オフショア開発は先進国の会社が人件費の安い海外に開発委託することであり、2014年の名目GDPは日本が世界第4位、インドネシアが第16位ですが、2035年頃にはインドネシアが日本を逆転するとも言われています。 インドネシア市場でのビジネスで重要な要素は価格とブランド、コネの3つと言われますが、必ずしもこれらを持ち合わせない日本人はどのように戦えばよいのか。これはインドネシアに関わり合いを持って仕事をする人にとっての共通の問題意識かと思います。 続きを見る
インドネシアのビジネス
インドネシアでのオフショア開発
オフショアとは「国または本土の沿岸から遠く離れた地域」という意味で、2012年現在のオフショア開発と言えば、同じ漢字文化圏で日本語を話すIT人材が豊富な中国がメインでしょうが、近年では人件費の高騰が激しくコスト削減のメリットが小さくなっているようです。
もっとも最近ではインドネシアも後追いで同じ状況になっている訳ですが、新興国が発展する過程では必ず同じことが起こります。
中国以外に世界のオフショア基地として名高いのはベトナムやインドであり、インド人は「ゼロを発明した民族」なのでITの素養が高く人材も豊富という話ですが、僕の知人でインドでオフショア経験のある人曰く「仕事がいい加減で結局自分で全部やり直しになり余計疲れる」とのことです。
昔、派遣先の英国系金融システム会社のボスがとんでもなく優秀な技術営業のインド人で、例えて言えば「壊れた洗濯機もバケツとして売り切る」くらいの勢いがある人でしたので、もしかしたら民族的な性格からしてインドでインド人を相手に仕事をするのに比べたらインドネシアは天国なのかもしれません。
インドネシアのジャカルタも近年オフショア開発の拠点として注目されるようになって久しいですが、アンドロイドやiPhoneアプリなどのモバイル系か、WEB開発が中心です。
インドネシアはスマートフォーン王国なので、この分野の技術者の数が多いというのは容易に理解できますし、派手好き、格好いいもの好き、見栄っ張りのインドネシア人にとって、スマホアプリ開発技術者は憧れの職業なのかもしれません。
一方で、旧来型のクライアントサーバー型の業務系システムのオフショア開発というのをあまり聞かないのは、開発期間中に日本側とのコミュニケーションの絶対数が多いため、テスト環境やステージング環境の共有という点で業務委託がやりにくいのではないかと思います。
※2012年当時の日本とインドネシア間のインターネット回線速度は遅く、遠隔でのWEB会議のためのツールとしてはWebEXやSkypeに限定され、2023年現在のように高速回線でZoomやMicrosoft Teams、Google Meetなどを使って、快適なリモートワークが出来る環境はまだありませんでした。
インドネシアでのオフショア開発の成否は、日本からの日本語ベースの仕様をインドネシアの開発者に対して、インドネシア語で噛み砕いてブレイクダウンできるブリッジSEの能力に依存するところが大きく、それは日本人に比べて相対的に時間にルーズなインドネシア人技術者を管理し、スケジュールどおりにプロジェクトを推進できるコーディネート能力です。
これには日本語堪能でシステム開発に知見のあるインドネシア人がいれば最強だと思いますが、そんな人材はめったにいませんし、それだけ優秀な人は既に独立して自分でビジネスをやっています。
安定志向で自分でビジネスを起こすほどのバイタリティはないが、日本語ができるかもしくはIT技術があるかのどちらかのインドネシア人材をブリッジSEとして育成し、文字通り日本とインドネシアの架け橋に育てるようなビジネスができれば最高だと思います。
日本とインドネシアが逆転する日
2012年現在、好景気に伴うインフレにより優秀なインドネシア人技術者の人件費は高騰し、インドネシアがオフショア開発拠点としての魅力が薄れているのが現実ですが、インドネシア国内向けのWEB・モバイル開発需要に対してリソースの質量ともに供給不足であるので、技術移転という意味も込めてインドネシア人IT技術者育成に繋がるビジネスが日印尼双方にWIN-WINであり理想かもしれません。
2012年の名目GDPは日本が世界第4位、インドネシアが第16位ですが、2035年頃にはこれが逆転するとも言われており、そうなれば今とは逆にインドネシア企業が日本でオフショア開発を検討するという状況になっている可能性は十分あるでしょう。
オフショア開発の基本は「人件費の安い国で開発コストを下げる」ですから、下手したら今既にジャカルタの技術者の給料が、デフレ下の日本の会社の給料のよりも高額に跳ね上がっているケースもあるくらいですから。
2014年の日本の一人当たりGDPでも、日本はアジアの中でもシンガポール、香港、ブルネイに続く4位であり、これからもジリ貧になっていくと予想され、新聞や雑誌で「日本が危ない」的な危機感をあおる記事を頻繁に目にすると日本の将来に不安を感じることもありますが、GDPというフローの面だけから見て順位を気にする必要は全くないと思います。
むしろ日本の蓄積された資産や技術力を、インドネシアの若年労働人口のレベルアップに繋げるようなビジネスの育成こそが、日印の理想的な共存共栄の姿だと考えるわけですが、一方で益々経済成長を遂げて中国や韓国などとの協力関係を一層深めたインドネシアが、必ずしも「日本こそが最良のパートナーだ」と思ってくれるかどうかは未知数な訳です。