複数個取り品は1ショットで同じものが2個取れるため、オーダ数量に関係なくプレス後(親)とプレス前(子)の数量ベースの関係は単純に2対1です。RL品の場合は1ショットで左右1個ずつ合計2個取れるため、片方のオーダのみ入る場合は1対1(左右どちらか余り1)ですが、左右両方に同数のオーダが入る場合は、左右あわせて複数個取り品と同じ2対1の関係になります。
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生産管理システム
生産管理業務は工場ごとに異なり、システムの開発導入も一品一様にならざるを得ず、工数が嵩みがちです。結局のところシステム導入の成否は、顧客の利益を優先しシステム導入効果を感じて欲しいという熱意であり、ある意味精神論に帰結します。
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複数個取り品
プレスや成形工程において1ショットで同じものが複数個取れるのが複数個取り品(multi‐cavity)とすれば、1ショットで左右セットで取れるのが左右セット取り品または共取品(ともどり)になります。
所要量展開の観点から2個取り品を生産管理システムのBOM(部品構成表)に設定する際には、2個に分かれた直後の品目(親)1個に対して、2個に分かれる直前の品目(子)0.5個が必要であるという設定をしますが、これは親2個に対して子1個が必要であるとも表現できます。
左右セット取り品(共取り品)
代表的な左右セット品である車のドア部品の場合はRL品(Right-Left)と呼ばれますが、2個取り品とは違って左右に分かれた直後の品目(親)の品目コードが異なり、客先からは左右別々にオーダが入るため、オーダ数量の組み合わせパターンによって生産数量が変わります。
- オーダがRだけある場合
- オーダがLだけある場合
- オーダがRL両方同数ある場合
- オーダがRL違う数ずつある場合
1~3の場合は左右の生産数量は同じになり、4の場合は両方とも不足しないように供給するためには、オーダ数量の多いほうを所要として展開する必要があります。
仮に左右100個ずつのオーダが入ったときの所要量展開は下図のように行われます。
これを品目別の所要量としてまとめると、左右セット品の製品から仕掛品までが1対1で正しく所要量展開されていることが判ります。
システム上での主産物と副産物の扱い方
主産物の製造過程から必然的に派生する物品を副産物と呼びますが、一般的にはより価値が高いほうが主産物となり、低いほうが副産物になると思います。
ただ大豆を原料として生成する主産物である豆腐に対して、副産物であるおからが市場でブームになれば、副産物と主産物の立場が逆転することもありえます。
生産管理システムや生産スケジューラーのBOMの親子必要量で対応できる場合と、BOMの親子必要量だけでは1対1の所要量展開ができない場合と、最初からBOMに登録せずに会計上の処理の中で資産計上する場合があります。
- BOMの親子必要量で対応可能
- 複数個取り(一般的な成形・プレス品)
- BOMの親子必要量で対応不可能なので所要によって展開されるオーダ数量を調整
- セット取り品(RL品・シートからステッカーを切り出し)
- BOMに設定せず会計上資産計上することで実績計上
- 主産物と副産物(石炭からコークスとコールタール)
- スクラップ(再利用価値のあるバリや端切れ)
生産管理システムと生産スケジューラ―のマスタの違い
上述のとおり生産管理システムのBOMにおいて2個取品は、親必要量1に対して子必要量0.5または親必要量2に対して子必要量1と表現しました。
生産管理システムのマスタは所要量展開(個数)のためにはBOMの親子の必要量で表現し、負荷計算は品目ラインマスタに標準負荷(サイクルタイム)を設定し、ライン全体の標準能力(1日当たり能力)はラインマスタに設定するというように、所要量展開と負荷計算のためのマスタを別管理します。
これは生産管理システムのMRPがラインマスタの標準能力を基準とするものの、オーダ数量を考慮せず無限能力で負荷を積み上げていき、負荷オーバ分はマニュアル調整で平準化することを前提とした所要量展開重視の考え方に由来します。
一方生産スケジューラーはBOMと工程情報と能力をビューとして統合し、BOMまたは品目工程マスタに能力が設定されるように見せることで、所要量展開と負荷計算を不可分のものとして扱います。
これはサイクルタイムに基づく資源能力100%を超えないようにオーダ数量に応じて所要量を展開するという生産スケジューラーの基本思想に基づいています。