インドネシアのビジネス環境

新しい生活様式下での対面式の訪問とWEB会議の選択【4回目の安全で健康的、生産的な社会に向けた移行期間の延長】


4回目のPSBB、「安全で健康的、生産的な社会」に向けた移行期間第一フェーズの延長

昨日ジャカルタはPSBB(大規模社会制限)の実施を8月27日まで延長し「安全で健康的、生産的な社会」に向けた移行期間を継続することを発表しましたが、これまで何度も延長されすぎて、現在の立ち位置が不明確になってしまいました。

6月一杯を「安全で健康的、生産的な社会」に向けた移行期間第一フェーズに設定し、それ以前の大規模社会制限下で制限されていた一部の活動が漸次再開するという流れであり、7月1日と2日に制限の更なる緩和及び活動再開の対象拡大について検討評価された結果、第一フェーズが延長となり、今回が4回目の延長突入というわけです。

あわせて昨日インドネシア政府は、2020年中の海外からの観光客の受け入れは難しいと発表したことで、9月11日から受け入れたいと表明していたバリ島のコスター知事の談話に水を差す結果となり、観光産業関係者とバリ島旅行をしたい人の両方を失望させたところです。

つまり当分の間は、ビザなしの観光客はもちろん、ビジネス目的のVOAでの入国もできませんが、「渡航することでインドネシア経済に貢献、雇用維持に繋がる人材」に限って、投資調整庁(BKPM)の推薦状をもってビジネスビザ(C212)、ビザ発給許可書Telex(VTT)と一時滞在許可証(C312)の発行がなされるという、選ばれし者だけが入国できるという準鎖国状態が続くことになります。

ただし昨日、韓国がインドネシアの間でビジネス目的の訪問者に対する入国を特例で認める「ファストトラック制度」を17日から導入することで合意しており、今後は二国間対話により対象国ごとに入国措置が変わってくるものと考えられます。

リアル訪問で得られてWEB会議で得られないものとは?

4回目の移行期間第一フェーズが延長されたばかりの昨日、久々にカラワンの客先を訪問したのですが、暴風雨の影響で工業団地内の街路樹が倒れて、行きも帰りも大渋滞を引き起こし、長時間の運転でへとへとになりました。

家に帰って考えたのですが、乾季の最中での久々の暴風雨を、普通に家の中から窓越しに眺めているだけだったら「酷い雨風だな」くらいの感想で終わっていたと思うのですが、わざわざ遠出して工業団地で渋滞にハマったことで「一か所倒木しているだけで完全に交通が麻痺してしまうもんだなあ」とか「コロナ禍でも工業団地を埋め尽くすほどの車の出入りがあるということは、生産自体は回復傾向にあるんじゃないか」とか、渋滞で進まない車の中で無意識に考えていました。

また現場の生産管理部の担当者との雑談の中で「二輪の生産は7月は大分回復し、工場の生産は平時の7割程度に戻っている。コロナ禍以前は残業してようやく生産が追い付く状態だったが、今は残業なしで生産が間に合う健全な状態であり、就業時間の短縮等は行っていない」という話を聞いた後で、活気のある製造ラインの様子を横目に見ながら二輪産業の生産の回復具合を肌で感じていました。

そして今回はシステムの運用の中でデータが正しく反映されない原因、担当者が今何を一番欲しているかなどのヒアリングを行い、無事に目的を達成したわけですが、渋滞の中でいろいろ考えたこと、現場の中で生産状況を体感できたというオプションが、時間とガソリン代を払うだけの価値があったかと言われると評価が難しいところです。

  • 現地への訪問の成果=WEB会議での成果+差分

現地への訪問の成果とWEB会議での成果の差分とは何かと問われたら、客先までの道のりで渋滞にハマり、世間話をして本題のヒアリングを行い、今後の段取りを決めて帰路につくという背景(現地の状況)であり、モニター越しの二次元空間からは得られないこの差分の情報が、正しい判断をしたり新しいアイデアを生み出すために役に立つかどうかがポイントになります。

そしてこの差分には業務に直接的に関係しない不純物が多く含まれており、余分な情報を取得するのに時間を浪費した分だけ作業効率が落ちたことになります。

この差分情報が効果を発揮するのは報告書などの文章を書く場合であり、リアルの経験の有無は文章の質に明確に優劣をつけますが、オンラインコミュニケーションツールの進歩により、今後この差分はどんどん小さくなり、WEB会議の成果の積み上げを中心に仕事を回していくことが、新しい生活様式下の働き方の主流になるものと思われます。

その結果として最後に残る差分というのは、もはや「やりがい」とか「満足度」とかいう、仕事の成果に直接関係しない心の問題に行きつくことになるのかもしれません。

話が少し飛びますが、現在毎週日曜日に放送中の「半沢直樹」の前作である第二期の中で、半沢が模擬金融検査で福山次長に詰め寄る際の以下のようなセリフが強烈に記憶に残っています。

  • 『貴方は羽根専務に会ったことがありますか?会ったことがないのにどうして社長にふさわしいと言えるのですか?企業は人だ、と自分で言ったにもかかわらず他人の言葉を鵜呑みにして先入観だけで羽根専務をトップに推すのは完全に自己矛盾なんじゃないですか?120億の損失を出した本人が羽根専務であることは一度でも伊勢志摩ホテルに行き湯浅社長と話をすればすぐに分かったはずだ。そんな人間が立てた再建計画なんて説得力はありませんよ。何故ならそこには血が全く通っていないからだ。』

「血が通って説得力がある」とは、言い換えれば「背景が見える」ということであり、若干効率を落としてでも不純物が含まれる差分を積み上げることに意義を見出すか、割り切って完全に効率重視で仕事をするかという選択をする機会が、今後益々増えていくものと思われます。





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