内部留保は純資産だが必ずしも現預金という形ではない

本記事のポイント

純資産は、法定資本金(Legal capital)、資本準備金(Legal capital surplus)、利益剰余金(Retained earning=Earned surplus)のいずれかの形で貸借対照表(B/S)の純資産の部に計上され、資本準備金と利益剰余金は内部留保にあたります。

インドネシアの会社法では債権者保護の観点から資本準備金は法定資本金の20%を積み上げる必要があります。

累積損失は利益剰余金をマイナスに積んでいきますので、資産-負債=純資産がマイナスということは債務超過を意味しますが、それでも銀行借り入れが可能であったり株価が上がったりするのは会社の将来性が非常に高いか、グループ全体では黒字か、オーナーの個人資産が莫大か、資産の含み益が大きいかのどれかが該当します。

B/Sの純資産の部

純資産は、法定資本金(Legal capital)、資本準備金(Legal capital surplus)、利益剰余金(Retained earning=Earned surplus)のいずれかの形で貸借対照表(B/S)の純資産の部に計上され、資本準備金と利益剰余金は内部留保にあたります。

成長が見込まれて投資案件の多い会社の場合は、配当で株主還元するのではなく、のちのち設備など固定資産を購入する再投資による成長を目指すべく内部留保を厚めに行う、すなわち利益を利益剰余金として繰り越すことで現預金残高を増やします。

capitalまたインドネシアの会社法では債権者保護の観点から資本準備金は法定資本金の20%まで積み上げる義務があります(日本の場合資本準備金+利益剰余金が法定資本金の25%まで)。

日本はデフレ不況と言われますが、これは企業が余剰の内部留保をかかえたまま市場にお金が流入しない状態であり、賃金も上がらないし物価も上がらないと言う状態のことです。

安倍首相の自民党政権が日銀を通じてインフレ目標2%を掲げ、デフレマインドの克服を図るのはまさにこの内部留保(会計で言う資本準備金と利益剰余金)を放出し、物価を上昇させ、国民の購買意欲を高め、物が売れるようになってマインドが良くなった企業がお金を借りるような循環をつくるためです。

確かに失われた10年の間に投資控え&給料据え置きで社内に流動資産が溜まった状態であれば、賃上げして「内部留保を放出」も可能でしょうが、これまで景気が悪いので企業は給料据え置きで耐えてきたのであって、景気を良くするために給料を上げるというのはどうもピンときません。

またそのための元手となる現金の内部留保があったとしても、当期純利益は本来投資家のお金なので、経営者が勝手にそれを賃上げの元手に使うわけにはいかず、株主総会で投資家からの承認が必要になります。

株式会社に関係する人種には3種類あります。

(労働者が)営業活動する。<(経営者が)投資して<(投資家から)資金調達して

この成果物である利益を扱う方法は4種類ありますが、経営者が実際にどう扱うかについては投資家は株主総会で口を出す権利があります。

  1. 投資家に還元する(配当)
  2. 投資
  3. 労働者の待遇アップ(賃上げ)
  4. 何もしない(内部留保として積み上げ)

そもそも内部留保が現預金として存在するとは限らないので「内部留保を放出」ということが可能かどうかは企業の財務状況に依存します。

例えば100万円の預金を元に500万円の印刷機を追加導入した印刷会社には、財務諸表上内部留保があっても現金はゼロの可能性があります。

印刷機に投資を続けてきた状態のB/S

Dr. 預金  1,000,000    Cr. 法定資本金 2,000,000
Dr. 印刷機 10,000,000   Cr. 資本準備金 7,000,000
               Cr. 利益剰余金 2,000,000

印刷機を更に5百万円で追加購入

Dr. 印刷機 5,000,000   Cr. 借入金 4,000,000
              Cr. 預金 1,000,000

で、会計処理上は毎月利益処分をする場合は振替仕訳が発生しますが、会計システムで処理する場合は特にこれを意識することはないです。期末締め(Annual Closing)時にシステムが勝手にターゲットの純資産勘定(繰越利益剰余金)に振替え、その累計された内部留保を配当に回したりする処理に対して仕訳を作成します。

Dr. Net Profit 800,000   Cr. Retained earinig 800,000

そもそもインドネシアで毎月締めの当期純利益を利益処分するケースはまずないでしょうし、あっても四半期決算時に行うくらいでしょう。最終的なB/S上の利益剰余金(繰越利益剰余金)に至るまでに月単位、期単位の一時的な損益勘定を経由させます。

  • RETAINED EARNING (CUR) 利益剰余金(当月純利益)
    毎月の当期純利益(NET INCOME)をRETAINED EARNING (PRE-MONTH)に振替えるための一時的な損益勘定。
  • RETAINED EARNING (PRE-MONTH) 利益剰余金(期首から前月までの当期純利益累計)
    この勘定の期末残高を翌年期首にをRETAINED EARNING (PRE-YEAR)に振替えるための一時的な損益勘定。
  • RETAINED EARNING (PRE-YEAR) 繰越利益剰余金(起業年から前年までの純利益累計)
    一般に言われる利益剰余金で開業年度からの前期までの累計であり、過去のP/Lの税引後利益の累計。

累計損失の解消

システムから生産実績が正しく入力されない、または月末の棚卸が正確に行われないことによって毎月の棚差の変動が激しくなり、棚差がマイナスだと製造原価(製品の棚差の場合は売上原価)が増えるので損失、棚差がプラスだと製造原価(製品の棚差の場合は売上原価)が減るのでプラスになります。

システムは理屈の世界なので棚差は棚卸減耗費(販管費)として売上原価に反映されP/Lにモロ影響するので、毎月の棚差による損失を費用計上するのではなく別の資産計上することで「入力ミス隠し(損失隠しではない)」を行えばB/SとP/Lの見栄えは一時的に良くなります。

棚差の処理として考えられる方法は以下があります。

  1. 毎月費用化し売上原価に反映させる
  2. 固定資産の再評価を行い評価益に振替える。
  3. 利益剰余金をマイナス計上
  4. テンポラリー勘定(資産)に振替

本来は棚差が出た時点で受払実績をトレースしデータ修正を行った上で1を行い棚差の費用計上を最小限にし、損失の場合は2の利益剰余金をマイナス計上するのが正しいですが、工数的に難しい場合には、とりあえず損失は3に一次退避しておいて後から処理する、という方法がシステムでは可能です。

とはいえ最終的に何かの勘定への振替処理は必要になるのですが、その場合は減資でB/Sを再構築することになるのだと思います。

累積損失は利益剰余金をマイナスに積んでいきますので、資産-負債=純資産がマイナスということは債務超過を意味しますが、それでも銀行借り入れが可能であったり株価が上がったりするのは

  1. 会社の将来性が非常に高い。
  2. グループ全体で黒字。
  3. オーナーの個人資産が莫大。
  4. 資産の含み益が大きい。

などが考えられるため、累積損失があるからヤバイとは一概には言えないようです。