インドネシアで会計システムを導入する際に最低限気をつけたほうがいいこと。【日本の帳簿方式よりインボイス方式のほうが税額の算出が明確】

本記事の概要

インドネシア日系企業で会計システムを導入する際に、システムのJSOX対応とIFRS対応が問われるようになって久しいですが、インドネシアは2008年にはIFRS対応を意識することが推奨され、2012年よりIFRS対応が義務化されています。

実現主義ベースの収益認識や取引通貨から機能通貨(Base Currency)への換算、機能通貨から表示通貨(Presentation Currency)への換算など、IFRSへの意識は日本より高いと言えます。

また会計システム導入時にはPPN(付加価値税)やPPH23(居住者のサービス収入に対する源泉所得税)といった税制を考慮する必要があります。

Tax rate(税務レート)とBI rate(取引レート)

外貨建て取引に関わる税額の計算は税務署(Kantor Pajak)が毎週水曜日に公表するTax Rateを使用する義務があるため、会計システムの為替レートマスタにはBI(Bank Indonesia)レートとTaxレートの2つを持たせる必要があります。

民間銀行が公表するレートと同じように、BIレートにもTTS, TTB, TTMがありますが、会計システムの為替マスタに当日レートとして設定するのはTTMであり、売り取引用と買い取引用にTTSとTTBを分けて設定するケースはありません。

機能通貨がルピアの会社におけるルピア取引を例とした場合、A/P Entry(債務入力)を行いA/P Approval(債務承認)するとVAT10%が自動で計算され、以下のような仕訳がTransfer voucher(振替伝票)として自動生成されます。

[ルピア取引のVAT]

Dr. Purchase Rp. 900,000          Cr. A/P Rp. 900,000

⇒VAT仕訳を自動生成
Dr. Prepaid VAT input Rp. 90,000      Cr. A/P Rp. 90,000

VAT仕訳はルピアベースで行なうため、機能通貨がルピアであろうとドルであろうと、ルピア取引であれば為替換算は発生しませんが、ドルなど外貨取引の場合には、VAT部分に必ずTax rateによる為替換算が発生します。

Tax rateが$1=Rp.10,500の場合$100×10%x10,500=Rp.105,000が取引通貨と機能通貨の両方のVAT仕訳になりますが、取引部分についてはBI rateが$1=Rp.10,000であれば以下のようになります。

[ドル取引のVAT]

Dr. Purchase $100           Cr. A/P $100

⇒機能通貨換算仕訳とVAT仕訳を自動生成
Dr. Purchase Rp.100,000        Cr. A/P Rp.100,000 ←BIレート1ドル=Rp10,000
Dr. Prepaid VAT input Rp.105,000    Cr. A/P Rp.105,000 ←Taxレート1ドル=Rp10,500

この場合、債務入力画面からBIレートとTaxレートの2つを為替レートマスタから取得する必要がありますが、システム上難しい場合は、以下の3通りの運用方法で対応することになります。

VATは手計算

システムは取引部分もVAT部分も為替レートマスタからBIレートを使って自動計算しますが、VAT部分はTaxレートで手計算して修正し、適用欄にTaxレートをメモ書きで残します。

取引部分とVAT部分を分けて入力

この場合には取引仕訳の債務伝票番号(A/P voucher No)と、VAT仕訳の仕訳伝票番号(Transfer voucher No)が異なってくるため、Invoice番号をキーにして紐付きを管理する必要があります。

VAT部分は月末一括洗替

取引発生時はVAT部分も取引部分のOriginal currencyで自動生成させ月末一括洗替えします。

[取引発生時]

Dr. Purchase $100      Cr. A/P $110
Dr. VAT clearing $10

Faktur Pajak(Tax Invoice)の金額を月単位で集計し一括洗い替えします。

[月末洗替時]

Dr. Prepaid VAT input Rp.105,000      Cr. VAT clearing $10

VAT申告用のFaktur Pajak(Tax Invoice)

インドネシアは帳簿方式ではなくInvoice方式を採用し、Tax Invoiceに基づいてVAT額を計算します。

帳簿方式では、帳簿に記録された税込み金額から消費税などの税額を計算しますが、インボイス方式ではインボイスに記載された税額を集計していきますので、品目やサービスごとに税率が異なっても計算が容易です。

納税、還付請求時にInvoiceと必ずセットで発生するFaktur Pajak(Tax Invoice)が必要になりますが、フォームは非定期で変更されるのでその都度調整が必要になります。

Faktur Pajakは大きく分けて2種類

  1. Faktur Pajak Standard
    Delivery Order 1枚に対して発行される通常のFaktur Pajak
  2. Faktur Pajak Gabungan
    一月分のD/Oを月末にまとめて1枚のFaktur Pajakとして発行。但し該当するInvoice Noを記載する必要があります。
  3. Faktur Pajak Sederhana
    現在は廃止。小額の納税やPKP(Pengusaha Kena Pajak)以外の人、組織の税金支払いに使用された。

請求額がUS$など外貨の場合には外国通貨の名前を記載させる欄のあるフォームが必要です。

また2016年8月現在、Faktur Pajakはe-Fakturシステムから発行しますので、会計システムで専用フォームを開発する必要はなくなりました。

会計システムのIFRS対応

日本の会計基準はP/L(損益計算書)重視であり、これは高度成長期の右肩上がりの経済を前提とし、当期の期間損益だけで容易に将来予測が立てられたことに起因しています。

要はP/Lを作成した後に次期以降の収益・費用の源泉となる資産・負債・資本項目を補足的にB/S(貸借対照表)として計上する発想となっており、B/S項目を検証・再評価して実情にあったものにして報告する、というより税法上の評価額をそのまま会計上の評価額として、償却が完了する時点で特別損益で処理するという傾向が強く、これを収益費用アプローチといいます。

一方でIFRSの会計基準は、投資家や債権者に対して企業価値評価のために必要とする情報を提供することを目的としており、そのためには固定資産の減損・再評価、売却可能な金融資産などを時価評価してB/S(貸借対照表)を正確に作成するというB/S重視であり、将来的にキャッシュフローを生み出せる資産状況にあるかどうかが分かるようにします。

連結ではIFRSに基づく財務報告が必須になる一方で、税務については引き続き各国独自の基準で財務報告を作成する必要があり、これを資産負債アプローチといいます。

グローバル基準なのですべての規則は英語で定義され、税務への配慮などを含めて各国要件は加味されず、グローバル視点で定義されます。連結ではIFRSに基づく財務報告が必須になる一方で、税務については引き続き各国独自の基準で財務報告を作成する必要があります。

会計上は投資家・債権者に対してIFRS対応が義務付けられますが、税務署がこれに対応できるとは限りません。だから会計システムで複数基準元帳機能を実装していることが理想です。

システムのIFRS対応と言う場合、システム修正で対応するケースと、運用変更で対応するケースの2つに分かれますが、システム導入時にお客様に提案している事項はおおよそ以下のとおりです。

実現主義での売上計上

出荷基準または検収基準によって売上計上され、債権の発生はInvoice発行のタイミングによって異なります。以下は検収基準の場合の仕訳生成例です。

[三分法]

出荷時
仕訳なし

Invoice発行時(お客側で検収完了時)
Dr. A/R 100,000    Cr. Sales 100,000

[継続記録法]

出荷時
Dr. A/R Accrued 60,000    Cr. Inventories 60,000

Invoice発行時(お客側で検収完了時)
Dr. COGS 60,000    Cr. A/R Accrued 60,000
Dr. A/R 100,000    Cr. Sales 100,000

インボイス発送後に客先での検品時や、製造工程での投入時にNGが発覚する場合があり、その場合の発行済みInvoice(発生済みA/R)を修正する方法は以下のとおりです。

  1. 代替え品の出庫と返品入庫を在庫調整で行ないインボイス変更なし(Tukar guling)。
  2. キャンセルしてOK分のみのインボイスを再発行。
  3. 出荷返品処理で修正インボイス発行後、NG分の新規受注登録。
  4. 締め処理後に返品受注処理でマイナスインボイス発行と出荷返品。

NG分は客先で処分してもらいインボイス金額のみを修正する場合は、自社からCredit Note(支払うべき債務あり)を発行し、客先からはDebit Note(受け取るべき債権あり)を発行してもらい修正します。

出荷に伴いリアルタイムに棚卸資産をマイナスさせる継続記録法の場合、出荷と同時に売上原価を計上してしまうこともできますが、Invoice発行が事後になる場合は出荷から検収完了時までの期間の在庫と会計の同期を保つ(棚卸資産減少分を流動資産に振替)ためにA/R Accrued=Accrued Revenue(未収収益)という資産勘定で管理する方法があります。

在庫評価方法の統一

連結会社内で在庫評価方法を統一する必要があるため、日本本社の方式にあわせるのが一般的です。IFRSで認められている先入先出法、移動平均法、標準原価法(標準単価法)、総平均法で行い、後入先出法は認められません。

実在庫と経理在庫の別管理

月末棚卸によって売上原価を確定し、月中は出荷により棚卸資産が減少するにもかかわらず、会計上は月初残のままであるため、このアンマッチを補助帳票で未実現売上分(未収収益)の資産として管理します。

この場合出荷時に在庫取引仕訳を起さず月末にバッチ処理で月初残高と月末残高を入れ替えて棚卸資産を確定し、三分法(月初残+仕入-月末残)で売上原価を計算し、当期利益を確定します。

 

有形固定資産の再評価(マニュアル対応)

IFRSでは、有形固定資産を事業年度ごとに再評価し、減価償却方法や耐用年数を見直す必要があります。例えば資産相続時に車両価値を計算するとき、税法基準では0円でも市場販売価値は20万円といったケースが発生します。日本では税法基準を会計上も採用し、再評価を定期的に実行していない場合が多いので、定期的な再評価によりこうしたケースが減少します。ただこれは会計システム上で修正するというよりも、オペレーションの問題かと思います。

キャッシュフロー計算書(直接法)が必須

インドネシアではキャッシュフロー計算書は必須ではなく作成しない場合が多いですが、システムから生成する場合は取引入力時にセットされたキャッシュフローコードをキーにしてGLからデータを取得する直接法が容易に実装できます。

複数基準元帳

税務は各国独自基準のままでも連結財務諸表はIFRS対応(B/S重視)で行います。会計上は投資家・債権者に対してIFRS対応が義務付けられますが、税務署がこれに対応できるとは限りません。

だから会計システムで複数基準元帳機能を実装していることが理想であり、具体的には会計仕訳データを分別管理し、出力時に合算有無を任意に選択できることです。

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