インドネシア人は秘密の話は誰かに暴露しないと精神の安定を保てない人が多いため、内緒の話に情報の希少性は少なく信憑性も低いことが多いので、「ここだけの話」という枕詞付きで聞かされる話は話半分に聞いておいたほうがいいかもしれません。 インドネシアは2億6千万人の人口のうち4割がジャワ島に集中しており、300あると言われる民族の中でジャワ人が45%、スンダ人が15%を占め、総人口の9割がイスラム教徒であり、多民族他宗教のインドネシア人の求心力となるべく制定されたのがパンチャシラです。 続きを見る
インドネシアの人々
秘密の話は誰かに話さないと精神の安定が保てないインドネシア人
以前僕の部下の一人がデベロッパーのシステム部門マネージャーとして転職したときは、その会社のGeneral Managerがそいつの友人だったという強力なコネ付きですし、今回は別の部下が業界第5位の大手銀行のシステム部門への転職活動をしております。
上司の僕が何でそんな情報を知っているかと言えば、直接本人から
- 僕、転職活動中です。採用されたら来年1月に辞めますけど、不採用のときは引き続き働かせてください
と打ち明けられたからです。
よくもこんな図々しいことを涼しげな顔で言えるもんだというのは置いておいて、普通こういう話は採用通知を貰ってから連絡するものだと思っていましたが、正直者なのか腹黒いだけなのか、それとも天然なのか定かではありませんが、とりあえずは
- せっかくのチャンスなんだから頑張れ
と返事しておきました。
一応建前として「よくぞ上司の僕にだけ打ち明けてくれた」ということで約束どおり秘密を守って誰にもしゃべりませんけど、予想通りチーム内で知らないのは僕とあと1人だけという、あいかわらずの情報筒抜け、内緒の話は誰かに言わないと精神の安定が保てないインドネシア人気質は今日も平常運転です。
ビジネス上、インドネシア人と秘密保持契約(Non-disclosure agreement=NDA)を結ぶことにはほとんど意味がないようにすら思えるレベルです。
会社辞めるのを止めた言い訳
で、インドネシアで業界第5位の銀行と言えば、日本で言えばりそなくらいのレベルでしょうから、よほどのコネがないと無理なんですが、そいつの場合は奥さんがその銀行でアナリスト(職位はマネージャー)として働いているから絶対採用されるはずと自信満々です。
ただ日本の企業感覚からすれば、職場結婚して共働きというのならともかく、同じ会社に奥さんが居るから旦那も一緒に働かないか?という発想はありえないと思うのですが、部門さえ違えば全く問題ないということです。
今回の募集人数が3人で応募者が14人、そのうちコネがあるのが5人なので実質5人で3つの椅子を取り合うことになり、残りの9人はかませ犬でしかない、試験問題も嫁さんからばっちり漏洩してもらっている(おいおい 笑) ので自分の採用は9割5分確定している、という彼のBBM(Blackberry Messenger)での報告に対して、僕も精一杯繕って
- 良かったな、これでお前も晴れてエリートの仲間入りだな
と彼の明るい未来を喜んであげました。もちろん棒読みで。
で、今日のお昼に
- 会社辞めるの止めます
メッセージが来ました。
聞いてもいないのに、転職を止めた理由は「仕事はじめが来年の7月だから」と意味不明なことを言うし、そもそもいかにも思いとどまった感を醸し出すところが恩着せがましい。
ほっとくと「会社に残ってやったんだから給料上げろ」くらい言いそうな勢いなので、現在の不景気の状況、多くの会社でレイオフされる人が出ていること等を丁寧に説明してあげた上で、これ以上あさっての方向に向かわないように
- 今は耐えて時期を待て
と諭しました。
なんかこっちが慰留したみたいに形になっちゃったのが引っかかりますが、実際のところ転職止めたのか不採用だったのかは敢えて聞いていません。興味ねーし。
日系企業で働くインドネシア人
ジャカルタでインドネシア人の社員を複数人管理しながら仕事をしていますが、出会いあれば別れがあるように、何かのタイミングで彼ら彼女らは辞めていきます。
辞めた後に彼ら彼女らが何をするかといえば、客先のIT担当として働く者、ジャカルタの同じ業界のライバル会社で働く者、独立して商売をはじめる者、でも失敗してまた同じ業界に出戻るもの、などのパターンがあります。
ちょうど今日、同じ業界のライバル会社で働くかつての部下がBBM(Blackberry Messenger)送ってきまして、かつてこっちで一緒に働いていた同僚とこんどはそっちのライバル会社で一緒に働くようになったとのこと。
(2019年8月追記)一世を風靡したBlackberryはほとんど見かけることはなくなり、インドネシア人のスマホ上でのコミュニケーションはWhatsAppに移行しています。
こういう話を聞くとジャカルタのIT業界も狭いもんだと感じますが、一度日系企業で働いた人は、よほど日本人に対して嫌な思い出でもない限り、次の転職先も「雰囲気に慣れている」日系企業になる傾向が強いので、新しい職場で再会、というのはよくある話です。
実際、客先の担当インドネシア人が突然辞めたと思いきや、別の客先で同じようにシステム導入の担当として付き合うことになったりするのはよくあることで、この場合前のプロジェクトが上手くいっていればプラスに働きますが、上手くシステムがまわっていなかったりすると、後のプロジェクトにまで尾を引きます。
この「日系企業の雰囲気に慣れている」というのはどういうことかと言うと、
- 日本人独特のインドネシア語のクセ
nya(ニャー)とかkah(カー)とかを語尾に付けて角が立たないように伝えようとするインドネシア語の意図を噛み砕いて理解できる。 - 日本人が作る相手との距離感
オフィスのスタッフにも運転手にもオフィスボーイにも人類平等、敬称「さん」付けして距離感を取ろうとすることを理解できる。 - 責任の所在をあえて明確にしない
和を尊び誰か人を責めるより罪を憎むことに共感できる。 - 決定に時間と手続きがかかる。
十分過ぎるほど話し合って議論が煮詰まってから決定されることを我慢できる。
インドネシアにはムシャワラ(Musyawarah)という話し合いによる合議制を重視する風土がありますが、これらの日系企業の雰囲気を理解できるインドネシア人は、日本にもムシャワラの文化に近いものがあると理解してくれます。
ですから欧米系の企業で働いていたインドネシア人の日系企業への転職組は非常に少ないのは十分理解できます。