インドネシア大統領選挙のSNS上での情報戦【飛び交ったフェイクニュース】

大統領選挙関連でソーシャルメディア活動家を逮捕

先日5月26日、プラボウォ氏陣営の選挙対策委員会(Badan Pemenangan Nasional=BPN)のIT支援コーディネーター(Koordinator Relawan IT)で、ソーシャルメディア活動家(Pegiat media sosial)でもあるムストファ・ナフラワルダヤ氏が、Twitterでフェイクニュース(Hoaks 英語のHoax)を流布したとして情報・電子商取引法違反などの容疑で逮捕されました。

西ジャカルタのクボン ジュルックのモスク内で15歳の少年が治安部隊による殴打で亡くなったというツイートをしましたが、実際に動画に写っていた治安部隊に殴打されている人物は少年ではなく選挙監視庁(Bawaslu=Badan Pengawas Pemilihan Umum)前の暴徒の一人であり、事件現場もモスク内横の駐車場だったというもので、治安部隊(Aparat Keamanan)を貶め、抗議デモに対する国民の同情を買おうという情報戦の一環であると言われています。

この人は昨年10月にスカルノハッタ空港を離陸してジャワ海に墜落したLion Air 610が「ハリム空港(Halim Perdana Kusuma)に無事着陸した」というフェイクニュースを流したとしてサイバー犯罪捜査庁(Direktorat Tindak Pidana Siber Badan Reserse Krimina=Bareskrim)に取調べを受けていた人で今回もさもありなんという感じですが、前回2014年大統領選挙に比べても情報戦、というよりフェイクニュースによる足の引っ張り合いが多かったと思います。

開票作業中に550人以上のスタッフが亡くなったことに対する陰謀説

また今回の開票では550人以上の投票運営委員会KPPS(Kelompok Penyelenggara Pemungutan Suara)の開票スタッフが亡くなっていますが、これについてもさまざまな憶測、陰謀説が流れました。

亡くなった開票スタッフの死因は心不全、脳卒中、呼吸不全、髄膜炎、敗血症などで、死者のうちどれくらいに病歴があったのかは不明ですが、選挙スタッフの中で疲労やストレスを訴えて入院した人のうち、ほとんどは24時間以上続けて働いていたと言われており、開票作業の中で過労死や病死多く出てしまったというのが真実だと思います。

今回の選挙では正副大統領以外にも、国会DPR(Dewan Perwakilan Rakyat)議員選挙、地方代表議会DPRD(Dewan Perwakilan Rakyat Daerah)議員選挙、州議会DPRD kelas I(Dewan Perwakilan Rakyat Daerah Provinsi)議員選挙、県市議会DPRD kelas II(Dewan Perwakilan Rakyat Daerah kabupaten/kota)議員選挙があり、日本で言えば首相指名選挙と衆参ダブル選挙と県会議員選挙、市会議員選挙を同時に選ぶような史上最大規模の選挙を、全国約81万カ所の投票所で9人ずつ、計約730万人の投票運営委員会で行ったため、高い気温の中で時間に追われながらの開票作業で過酷を極めた中での殉職であり、根拠もなく陰謀論を唱えることは亡くなった方に対しての冒涜であると思います。

大統領選挙にからむフェイクニュース

インドネシアのSNS上で飛び交ったフェイクニュースでは、ジョコウィ氏陣営側を貶める内容のものが多いようですが、プラボウォ氏が大統領に当選したらインドネシアがイスラム急進化しカリフ制国家(イスラム法によりイスラム共同体から選任されたカリフ=元首の下、支配に服する全ての領域が単一の法によって治められる)になるといったデマも流れました。

いずれにせよ今回の大統領選挙を機会にインドネシアでHoaks(英語のHoax)という言葉がすっかり定着してしまいました。

  • Metro TVのクリックカウント(民間機関による選挙速報)の計算でプラボウォ-サンディ組が勝利している。

これは技術的なミスで生じた画面上のグラフの間違いがフェイクとして流布したもののようですが、Metro TVが報じたクイックカウント結果ではジョコウィ-マルフ組優勢であるにもかかわらず、グラフではプラボウォ-サンディ組優勢のように表示されていました。

ちなみにMetro TVのオーナーであるスリャ パロ氏は最大のジョコウィ氏支持者であるのですが、このプラボウォ-サンディ組優勢のグラフを映した画面がSNSで拡散されました。

  • ブカシ県にある6,000箇所のTPS(投票所)ではプラボウォ-サンディ組が勝利している。

Twitter上でプラボウォ-サンディ組がブカシ県の6,000箇所以上の投票所で70%以上の得票を得て地すべり的勝利を収めた、というデマが拡散されましたが、ブカシ市選挙管理委員会の公式な報告によると、ブカシの投票所の総数は6,000ではなく3,030です。

  • スラバヤのKalimasの投票用紙は候補者1番(Paslon=Balon=Bakal Calon ジョコウィ-マルフ組)に既に穴が空けられている(Tercoblos)。

1分近くの動画の中で投票運営委員会KPPS(Kelompok Penyelenggara Pemungutan Suara)の役人が語った内容ですが、実際スラバヤの投票所に配布された投票用紙の5枚ほどが破損しており、監督官によって適切に対処されました。

  • 副大統領候補サンディアガウノ氏は宣言に同意しなかったためプラボウォ氏から追放された。

4月17日の投票後のプラボウォ候補による勝利宣言時にサンディアガ副大統領候補が同席しなかったことに対して数々の憶測が飛びました。勝利宣言に反対したので追放された、5年後の大統領選挙を見据えてクリーンなイメージを保つためにわざと欠席したなどですが、実際には体調不良のためだったと発表されています。

  • クイックカウント(民間機関による選挙速報)は選挙詐欺の一種です。

民間調査会社(Libang Kompas, Indo Barometer, LSI Denny JA, Median, Kedai Kopi)によるクイックカウント(出口調査に基づく選挙速報)が意図的に特定の候補をカウントし、カウントの対象となった投票所も意図的に選択された場所のみ使用されたというもので、これが詐欺にあたるという主張です。

もちろん実際の開票では総選挙委員会(KPU)は、インドネシアのすべての投票所から集められた投票をカウントしますが、 アリフ ブディマンKPU委員長はクイックカウントの結果は選挙の公式結果ではなく、民間調査機関は、提起された数値から採取されたサンプルの割合を明確に発表する必要があると述べました。

  • マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイでの海外在住者投票の投票所(TPS)出口調査結果ではプラボウォ-サンディアガ組が圧倒的が勝利。

実際の海外在外投票所の出口調査(Hasil Exit Poll TPS2 di Luar Negeri)ではジョコウィ-マルフ組が勝っているところも、プラボウォ-サンディアガ組が買っているところもあるようで、圧倒的勝利というのはフェイクだったようです。