インドネシアのビジネス

GojekがGoLife事業閉鎖に伴い430名を解雇【事業の選択と集中】

2020/06/25

GojekがGoLife事業閉鎖に伴い430名を解雇【事業の選択と集中】

2020年7月にGoJekはコロナ禍によりGoLifeの物理的接触サービスが制限されたことで、輸送、食料配達、電子マネーの3事業に注力する選択と集中戦略に転換しましたが、事業価値の最大化とコスト削減のメリットがある反面、長期的需要を見誤った場合の損失が大きいと言われます。

GoCleanとGoMassageが2020年7月27日に閉鎖

配車大手Gojek社は新型コロナの影響を受けて、掃除やアイロン掛け、洗車などをオーダーできるGoCleanと、在宅マッサージをオーダーできるGoMassageを2020年7月27日に閉鎖し、社員の約9%に相当する430名を解雇(PHK=Pemutusan Hubungan Kerja)すると発表しました。

家事の中で唯一アイロン掛けだけGoCleanに外注しているので、無くなるのは困るけど、需要は多そうなので別のアプリが参入しそうな気がする。

サービス閉鎖の理由は「コロナパンデミックにより近距離と物理的接触でのサービスが制限されるようになった(pandemi membatasi interaksi jarak dekat dan kontak fisik)」ことにより、サービス利用が低下しているからです。

僕は掃除・洗濯・料理は苦になりませんが、アイロン掛けだけは独身時代から苦手で、2時間わずかRp.90,000というリーズナブルな価格ということもあり、ずっと利用してきました。

これが無くなってしまう以上、覚悟を決めて自分でやるしかないのですが、GoLife事業の縮小は去年12月から始まっておりGoGlam(メークアップ)、GoFix(修理)、GoAuto(自動車修理)、GoDaily(アクアのガロンやLPG液化石油ガスのボンベなど日用品の買い物)、GoLaundry(洗濯)などが廃止され、GoLifeの売上の9割を占めていたGoMassageとGoCleanのみが残っていました。

普通のインドネシア人が手っ取り早く仕事を得られるのが掃除やマッサージであり、SNS上でも多くの利用者からの閉鎖を惜しむ声があるように、コロナ禍が落ち着きPSBBが解除された後には、需要と供給が十分見込まれることから、この分野にはおそらく別のオンラインサービスが参入してくるのではないかと考えています。

(2021年4月追記)
GoCleanがGoServiceとして再びGojekのアプリに登場しています。GoClean等を運営するGoLifeは元々Gojekの子会社のような存在でしたが、利用者数が本体の事業に比べて非常に小さく、且つ大規模なリソースを投入しないといけない事業であるため、本体の長期戦略に合わずサービス停止された訳ですが、今回はGoLifeの元創業者が独立して立ち上げたオンライン不動産売買会社Pinhome社が提供しているクリーニングサービスをGojekと協業契約を結んでGojekのアプリにGoServiceとして入れてもらっている感じになります。

選択と集中という事業戦略

GoJekは2020年6月初めにFacebookやPayPalから資金調達をした直後であり、今回の決定では株主の意向が反映されたことも考えられますが、今回GoLifeだけでなくフードコートサービスのGoFood Festival併せて閉鎖され、ライバルであるGrabも同様に非中核事業で5%(360人)削減しており、インドネシアのオンラインアプリビジネス事業体は、コロナ禍を生き残るために選択と集中戦略に入るようです。

GoJekが集中するという3つの中核事業ですが、いずれも将来のインドネシアの成長産業であり、電子マネーに至っては既に多くのライバルが国内市場でしのぎを削っています。

GoJek中核事業のライバル

  1. 輸送:transportasi (GoRide・GoCar・GoSend)⇔Grab
  2. 食料配達:pesan antar makanan (GoFood) ⇔Grab
  3. 電子マネー:uang elektronik (GoPay)⇔OVO / Dana / ShopeePay / LinkAja / Moka(Gojekに買収済)

「選択と集中」と言えば昔読んだゼネラル・エレクトリック(General Electric Company)社のCEOジャック・ウェルチの著書「ウィニング - 勝利の経営」が有名であり、GE社は世界で1位か2位になれる事業だけに注力した結果、飛躍的な成長を遂げましたが、この戦略には事業価値の最大化とコスト削減というメリットがある反面、長期的需要やライバル他社の成長速度を見誤った場合の損失が大きいというデメリットがあると言われます。

2018年にUberが撤退し、Grabとの二強の争いとなったインドネシア市場で今GoJekが力を入れているのが、サービスを提供するドライバーや車両に対するコロナ対策であり、安全性を高めることで利用者からの信頼を積み上げることで、他社との差別化を図ろうとしています。

バイクタクシーという性質上、ソーシャルディスタンシングが保てないので、GoRideドライバーは背中にシールドを背負い、利用者はマスクはもちろんヘルメットの持参も推奨されており、アプリ上でドライバーの体温をチェックできるようになっており、GoCarでは車の清掃と消毒の状況を表す清潔度をチェックできるようになっています。

コロナ禍で施行されたPSBB(大規模社会制限)に伴う外出自粛によって、配送サービスのGoSendは80%、日用品の買い物サービスであるGoShopは2倍以上増えており、GoJekは安全な運用サービス基準を徹底させるため、今後すべてのサービスにドライバーの体温チェックと清潔度チェックを、アプリから参照できるようにするようです。