インドネシアテレコムはオンラインマーケットプレイスを閉鎖し、零細業者のEコマース参加を推進し業種の垣根を越えて社会の課題を解決するビジネスエコシステム構築のためのプラットフォーム開発に注力するという事業方針の路線変更を行うピボット戦略を取りました。 インドネシア市場でのビジネスで重要な要素は価格とブランド、コネの3つと言われますが、必ずしもこれらを持ち合わせない日本人はどのように戦えばよいのか。これはインドネシアに関わり合いを持って仕事をする人にとっての共通の問題意識かと思います。 続きを見る
インドネシアのビジネス
国営企業TelkomとeBayの合弁企業が運営するオンラインマーケットプレイスblanja.comが閉鎖
Tol Jakarta-Cikampekを通ってジャカルタに行く途中で、スマンギ交差点の手前向かって左側にいつもblanja.comの大きな赤字の電光表示が目について気にはなっていたものの、この国営巨大通信会社Telkomが運営するオンラインマーケットプレイスを一度も利用する機会なく、昨日2020年9月1日に静かに閉鎖(サイトはあるが取引が出来ない状態)されてしまいました。
blanja.comではパッケージで包装された家庭用お惣菜などが充実していたということですが、Tokopedia、Shopee、Bukalapak、Lazada、Blibliなどのメジャーサイトに比べて圧倒的に知名度が低かったのは、アメリカ企業のeBayとの合弁会社であることでインドネシア国内での広告戦略で自由度が低かったこと、Telkomという国営企業であるが故に民間企業を打ち負かすほど露骨な広告費用をかけることが出来なかったからのようです。
インドネシアのEコマース市場には、2010年に日本の楽天もRakuten Belanja Onlineというブランドで進出しましたが、当時はインドネシアのEコマースビジネスの先駆者とも言えるTokopediaと、シンガポールに拠点を置くアリババ系のLazadaのシェアが圧倒的であり、当初はオンライン上でのカード決済の認可もおりていなかったように記憶していますが、残念ながら2016年にマレーシアとシンガポールと合わせてB2Cビジネスから撤退しました。
B2Cを止めてB2BとB2Gに集中するというピボット戦略
今回の閉鎖の最大の理由は、Telkomが国内企業または零細業者のEコマース参加を推進するビジネス分野に集中し、インドネシアのデジタル市場(Pasar Digital=PaDi)の発展に寄与するため、とアナウンスされており、具体的にはテレコムの既存のネットワーク基盤を利用して、業種の垣根を越えて関係性を持ちながら社会の課題を解決するビジネスエコシステムを構築するための新しいプラットフォームを開発することです。
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インドネシアのライフスタイルのオンライン化【企業グループ全体でのビジネスエコシステムの構築】
テレコムのビジネスエコシステムとは、社会の課題に対してグループ企業全体として取り組み、テレコムが保有する既存のオンライン接続基盤を生かしながら、デジタル技術を駆使して新しいビジネスプラットフォームを構築していくことです。
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またTelkomは民間企業だけでなく、教育文化省(Kementerian Pendidikan dan Kebudayaan=Kemendibud)と協力して、学校調達情報システム(Sistem Informasi Pengadaan Sekolah=SIPLah)を構築し、学校の備品やサービスの調達業務のオンライン化を行っており、このSIPLahシステムは学校の予算計画の実施においてオンラインマーケットプレイスに接続する機能を持っており、国からの学校運営補助金(Bantuan Operasional Sekolah=BOS)が教育文化省の指定どおり正しく使用されているかの監視できるよう設計されています。
これはTelkomがB2C(企業対消費者)ビジネスからB2B(企業対企業)またはB2G(企業対政府)ビジネスへ転換するということであり、このような市場のニーズとの乖離を認識し、自分が生き残れる分野を絞り込み、路線変更を行うことをピボット戦略(方向転換)といいます。
ピボット(pivot)とは英語で回転軸、つまり方向転換や路線変更を意味し、Excelのピボットテーブルでデータをグループ化した中で再集計し並べ替えたりするように、事業の低迷の原因追及と、今後の可能性のある新事業分野の選定を行います。
Telkomは既にGojekへの投資計画があるようなので、TelkomselユーザーにとってはGojekアプリとの連携サービスなどでますます利便性が高まることが予想されますが、Gojekの創業者かつ最高経営責任者(CEO)のナディム・マカリム氏(Nadiem Makarim)は第2期ジョコウィ政権で教育文化大臣を務めており、TelkomとGojekによるB2Gビジネスが寡占状態(少数の企業による独占)となれば、ビジネス機会の公平性という点で批判が出る可能性があります。