生産スケジューラー

生産スケジューラーを運用する上で意識しておいたほうがいいこと 【システムと現場の状態との乖離要因はリスケジュール前後にある】

2016/11/02

生産スケジューラーを運用する上で意識しておいたほうがいいこと

スケジューラーの目的は小日程計画の観点から見ると「生産計画を作成すること」ですが、大日程、中日程計画の面から見ると生産準備(Production preparation)として有効な活用ができます。

インドネシアの生産スケジューラーまとめ
インドネシアの生産スケジューラまとめ

インドネシアの製造業界においてMESやIoT導入により生産情報が自動的に取得できるようになれば、それを生かすための未来の生産シミュレーションというニーズが発生するのが自然であり、日本発生産スケジューラAsprovaの活躍の場は多いと考えます。

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生産準備とは

これまでスケジューラーの導入で大きな障害となっていたのがかんばん方式との併用の問題であり、僕もこれで痛い目に合いました。作業指示が仕掛かんばんによって行われる以上、選択肢はかんばん方式を止めてスケジューラーに切り替えるか、作業指示以外の部分でスケジューラーを利用することによって併用させるか、どちらかになります。

かんばん方式では「3ヶ月内示から生産準備」を行うのが通常ですが、この場合の生産準備とは主に以下の作業を指します。

  1. 内示情報から所要量計算をして原材料・外注の手配
  2. 内示情報から工場資源の予測ベースの能力計画
  3. 工程全体の見える化(全体最適化)
  4. 内示(バックワード)と確定(フォワード)から納期管理
  5. スループット最大化のためのシュミレーション
  6. 工場内資源再配置

作業指示はかんばんにまかせるとしても、上記の生産準備を生産スケジューラーの結果をもって行えれば、かんばん方式とスケジューラーの併用が実現することになります。

ただし需要変動が少なく安定生産されている工場では日々の作業指示は現場の判断で十分行えます。需要の変動が予測しにくくなるほど、より正確な計画を作成するためには可能な限り変動を反映させてリスケジュールする必要があるため、生産スケジューラによる作業指示が必要になります。

部分最適化と全体最適化

生産スケジューラーでは工場の中の工程の流れを一気通貫で見える化することができるので、工程単位ではなく全体最適化を考えるのに役立ちます。

生産管理システムは工程ごとに管理を分けている場合が多いですが、これではリードタイムを短縮するのに限界があります。各工程が工場内で工程ごとに仕切りがあったり建屋が分かれていたりすると、工程間の在庫は山積みとなり生産リードタイムが長くなります。

工程間を隔てる壁こそが、モノの流れと情報の流れを滞留させ、リードタイムが緩くなり仕掛在庫が増える要因であり、生産工程を串刺し状につなげ、生産に流れを作ることの重要性が判ります。

生産スケジューラによって材料の所要量、工程への投入タイミングを明確にすることで、各工程間の在庫が削減されます。

納期管理

オーダが入ってくるとすぐに生産スケジューラで納期からバックワードに生産スケジューリングし、着手日、原材料の確認をして生産スケジュールをFIXすることでJust in Timeな生産スケジュールを作成します。

特急オーダはフォワードでリスケジュールすることで、最短でいつ生産が完了するかが確認できるので納期回答が迅速に可能になります。

直近の納期のオーダはフォワード割付で納期に間に合うかどうかを確認、遠くの納期のオーダはバックワード割付でいつ着手すればよいか、いつまでに材料を揃えばよいを確認します。

好景気時と不景気時のスケジューリング方向

経済成長のど真ん中にあるインドネシアのように好景気時は在庫削減とかリードタイム短縮よりも、スループットの増大が最大の課題になります。

ラインが空いていればとにかく手短なオーダを突っ込みたいところですが、 生産スケジューラを活用して現有資源でのキャパ最大化をシュミレーションできます。

一方、先のリーマンショックや中国経済の需要鈍化により、インドネシア国内製造業に対する需要が低下したときに、製造現場はオペレータが忙しいフリをするので無駄な動きが出来やすいです。

生産スケジューラがあれば、実際のところどのくらい忙しいかが論理的に解り、暇なら余計なものを生産しないで別の仕事をしてもらったほうがいいという判断がつきます。

2013年に入りインドネシアでは労使交渉が激しくなり労働者デモが頻発するようになりました。デモが発生すれば生産はストップし納期は遅れ、取引先に損害を与えることになります。

不測の事態を想定して事業継続の視点からBCP(Business Continuity Plan)を準備すると同時に、スケジューラーに起きてしまった事象を反映させリスケジュールを行なうことにより具体的な対応策を考えることができます。

生産スケジューラー導入直後に起こる納期遅れ

ERPのMRPによって生成される製造指示を元に動いていた現場に「生産スケジューラが生成した製造指図を元に製造してください」と言ったら製造現場は大ブーイングになります。

インドネシアでの実例ですが、SAPから初工程→第2工程→最終工程の3つの製造指図を発行している製造現場に、最終工程納期を基準にスケジューラーが生成した製造計画を導入し、双方に製造実績を入れたところ後者は納期遅れで真っ赤になりました。

スケジューラー導入当初は納期遅れだらけの真っ赤っかなガントチャートになりますが、これはあくまでもリードタイム短縮化の過程であると考え、無視する精神力が必要になります。この生産スケジューラのパラメータをチューニングして、製造リードタイムを段階的に短くしていくことも可能です。

生産スケジュールに悪影響を及ぼすリスケジュール前後の要因を意識する

生産管理システムの機能の中で、MRPやスケジューラーなど計画系の機能は、現場で運用するにあたって難易度が高いと思うのですが、その一方でシステム化が遅れているインドネシアでも、スケジューラーがキチンと運用されている工場は実際に存在しています。
ライン(機械)の数が多いほど、サイクルタイムを品目別ライン別に管理するのは大変なので、ライン単位の標準負荷を元に負荷計算を行うケースが多いと思います。

今キチンと整備されていない品目ごとライン単位のサイクルタイムを整備するより、まずはライン単位の標準負荷をスケジューラーのマスタにセットして、負荷あふれが発生しないリスケジュール結果を得ることからはじめます。

生産スケジュールに悪影響を及ぼす要因は、リスケジュール前後にあります。

  1. マスタや残高情報が間違っている(リスケジュール前の要因)。
  2. 現場で不測の事態(ライン停止、生産不良、材料不足)が発生する(リスケジュール後の要因)。

つまりリスケジュール前の要因を克服して100%正確なデータに基づいて理論的に正しいスケジュールが出来たところで、リスケジュール後にも悪影響要因がある以上、どっちみち誤差が発生するわけです。

大事なことは製品の作り漏れがないよう出荷スケジュール(受注オーダ)を正しく取り込むこと、出荷ロットと製造ロットが違う場合はMPS(基準生産計画)を正しく取り込むこと、末端親オーダと子品目の製造オーダの紐付きを意識することであり、これさえ守っていればマスタの間違いは運用しながら修正することができます。

受注と製造ロットの紐付きを意識する

工程間のロットが違うと、スケジューラー導入開始当初にシステム上のロットを現品の動きに合わせることが難しくなり、ガントチャートで全体感を見たときに、現場の動きと乖離します。

Asprova資源ガントチャート

実績数量のみ入力した状態

ましてや、計画と実績の差をスケジューラーが自動補充(需給調整1対1)してしまうとトレースはほぼ不可能になりますし、現場の動きとシステム上のロットの紐付きをマッチさせるのが難しくなります。

実績計上時に実績数量のみ入力してリスケジュールすると、計画期間内で計画数量との差異分を製造するのに必要な時間分ラインを占有します。

よって計画数量に満たないまま製造完了する場合は実績数量だけでなく実績取得日を入力し、ステータスを完了させることで、計画期間内に占有されたラインを解放します。

  1. 実績計上時⇒実績数量を更新
  2. 製造完了時⇒実績取得日を入力しステータスを完了させる
    またはステータスのみ完了させて未割付にする。
Asprova資源ガントチャート

実績取得日なしでステータスのみ完了した状態

実績取得日なしにステータスだけ完了させると、スケジューラーが何時から何時までに割り付けたら良いのか判断できず未割付になりますが、製造完了しているのであれば計画期間に影響を及ぼさないという意味では問題ありません。

受注オーダに対して製造オーダを1対1で割り付けると現品とシステムのマッピングがしやすいですが、それが難しければ受注オーダからMPSを作成しMPSから1対1で割り付ける、いずれにせよスケジューラーのロットNO(作業コード)を現品票に記載して、システムと現品を一致させる必要があります。

オーダ別の製造指図とライン別の差立表と生産スケジュールの目的の違いを意識する

「スケジューラーが運用される」ということは「生産スケジュールをシステムから出力する」ということであり、生産スケジュールは製造現場のホワイトボードにライン単位で貼り付けられると差立表になり、製造品目ごとに投入品目を記載すると製造指図になります。

生産スケジュールの出力形式は縦横の2通りしかなく、縦書(縦軸が日付)の差立表形式なら帳票作成も簡単ですが、横書(横軸が日付)のタイムテーブル形式なら帳票作成の難易度が上がり、現場の実績収集の単位が時間単位かシフト単位かに合わせて1日の計画数量を、生産能力に応じて按分表示する必要があります。

このようにアウトプットの形式が異なるのは、生産管理システムは工程ごとの数量管理を重視し、生産スケジューラーはラインごとの時間管理を重視するという目的の違いがあるためです。

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