毎年1月末までに、会社は社員の前年度の源泉徴収の明細を1721 A1フォーム(Bukti Potong PPh21)に記載し税務署に提出し、社員は3月末までに個人所得税申告をSPT-Tahunanを1720Sフォームにて行う際に、源泉徴収済みである証拠としてA1フォームを添付します。 C312就労ビザには6か月間と12か月間の2種類あり、イミグレーションと税務署のデータベースは繋がっていないとはいえ、インドネシアに183日以上滞在する場合はNPWP(納税者番号)を取得し個人所得税PPh21を納税しないと脱税の嫌疑をかけられかねません。 続きを見る
インドネシアの税金
NET金額で就労契約を結びGROSS-UP方式で給与額を計算
インドネシアは就労契約時の給与は手取り金額(NET)で契約するのが一般的です。
例えば月給10jutaで契約し、その内訳が基本給(Gaji Pokok)8jutaと各種手当(Allowance=Tunjangan)2jutaである場合、会社にとっての労務費は大きく分けて以下の3つが発生します。
- NETの月給10juta(基本給8juta+手当2juta)
- 個人所得税源泉分(PPh21)
- 課税所得=Net金額10juta-各種控除(Potongan/Subsidi pajak)1juta=9juta
- 課税所得9jutax15%=1.35juta
- BPJS Kesehatan 0.08juta
社員に対しては個人所得税源泉分1.35jutaは個人所得税手当(Tunjangan PPh21)とするため、会計処理上の労務費合計は「10juta+1.35juta+0.08juta=11.43juta」になります。
1年分の個人所得税源泉について、会社は1721 A1(民間企業従業員用フォーム 通称A1)に必要事項記入の上、翌年1月末までに最寄の税務署(KPP=Kantor Pelayanan Pajak)にまとめて申告を行う義務があります。

1721-A1フォームには対象年のpenghasilan bruto(総収入)からpenghasilan tidak kena pajak(非課税所得)を控除した後のpenghasilan kena pajak(課税所得)からPPh PASAL21(個人所得税)が算出されるので、年末調整として過少払額または過払額を精算する必要があります。
インドネシアの個人所得税PPh21は日本と同じく超過累進課税(Progresif)であり、税率は課税所得に応じて変わります。
- 50jutaまで:5%
- 50jutaから250jutaまでの間:15%
- 250jutaから500jutaまでの間:25%
- 500juta以上:30%
A1フォームによるPPh21の申請は、社員にとっては会社に源泉されることで納税の義務を果たした証拠となります。
- 1721 A1は正社員のみに提供され、契約社員は対象外。
- 1721 A1は1課税年度の第21条所得税の源泉徴収または当該課税年度中の雇用者の正社員の源泉徴収の証拠となる。
- 1721 A1は正社員が個人所得の年間所得税を報告する際に使用する。
- 税務総局規制(Peraturan Direktur Jenderal Pajak nomor PER-32/PJ/2015)に基づいて、雇用主は翌年の1月までに1721 A1を提出する必要がある。
総収入(Penghasilan Bruto グロスインカム)が60juta以上の一般的なサラリーマンは、3月末までに行う所得税申告SPT-Tahunanにおいて1770Sフォームを提出する際の個人所得税納税済みの証拠として源泉徴収証明書1721 A1を提出します。
毎年3月になるとインドネシア人が半休を取って税務署に行く
毎年この時期になると、会社のスタッフがKantor pajak(税務署)に所得税申告(Pelaporan SPT Tahunan)のために有給とったり半休とったり慌しくなります。
毎年3月に前年度1年分の所得税(PPh21)の源泉徴収票(Bukti potong pajak PPh21)を持って税務署にいく必要があるのですが、大企業ならともかく中小企業で経理がおばちゃん一人の会社なんかはこの源泉徴収票の発行が遅れて、3月末ぎりぎり滑り込みで申告ということになります。
インドネシアで人材採用する場合、基本は給料の額はNETで提示して合意し、会社側で所得税手当(Tunjangan PPh21)を足してGrossの金額にしてから所得税を差し引いた後にきっちりと合意時のNET金額に合わせるというGross-up方式がとられますので、日本人が相手の年収から所得税や住民税や雇用保険を差し引いてだいたい手取りはいくらだね、と計算する煩わしさはインドネシアにはなく、逆に高給取りのインドネシア人の給料額を見て「手取りでこの金額なら日本よりいいじゃん」と驚くケースがよくあります。
個人所得税申告を適当にしているとローンが組めなくなる?
所得のない失業者や専業主婦は申告の必要はないので、対象となるのは個人事業主か会社員になるわけですが、所得税支払い額を押さえるために、中小企業なんかは最低賃金Upah Minimum Propinsi (UMP)を下回って源泉徴収票を発行したりするわけですが、税務署職員もこの辺の事情はだいたいわかっているようですが、大勢のSPTをさばくために忙しいのでいちいち追求していられないようです。
ただし運の悪い人には、SPTの不備として事後に警告書が送られるようで、そもそも最低賃金下回って所得税申告していると、車のローン組んだり銀行のKPR(Kredit Pemilikan Rumah)利用して家買うときに邪険に扱われるリスクがあるようです。
なんせこのSPTフォーム記載方法が複雑で普通の人には難しすぎる、税務署に人が殺到するので順番待ちで半日潰れる、など問題があるようですが、近年インドネシアの税務署もオンライン化が進み、2015年は企業のPPN(付加価値税)申告がe-Faktur使用を義務付けられたように、個人所得税についてもe-Filingというオンラインの申請システムに移行しようとしています。
インドネシアは税体系が複雑な上に、納税分のうちどれだけ国庫にきちんと入っているのか怪しい面もありましたが、アホック州知事の下、KPK(Komisi Pemberantasan Korupsi)による取締りが厳しくなっており、かつて大規模自然災害が発生するたびに、外国からの義捐金で財政赤字を立て直すと揶揄されていたくらい国の歳入が不安定な時代から、少しずつ資本主義国家らしく所得税をきっちり徴収するシステムが整備されつつあります。
(2021年3月追記)
今ではe-FilingシステムでSPT Tahunanの報告がオンラインで出来ますので、コロナ禍の今、税務署に報告フォームとA1フォームを持って長時間並ぶ必要はなくなりました。
申告はe-Filingで行い、支払いのためのコード(CODE BillingまたはID Billing)をe-Billingで取得し、インターネットバンキングの支払いメニューから納税するというオンラインでの手続きが整っています。
KTP(住民登録書)とNPWP(納税者番号)の住所の問題
2012年から4年間放ったらかしにしていた嫁さんの個人所得税申告 SPT tahunan PPh OP(Surat Pemberitahuan Tahunan Pajak Penghasilan Orang Pribadi )を清算するために、クニンガンの税務署 KPP(Kantor Pelayanan Pajak)に行ってきましたが、納税者番号 NPWP(Nomor Pokok Wajib Pajak )のカードに記載されている住所が、前のアパートの住所になっていたので、カードの再発行手続きからやり直しです。
インドネシア人の住民登録証 KTP(Kartu Tanda Penduduk)は、以前は有効期限が5年でしたが、2016年現在のe-KTPの有効期限(Berlaku Hingga)の欄には「SEUMUR HIDUP(生きてる限り)」と記載され、完全に人口識別番号 NIK(Nomor Induk Kependudukan)ベースで管理されています。
本来KTPは「住民登録証」なので、カードに住所が記載してある以上、引っ越したら新住所のKantor Kelurahan(町役場)で再発行してもらうのが筋だと思うのですが、実際には引っ越すたびにいちいち面倒くさい再発行の手続きをする人は稀のようです。
だったらなおさらNPWPカードも納税者番号で管理されているので、住所変更も何もないだろうとは思うのですが、税務署からのお知らせ等はこのNPWPカード記載の住所に送られるため、再発行が必要とのこと。
嫁さんのNPWPカードは来週出来上がるようなので、来週までに2012年から2015年分のSPTフォーム1770(1年分が14枚つづり)を記載して持参し、手続きを完了させることになりますが、2016年度分の申告、つまり2017年3月に行う申告時にはe-Filingで申告して、e-BillingでID Billingを取得し、インターネットバンキングで支払いを済ませることができそうです。
e-Filingを利用するための識別番号であるEFIN
間違いやすい言葉でe-SPT(elektronik Surat Pemberitahuan)がありますが、これはDJP(Direktorat Jenderal Pajak インドネシア国税総局)が提供する所得税申請書作成アプリで、これまで紙のSPTの専用フォームに記載していたものが、e-SPTで生成したファイル形式で提出できるものであり、オンラインシステムであるE-Filingとは別物です。
EFIN(Electronic Filing Identification Number)は納税者WP(Wajib Pajak)がe-Filingを利用するためにDJPから発行してもらう識別番号であり、残念ながらこれはオンラインでは取得できないので所轄のKPPにて申請することになり、これをもってe-Filing(DJP Onlineの中のメニューからリンク)を利用することができます。
このEFINは税務署から納税者の登録住所に郵送されるのですが、前に住んでいたクニンガンのアパートの19階から28階に引っ越したタイミングに重なったドサクサで、郵送されたはずのEFIN通知が届かず、うちの嫁さんはEFINの存在を知らずにDJP Onlineにアクセスしようとしてここでつまづいたようです。
e-Filing(所得税申告システム)とe-Billing(支払いコード生成システム)
e-FilingはNPWPとEFINでもってDJP Onlineのサイトにてのログイン用パスワードを生成し、NPWPとパスワードにてログインします。
ログインすると1770(Pengusaha/wiraswasta 自営業者用)、1770S(penghasilan bruto グロスインカムが60juta以上の一般的なサラリーマン用)、1770SS(penghasilan brutoが60juta以下の人用)にメニューが分かれますが、基本は紙の専用フォームで行うSPT tahunan PPhと同じ内容です。

Kode Billing取得までの流れ
うちの嫁さんは専業主婦なので1770SS、と思いきや1770に該当するようで、この理由はまだよく判っていませんが、Pisah Harta(財産分離所有)に該当する場合には、無条件で1770が適用されるのかもしれません。
e-Billingは15桁の支払いコード(ID BillingまたはCODE Billing)を生成するシステムであり、SSE(Surat Setoran Elektronik)のサイト(DJP Onlineの中のメニューからリンク)で生成したID BillingでもってATMやインターネットバンキングから所得税の支払いを行うことになります。
専門用語がごちゃごちゃしてややこしいですが、まとめると「税務署(KPP)でEFINを申請して、郵送されてきたEFINとNPWPにてDJP Online利用のパスワードを生成して、はじめてe-Filingで所得税申告が利用できる。税務署から送られてきた請求書の支払いは、SSEやDJP Online上のe-BillingにてID Billingを取得したのちに、ATMやインターネットバンキングで支払い可能」といったところでしょうか。