生産のない月の減価償却費は販管費または仕掛品に振替えることになりますが、倉庫に物理的に在庫がないにもかかわらず会計上仕掛品計上されている場合には監査で指摘される可能性があります。 マスプロダクションの総合原価計算と受注生産の個別原価計算の違いは、労務費や製造間接費などの固定費を所定のルールで品目に配賦するか、標準の賃率や配賦率に実績工数を掛けて品目に積み上げるかの違いであり、集計した原価の差異分析や経営判断のための予実分析が重要です。 続きを見る
原価管理システム
製造原価の2種類の分類方法
インドネシア語で移動とか変更などの「動かす」ことをmutasiといいますが、これは英語のmutationから来た外来語であり、このmutasiには大きく分けて入庫(Goods Receive)と出庫(Goods Issue)と在庫移動(Movement)と在庫振替(Transfer)の4つがあります。
製造間接費は間接材料費、間接労務費、経費のサブグループに分けられます。変動費は生産の受払実績から得られる直接材料費であり、固定費は会計から得られる費用で間接費と直接費の2通りあります。
残業代(Over Time)や仕入諸掛(Charge)など直接材料費以外にも変動費はありますが、変動費の大半は直接材料費や外注加工費で占められます。
継続記録法での固定費の実際配賦
在庫評価方法の1つであるPerpetual Pethod(継続記録法)は、受払発生時に会計上の資産勘定(材料・仕掛品・製品)で常に在庫額の動きを把握していく手法ですが、会計と生産管理一体型のシステムの場合は、直接材料費はFIFO(先入先出法)で単価を保持、または移動平均法で単価を更新し、直接労務費と製造経費は部品構成表(BOM)に標準配賦率を設定することで予定配賦します。
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実際原価計算と標準原価計算の差異分析 【直接材料費(モノ)だけでなく直接労務費(人)と製造間接費(機械)も変動費のように扱う】
標準原価は直接材料費(モノ)・直接労務費(人)・製造間接費(機械)について固定費も変動費のように扱い、材料費は価格差異と数量差異、労務費は賃率差異と作業時間差異、間接費は能率差異、操業度差異、予算差異に分析されます。
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ただし直接材料は先入先出法や移動平均法でリアルタイムに単価を評価した上で、継続記録法で会計仕訳を行なっていたとしても、直接労務費や製造経費を実際発生額に基づいて品目配賦しようとする場合、仕訳の生成は月末一括バッチ処理にならざるを得ません。
材料購入時の債務発生仕訳。
- (借) 材料 (貸) 債務(AP)
材料を仕掛品に投入するが仕掛品に製造間接費は賦課しない。
- (借) 仕掛品 (貸) 材料
当月の電気代請求書が電力会社PLNから届く(この段階では営業費用に計上)
- (借) 光熱費 (貸)債務(AP)
光熱費を製造間接費に振替
- (借) 製造間接費 (貸) 光熱費
製品に製造間接費を賦課
- (借) 製品 (貸) 仕掛品
- (貸) 製造間接費
インドネシアの税務上、仕掛品に製造間接費を賦課する義務がないため、ややこしいプロセスを経るよりも、この例のように製品のみに賦課してしまえ、という考えが主流だと思われます。
またFIFOにおける材料の在庫移動(mutasi)は、同月内での材料購入価格に変更がないという前提の下では月単位に記録されますので、継続記録法での払い(材料投入)評価額を計算するために、材料の原価は「X月購入材料の原価はY円」というように、材料コードと購入月の2つをキーとして管理されます。
生産のない月の固定費の扱い
生産があろうとなかろうと、工場である以上、機械の減価償却費が発生しますが、本来そのうちの当月の製品になった分が当月製造原価の一部になります。
- 月初仕掛品(Rp.0)+当月製造費用(Rp.100)-月末仕掛品(Rp.0)=当月製造原価(Rp.100)
固定資産管理システムでは、生産がない月の機械の減価償却費計上を休止する機能がありますが、税務上は定額法にしろ定率法にしろ、毎月減価償却費を計上させる必要がある以上は、販売管理費に振替える以外方法はないと思います。
この本来生産に関わる減価償却費を販管費に振替える際には他勘定振替勘定を通し、発生額を明示した上で間接的に振替える必要があります。
仕掛品(資産)に振替えることも考えられますが、通常の工場で仕掛品勘定が肥大しているにもかかわらず、倉庫に仕掛品在庫がない場合には、監査人から
- 仕掛品在庫がないのに何で仕掛品計上されているんですか?
と指摘される可能性があります。
一般的にプロジェクト会計や建設会計では、仕掛品勘定や未成工事支出金勘定に計上し最後に製品に振替えます。