B/Sに計上される仕掛品の直接材料費は、工程への投入数量を元に正確に計算できますが、月末にまとめて発生する労務費や製造間接費などの加工費は、工程での直接作業時間・材料投入数量・生産数量などを元に配賦計算する必要があります。
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原価管理システム
マスプロダクションの総合原価計算と受注生産の個別原価計算の違いは、労務費や製造間接費などの固定費を所定のルールで品目に配賦するか、標準の賃率や配賦率に実績工数を掛けて品目に積み上げるかの違いであり、集計した原価の差異分析や経営判断のための予実分析が重要です。
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仕掛品はP/LではなくB/Sに月末残高として登場する
自分は昔原価を勉強し始めの頃に、製造原価が製品の製造費用であることを理解するのに随分時間がかかりました。
そして製造原価が「製品の製造費用」であることをやっと理解できた後に悩んだのは「なんで発生材料費や製造原価や売上原価は三分法で計算するのに、その間にある仕掛品の製造原価は計算しないの?」ということでした。
- 月初材料在庫+当月材料購入-月末材料在庫=当月発生材料費
- 月初仕掛品在庫+(当月発生材料費+当月加工費)-月末仕掛品在庫=当月製品製造原価
- 月初製品在庫+当月製品製造原価-月末製品在庫=当月製品売上原価

仕掛品がレベル0の集計費用は発生費用に該当する。
財務会計の目的はP/LとB/Sを作成することであるため、発生材料費、製造原価、売上原価を算出できれば十分であり、加工費は製品にのみ配賦すれP/Lとして成立しますが、B/S上に登場する仕掛品の月末残高には材料費部分しか載らないことになります。
会計上は当月発生費用が仕掛品製造原価に該当
資産という観点から見ると、材料と製品の間の状態が仕掛品です。
- 材料⇒加工中(材料の費用化と加工費の発生)⇒製品
つまり材料が投入され費用化された時点で仕掛品となり、そこに加工費が積み上げられます。
「当月仕掛品になったもの」は「当月費用化したもの」と同義であり、これが仕掛品製造原価に該当します。
当月発生費用である「当月発生材料費+当月発生加工費 」が当月仕掛品製造原価そのものであるわけです。
上の「仕掛品総平均単価x数量+直接労務費+製造間接費」で計算されている製造原価は、月末在庫の差し引きにより「仕掛品月初在庫+当月発生費用-仕掛品月末在庫」で計算した結果と同じです。
- 月初材料在庫+当月材料購入-月末材料在庫=当月発生材料費
- 月初仕掛品在庫+当月仕掛品製造原価-月末仕掛品在庫=当月製品製造原価
- 月初製品在庫+当月製品製造原価-月末製品在庫=当月製品売上原価
仕掛品の月末残高の計算
さて、現在製品にのみ配賦している加工費を仕掛品にも配賦する必要性が出た場合、発生費用のうち製品になったものと仕掛品のまま残ったものに按分する必要があります。
材料費は普通に投入数量で按分できますが、加工費は製品と仕掛品という形態の違うものへの按分ですので、仕掛品を進捗度によって製品換算する作業が発生し、これは結構大変です。
そこで原価管理システムが登場するわけですが、原価管理システムを導入する財務会計上の目的の1つは、マニュアル作業では大変な加工費を配賦した仕掛品の月末残高を計算することであり、加工費の按分や三分法では対応できない共通材の按分のために、総平均法にて計算します。
三分法で計算できない共通材の発生費用
共通材の場合、三分法によって月初在庫と当月購入と月末在庫から当月発生費用を計算できますが、投入実績ベースの金額がないため、品目別の発生費用を算出することができません。
総平均法であれば共通材発生費用はもちろん、投入実績の親子関係から製品別の製造原価も計算できます。
- 共通材発生費用
共通材投入実績数量x総平均単価 - 製品A製造原価に含まれる共通材部分の費用
共通材使用実績数量x総平均単価