食品のようにサプライチェーンを経て市場に出回ってから賞味期限まで数ヶ月の期間があるような製品ならロット管理は必須でしょうが、製造リードタイムが短く、納品した製品が客先で即時に使用されるような製品の場合には、何のためにシステム上でロット管理するのか、本当にシステム上でロット管理が必要なのか、についてきちんと検討してから判断したほうがいいと思います。
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生産管理システム
生産管理業務は工場ごとに異なり、システムの開発導入も一品一様にならざるを得ず、工数が嵩みがちです。結局のところシステム導入の成否は、顧客の利益を優先しシステム導入効果を感じて欲しいという熱意であり、ある意味精神論に帰結します。
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ロット管理の概要
ロット管理システムの機能は「現物のロットの動きをシステムで記録する」ことであり、そのためにはシステムから発行する現品票をロットに貼り、現物が動くたびにをロット番号をキーにシステムに実績入力する必要があります。システムと現品をロット番号で結びつけるのが現品票です。
ロット管理システムでは、製造指図を発行する際に投入ロットを「引き当てる」、または生産実績を上げる際に投入ロットを「在庫選択する」、という人間の意識が介在します。BOM(部品構成表)に基づいて投入品目をFIFO(先入先出法)で自動引き落としすることは可能ですが、現品がシステムの動きどおりに投入される可能性は極めて低いでしょう。
究極のロット管理が製番管理であり、材料購入依頼時から製番をつけてしまえば、入荷時に製番付きで在庫として入庫し、製造指図に製番を指定することで正しい材料を引当て、製品になるまで製番はついて回ります。個別受注生産に合う方法であり、原価の把握も個別原価計算により製番単位に行われます。
ロット管理の目的
そもそもロット管理の目的とは何でしょうか?苦労してシステム上でロット管理を行っても、その情報が工場経営に有効活用されなければ無意味です。
ロットトレース
客先で不良品が発覚した場合の原因究明のため、システム上でトレースを行い、問題のロットとその影響範囲を特定することで、リコール対象ロットを限定し全品回収のリスクを低減します。また履歴が追跡できるというお客側や取引先への「安心」を提供することも大きいでしょう。
但しこれが可能なのは、現物の動きどおりにシステムに実績入力が行わており、現物とシステムが一致していることが大前提です。
在庫管理の正確性の維持
生産管理システムの実績入力の際に発生する計量誤差、紛失等によるシステム数量と実数量の乖離の管理が、ロット単位に可能になります。
ロット単位ではなく場所(工程)単位に実績を上げる場合は「どこに何が何個あるか」が把握できますが、在庫数量の最小のまとまり単位は「場所」である以上、気軽に「現物を数えて理論値が正しいかどうか確認」するのは困難です。場所にある在庫数を数えるのは棚卸という一大イベント?であり、通常は半日または終日仕事になります。
一方でロットという現品の流動単位で実績を上げる場合は「このロットに何個あるか」は流動先ごとにチェック可能です。つまり流動先ごとにロット数量をチェックすることは、流動先ごとに役割分担して在庫全体の理論値を常時チェックしていることと同じになります。
実績入力がリアルタイムに行われればベストですが、現実的には実績がシステムに反映されるタイミングが翌日になる工程(夜勤や土日出勤)と、安定的にリアルタイムに反映される工程(出荷工程)が混在します。システム上でロット管理が行われている場合は、ロット数量は後工程の実績数量で上書きされるので、後工程にいくほど正確な数量に収斂していきます。
バーコードフォーマットとロット番号
バーコードは通常Boxラベルや現品票に載るもので、バーコード管理を行なう場合に何をバーコードフォーマットに含めるかは悩ましいところです。ロット番号は必須として、それ以外にシステムに実績として登録されるために必要な情報がバーコード自体から、もしくはロット番号をキーに取得できるかを考慮する必要があります。
場所単位の在庫管理システムでは品目コードがキーになりますが、FIFOなどロット管理が必要になる場合は、在庫管理上バーコードには最低でもロット番号と品目コードが必要になります。場所情報は流動先で変わるため現品票のバーコードに含めることはしません。
ロット番号は「日付+通し番号」で構成され、荷姿レベルまで管理したければ荷姿番号が必要になり、バーコードスキャン時の数量入力の手間を省きたければ入数も必要になります。
バーコードによるロット管理
現場オペレーションの基本は、倉庫であれ製造であれ出荷エリアであれFIFO(先入先出)ですが、これをシステム上で管理するかしないかというのは別次元の話です。もちろん在庫管理システムにFIFOの実装をすることは可能ですが、それを運用するには入力担当者が入出庫時に間違えずに正しいロットを選択する必要があり、運用負荷が格段に高くなります。
入荷(材料 IN)
入荷時に荷姿(またはパレット)の数だけ現品票を発行しスキャンして入庫処理を行ないます。同一ロットの現品票が全て同じであれば在庫は「品目コード-ロット番号」で管理され、荷姿ごとに管理が必要なら「品目コード-ロット番号-荷姿番号」になります。
棚番管理を行う場合は、入庫時に棚番を入力またはスキャンする必要がある。入荷時に荷姿の現品票をスキャンした後で、バーコード化された棚番リストからスキャンするか、棚番の物理的な場所に貼ってあるバーコードをスキャンし入庫とします。この場合在庫数量は「品目コード-ロット番号-荷姿-棚番」で管理されます。
材料出庫(材料 TRANSFER)
材料ロットの現品票をスキャンし材料を材料倉庫から現場材料置き場へ移動します。バーコードスキャン時に出庫数がキーインされなければデフォルトで荷姿の入数が現場材料置き場に移動します。
材料投入(材料 OUT)
製造指図に対して投入材料が間違っている場合は、アラートを表示させ誤投入を防止する。荷姿1パック使い切れなかった残りを材料倉庫に戻す場合はバーコードスキャン時に残数をキーインする。
初工程の製造実績入力(仕掛品 IN)
現品票のバーコードをスキャンし仕掛品在庫数量のプラスし、入庫数がキーインされなければデフォルトで荷姿の入数の入庫とします。
仕掛品在庫振替(仕掛品 OUT 製品 IN)
現品票をスキャンし仕掛品を引き落とし製品倉庫へ移動し、出庫数がキーインされなければデフォルトで荷姿の入数の出庫とします。
出荷指示書を発行
出荷予定数量分の在庫ステータスを引当数に変更します。
出荷(製品 OUT)
現品票をスキャンし製品の引き落とし、出荷指示と一致しない現品票をスキャンした場合はアラートを表示させます。