ジャカルタのコロナ感染拡大防止のためのPSBB(大規模社会制限)の影響で飲食店の経営が悪化しています。商業施設型店舗はモール本体の集客力に期待できる分だけ高額な固定費がかかり、ロードサイド型店舗は集客コストは全部自分で持つが固定費は割安になるという違いがあります。
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インドネシアの政治・経済・社会
日本人のインドネシアについてのイメージはバラエティ番組で活躍するデヴィ・スカルノ元大統領夫人の知名度に依存する程度のものから、東南アジア最大の人口を抱える潜在的経済発展が見込める国という認識に変遷しています。
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【2020年3月】インドネシア国内初の新型コロナウィルス感染者発覚
2020年2月4日に横浜に寄港したダイヤモンドプリンセス号船内で新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)のクラスター(集団感染)が発生したことで、日本では一気に危機感が高まりましたが、そのときインドネシア国内での感染者はまだ確認されていなかったので、自分を含め周りのインドネシア人も対岸の火事を見ている感じでした。
中国、日本、韓国と感染者が増えていく一方で、何故かインドとインドネシアでは感染者が出ておらず、これは高温多湿な気候に守られているからだとか、インドのカレーやインドネシア料理全般で使われるkunyit(ウコン)が病気の予防に役立っているとか、一種の優越感を持ってインドネシア人も在住日本人も安全圏から見物していたように思います。
2003年に発生したSARSと同じように、しばらくすれば収束に向かうものと思いきや、3月2日にインドネシアで初めて陽性患者が確認され、その感染者はマレーシアで日本人と接触したのが原因らしいという政府発表があったことで、インドネシア在住日本人は一気にこれまで経験したことのない「偏見」または「差別」という不安の底に突き落とされました。
スーパーへの入店時に日本人だけはマスクを着用するよう言われたとか、すれ違いざまに露骨に口をふさぐような仕草をされたとか、長年の間ジャカルタにおいてある程度の尊敬と信頼を確立してきたと信じて疑わなかった日本人にとっては屈辱的なニュースだったかと思います。
僕自身は差別的な対応をされたことがないのですが、少なくとも教育レベルの高いインドネシア人に関しては、情報を鵜呑みにせず曲解することもなく、冷静に今までどおり日本人に接してくれていると感じました。
実際に差別的な対応をされた方に対しては同情の気持ちは禁じ得ませんが、インドネシアで外国人として仕事をし生活する日本人のリスクと認識し、気を引き締める契機になったと前向きにとらえるしかないかもしれません。
工業団地の工場でもジャカルタのモールやオフィスビルでも、入場時に検温されるようになり、非接触型の体温計が表示する数字があまりにも低すぎて、意味なしという声が各所から聞こえてきたとはいえ、間違いなくインドネシアでも濃厚接触を極力さける雰囲気が醸成されていきました。
自分は元々水道があれば小まめに手洗いはするし、外から帰ったらうがいと洗顔も欠かさず、健康な状態で咳もしていないのにマスクを強制されることに抵抗がありましたが、受け入れ側からマスクしろと言われれば反抗しても仕方がありません。
そんな最中、今回はじめて労働省(Dinas Tenaga Kerja dan Transmigrasi)から、新型コロナウィルスに関する現地調査という名目の不法就労取り締まりのための抜き打ち検査が入り焦りましたが、個人のビザや会社関連の書類、税金やBPJS(社会保険)の支払いと報告は完璧に遂行している自信があったので、それほどうろたえることなく対応できました。
朝一で労働省(DISNAKER)から検査が入り直近の出入国日や咳の症状が出た日を調査、以下書類を求められましたのでご参考までに
1.会社設立証明書
2.労働報告義務 WLK
3.KTP(家族全員)
4.NPWP
5.営業許可書 (SIUPまたはNIB)
6.就業規約PP(従業員10名以上の場合)
7.従業員の給料一覧
8.BPJS支払いの証拠
結局追加で以下も提出しました。印象としては不法就労取り締まりと合わせて外国人労働者の職場のクラスター潰ししている感じでした。
9.外国人労働者利用補償金基金DKPTKA(1200ドル)振込済み証拠
10.外国人雇用計画書RPTKの承認書
11.居住地証明(SKTT)
12.居住区管轄の警察への届け出(STM)
今回は書類の不備がなかったこともあり極めて和やかな雰囲気の中での調査であり、ことあるごとにいいがかりをつけて摘発しようとするネガティブなイメージが強いインドネシアの労働省の役人さんが、真剣に新型コロナウィルス対策に取り組んでいる感じが十分伝わってきて大変好感が持てました。
新型コロナウィルスの発祥地とされる中国からの農産物の輸入がストップされ、とりわけ玉ねぎ不足は日本人の駐妻さんの間で大きな話題になりましたが、自分の周囲にこの件で騒いでいるインドネシア人は皆無であり、玉ねぎ嫌いが多いインドネシア人にとっては、別に無くてもそれほど困らない食材ではないかという疑念が一層強まりました。

身近で一番危機感を感じたのが、いつもなら賑わう土日のショッピングモールが閑散としており、営業時間が短縮されいくつかの店クローズしていることであり、ウィルスの恐怖が解消されない限り外出自粛のムードは溶けそうもなく、このまま経済が回らないとウィルス自体よりもよっぽど深刻な問題になると思います。

ルピアの下落が止まらず3月23日時点で1円=Rp.153まで達し、円建て給料を貰っている人にとっては嬉しい悲鳴かもしれませんが、インドネシア国内向けビジネスを行う会社自体はルピア建ての請求書を発行しているため大変だと思います。
ただしリーマンショック後の2014年に国内企業に対する外貨規制が強化され、国内取引は基本ルピアで行ない、外貨建てオフショア債務(海外からの外貨借入)へのヘッジ義務が課されたため、海外からの外貨借り入れの返済不履行による連鎖倒産は発生しないはずです。
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インドネシア国内企業に対する外貨規制の強化 【銀行のカスタマーサービスで感じた景気動向】
通貨危機時の外貨建て債務の為替損による企業連鎖倒産の教訓から、現在は国内企業に対する外貨規制が強化され、金利の安い海外で資金調達して国内で投資するということが難しくなりました。
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このまま景気が傾けば、企業の債務支払いや回転資金調達のために、保有する不動産を現金化する動きが出てくることが予想されますが、不動産価格がある程度下落するとはいえ、外国人名義の土地の所有権を認めていないインドネシアでは、外資による土地の買い占め等は起こりません。
最も心配されるのが雇用の問題で、新型コロナ騒動による消費の冷え込みは、内需で支えられたインドネシアの経済活動に致命的な影響を及ぼしかねませんので、リーマンショック後のように、ある程度失業者が増えるのは避けられないと思います。
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コロナ禍によるインドネシアでの貧困率と犯罪率の増加【物理的な移動制限がもたらす経済へのマイナス影響】
新型コロナウィルス感染拡大防止のために発動された、大規模社会制限PSBBによる物理的な移動制限は、経済活動へマイナス影響を及ぼすと同時に、貧困率と犯罪率の増加を招いています。
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今後予想される不況から最も影響を受けやすい業種は弊社のようなサービス業であり、実際に開始予定のプロジェクトの延期や、いくつかいただいていた引き合いの撤回等も発生しており、今年度の事業計画の練り直しを余儀なくされています。
3月23日現在、インドネシア国内の都市のロックダウン(封鎖)までには至っておりませんが、遊興施設には既に閉鎖命令が出されており、ブカシに至っては公設・私設の市場のテナントを除く全ての屋台の営業が禁止されており、政府主導の閉鎖的な動きが強まる可能性が高いと思います。
【2020年4月】大規模社会的制限(PSBB)の実施
僕が住んでいる西ブカシでも、3月下旬頃から労働省(Dinas Tenaga Kerja dan Transmigrasi)による自宅勤務WFH(Work From Home)とソーシャルディスタンシングの要請が企業や店舗に対して行われてきましたが、テレビ番組でも「#DiRumahaja(家に居よう)」というハッシュタグが表示されるなど自宅での自粛を促す雰囲気が強く、芸能番組も司会者MC(master of ceremony)以外は自宅から出演します。
そんな中で大規模社会制限PSBB(Pembatasan Sosial Berskala Besar)がジャカルタでは4月10日から23日まで、ブカシでは4月15日から28日まで、それぞれ2週間の予定で施行され、今後の感染拡大の状況によっては延長されるようです。
日常生活でPSBBで直接的に影響を受けそうな外出時の行動はおおよそ以下のとおりです。
- GoJekによるバイク二人乗り禁止。アプリ上のメニューからバイクの配車Gorideは削除されています。
- 一般家庭でバイクの二人乗りをする場合は手袋とマスク着用必須で両者の住所が同じであること。
- 5人乗りセダンの乗員は3名、8人乗りミニバンの乗員は4人。全員マスク着用のこと。
気づいたというかひゅうまさんに教えていただきました。
>定員が奇数だとかなり儲けた
・定員7名に対して4人⇒お得
・定員4名に対して3人
・定員2名に対して1人
ということですかね?
というかAvanzaとかのミニバンって8人乗りかと思ってました・・・
各地チェックポイントにてrazia(検問)があり、一応罰金の最高額は100jutaと言われているので、心理的に外出を制限する意味合いもありそうです。
今日14日はジャカルタでPSBB違反の取り締まりが各チェックポイントで行われているようですね。極力外出を控え車の乗車人数と座る位置にはご注意を。実際にはないと思いますが一応罰金Rp.100jutaらしいので。
うちの場合は4月23日にTol西ブカシ出口で助手席に嫁はんを乗せていたところ、チェックポイントに止められました。「嫁はんは低血圧なので後部座席だと車酔いするんです」という抵抗も虚しく後部座席に強制的に移動させられ、2人とも検温を受けたものの罰金は取られませんでした。
外出したとしてもほとんどの飲食店は店内での食事は出来なくなっており、テイクアウェーのみ受け付けていますが、イートインを強硬する店でもテーブル間の距離は1.5mほど広げられています。

自宅での自粛続きによる食べ過ぎ飲み過ぎからPSBBはPelebaran Seluruh Bagian Badan(体のすべての部分が分厚くなった)などというパロディも作られているくらいですが、イートインの客が期待出来ない飲食店はデリバリーサービスを中心とした営業を続けています。
ジャカルタの多くの日本食レストランもお弁当販売を始める店が増え、ジャカルタに残る日本人にとって自宅で日本の味が食べられるということで大変好評なので、コロナ騒動が沈静化した後にも、弁当ビジネスというのは大きなチャンスになるのかもしれません。
2019年のインドネシアの二輪の販売台数が648万台、輸出81万台であり、四輪の販売台数が103万台、輸出30万台でしたが、新型コロナの影響で4月に入ってほとんどの日系二輪四輪メーカーが生産停止しています。
- ヤマハ:4月3日~19日まで二輪工場の生産停止⇒5月4日まで延長。
- スズキ:4月13日~26日まで四輪・二輪の工場の操業を生産停止。
- トヨタ・ダイハツ:4月13日~17日まで生産停止⇒24日まで延長。
- ホンダ四輪(HPM):4月13日~24日まで生産停止。
- いすゞ:4月1日~既に製造を停止。
製造業は許可を取れば操業を続けることはできますが、マスク着用、ソーシャルディスタンシングを守っているか労働省(Dinas Tenaga Kerja dan Transmigrasi)からの検査が入り、違反が発覚した場合は操業許可の取り消しもあるようです。
インドネシアの2019年の四輪販売シェアはトヨタ(32.2%)、ダイハツ(17.2%)、ホンダ(13.3%)、三菱(11.6%)、スズキ(9.7%)と続いており、1.2%のシェアにとどまり業績不振が続いていた日産は、3月18日に現地生産の撤退を表明しており、今後は三菱自動車等と協力してインドネシアでの製造と販売を継続するということです。
インドネシアの日系製造業における二輪四輪の裾野産業の比率は高く、二輪四輪メーカーの生産停止によって大きな影響を受けます。
また二輪四輪業界全体をお客様とする弊社のようなサービス業への影響も大きく、コロナ騒動が沈静化した後にも以前と同じような事業環境は戻ってこないという前提で、ポストコロナ禍以降の事業のやり方を日々試行錯誤しています。
【2020年5月】PSBB継続のままラマダン(断食)に突入したインドネシア
昨日5月21日時点でインドネシア全土の死亡者数は1,278名、うちジャカルタ市内では498名になっており、インドネシア全土での感染者増加973名/日であるのに対し、ジャカルタ市内の増加が70名/日ということで、ジャカルタ以外の地方、特に東ジャワでの感染拡大が深刻なようです。
明後日5月24日にレバラン(Idul fitri=断食明け大祭)を迎えますが、Mudik(帰省)の禁止によりジャボデタベック(Jabodetabek=ジャカルタ、ボゴール、デポック、タンゲラン、ブカシ)と外側とを結ぶ幹線道路には検問が敷かれ出入りが禁止されているので、毎年恒例の中部ジャワや東ジャワ方面の大渋滞は発生しないと思われますが、ジャボデタベック内のSilaturahmi(挨拶回り)も、4月下旬に自家用バイクか車という条件付きでOKだったのが、その後NGになって5月中旬に警察がOKを出した後、5月16日にアニス知事がやっぱりNGと言ったのが最新情報のはずです。
最終的には2020年のレバラン休暇の一斉有給消化日は、新型コロナウィルス感染拡大防止のため年末に変更され、今年の年末は12月24日から年明け1月3日までの11連休になります。
今回のジャカルタ特別州のPSBBが3回目の延長でこれが最後と言われていますが、西ジャワ州はジャカルタと期間を合わせるために5回目の延長があるのではないかと考えられます。
(5月30日追記)
予想どおり5月28日に西ジャワ州のPSBBは6月4日まで5回目の延長がなされる決定が出されました。
PSBB発令当初は、国民一丸となって感染防止のために外出自粛しようということで「#DiRumahAja(家にいよう)」というハッシュタグが流行りましたが、先日レバラン準備の買い物のためにショッピングモール入口に殺到した群衆の動画が拡散されると、今度は「#IndonesiaTerserah(どうにでもなれインドネシア)」という投げやりの悲観的なハッシュタグが拡散されました。
5月19日に在インドネシア日本国大使館から在留邦人宛てに送られたメールの記載によると、インドネシア入国時にPCR検査結果を記載した健康証明書(Health Certificate)の提示を求められ、これがない場合はインドネシア到着後のラピッドテスト(迅速抗体検査)を受け、14日間の自主隔離への同意が必要であるとのことです。
現在のところ日本国内で受けられるPCR検査は、海外からの入国時の空港検疫時のみであり、一般的に医療上の必要性が認められない限り、日本国内の市中の医療機関では受けられません。
また健康証明書は「出発の空港チェックイン時とインドネシア到着時の入国審査の際に,7日以内に発行されたオリジナルを提示する必要があります。」とのことですので、日本への入国後に14日間の自主離隔をしたことを考慮すると、日本入国時のPCR検査は、インドネシア入国時には既に無効ということになります。
その場合、日本からの出国時には有効期限内の健康証明書がないままチェックイン手続きすることになりますが、航空会社によっては搭乗を拒否されるケースもあるようで、出国時のオペレーションが統一されていないようです。
インドネシア入国後のラピッドテストは空港の検疫時に受けられるものと思いますが、針先で指先刺して血液を検査する簡易的な検査であり、精度はPCR検査よりも落ちるとのことです。
ラピッドテストはジャカルタやチカランの病院やドライブスルー式の簡易検査所で対応しているようですが、検査費用は50万ルピアとか150万ルピアとか、場所によって差があるようです。
ジャカルタでは新型コロナウイルス感染の拡大を防ぐためのPSBB(大規模社会制限)が4月10日から23日まで14日間の予定で発令されていましたが、先日22日にジャカルタのアニス知事はこれを4月24日から5月22日まで28日間延長することを発表しました(28日間延長なら5月21日までのような気もしますが・・・)。
第一回目のPSBBはジャカルタ市民の意識が徹底されておらず違反者が続出したようで、第二回目は罰則等が厳格に適用されるという話もあり、かく言う僕も昨日西ブカシTol(高速道路)出口に設置されたDISHUB(運輸省)によるチェックポイントで、嫁はんを助手席に座らせている現場を摘発され、その場で後部座席への移動を指示された上で、2人とも検温を受けました。
インドネシアは本日4月24日からラマダン(断食)期間に入りますが、ジャカルタのPSBBの延長が発令された22日の前日21日には、ジョコウィ大統領がラマダン期間とレバラン休みのMudik(帰省)の禁止を発表し、本日24日からジャカルタから東に延びるジャカルタ-チカンペック高速道路 (Jalan Tol Jakarta - Cikampek)の高架部分(Jalan Tol Jakarta - Cikampek Layang)は通行禁止になっています。
チカランやカラワンの工業団地に向かうTol出口では検問所が設置され、製造業従事者や運搬トラックなど以外の通行が制限されるということなので、弊社のような製造業向け業務システム導入業者にとっては、完全に物理的な客先訪問の道が断たれることになりそうです。
そして昨日23日に運輸省は、24日から陸海空及び鉄道の全ての
ただし常識的に考えて日本への帰国便が完全ストップされ在住邦人がインドネシア国内から出られないということは考えにくいので、国際便については今後何らかの追加措置が発表されるものと思われます。
(4月24日追記)
国際線は急遽運航が認められることになりましたが、減便や突然のキャンセルなどは航空会社の裁量に拠るため、利用者個人でフライトの確認が必要になりそうです。
毎年ラマダンに突入する直前は、まわりのイスラム教徒からは「明日から一ヶ月間みんなで頑張ろう」みたいな連帯感が感じられ、非イスラム教徒としての我々は「一ヶ月間生産性落ちるけど仕方ないなあ」みたいな一種の無力感が漂うのですが、既に3月下旬から客先訪問が出来ないまま社員全員WFHが続いてきた今となっては全く季節感が感じられません。
毎年ラマダン期間中は、我々日本人はまわりの断食中(プアサ=puasaという)のインドネシア人に気を使って隠れて水を飲んだり、夕方の日没時のお祈り(マグリブ)と同時に家族と一緒に楽しく飲食を解禁(ブカプアサ=buka puasa)したいという気持ちを尊重して、間に合うように帰宅時間を早めてあげたり何かと気を使っていましたが、PSBB継続に伴い在宅勤務のままなし崩し的に突入する今年は、非イスラム教徒の日常は何も変わらない感じがします。
5月23日の日没までラマダンが続き、24日と25日がレバラン(断食明け大祭)となり、例年ですと前後に一斉有給(Cuti Bersama)を入れることで、1~2週間ほどの長期休暇中に多くのインドネシア人のMudikによる民族大移動が発生するはずですが、今年の一斉有休は12月28日~31日にスライドされ、12月24日からのクリスマス休暇から年明けの1月3日までの11連休になるようです。
先週4月17日にスリ・ムルヤニ(Sri Mulyani)財務相が、現時点で新型コロナウィルスの影響による失業者が120万人出ており、今後さらに最悪520万人まで拡大する恐れがあると懸念を表明しており、インドネシアの経済成長は2019年の5%プラスから2020年は0.5%マイナスになると予測されています。
企業倒産やPHK(Pemutusan Hubungan Kerja=解雇)による失業者増大は、犯罪などの社会的不安に直結するため、補助金や借入金手続きの簡素化、法人税や所得税の軽減と免除などの、失業対策と企業倒産対策がさらに強化される必要があるという点は各国共通の課題です。
3月中旬から下旬にかけて中部ジャワのテガール(Tegal)やジョクジャカルタ(Yogyakarta)などの地方都市が独自で入境制限を設け都市封鎖するというニュースが出回り、ジャカルタのアニス知事もジャカルタのロックダウンの可能性を示唆していましたが、3月16日にジョコウィ大統領からロックダウンの権限があるのは中央政府のみであると明確に否定されました。
3月28日にアニス知事は中央政府にジャカルタのロックダウン要請を行うも拒否されたことに対し、人命軽視の経済優先政策だと批判しましたが、当初から中央政府の方針はあくまでのソーシャルディスタンシングによる感染拡大阻止で一貫しており、ニューヨークやイタリアの都市で採用されたようなロックダウン措置には否定的でした。
しかし最終的には地方政府からの要請にこたえる形で、4月3日付けでPSBB(Pembatasan sosial berskala Besar)の指針に関するインドネシア保険相令「Peraturan Menteri Kesehatan Nomor 9 Tahun 2020(大規模な社会的規制のガイドラインに関する保健大臣規則2020年第9号)」が施行され、ジャカルタにて4月10から実施されましたが、あくまでも公衆衛生を保ち、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための緊急対応という位置づけでありロックダウンを前提としたものではありません。
- 学校や職場の行動制限。
- 宗教活動の制限。
- 公共の場所や施設での活動制限。
そして先日ジャカルタのPSBBが4月24日から5月21日までの28日間延長され、僕が住んでいる西ブカシを含むブカシ県やボーゴール市やデポック市なども、4月29日から5月12日までの14日間延長されました。
今回PSBB延長と合わせて24日からのMudik(帰省)禁止措置により、Tol(高速道路)や地方への幹線道路に検問が設けられ越境行為の制限、国内便の停止と国際便の制限によって物理的な都市の封鎖が行われることと同じになりますので、延長PSBBは、実質的にJabodetabek(Jakarta / Bogor / Depok / Tangerang / Bekasi)のロックダウンに近い措置となりました。
日本の緊急事態宣言(4月8日~5月6日)は国民に密閉・密集・密接の「3つの密」を避ける行動を求めることで感染拡大を防ぐことが趣旨でしたが、インドネシアの初回PSBB(4月10日~4月23日)はソーシャルディスタンシングの意識を高めることで感染拡大を防ぐという意味で、両者は近いものだと思います。
本来インドネシア国内政治のトピックが日本語で「緊急事態宣言」と翻訳される場合は、非常事態(Keadaan Darurat)か市民緊急事態(Darurat Sipil)が発令された時であり、実はPSBB発令の前にジョコウィ大統領が、今はまだ市民緊急事態を宣言するには時期尚早だと発言するほど、この大統領令は強い強制力を持ちます。
市民緊急事態は1998年の暴動時の首都警戒や、2004年のスマトラ沖地震に伴う津波被害時の対応のように反乱、暴動、自然災害、戦争など国家を揺るがす危機的状況で発令されるものであり、基本は軍(TNI)に出動命令が出されます。
今回のPSBBは保険大臣によって発令され、実務にあたるのは保健省から要請を受けた警察と運輸省(DISHUB=Dinas Perhubungan)、労働省(DISNAKER=Dinas Tenaga Kerja dan Transmigrasi)であり、軍(TNI)の姿を街中で見かけることはありません。
今回ほどの大規模な行動制限措置が発令されたのはジャカルタでは1998年の暴動の時以来であり、当時は軍(ABRI=Angkatan Bersenjata Republik Indonesia)が道路を封鎖し2日間くらい外出禁止令が出されましたが、今回は軍(TNI=Tentara Nasional Indonesia)の姿が一切見当たらず、殺伐とした雰囲気を一切感じません。
(注)ABRIは陸(TNI-AD)・海(TNI-AL)・空(TNI-AU)の国軍と、その管轄下にある警察で構成されていましたが、民主化に伴う改革の一貫として2000年1月に警察は分離されました。
延長を繰り返し移行期間(Masa Transisi)に至るまで続いたPSBBですが、ジャカルタは5月で終了、西ジャワ州(ボゴール県、ボゴール市、デポック市、ブカシ県及びブカシ市は除く地域)は6月で終了しました。
ジャカルタ特別州
- 1回目:4月10日から4月23日までの14日間
- 2回目:4月24日から5月21日までの28日間
- 3回目:5月22日から6月4日までの14日間
西ジャワ州
- 1回目:4月15日から4月28日までの14日間
- 2回目:4月29日から5月12日までの14日間
- 3回目:5月13日から5月26日までの14日間
- 4回目:5月27日から5月29日までの3日間
- 5回目:5月30日から6月4日までの6日間
- 6回目:6月5日から7月2日までの28日間(実際は6月26日に終了)
【2020年6月】PSBBを段階的に緩和する移行期間(PSBB Masa Transisi)
昨日、西ブカシの自宅近所にあるスマレコンモールをジョコウィ大統領が訪問し、6月8日の営業再開に向けての準備状況の視察を行っていました。
さっきブカシのスマレコンモールの前の警備に装甲車が動員されて厳重だなあと思っていたら、大統領が通常営業再開の準備状況の確認に来ていたらしい。
昨日(5月26日)から軍(TNI)と警察(POLRI)地方政府(Pemerintahan Daerah)が健康手順規律(Disiplin Protokol Kesehatan)としてのマスクの着用、ソーシャルディスタンシング、手洗い励行などが、PSBBに沿って遵守されているかのチェックのため、4つの州(provinsi)と25の県(kabupaten)の交通の要所やモール、市場、観光地など1,800の対象場所に配備されており、Tol(高速道路)西ブカシ出口のチェックポイントにも、今日は大勢の警察官が待機していました。
ジャカルタ特別州知事のアニス氏は昨日の演説で、6月4日まで予定されているPSBBを再延長するかしないかは、市民それぞれの意識次第であると述べましたが、PSBB明けの市民の行動規範はNew normal(インドネシア語ではNormal baru)という手順に規定され、6月1日から段階的に進められる予定です。
ニューノーマル(New normal)という言葉は、2008年のリーマンショック後に起きた金融市場の変化に対して、非日常的な出来事が新しい日常になるという文脈で使われた概念であり、今回のインドネシアのPSBBによる規制下の日常に対比させた、新しい日常を表す概念ではありますが、これは今月初めにインドネシア経済産業省から発表されたコロナ後の経済復活のためのロードマップに準じています。
今後のシナリオ、まだまだ長いよー😭
6/1
製造業、サービス業再開
6/8
モール再開
6/15
学校再開
サロン、スパなど状況見極め
7/6
レストラン、カフェ、ジム再開
旅行解禁
人数制限の上で集会解禁
7/20
大規模社会活動開始の見極め
7月下旬または8月初旬に完全再開
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ジャカルタの新しい生活様式への適応期間【外出自粛で溜まったフラストレーションが引き起こした自転車ブーム】
ジャカルタの新しい生活様式への適応期間中には、大規模社会制限PSBBによる外出自粛で溜まったフラストレーションが引き起こした自転車ブームが起きており、土日の朝夕の道路にはサイクリング中の自転車集団が至る所に見られます。
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このロードマップに比べてNew normalでは、経済を回復させ失業者増加を阻止する目的で、6月中に飲食店などの店舗をすべて営業再開させ、7月に評価を行うというようにスケジュールを若干前倒ししています。
6月1日から国営企業BUMN(Badan Usaha Milik Negara)は45歳未満はオフィスへ出社、45歳以上は引き続き在宅勤務WFHを行い、製造業やサービス業は限定的に営業再開、6月2日から小売店の営業再開、6月8日から観光業や教育機関の再開、6月29日にレストランやカフェ、ジムなどの営業再開、以上を段階的に実施した後に、7月13日と20日にNew normalの実施結果について再評価を行い、8月初旬にすべての社会活動を通常に戻すことになっています。
しかしPSBBからNew normalへ移行するにあたり各自治体ごとに達成すべき3つの指標があり、現在のインドネシアの感染状況(5月26日の感染者増加数は全国415人 ジャカルタ61人)から考えると、なかなか厳しい達成目標です。
- 基本再生産数R0(感染症に感染した1人の感染者が、誰も免疫を持たない集団に加わったとき、平均して何人に直接感染させるかという人数)を現在の2.5から2週間連続で1以下まで下げること。
- 病院や救急IGD (instalasi gawat darurat)の病床数が入院が必要な監視対象患者(PDP=Pasien Dalam Pengawasan)や観察対象者(ODP=Orang Dalam Pemantauan)を十分受け入れられるだけあること。
- 人口100万人あたり3500人のPCR検査を実施すること。
先日一般企業や製造業などで遵守されるべきNew normalの行動規範に関する保険大臣による決定事項(nomor hk.01.07/menkes/328/2020)が発表され、新型コロナのパンデミック下におけるオフィスや工場での働き方について規定されており、徐々にコロナウィルスと付き合いながら平時の企業活動に戻していこうという動きが出てきています。
ジャカルタ特別州で新型コロナウィルス感染拡大防止のために、明日6月4日まで実施される予定のPSBB(大規模社会制限=Pembatasan Sosial Berskala Besar)は、6月5日から地域規模社会制限PSBL(Pembatasan Sosial Berskala Lokal)と名前を変えて、ジャカルタ州内の62のコロナ感染状況が深刻なレッドゾーンに区分される町内会であるRW(Rukung Warga)単位に重点的に検疫(karantina lokal)が行われます。
このRWとはインドネシアの地方行政区画の構成単位の中で、下から3番目に区分されます。
- Propinsi(州)
- Kabupaten(県)
- Kecamatan(郡)
- Kelurahan(町または区)
- RW(RUKUN WARGA 町内会)
- RT(RUKUN TETANGGA 隣組)
- KK(Ketua Keluarga 家族単位)
ややこしいのですが、イメージとしては住所を規定する郵便番号がKelurahan単位に管理されており、インドネシア人の身分証明書であるKTP(Kartu Tanda Penduduk 住民登録証)の発行手続きはKelurahanで行われ、RWはその一個下の町内会に該当し、外国人がKITAS取得のために必要な所在地証明書であるDomisili(Surat Keterangan Domisili)はRWの管理者(Ketua RW)から発行してもらい、アパートメントの場合は管理事務所がRWを兼ねることが多いです。
コロナ感染自体はまだ収まってはいないが、ゼロリスクは非現実的であるという考え方の下で、感染が深刻な場所を重点的に管理することによりNew normal(新しい日常)に移行していこうという政府の方針かと思います。
最終的にジャカルタ州知事アニス氏はPSBBの延長を発表し、6月末までを安全で健康的、生産的な社会(Aman, Sehat dan Produktif)に向けた移行期間(masa transmisi)とし、会見では当初話題に出ていた地域規模社会制限PSBL(Pembatasan Sosial Berskala Lokal)という言葉は使用されませんでしたが、Covid-19の発生件数が多い66のRWが、厳格管理地域(Wilayah Pengendalian Ketat=WPK)に指定されます。
企業のオフィスは6月8日(月)から密を避けるために出社時間と退社時間を2時間以上空けた2シフト体制で業務を再開できます。独立店舗のワルンやレストランは6月8日から50%の収容人数制限を条件に営業再開。ショッピングモールは6月15日から営業再開します。
6月5日から個人の車の場合は定員が全員家族であれば制限はないが、家族でない場合はPSBB時の50%定員ルールを踏襲する。6月8日からGoJekやGrabなどのOjek Online (Ojol)は利用再開します。
奇数偶数規制は渋滞状況が酷くなってきたタイミングで再開される予定で、日常生活に関わる事案の段階的緩和は以下のとおりです。
- 6月5日:宗教活動・個人の車の通常定員(家族限定)・公共交通機関(定員50%制限)
- 6月8日:オフィス・飲食店・製造業・小売店、バイクタクシーなど営業再開
- 6月13日:奇数偶数制度
- 6月15日:ショッピングモール営業再開
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消費者の新しい生活様式への移行に伴う飲食店ビジネスモデルの変化【飲食店が遵守すべき健康プロトコル】
消費者の新しい生活様式への移行に伴い、飲食店のビジネスモデルは立地や内装にこだわるよりも、郊外の土地にオープンエアのホールを設営したり、都心にデリバリーとドライブスルーの専門店を設置するなど、お客に衛生に対する不安を与えない健康プロトコル重視に転換します。
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「あなたが私にくれたもの」というフレーズで有名なジッタリンジンの「プレゼント」という歌を知っている人はたぶん40代以上だと思いますが、4月10日からジャカルタのPSBBが始まって以来、客先訪問ができずプロジェクトの進行は遅れるわ、新規営業は出来ないわ、散々な目に遭っていると悲観的に考えていたのですが、最近は少し心境が変わってきまして、PSBBがあったからこそ見えていなかった新しい気づきがありました。
基本的に朝は自宅に居るため、毎朝掃き掃除とモップ掛け、庭の植木の手入れなどをガッツリ2時間ほどかけて行なっていますが、PSBB実施前は嫁はんからやれと言われても面倒臭くてやらなかったこれらの汚れ仕事を自分から率先してやるようになったのは、体が運動不足と腰痛を感じて自然と何かしらの動作を欲するようになったからであり、考えてみたらわざわざウォーキングや筋トレしなくても、日常生活運動として体の不調を解消することができるのではないかと気づいたからです。
時間があり余る日常生活の中では無駄な動きというものは一切なく、ホウキを動かすのも運動だし、モップ掛けのためにバケツに水を汲んで運ぶのも運動だし、草むしりのためにしゃがむ動作すら運動であり、これらの日常生活運動をする中で、いつの間にか腰痛が消えていたということすらあります。
仏教の教えの中に、始めもなければ終わりもないことを意味する「無始無終」という言葉がありますが、別に「運動不足を解消するために一念発起してウォーキング」とか「腰痛を解消するために腹筋30回」とか気合を入れる必要はなく、いつでもどこでも日常動作の中に目的を達成する動きが自然と組み込まれているのだという考えは、PSBBが僕にくれた重要な教えだと考えています。
まあこの達観した心境がいつまで持続するかというのはまた別問題ではあります。
ジャカルタでは今日から本格的にオフィスを再開した会社も多いと思いますが、通勤の足となるGoJekやGrab bikeなどのバイクタクシーの利用も許可されたことで、2か月以上非表示になっていたスマホアプリ上のGorideのオーダーボタンが再表示されており、さらに独立店舗型の日本食レストランも店内イートインの営業を再開し、自宅へのお弁当のデリバリーに飽き飽きしていた日本人客で賑わったようです。
多くのインドネシア人が待ちわびるショッピングモールの営業再開は6月15日の予定ですが、先日6月1日に運航再開したLion Airが、搭乗予定の乗客の搭乗前の健康チェックに必要な書類の条件を満たさないケースが多発したため、6月4日から再度運航停止したように、営業再開するモール側または客側に不備があれば再度無期限閉鎖になる可能性もあると思われます。
こちらは今朝の南ジャカルタのTB SimatupangとLebak BulusからBundaran Pondok Indah方面へ向かう道路の様子ですが、まさに「世界一の渋滞都市」という不名誉な称号を得ていたジャカルタの本領発揮の地獄絵図であり、PSBB期間中の閑散とした道路を走りながら「あのジャカルタの渋滞が懐かしい」などと一瞬でも感じていたのが嘘のように、この写真見ただけで既にゲンナリしています。
Arus lalu lintas di Jakarta mulai ramai memasuki masa transisi PSBB pekan kedua. Kemacetan terjadi di TB Simatupang Lebak Bulus ke Bundaran Pondok Indah. Begini pantauannya: #Kemacetan #PSBB
Foto: Ari Saputra/detikcom pic.twitter.com/ZyWfV343b2
こちらは今朝のうちの最寄のブカシ駅の通勤ラッシュの状況で、本日からほとんどのジャカルタのオフィスが再開したということで、ブカシ駅ではジャカルタへ向かう人々で大混雑し、完全にPSBB施行前の状態の日常風景に戻った感すらあり、もはや三密どころの話ではありません。
Hampir semua perkantoran di Jakarta mulai beroperasi kembali hari ini. Akibatnya, penumpukan penumpang terjadi di sejumlah stasiun kereta. Salah satunya di Stasiun Bekasi. Begini penampakannya! #Bekasi #KRL
Foto: Agung Pambudhy/detikcom pic.twitter.com/FaYf35WJz1
昨日6月7日時点でのインドネシア全土の感染者数累計は31,186名(前日比+672名)、死亡者数累計が1,851名(感染者数累計の5.9%)、退院者数累計が10,498名(感染者数累計の33.7%)、ジャカルタ市内に限って見れば感染者数累計が7,946名(前日比+160名)、死亡者数累計が537名(感染者数累計の6.8%)、退院者数累計が3,170名(感染者数累計の39.9%)で感染者数と死者数ともに上昇中であり、この状態で経済活動を再開したものの、6月はあくまで安全で健康的、生産的な社会(Aman, Sehat dan Produktif)に向けた移行期間(masa transmisi)という見極め期間ですので、状況によっては再度オフィスの閉鎖要請が出る可能性もあります。
日本では、日本人の感染者数や死者数が欧米のような惨状にならなかった実態不明の要因であるファクターXの検証が始まるなど、ニュースやSNS上での極端な危機感の煽りは無くなってきましたが、インドネシアでは3月中旬から自宅学習が続いているジャカルタの学校が、来月7月13日に新学期を迎えるにあたって、小児科医師会が死亡率を3~4%と極端に高く見積もった上で、近日中に学校を再開した場合100万人の生徒が死亡する恐れがあるとトンデモ警告を発していたり、何か2か月前の日本で出た「42万人死亡説」を見ている既視感があります。
日本に一時退避している駐在員のインドネシアへの再入国のタイミングは、当初は6月中旬から下旬がピークになると考えていましたが、現在の感染者数増加の状況から外務省による各国に対する感染症危険情報でレベル3「渡航は止めてください。(渡航中止勧告)」が引き下げられる見込みが立っていない以上、7月以降にずれ込むことが予想され、また一時退避期間中にそのまま本帰国が決定するケースが増えるものと思われます。
【2020年7月】新型コロナ緊急対策本部が発表したリスクゾーニングシステム
6月1日からPSBB(大規模社会制限)が段階的に緩和されてきたものの、ジャカルタや東ジャワなどを中心に、新型コロナウィルスの新規感染者数は一向に減少する傾向が見られず、痺れを切らしたジョコウィ大統領が6月18日の閣議で閣僚を叱責する動画が公表される事態にまでになり、結局この1か月間の新しい生活様式の評価結果に基づき、ジャカルタやここブカシのPSBBは明日7月3日から16日までの14日間延長された上で、運輸省(Kementerian Perhubungan)が6月9日にSurat Edaranで公表していた新しい生活様式のフェーズ2に入ることになりました。
(8月14日追記)
実際にはフェーズ1のまま延長という位置付けで、昨日8月13日に第一フェーズの4回目の延長が決定しました。
新しい生活様式はFase1(6/1)、Fase2(6/8)、Fase3(6/15)、Fase4(7/6)、Fase5(7/20)だと聞いていたから、もうすぐFase4だなあと思いきや、6月9日の運輸省のSurat Edaranで正式版が発表されていましたので今はFase2です。ややこしいよ。
Fase1: 6/9~
Fase2: 7/1~
Fase3: 8/1~
新型コロナ緊急対策本部(Gugus Tugas Percepatan Penanganan COVID-19)は、感染リスクに基づいて地域を赤、オレンジ、黄、緑の4色でゾーニングしており、運輸省Kemenhub(Kementerian Perhubungan)は新しい生活様式のフェーズ2の下での車やバイク、公共交通機関などの健康プロトコル(手順)を、この地域ごとの色に基づいて設定し、当初の7月から最大70%の定員での移動ができるという決定事項も、地方自治体ごとの色に基づき別途規制されます。
新型コロナ緊急対策本部が公表している6月28日時点のリスクゾーニングマップで、ジャワ島ではジャカルタ全土、スマラン、スラバヤ周辺が完全にレッドゾーンです。

新型コロナ緊急対策本部が公表する新型コロナ感染リスクゾーニングマップ
- 赤
PSBBでも感染拡大を止められなかったリスクの高い地域で、新しいクラスター感染がたくさん発生しているので外出自粛を要する。 - オレンジ
感染拡大の可能性があり新しいクラスター感染が発生しているが、監視と追跡でコントロール可能な中リスクの地域で、外出自粛が望ましいとはいえ公共交通機関を含むすべての面で家の外にいる場合には、物理的距離を確保し健康プロトコルに従う必要がある。 - 黄
局所感染や家庭内感染が発生する可能性があるとはいえ、クラスター感染が発生した場合でも監視によって増加するリスクはないので、健康プロトコルに従って家の外で活動を行うことができるが、公共交通機関を含むすべての面で家の外にいる場合は、身体的距離を確保し健康プロトコルに従う必要がある。 - 緑
陽性者は発生しておらずウィルスの拡散は抑制され、拡散のリスクは隔離された場所にのみ残っている安全な地域であり、外出やビジネス活動は通常どおり開始されるが、物理的距離を確保し厳格な健康管理プロトコルが適用される必要あり。
ゾーニングシステムを使用した陸上での移動に関する健康プロトコルは、異なるゾーンから移動する場合のルールはリスクの高いゾーンに準じ、例えば緑ゾーンから赤ゾーンまでの移動時には赤ゾーンの規定が適用され、オレンジゾーンから緑ゾーンに移動する場合にはオレンジゾーンの規定が適用されます。
公共交通機関
- 交通機関側
- 少なくとも1日に1回は消毒剤を散布し減菌する。
- チケットをオンラインまたは現金以外のキャッシュレスで販売する。
- 乗客を指定された所定の場所に降ろす(ミクロレットやミニバスの途中下車NGということ?)。
- 乗客および乗務員が保健当局または医師によってラピッドテストによって健康であることを証明(これはどこまで厳格に適用されるか?)。
- 乗務員はマスク、手袋、長袖のジャケット、ハンドサニタイザーを装備していること。
- 乗客が健康プロトコルに準拠しマスク着用していることを確認する。
- 乗客が健康であることを確認し車内でのマスク着用していることを確認する。
- 乗客が物理的距離を確保していることを確認する。
- 公共交通機関の車両の中では話をしないように促す。
- 乗客側
- 健康状態が悪い場合は移動しない。
- 健康プロトコルの実施と遵守(マスクとハンドサニタイザー)。
- 公共交通機関の車両での移動中に物理的距離を確保する。
車とバイク
- 車
- 車両の内側と外側に消毒剤を噴霧する。
- 不健康な状態の場合は移動しない。
- ハンドサニタイザーまたは石鹸で手を洗う。
- 赤ゾーンとオレンジゾーンからの人と相乗りする場合は50%の定員。
- 黄ゾーンと緑ゾーンからの人と相乗りする場合は75%の定員。
- 全員同じ家から来た人の場合の定員の100%。
- 健康プロトコルを実行する(マスクとハンドサニタイザー)。
- 乗客が同じ家から来ていない場合は物理的距離を確保。
- バイク
- バイクに消毒剤をスプレーする。
- 不健康な状態の場合は移動しない。
- ハンドサニタイザーまたは石鹸で手を洗う。
- 同じ家から来る場合にバイクは相乗りすることができる(すべてのゾーンで適用)。
- 赤ゾーンとオレンジゾーンの人はバイクは1人でのみ使用でき相乗りはできない。
- 黄ゾーンと緑のゾーンの人はバイクは異なる家の人と相乗りできます。
- 健康プロトコルを実行する(マスクとハンドサニタイザー)。
オンラインバイクタクシー(GoJekまたはGrab)
- 企業側はいくつかの場所に健康ポストを設置し、消毒剤、ハンドサニタイザー、体温計を提供する。
- 企業側は乗客とドライバーの間にシールドを提供するのが望ましい。
- 企業側はドライバーのヘルメットを使用する場合のために衛生帽子を提供する。
- 乗客は自分のヘルメットを持参することが望ましく健康プロトコルを実行する。
- ドライバーは、マスク、手袋、長袖ジャケット、ハンドサニタイザーを使用する。
【2020年9月】ジャカルタでPSBBが再開(通称PSBB2)
新型コロナ感染拡大が一向に収まる気配のないジャカルタは、本日よりPSBB(大規模社会制限)が再強化され、特定11分野の産業である①保健②食料③エネルギー④通信⑤金融⑥物流⑦ホテル⑧建設⑨戦略産業⑩公共便益サービス⑪生活必需品、以外の一般企業は基本在宅勤務が義務付けられましたが、アニスジャカルタ州知事は最終的には政財界に配慮する形で、やむを得ない場合に限って出社率を25%以下に抑えることを条件にオフィス勤務を許可しました。


モールなど商業施設の入館者は収容人数の50%に制限されましたが、PSBB再開前の先週土曜日の夜ですら館内には5割も人は歩いていませんでしたので、飲食店の店内での食事が禁止された今、入館者数を数えなくとも自然に制限は守られるでしょうし、モール内のようにMemakai masker(マスク着用)、 Menjaga jarak(物理的距離の維持)、Mencuci tangan(手洗い励行)の3Mが徹底されている環境で、経済を殺してまで制限をかけることにどれほど意味があるのか、テナントを苦しめるだけのようなも思えます。
- 映画館、ゲームセンター、スポーツセンター、その他遊興施設は閉店
- レストランは持ち帰りのみ対応
- 商業施設内の最大入館定員は50%
- 10.00~21.00 WIBの範囲で営業
月曜日のお昼という平時でも空いている時間帯とはいえ、さすがにPSBB2初日ですからチェックもいくらか厳しくなっていると覚悟していましたが、敷地内への車の敷地への入場チェック、入館時の体温チェックなど、今までと特に変わった様子はなく、特別に入館者数をカウントしているような気配もありませんでした。
今日から開始されたPSBB2の対象はジャカルタのみで、東は15kmほど離れた僕の地元の西ブカシのモールは普通に店内飲食可能、ということは経済的側面から見るとブカシやチカランの飲食店にとってみれば、これまでの売上減を挽回するチャンスであり、社会的側面から見ると県外移動による感染拡大を助長するリスクが高まるとも言えるわけです。


アニス州知事は、当初はジャカルタの東に隣接する西ジャワ州、西に隣接するバンテン州も足並みを揃えるべきだと主張していましたが、中央政府内部から経済を殺すとしてPSBB2に対する批判が起こっている状況では調整が難航し、アニス州知事の調整不足のままの勇み足という空気が漂っており、そもそも6月のPSBB緩和の判断が、市内のcovid-19受け入れ病院のICU(集中治療室)が満床になりそうな状況を引き起こした、「PSBBを段階的に緩和する移行期間」に主要道路の奇数偶数制度を再開したことがバスや電車内でのクラスター感染を引き起こした、など遡及した批判まで出ています。
PSBB2期間中はジャカルタ市民のブカシ県への流入が予想されるため、警察は観光地と商業施設に対して3Mの徹底を再度要求したようですが、特に入館時のチェックが厳格になったというようなことはありませんでした。
オフィスビルもモールもテナントの営業活動が止まれば、清掃や警備などのビルの日常業務スタッフの仕事が減り、企業のオフィス移転や拡張の動きが鈍化し空き率が高まれば、ビル管理会社自体の経営が悪化し、即効性の高いコスト削減方法である従業員解雇、外注契約解除、給与カットなどで固定費を削減する動きに繋がります。
コロナ禍の影響で第二四半期のオフィスビル賃料は5%下落し、ジャカルタの新しいオフィスビルの入居率はだいたい70%程度と言われており、この下落傾向は年末まで続くと予測されており、オーナーによっては10%から50%の値下げをするところも出ています。
4月のPSBBで商業ビルのテナントは、賃料免除じゃないと経営がもたないと訴え、6月の営業許可後に賃料50%値下げ、新しい日常への移行期間に更に50%値下げしても全店舗が再開したわけではない。ビル側は収入が減るため労働者をPHKし、そして今回WFHが強いられ同じことが起こる。
【2020年10月】健康的で安全で健康的、生産的な社会に向けた移行期の再開
ジャカルタ首都特別州政府9月14日から開始されていたPSBB2を終了し、10月12日から10月25日までの14日間を再び「安全で健康的、生産的な社会(Aman, Sehat dan Produktif)に向けた移行期間」とすると発表しました。
新規感染者数の推移から見るとPSBB2は一定の成果があったと評価してもいいと思うのですが、国民がPSBB2解除で気が緩んだのか、単に市中での検査体制が確立し検査数が増えたためなのか、2週間後には1日あたりの感染者数が急激に増加していきます。
10月5日にDPRで可決されたオムニバス法案(UU Cipta Kerja=雇用創出法)に対する反対デモがインドネシア各地で派手に繰り広げられたのも、反対派の国民のコロナ禍での自粛生活によるストレスが一気に爆発したという一面があります。

また僕の周りの比較的教養レベルの高いインドネシア人の間でも「新型コロナは政治家が金儲けのための道具だ」「コロナウィルスなんて存在しない、ただの風邪だ」などというコロナ陰謀論が信じられていたことはある意味新鮮ですらありました。
このようなインドネシア人のコロナウィルスに対する楽観的思考は、一神教であるイスラム教らしい宗教的な死生観に強く影響されている可能性があり、基本的に無宗教である日本人には理解しにくいところです。
インドネシアでは「hidup mati di tangan Tuhan(生きるも死ぬも神様次第)」と言われるくらい、現世における人間の行動様式や考え方に対する神の影響力は強く、仮にコロナに罹って死んだとしてもそれが運命なら仕方がないというあきらめの気持ちがあるのかもしれません。
【2021年1月】社会行動規制実施(PPKM)と外国人の入国禁止措置
2021年1月11日から、社会行動規制実施PPKM(Pemberlakuan Pembatasan Kegiatan Masyarakat)がジャカルタ州知事より発令されましたが、これまで発令されてきたPSBBやPSBB2などの社会制限と同様に、 各地方政府が保健大臣令を根拠として職場や公共の場での活動、公共機関等の分野について、中央政府に対して社会制限措置の実施を申請し,保健大臣の了承が得られれば,地方政府は申請内容に沿った社会制限を実施できるという段取りになっています。
しかしPPKM(社会行動規制実施)という言葉、誰も知らんなあ。この知名度の低さは去年6月の幻のPSBL(地域規模社会制限)に匹敵するかも。
適用地域によっては異なりますが、2020年4月からインドネシアで実施されててきた新型コロナウィルス感染拡大を防ぐための社会制限の大枠の流れです。
- 2020年4月10日~5月末:PSBB(大規模社会制限)
- 2020年6月~9月13日:PSBB Masa Transisi(PSBBを段階的に緩和する移行期間)
- 2020年9月14日~10月11日:PSBB2(大規模社会制限2)
- 2020年10月12日~2021年1月8日:2度目のPSBB Masa Transisi(PSBBを段階的に緩和する移行期間)
- 2021年1月9日~1月25日:PPKM(社会行動規制実施)
また昨年末から新型コロナウイルス変異種が世界各地に拡大していることを受けて、2021年1月1日から1月14日までの2週間、外国人の入国を禁止する措置を取っており、この措置は既に1月25日まで延長されています。
(1月21日追記)
ジャワ島とバリ島で1月25日までの予定で実施されていた新型コロナウイルス対策の行動規制(PPKM)が、1月26日から2月8日までの2週間延長されることになり、合わせて外国人の入国制限も同期間延長されました。
1月13日にジョコウィ大統領自ら中国のシノパック社のワクチンを公開接種し、芸能人やSNSで多数のフォロワーを持つインフルエンサーを優先して公開接種が行われているのは、ワクチン接種を恐れる国民に対する啓蒙活動にほかならないわけですが、ブラジルにおけるシノパック社製ワクチンの有効性が50.4%ということもあり、著名人による拡散頼みの作戦はうまくいっているとは言えない雰囲気です。
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インフルエンサーの政治利用の問題【インドネシアのデジタル広告市場】
インドネシアのデジタル広告市場の規模は両国のGDP比率と同じく日本の5分の1程度で、今後この差は縮まっていくことが予想されます。現在政府省庁のインフルエンサーへの予算が増加していますが、民主主義を間違った方向に導く危険性も指摘されています。
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