渋滞を逆手に取る営業戦略とオフバランス資産の価値

2019/01/31

ジャカルタの渋滞

渋滞の中で現場を訪問することは、ライバルが「渋滞が酷いから訪問は止めよう」と考える中での差別化となり得ます。金銭的な見返りだけでなく、新しい技術の習得や実績のために、満足度や期待値といったオフバランスの資産にどれだけ価値を見出し、蓄積できるかが重要です。

ホテルインドネシア前広場

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この記事でわかること

  • 渋滞を逆手に取った現場訪問は、他社との差別化に繋がります。
  • バティック布の成功は、偶然の供給能力が需要を満たした結果です。
  • 実体験に基づく経験が、顧客ニーズの変化に対応する力を養います。
  • オフバランス資産の蓄積が、金銭的見返り以上の価値を生み出します。
  • 小規模企業の生き残りには、顧客満足を最優先する姿勢が重要です。

バティック布の成功とパレオの失敗に学ぶ|インドネシア輸出ビジネスの落とし穴

バリ島からバティックサロン(腰巻)布とイカット布を大量に日本に輸出していました。当時、日本ではインドネシアでの仕入相場が知られておらず、原価の4~5倍の価格で売れていました。

特に確信があってバティックサロンに目をつけたわけではなく、たまたま身近で手に入るバティックやイカットの布を、日本最大のアジア雑貨のオンラインショップに提案したところ、先方が抱えていた在庫不足の問題を、こちらの供給能力で解決できたため、双方が大きな利益を上げることができました。

しかし、理由もよく知らないまま取引先の需要を満たすべく、仕入と発送を繰り返していたさなか、バリ島のクタ近辺でよく売られていたパレオの注文を受けました。これもバティックと同じ腰巻だし、どんどん売れるだろうと確信して大量に仕入れたところ、その後さっぱり売れず、自宅倉庫に在庫の山として眠り続けることになりました。

事例:この失敗の原因を考えてみると、ジャワ島で製作されるハンドメイドのバティック布と違い、バリ島産のパレオは値段がばれていること、日本のアジアブームに乗るにはデザインがモダン過ぎてエスニック感が足りないこと、バティック布の用途がクッションカバーやシャツ縫製やテーブルクロスだったが、パレオは向かないことが挙げられます。

要点:思いがけず商品が売れることが続かないのは、売れた理由が自分でわからないため、時代の変化についていけず、次にどうやって売るかがわからないからです。

実体験が差を生む!ネット時代に求められる顧客ニーズ対応と現場力の重要性

今、自分が対象とする顧客層のニーズがどのように変化しているかを分析し、それをどうやって調達して(開発して)どうやって売るかを考えることが重要です。何を売るかをニーズに合わせて変化させる力は、実体験に基づく経験から判断の確度を高めることで養われます。

例えば、ブログを書く際にネタ切れを起こしやすいのは、リアルの世界で何も行動を起こさない日々が続いたときです。休日も家にこもってネットで動画ばかり見ていると、オンラインで得た情報だけでは背景に情景が浮かばず、現実味のない薄い文章になってしまいます。

オンライン化が進み、ネットでの情報収集が主流になった今、裏付けに乏しい二次情報や三次情報を元に時代の変化を分析しようとする場合、実体験に基づく記憶が多いほど、可能なシミュレーションのパターンが増えます。これはオフラインで差別化していることを意味しています。

事例:ネット社会の発展によりオンラインでの情報収集が主流になりつつある中、「書を捨てよ町へ出よう(寺山修司)」ならぬ「ネットを捨てよ町へ出よう」といった考え方が重要です。オンライン情報が氾濫するほど、情報についての判断力の源泉となる実体験に基づく持ち駒を増やすために、現場での経験が重要になります。

ジャカルタ渋滞を逆手に取る営業戦略|オフライン訪問で築く信頼と差別化の力

Tol Jakarta-Cikampekの渋滞が激化し、私の平日の時間割りは以下のようになっています。

  • 睡眠:6時間
  • 食事:1.5時間
  • 仕事:6時間
  • 運転:6時間
  • その他:4.5時間

西ブカシのオフィスからCibitung、Cikarang、Karawangの工業団地への移動は、往復で約6時間を要し、1日の4分の1を運転に費やしています。Twitterでのつぶやきも渋滞関連の愚痴が多くなります。

インドネシアのネット回線は改善され、街中では下り10Mbps程度の速度が出るため、ZoomやWebEXを使ったオンライン会議も可能です。しかし、オフラインで直接責任者に会い、仕様変更の相談やプロジェクトの遅れに対する不満を聞くこと、運用担当者からの要望をその場で聞くことの価値が高まります。

現場訪問は労働集約的で、生産効率に限界がありますが、他社が「渋滞が酷いから客先訪問は止めよう」と考える中での差別化になります。

グランドインドネシア前のいつもの渋滞の風景、なかなか痺れますな。

以前、私はバリ島から家具やバティックを日本に輸出していました。他社が在庫リスクを避けるエージェント型ビジネスを行う中、私は在庫型ビジネスにこだわり、機会損失をゼロにしました。

  • 他社は在庫リスクを恐れエージェント型のビジネス⇒自分は在庫を持ち機会損失をゼロにする。
  • 他社は渋滞による時間コスト削減のためオンライン型のビジネス⇒自分はオフラインでサービスの価値を向上させる。

この会社は最終的にクローズしましたが、7年間続けた在庫ビジネスの逆張りの思想は間違いではなかったと考えています。

インドで最も普及しているTallyという業務システムの導入に携わる日本人の友人は、ニューデリーでビジネスを続ける理由を、競合がいないことによる隙間戦略のメリットと語っていました。

インドネシアに比べて人も生活環境も厳しいインドで、日系企業向けの業務システムの仕事は参入障壁が高く、競合がいないため営業しなくてもインバウンドで仕事が来るというトレードオフがあります。ただし、それは仕事というより修行に近いようです。

頻繁にお客さんに顔を見せて安心してもらうこと、お得意さんを大切にすること、こうした昭和の営業の鉄則は、ネット社会の今こそ再度注目に値します。

利益だけでは測れない価値とは?渋滞の先で築くオフバランス資産と小さな会社の戦い方

渋滞の中を苦労してオフラインの訪問をしたからといって、必ずしもお客さんの予算や客単価が上がるわけではありません。富士山の山頂で缶ジュースが400円するのは輸送コストが高いためですが、Tol渋滞の先にある工業地帯だからといって高いサービス費用を見積もれるわけではないのです。

サービス提供側としては、固定費を削減するのはもちろん、お客さんの予算から逆算して見積もりを作らないと仕事が取れなくなります。その際、金銭的な見返りだけでなく、新しい技術の習得やプロジェクトの実績、満足度や期待値といったオフバランスの資産にどれだけ価値を見出し、蓄積できるかが重要です。

毎日渋滞にはまって消耗すると、細かく時間コストを計算するのが馬鹿馬鹿しくなります。これくらい貰えればやりますという感覚的な話になり、後で計算したら全然儲かっていないのですが、やったことで楽しかったとかいい経験になったというオフバランスの資産があるからです。

大きな赤字は無理でも、金銭的に損がないトントンの価格でもやる価値があるという判断は、工数を計算しコストを積み上げるやり方だけではできません。

私はシャイで人見知りする人間であり、3人以上の飲み会は苦手ですが、お客さんと対面でシステムの話をするのは大好きです。

最後は「楽しいかどうか」が重要です。楽しいと利益が出なくても「楽しい」という見返りで元を取っているわけです。極端に言えば、お金の利益はおまけです。楽しくやっていれば興味を持った人が集まってきます。詐欺師も混じっているかもしれませんが。

最大のオフバランス資産はお客さんと対面で話すことで得られる気づきや経験であり、それを楽しいと思えるかどうかです。このブログも10年近く続けていますが、仕事も遊びも楽しくないと続かないのは同じです。

物価が上がりやすいインドネシアでも、Rp.75,000程度で天ざるそばが食べられる場面があります。受託ビジネスが過去の経験の蓄積で成り立つ以上、Tol渋滞や倉庫の原料の積み上がり具合から話題が生まれ、何か仕事が貰える可能性もあります。時間とガソリン代を掛けて現場に行くことは将来の投資だと考えます。
外出制限が緩んだあと初めて1日3件の客先訪問で、途中で美味しかったベトナム料理屋が潰れているとか、住宅販売ブースが目に付くとか、新しい発見からいろいろ考えることがあります。対面で話を聞いて喋るのは疲れますが、受託業である以上、実体験の蓄積が資産になると自分に言い聞かせています。

資本も技術力もなく、ましてやブランド力もない小規模零細企業が、大資本のキラキラブランドを掲げる大企業が群雄割拠するインドネシアのIT業界で生き残るための手段は、相手が喜んでくれるなら面倒なこと嫌なこと全部自分がやるというメンタルこそが差別化の手段となり得ます。