インドネシアの新型コロナウィルス騒動【景気後退による国内経済への悪影響が心配】

非接触型

3月2日の政府発表で在住日本人の不安が一気に高まった

2月4日に横浜に寄港したダイヤモンドプリンセス号船内で新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)のクラスター(集団感染)が発生したことで、日本では一気に危機感が高まりましたが、そのときインドネシア国内での感染者はまだ確認されていなかったので、自分を含め周りのインドネシア人も対岸の火事を見ている感じでした。

中国、日本、韓国と感染者が増えていく一方で、何故かインドとインドネシアでは感染者が出ておらず、これは高温多湿な気候に守られているからだとか、インドのカレーやインドネシア料理全般で使われるkunyit(ウコン)が病気の予防に役立っているとか、一種の優越感を持ってインドネシア人も在住日本人も安全圏から見物していたように思います。

2003年に発生したSARSと同じように、しばらくすれば収束に向かうものと思いきや、3月2日にインドネシアで初めて陽性患者が確認され、その感染者はマレーシアで日本人と接触したのが原因らしいという政府発表があったことで、インドネシア在住日本人は一気にこれまで経験したことのない「偏見」または「差別」という不安の底に突き落とされました。

スーパーへの入店時に日本人だけはマスクを着用するよう言われたとか、すれ違いざまに露骨に口をふさぐような仕草をされたとか、長年の間ジャカルタにおいてある程度の尊敬と信頼を確立してきたと信じて疑わなかった日本人にとっては屈辱的なニュースだったかと思います。

僕自身は差別的な対応をされたことがないのですが、少なくとも教育レベルの高いインドネシア人に関しては、情報を鵜呑みにせず曲解することもなく、冷静に今までどおり日本人に接してくれていると感じました。

実際に差別的な対応をされた方に対しては同情の気持ちは禁じ得ませんが、インドネシアで外国人として仕事をし生活する日本人のリスクと認識し、気を引き締める契機になったと前向きにとらえるしかないかもしれません。

現地での日常業務への影響

工業団地の工場でもジャカルタのモールやオフィスビルでも、入場時に検温されるようになり、非接触型の体温計が表示する数字があまりにも低すぎて、意味なしという声が各所から聞こえてきたとはいえ、間違いなくインドネシアでも濃厚接触を極力さける雰囲気が醸成されていきました。

自分は元々水道があれば小まめに手洗いはするし、外から帰ったらうがいと洗顔も欠かさず、健康な状態で咳もしていないのにマスクを強制されることに抵抗がありましたが、受け入れ側からマスクしろと言われれば反抗しても仕方がありません。

そんな最中、今回はじめて労働省(Dinas Tenaga Kerja dan Transmigrasi)から、新型コロナウィルスに関する現地調査という名目の不法就労取り締まりのための抜き打ち検査が入り焦りましたが、個人のビザや会社関連の書類とと税金やBPJSの支払いと報告は完璧に遂行している自信があったので、それほどうろたえることなく対応できました。

今回は書類の不備がなかったこともあり極めて和やかな雰囲気の中での調査であり、ことあるごとにいいがかりをつけて摘発しようとするネガティブなイメージが強いインドネシアの労働省の役人さんが、真剣に新型コロナウィルス対策に取り組んでいる感じが十分伝わってきて大変好感が持てました。

今後のインドネシア国内経済への影響が心配

新型コロナウィルスの発祥地とされる中国からの農産物の輸入がストップされ、とりわけ玉ねぎ不足は日本人の駐妻さんの間で大きな話題になりましたが、自分の周囲にこの件で騒いでいるインドネシア人は皆無であり、玉ねぎ嫌いが多いインドネシア人にとっては、別に無くてもそれほど困らない食材ではないかという疑念が一層強まりました。

身近で一番危機感を感じたのが、いつもなら賑わう土日のショッピングモールが閑散としており、営業時間が短縮されいくつかの店クローズしていることであり、ウィルスの恐怖が解消されない限り外出自粛のムードは溶けそうもなく、このまま経済が回らないとウィルス自体よりもよっぽど深刻な問題になると思います。

ルピアの下落が止まらず3月23日時点で1円=Rp.153まで達し、円建て給料を貰っている人にとっては嬉しい悲鳴かもしれませんが、インドネシア国内向けビジネスを行う会社自体はルピア建ての請求書を発行しているため大変だと思います。

ただしリーマンショック後の2014年に国内企業に対する外貨規制が強化され、国内取引は基本ルピアで行ない、外貨建てオフショア債務(海外からの外貨借入)へのヘッジ義務が課されたため、海外からの外貨借り入れの返済不履行による連鎖倒産は発生しないはずです。

このまま景気が傾けば、企業の債務支払いや回転資金調達のために、保有する不動産を現金化する動きが出てくることが予想されますが、不動産価格がある程度下落するとはいえ、外国人名義の土地の所有権を認めていないインドネシアでは、外資による土地の買い占め等は起こりません。

最も心配されるのが雇用の問題で、新型コロナ騒動による消費の冷え込みは、内需で支えられたインドネシアの経済活動に致命的な影響を及ぼしかねませんので、リーマンショック後のように、ある程度失業者が増えるのは避けられないと思います。

今後予想される不況から最も影響を受けやすい業種は弊社のようなサービス業であり、実際に開始予定のプロジェクトの延期や、いくつかいただいていた引き合いの撤回等も発生しており、今年度の事業計画の練り直しを余儀なくされています。

3月23日現在、インドネシア国内の都市のロックダウン(封鎖)までには至っておりませんが、遊興施設には既に閉鎖命令が出されており、ブカシに至っては公設・私設の市場のテナントを除く全ての屋台の営業が禁止されており、政府主導の閉鎖的な動きが強まる可能性が高いと思います。