業務フローには数量と金額の2つの流れがありますが、数量の流れを管理するのが在庫管理システムであり、最低限必要な機能は現状在庫一覧、入出庫履歴管理(ストックカード)、入出庫処理という3つの機能です。
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生産管理システム
生産管理業務は工場ごとに異なり、システムの開発導入も一品一様にならざるを得ず、工数が嵩みがちです。結局のところシステム導入の成否は、顧客の利益を優先しシステム導入効果を感じて欲しいという熱意であり、ある意味精神論に帰結します。
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在庫管理の位置づけ
事業を行う上で在庫管理が重要であることはいまさら強調するまでもありませんが、その在庫管理業務の効率化や在庫データの有効活用のために在庫管理システムが導入されます。
その上でこれから在庫になろうとしている商品や材料の入荷業務、日々の生産ラインでの製造実績収集、そして顧客への出荷業務までをシステム化することにより在庫管理システムを中心とした統合業務システム(ERP)が形成され、その際にデータ入力の簡素化のために利用されるのがバーコードリーダやハンディターミナル、POP端末、iPad等のIT機器です。
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ハンディターミナルを使った入出庫管理システム
バーコードやQRコードをスキャンする端末としてはPCへのケーブル接続式、Bluetoothによるペアリング式、バッチでデータ転送するハンディターミナル式、Windows CEなどOSを搭載した無線ハンディターミナル式などがあります。
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在庫管理は業務フローの中核にあたり、販売・購買・生産のすべての業務と密接に繋がっているため、システム化がうまく行なわれれば、社内業務データの正確性と業務効率の向上に大きく貢献します。
製造業の在庫管理で、材料・仕掛品・製品という3つの品目種別の受払いが在庫管理システムの実績入力機能から行なわれる場合、入庫(投入実績)も出庫(生産実績)もマニュアル入力なのか、生産実績が上がれば自動的に投入実績が上がるのか、そのためには部品構成表(Bill Of Material通称BOM)が必要になったり、そのBOMもどのレベルまで設定するか、などなど製造業の在庫管理システム導入には事前の要件定義が十分なされる必要があります。
製造業で在庫管理システムをはじめて導入する場合は、受払実績入力は材料と製品のみとし、仕掛品は月末の棚卸数量からシステムに反映させ、段階的に工程の仕掛品在庫の管理に展開していくほうが現場の負担は少ないです。
在庫管理システム上での原価管理
業務フローには数量と金額の2つの流れがありますが、数量の流れを管理するのが在庫管理システムであり、主要機能は以下の3つです。
- 現状在庫一覧
- 受払履歴管理(ストックカード)
- 受払実績入力
販売業(非製造業)で、購入品の入出庫管理と原価(単価)の管理をリアルタイムで行う場合、移動平均法でリアルタイムに計算するのか、ロット管理を行い先入先出法で購入原価で管理するのかのどちらかになります。
在庫管理に原価管理の話が関係する場合、購入品の原価は購入価格だけでなく、送料や通関費用などの付随費用(仕入諸係)をどう考慮するかが問題となり、金額が小さければ販管費扱いされることもありますが、輸入品等では付随費用の占める比率が高くなり、これをシステム上在庫管理対象になるときにどう品目配賦するかという難しい問題に直面します。
販売業では商品を仕入れてマージンを乗せて販売しますが、製造業では材料を仕入れて製造工程に投入し仕掛品を経て製品となり、購入品である材料の原価は同じように管理できるとしても、製造工程に投入された仕掛品や製品の原価管理は簡単にはいきません。
材料単価は移動平均でリアルタイムに計算できたとしても、労務費や経費が確定するのは月末なので、月中にこれらをリアルタイムに単価に反映させるためには標準原価を使わざるを得ず、月末の実際原価との差異を売上原価と月末在庫に対して割振るという調整処理が必要があります。
実際原価計算では、材料費、労務費、経費のいずれも月末にバッチで計算します。
つまり材料費は「月次総平均単価x実績投入数量」で計算し、労務費と経費は会計システムで集計された該当勘定科目の元帳(G/L)の残高金額を、作業工数で按分します。
仕入時に発生する2方向の業務フロー
在庫評価の方法としては、主に月次総平均(Monthly Average)と移動平均(Moving Average)がありますが、移動平均法でリアルタイムに最新の平均単価をアップデートして、マージンを乗せて販売価格を決定したい場合、入荷の入力を必ず日付順に行なわないといけないという制約があります。
仕入先からのInvoice到着日を債務(A/P)の計上日としますが、会計担当者としては、入荷からInvoice到着までの期間中に、近い将来A/Pになる取引を把握したいという要望があるため、これを管理するために入荷時にA/P Accruedという未実現債務勘定に溜めておいて、Invoice到着時にA/Pに振替え(re-class)ます。
在庫管理側のフロー
- 物品の在庫数量が増える
- 物品の単価が更新される(移動平均の場合)
会計側のフロー
入荷時の仕訳
- Dr. 仕入 10,000 Cr. 仮買掛 10,000
- (Purchase) (A/P Accrued)
請求書到着時の仕訳
- Dr. 仮買掛 10,000 Cr. 買掛金 10,000
- (A/P Accrued) (A/P)
間接費の処理方法
仕入品目の単価が、発注書(P/O)の品目購入金額のみで構成される場合なら問題ないですが、通常は送料、輸入申告書 (Pemberitahuan Impor Barang=PIB)に含まれる関税(Bea Masuk)やPPh21、通関許可証(Surat Persetujuan Pengeluaran Barang=SPPB)などの仕入に付随するCIF(Cost, Insurance and Freight)費用が発生しています。
これらの仕入諸係の処理方法としては主に以下の2通りがあります。
発生時に費用として計上(金額が小さい場合)
- Dr. 仕入諸掛 400 Cr. 通関代行業者買掛 400
- (Expense) (A/P Accrued)
販売時に売上原価として計上される(金額が大きい場合)
- Dr. 仕入 7,000 Cr. フォワーダー業者買掛 7,000
- (Purchasing) (A/P Accrued)
仕入勘定に計上するということは、月末の決算整理仕訳で棚卸資産全体の原価の中に、フォワーダー業者からのインボイス金額を一括計上させたいということです。
よって取引発生時点の会計仕訳上で、個々の品目ごとに間接費用を配賦した上で仕入勘定に積み上げ、というような細かい処理は必要ありません。そもそも会計上の仕訳を品目ごとに分ける必要性すらありません。
システム上での間接費の品目配賦の実装方法
取引発生時点での会計仕訳上は、間接費を品目に配賦する必要はないとしても、ある時点での適切な販売価格を決定するために
- CIF費用をその都度反映させた上で移動平均単価をアップデートしたい。
- 期末在庫の評価額算出のために、在庫管理システムの中でCIF費用を反映させた品目単価を自動的に計算して欲しい。
以上のような理由で、在庫管理システムの中で取引の都度、品目の単価に間接費を配賦する必要がある場合、システム上どの画面から入力すればよいのかは悩みどころです。
この場合に問題になるのが、間接費用の金額は必ずしも発注時(P/O発行時)や入荷時に判明するとは限らないということです。
出荷後、2週間経ってからようやくフォワーダー業者からのインボイスが到着するケースもあるので、購買システムで物品の発注時または入荷時に、間接費を入力することは出来ないことになります。
入荷画面に仕入諸掛を入力するフィールド(別タブ)を追加
入荷処理の仕訳が元帳転記されると入力できなくなるのが難点ですが、その場合は転記をペンディングするか、一旦転記して事後で調整することになり、市販のERPパッケージではこの方法がよく採用されています。
Direct Invoice機能でP/O番号または入荷番号またはインボイス番号と紐付け
Direct Invoice機能とはP/O発行も入荷もせずしてA/Pを計上できる機能のことであり、ここに品目を特定できるいずれかのキーに紐付けるようにすれば、間接費の品目への配賦が可能になります。
サービス(非棚卸品目=uncounted item)の購入として処理し購買モジュールから入力
P/O発行後に入荷処理するか、もしくはP/Oなしで入荷するPurchase Direct機能で、品目のP/Oとを紐付ける仕組みを構築する方法で、この場合は在庫管理システム上で管理できる原価は購入品のみになります。