業規則と労働協約

事業主が労働者を雇用する際の条件となるのが就業規則(PP=Peraturan Perusahaan)です。10人以上の労働者を雇用する経営者は、就業規則を作成し、大臣または指名された政府高官の承認(Pengesahan Menteri Ketenagakerjaan)を受けた後に発効されます。経営者はこれをジャカルタにある労働移住省(Dinas Tenaga Kerja dan Transmigrasi)、通称DISNAKERに提出する必要があります。

労働法111条では、就業規則に記載する内容として以下が定義されています。

  1. 雇用主の権利と義務
  2. 労働者の権利と義務
  3. 労働条件
  4. 服務規律
  5. 就業規則の有効期限(最高2年間)

事業主はこれに従って就業規則を作成し、Disnakerに提出し承認を得る必要があります。ただし、経営者と労働組合との間で労働協約(PKB=Perjanjian Kerja Bersama)がある場合には、就業規則は必要ありません。

事例:解雇(PHK=Pemutusan Hubungan Kerja)された労働者が、不当解雇だとして雇用者をDISNAKERに訴え出た際の争点となるのが、この就業規則や労働協約の解釈の仕方の相違です。

要点:就業規則や労働協約は、労働者と雇用者の間の重要な契約条件を定めるものであり、解釈の相違が紛争の原因となることがあります。

クビにするには正当な理由と手続きが必要

ある会社の従業員Aが経営者の方針に反対したことで解雇を宣告され、不当解雇として弁護士を立てて訴えた事例がありました。経営者は解雇の理由が警告書を出す猶予もないほど悪質であったことを証明しなければなりませんでした。

事例:従業員Aは不当解雇だとして労働省DISNAKERに訴え出たり、弁護士を雇って法廷闘争に持ち込む権利がありますが、お互いにとって時間と費用の浪費になるため、事前に金銭で手打ちするのが一般的です。

要点:インドネシアで従業員を解雇する際には、労働法に定義されている正当な理由が必要です。

インドネシアの労働法では、解雇には正当な理由が必要であり、退職が決まった場合には労働法に定められた金銭を支払う必要があります。被雇用者と雇用者の間で意見の相違が生じることもあります。

  1. 就業規則への違反を元に解雇

    規律違反が解雇に相当するかどうか、警告書の有無、退職手当金額で揉めることがあります。重大な就業規則違反でない限り、退職手当、勤続功労金、損失補償金の3種類を支払う必要があります。

  2. 警告書(Surat Peringatan)3回後に解雇

    SP1、SP2、SP3の順番に3回受けると正当な解雇理由になります。SPには有効期限があり、1回目の警告後6カ月、2回目の警告後9カ月、3回目の警告後12カ月が経過すると無効になります。

  3. 試用期間3ヶ月内に能力不適格として解雇

    雇用契約を結ぶと労働者の権利が強くなりますが、雇用者側に3ヶ月間の見極め期間が与えられます。

  4. 自主退職

    退職手当と勤続功労金を支払う必要がないため、雇用者側にとっては都合がよい方法です。陰湿な配置換えで自主退職を強要する事例もあります。

インドネシアの労働法の基本はUU No 13 Tahun 2003(労働に関するインドネシア共和国法律2003年第13号)であり、JJCのサイトに日本語訳があります。

退職金制度が会社の重荷になる

インドネシアでは、労働者の権利が手厚く保護されている理由の一つとして、退職金制度が挙げられます。この制度により、会社は正社員を積極的に雇用することが難しくなっています。

  • 1年未満:退職手当1ヶ月分
  • 1年~2年未満:退職手当2ヶ月分
  • 2年~3年未満:退職手当3ヶ月分
  • 3年~4年未満:退職手当4ヶ月分+勤続功労金2ヶ月分
  • 6年~7年未満:退職手当7ヶ月分+勤続功労金3ヶ月分
  • 8年~9年未満:退職手当9ヶ月分+勤続功労金4ヶ月分

事例:この制度の影響で、企業は契約社員や日雇い社員の割合を増やす傾向があります。インドネシアでは外国人が人事関連役職に就くことができないため、人事担当者はインドネシア人になりますが、面接などは収賄の機会となりうるため、日本人駐在員が直接行うことが多いようです。

要点:退職金制度は企業の雇用形態に影響を与え、正社員の採用を抑制する要因となっています。

Adu Domba(内部分裂工作)とは

元従業員Aは、会社に残る従業員BとCから裁判の証拠となる情報を集めようとします。一方、経営者Xは従業員Aの悪行を探るため、BとCを追及します。耐えかねたBは、経営者Xに対して

CはAと一番仲が良くて、いまだに頻繁に情報交換し合っているみたいですよ。

と情報を流し、元従業員Aには

CはXにお前の過去の行状をあることないこと告げ口しているぜ。

と伝えます。これにより、AとCの関係を悪化させ、Xの追及をCに集中させることで自分を守ろうとします。

事例:このように、腹黒い人間が行う内部分裂工作をインドネシア語でadu dombaと言います。

要点:adu dombaは、他者間の不和を利用して自分の利益を図る行為を指します。