インドネシア時事問題

ポストコロナ禍のインドネシアの経済発展の見通し【製造業の脱中国化の受け皿というチャンス】


インドネシアは製造業の脱中国化の受け皿になれるか

2015年以降、中国でスパイ活動に関与した疑いで、情報公開のないまま拘束された15人以上の日本人のうちの1人が、7月1日に刑期満了となり帰国されましたが、中国に関しては武漢が発生源とされる新型コロナウイルスに関する情報操作の疑い、6月30日の中国全人代常務委員会で可決され即日施行された香港国家安全維持法(香港国安法)がもたらす言論統制、尖閣諸島周辺の領海外側の接続水域に80日連続で中国海警局の船が航行するなど、2020年上半期から何かと物騒なニュースが続いています。

チャイナリスクという言葉が聞こえ始めたのは、2010年9月の尖閣諸島での中国漁船衝突事件から、2012年9月の中国反日デモの頃だと記憶していますが、中国を中心に海外展開していた製造業が、当時からチャイナプラスワンという観点で、東南アジアにリスク分散先を求め、2016年11月には米中貿易赤字の解消を公約に掲げてアメリカ大統領に就任したトランプ氏が、2018年3月以降中国製品への関税引き上げを発動し、これに対して中国も報復関税をかけるという米中摩擦が続いており、アメリカ向け製品を中国で製造する工場の間で、追加関税の回避のために東南アジアへ製造拠点をシフトする、脱中国化の動きが再び加速しています。

6月30日にジョコウィ大統領は、現在7つの外国企業が中国からインドネシアに生産拠点を移転する計画があると発表し、そこには韓国のLG電子、日本のパナソニックとデンソー、そして相模ゴム工業の名前も挙がっており、合計8億5千万ドルのの投資によって3万人の雇用が創出されるというのは、コロナ禍にあるインドネシアの投資環境にとっては非常に明るいニュースかと思いますが、あの薄さ0.01mm「サガミオリジナル001」がメイド・イン・インドネシアになるという話はなんとも胸熱です。

インドネシア投資調整庁BKPM(Badan Koodinaisi Penanaman Modal)によると、この7社以外にも17社が中国からインドネシアへの工場移転を検討しており、総投資額370億ドルによって112,000人の雇用が創出されることが期待されていますが、昨年中国から海外へ移転した製造業が33社に上ったにもかかわらず、インドネシアへの移転は1件もなく誘致に失敗したことから、今回こそは中部ジャワのバタン工業団地(Batang)やケンダル(Kendal)に土地を確保し、ライセンス取得と移転プロセスを円滑に進める準備をしています。

インドネシアの経済発展と日本の凋落

先週HSBCホールディングスが発表した「各国の駐在員が住みたい国ランキング」で、日本は調査対象33カ国中32位というショッキングな結果がネット上をざわつかせ、偶然にも1つ前の31位がインドネシアだったこともあり、インドネシアに関係する日本人が見れば「ついにインドネシアにも抜かれたか」と悲しい思いをしたものと想像しますが、そもそもスイスのIMDが毎年発表している世界競争力ランキングで、1989年に1位だった日本は、最新の2019年では30位にまで下落していることからも、世界の中での評価としては妥当なのかもしれません。

7月現在インドネシアの新型コロナウィルス感染拡大は衰えを見せておらず、5月27日時点で306万人以上の労働者が解雇または一時帰宅しており、最終的には450万人の労働者が職を失った結果、400万人が再び貧困層に落ちる可能性があると言われており、2020年第1四半期のGDP成長率は2.97%と、19年間で最も低い数字を記録したばかりです。

しかしその一方で、インドネシアは7月1日に世界銀行が発表した、所得レベルに応じた国の分類によると、前回の下位中間所得(lower-middle income)から上位中間所得国(upper middle-income country)に格上げされ、これは一人当たり国民総所得GNIが2019年には4,050ドルに上昇し、2018年の3,840ドルから上位中間所得である4,046ドル~12,535ドルの国に収まるようになり、過去数年にわたってGDP成長率を平均5%前後に維持してきたことが評価された結果であり、インドネシア経済に対する外国投資の信頼が強化されることに繋がります。

インドネシアは、過去15年間で貧困率が10%を下回り、中産階級人口は7%から20%に増加し5,200万人に達すると報告されていますが、人口の45%の1億1500万人が貧困から脱出したものの、まだ完全な経済的安全を保障されていない中産階級予備軍と見なされており、政府は引き続き国際競争力を高め、産業能力を向上させ、経常収支赤字を削減するための構造改革を推進する必要があります。

2019年の日本の出生率は1.36であるのに比べて、インドネシアは2.3と高い水準を維持しており、10年後の2030年にはGDPで日本を追い抜くとも言われていることは仕方のないことかもしれませんが、日本人が心の奥で思っている「経済的には落ちても世界で最も安全で環境がよく暮らしやすい国が日本だ」というQOL(生活の質)の面で優っているという自負までも、上の駐在員のランキングを見る限りでは認識を改めなくてはならない時期に来ており、インドネシアに長く住み事業を行う身としては複雑な気持ちになります。





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