棚卸で期末在庫を押さえて、期首在庫と当月入庫分の合計からの差し引きで売上原価を算出するのが三分法ですが、仕損費・試作品費・冶具備品・棚卸減耗費などは、他勘定振替で原価振替をしないと、損益(売上総利益・営業利益・経常利益)のいずれかのレベルで実情にそぐわない偏りが出てきます。 マスプロダクションの総合原価計算と受注生産の個別原価計算の違いは、労務費や製造間接費などの固定費を所定のルールで品目に配賦するか、標準の賃率や配賦率に実績工数を掛けて品目に積み上げるかの違いであり、集計した原価の差異分析や経営判断のための予実分析が重要です。 続きを見る
原価管理システム
廃棄・在庫調整・試作品・社内消費に基づく出庫実績
生産管理システムの出庫実績に基づく原価振替には、製造原価内での振替や売上原価から販管費への振替があります。
材料・仕掛品の仕損費を製造原価から控除します。製造原価内での振替なのでこの仕訳がなくとも製造原価自体の金額は同じです。
- Dr. 仕損費 Cr. 仕掛品他勘定振替
製造原価確定後の製品の廃棄損を売上原価から控除しますが、この仕訳がないと売上原価が過大計上され、売上総利益が過少になります(営業利益は同じ)。
- Dr. 製品廃棄損 Cr. 製品他勘定振替
試作品は販売費として売上原価から控除しますが、この仕訳がないと売上原価が過大計上され、売上総利益が過少になります(営業利益は同じ)。
- Dr. 販管費 Cr. 製品他勘定振替
社員の賄い用なら一般管理費を売上原価から控除しますが、この仕訳がないと売上原価が過大計上され、売上総利益が過少になります(営業利益は同じ)。
- Dr. 一般管理費 Cr. 製品他勘定振替
冶具なら資産計上しますが、この仕訳がないと売上原価が過大計上され、売上総利益が過少になります(営業利益は同じ)。
- Dr. 資産 Cr. 製品他勘定振替
システム在庫と実地棚卸数量の棚差の扱い
「月初仕掛品+当月製造費用-月末仕掛品」で当月製造原価を確定してしまう方針であれば、月末の棚卸に基づく出庫実績から会計上で原価振替仕訳を行う必要はありません。
何故なら「月末仕掛品」は実地棚卸数量に基づく金額であるため、棚差は三分法の結果である当月製造原価に自動的に含まれることになるからです。
この場合、棚差分の製造原価が過大になり、売上原価が過大になり、売上総利益が過少になります(営業利益は同じ)。
棚差を棚卸減耗損(販管費)に計上する場合は、売上原価から控除します。他勘定振替を通して製品月末評価額に減耗分をプラスすることで、間接的に売上原価から減耗分を控除します。
- Dr. 棚卸減耗損 Cr. 製品他勘定振替
材料の棚差を製造原価内の製造間接費に振替える場合は以下の仕訳を発生させますが、製造原価総額に変動はありません。
- Dr. 製造間接費 Cr. 仕掛品他勘定振替
輸入申告書PIB(Pemberihauan Impor Barang)の費用や物品搬出承認書SPPB(Surat Persetuhuhan Penerimaan Barang)の費用などの仕入諸係を製造原価に配賦します。この仕訳がないと製造原価が過少になり売上原価が過少になり売上総利益過大計上されます(営業利益は同じ)。
- Dr. PIB Cr. AP
- Dr. 製造原価 Cr. PIB
低価法による在庫評価替えに伴う仕訳
原価管理システムで計算した総平均単価と、市況を考慮した時価の、どちらか低いほうで在庫を評価した場合に発生する損益仕訳です。
著しい陳腐化の場合は棚卸評価損(販管費)、通常考えられる理由以外で生じた場合(盗難や火事)は特別損失(営業外費用)に計上しますが、この仕訳がないと材料や仕掛品の場合は製造原価が過大になり(営業利益は同じ)、製品の場合は売上原価が過大になります(経常利益は同じ)。
- Dr. 棚卸評価損 Cr. 仕掛品他勘定振替
- Dr. 特別損失 Cr. 製品他勘定振替
市況等を考慮した実勢値を評価単価マスタに設定し、総平均単価よりも低ければ差額を評価損計上した上で、評価単価を月末在庫の評価に適用し、高ければ総平均単価を月末在庫の評価に適用します(この場合の評価損は0)。
- 月末評価単価マスタに市況を考慮した実勢値を設定する。
- 実勢値と原価計算結果の月末評価単価(理論値)の差である評価損を計算する。
- 評価替処理タイプマスタの切捨フラグをオンにして計算結果をコピーすることで、翌月の月初在庫は評価損を費用計上し評価額を下げて繰り越す。