インドネシアのビジネス環境

インドネシアの個人や企業のコロナ禍への取り組み【景気後退の波を知恵で乗り切る人達】


インドネシアの日系製造業のコロナ禍への取り組み

8月8日時点でインドネシアの新型コロナ感染者累計は12万人を超え、連日新規感染者が2,000人以上確認されていますが、インドネシアの日系製造業様からも、稼働率低下により余った時間と工数を利用して、コロナ禍の今だからこそできる以下のような取り組みがなされていると聞いています。

  • 在庫の見直し
    稼働率が下がり作業員工数に余裕がある今、棚卸の精度を上げるため月一回の月末の棚卸の頻度を上げる。最適在庫日数を見直し、倉庫内の滞留日数を減らしキャッシュフロー改善に繋げる。
  • 人事と組織の見直し
    収益予測の下降修正に基づく人員削減、在宅ワークの導入による新しい人事評価や組織再編。現在インドネシアのオンラインセミナーで一番頻繁に取り上げられるテーマが組織作りと労務管理に関するものです。
  • 現場の見直し
    人員削減により効率的な人材活用を目指すために必要な作業員の多能工化、間接人員の直接人員化(固定費の変動費化)。新しい生活様式に準じた人やモノの物理的接触を極力避けた標準作業フローSOP(Standard Operation Procedure)の策定。
  • サプライチェーンの見直し
    仕入先の変更は繁忙期には実行するのが難しいので、稼働率が下がったコロナ禍の今、米中経済摩擦により中国産製品のアメリカへの輸出時の追加関税リスクや新型コロナの影響で調達が滞るリスクの高い中国からの輸入を見直し現地調達化。
  • 事業の見直し
    「こんな時期こそ新規事業立ち上げを企画するべき」という話も前向きでいいと思うのですが、新規事業が成功する確率は1勝9敗とも言われ、10%の確立に期待してリスクを負うよりも、今はじっと我慢して時勢が好転するのを待つという戦略のほうがより現実的かと思います。
  • 原価の見直し
    稼働率が下がれば原価に占める労務費や製造間接費などの固定費の割合が増えるので、間接人員の直接人員化や経費削減などで、固定費の割合を下げる必要があります。

弊社のようなシステム業界の人間にとっても、製造業でのIT投資の予算が決済されにくい厳しいご時世ではありますが、上記のようなお客様社内での取り組みが一巡した後には、仕組みの具体的な実装のためのIT投資が必ず計画されますので、生産効率向上とウイルス感染リスク低減のために、物理的な作業や機械の操作を最小限にし、作業の過程を自動化させる仕組み作りが始まるものと考えます。

インドネシアのコロナ禍を知恵で生き抜く人たち

僕がかねてからインドネシア人を尊敬する点の一つが「生活力があること」でして、かつて1998年から1999年の通貨危機に伴う不景気時には、某日系邦銀に出入りする機会が多くあり、システム部のスタッフ達は日常業務の合間に、持参したブラウニー、チョコレートキャンディー、靴下などを、社内の同僚に販売し、システム部のルームは戦時下の闇市の様相でしたが、インドネシア人のマネージャーもそれを当然のことのように黙認していました。

今回のコロナ禍でも解雇や自宅待機になった人達が、自家製のスポンジケーキやローストビーフなどの食料品から日用雑貨までを、口コミで繋がった人たちに販売しているようですが、今回が通貨危機時と大きく異なるのは、GoSendやGrabSendなどのデリバリーシステムが、気軽に利用できる環境があることであり、個人のサイドビジネスの商圏は大きく広がっています。

コロナ禍で収入が減り、自給自足を目指すために自宅の庭で野菜を育てていた主婦たちが、新鮮野菜を売りにして外部に販売を始めた事例があります。

別の地域では計画的に村の住民が野菜を育てて販売する試みもなされたようで、栽培のノウハウに乏しく気候が合わないなどの要因でとん挫した事例もあるようですが、この地域の主婦は野菜を育てることに慣れていたことと、もともと自宅で食べる分に作っていたのがたくさん出来たので売ってみようという自然な流れが成功の秘訣なのかもしれません。

また農村部でミーアヤムの屋台をやっていた人が、所得水準の高い都市部に移動し、コロナ禍に合わせて極限まで価格を下げることで、他店が参入しずらい低所得者層向けの商売を行い大繁盛している事例があります。

かつて有名な経営コンサルタントの大前研一さんが、人間が変わるためには3つの方法しかないと言っていました。

  1. 時間配分を変える
  2. 住む場所を変える
  3. 付き合う人を変える

故郷のソロからジョクジャカルタに移転するして商売を立ち上げ直すということは、生活環境もビジネス環境も一新されゼロからの再スタートであり、大変な苦労があることは容易に想像できますが、鳴かず飛ばずだった商売から、低所得者層向けビジネスというコロナ禍での新しい試みにチャレンジするには、それくらいの変化が必要なのかもしれません。

かつて小売り(服・アクセサリー)をやった経験からすると、小売り商売は在庫管理と陳列管理、接客など日々の作業で疲れてくると、儲かっていても儲かっていなくても値上げしたくなるもので、「利益は薄いがお客が一杯だから損はない。価格が高ければ客は少ない。高いのは損だ」という確固たるマイクロビジネスの信念はなかなか真似できるものではありません。

コロナ禍の今、弊社を取り巻く環境も厳しいものがありますが、こういう知恵で逆境を乗り切る事例の中に、ビジネスのヒントが隠されているような気がしてなりません。





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