インドネシア政治・経済・社会

インドネシア日系企業の新型コロナウイルスによる影響【駐在員の一時帰国状況と製造業の生産状況】

2020/06/24

インドネシアの新型コロナウィルス感染拡大に伴い、日系企業の5割が駐在員を一時帰国させており、そのうち6割が9月までに再入国を予定しています。顧客からの注文キャンセルにより4割以上の企業で稼働時間が5割未満となり、在庫調整や稼働率の抑制で対応するとしています。

全体像が見えにくいインドネシア駐在員の一時帰国と再入国予定の状況

インドネシア駐在員のSNSや個人ブログ等を見ると、新型コロナウィルス感染拡大の影響で、帯同家族だけ一時帰国するケース、駐在員本人も後追いで一時帰国するケース、インドネシア残留組といろいろ分かれるのですが、本日のジェトロさんのウェビナーに参加して、全体像として現状はどうなのかという点が理解できました。

ジェトロのアンケート結果(362社)に基づく駐在員のインドネシア再入国時期

・6月:23%
・7~9月:42%
・10月以降:5%
・再入国の予定なし:2%
・未定:31%

一時帰国から本帰国への切り替えは少ないようです。

ジェトロのアンケート結果(362社)に基づインドネシアへ再入国を決める要因

1.感染者数増加が沈静化した時期
2.PSBB解除
3.インドネシアの入国規制の緩和
4.日本の渡航規制の緩和
5.医療環境の改善
6.業績安定化の見通しが立った時期

ということは沈静化しないとずれ込む可能性がある。

全体の50%の企業が駐在員を一時帰国させており、そのうち6割が9月までにインドネシアに再入国を予定しているが、その判断基準として最も重視するものは「感染者数増加が沈静化した時期」を挙げる企業が多いため、新規感染者が増え続ける現状からすると、再入国の時期がずれ込むことも考えられます。

「日本の渡航規制の緩和」を指標とする企業がそれほど多くなかったのは意外ですが、現在まで外務省から発表される感染症危険情報によるとインドネシアは「レベル3:渡航は止めてください。(渡航中止勧告)」の最大警戒レベルのままです。

コロナ禍の製造業の生産・操業状況

4月の自動車の前年比生産量が8割減、販売が9割減という衝撃のニュースがありましたが、自動車以外を含む製造業全体で見ても、通常時の5割未満の生産に落ち込んだ企業が50%を超えており、その傾向は一般消費者に近い大企業ほど顕著であるようです。

5月時点の通常比での生産量

  • 3割未満:36%
  • 3割以上5割未満:16%
  • 5割以上8割未満:20%
  • 8割程度:12%
  • 通常どおり:12%

生産量減に伴い、40%以上の企業で稼働時間が5割未満となり、ほとんどの企業が「国内・海外顧客からの注文量留保・減少・キャンセル」を理由として挙げており、「海外サプライヤーからの製品・部品・原材料などの納品遅延・停止」を挙げる企業が少なかったのは意外でした。

たまねぎの価格が5倍以上に跳ね上がったことが主婦の間で問題になったとはいえ、2002年~2003年にかけて発生したSARSの時に問題となったようなサプライチェーン停滞による部材の供給停止による製造ラインの停止という問題は、今回のCovid-19ではそれほど発生しなかったと言えるかと思います。

生産・操業縮小への対応としては、「在庫調整」や「稼働率の抑制あるいは向上」を挙げる企業がほとんどである一方で、「生産管理・運営管理への投資」や「自動化・省人化への投資」などのIT投資を挙げる企業が少ないながらもあったことが、弊社のような製造業システム開発会社にとっては救いでした。

また全体の80%近くの企業が在宅勤務を取り入れており、70%以上の企業は労働組合との賃金減額交渉を行っていないことから、近年薄れかけている日系企業の人を大事にする文化が、幸いにもインドネシアでは残っているのかもしれません。

コロナ禍での製造業の業績

製造業に限って言えば、全体の45%以上が5割以上の売上減少となっており、大企業ほど売上減の比率が高いのですが、非製造業の場合は逆に中小企業ほど売上減が大きくなっております。

PSBB施行後(2020年4月~6月)の日系企業全体(非製造業も含む)の前年同月比での売上変化

  • 50%以上減少:37%
  • 20%~50%未満減少:27%
  • 1%~20%未満減少:17%
  • 変化なし:12%

2020年2月末時点のキャッシュが平均月商の何か月分か、という質問に対する回答は、6ヶ月以上という超優良企業が17%、3ヶ月以上6ヶ月未満という優良企業が18%、1ヶ月以上3ヶ月未満という平均的な企業が39%、1ヶ月未満という厳しい状況の企業が15%ということで、追加的な資金手当てとしては銀行からの融資が受けにくい中小企業が多いだけあって、親会社からの親子ローンが多いようです。

今後の投資戦略への影響ですが、現地の需要や成長性が期待できる、収益拠点として重要な位置づけにあるという理由で、69%の企業が現状維持、12%の企業が拡張を考えており、縮小を検討している企業は15%に留まっていました。